82 剣の練習と選抜試合
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
6月に入って最初の休み。
私達はダリルとミカを誘って王城の離宮に来ていた。
選抜選手を決める試合が近い!!
ジュンとミクラの家は無理なので相談してこちらで特訓することになったのだ。
ミカは馬車が王城の門を入っていくと「本当にエドワードは王子なんだな……」と当たり前のことを呟いていた。
オードリーとセレナとライトは魔法の話や練習をするそうで、ランスもそっちに参加するという。
そう、何故かアンドレアス達も一緒だ。特に何も言ってなかったのに。
「やっとネモと手合わせできるな」とアポロに言われた。
あ、夏に練習した時、エドワードがいやだとか言って変な空気になって、陛下に呼ばれてそれきりだったっけ。
地道な体力作りのおかげか、ミカも私も何とか練習についていけてる。
私が長剣の木剣、ミカが木刀で防具をつけて立会いしてみた。
私はなるべく基本の動きをしてみる。
ミカは最初戸惑っていたが、一度長剣の側の呼吸というか構える時の隙というかそういうコツをつかむと、格段に動きが速くなり、私はたちまち隅まで追い詰められた。
これは何か掴んだんじゃない?!
アポロに頼んでミカと対戦してもらう。
アポロは去年、刀の人に負けてたから、俺の練習にもなると言って、相手をしてくれた。
なんか互角に戦えてる!!
ミカすごい!
ただ時間が経つにつれ、ミカの方が動きが鈍くなり……、負けてしまった。
やっぱり体力だな……。
「ミカすごいよ!!
5年生にあそこまでやれたんだよ!!」
私が興奮気味に褒めると、照れくさそうに微笑んだ。
「前にネモに言われたことわかった。本当だったね」
「うん、もっと体力と筋力つけよう!
走るのと素振り、もう少し増やそうか……、筋トレもした方がいいのか?」
「……ネモはいいの? こんな俺なんかの練習に付き合ってくれて……」
確かに、なんでこんなにミカのことが気になるんだろう?
「何でかな? ミカが強くなると本当にうれしい!!
これは……、たぶん……、お母さんの気持ち?」
ミカが大笑いした。お腹を抱えて大笑いしていて、そんなミカを今まで見たことがないのでぽかんとした。
「お母さんって……。でも、ありがとう。なんか元気出た」
笑い過ぎて涙出てる。
「何? 楽しいことあったのか?」
ティエルノとダリルが来た。
ミカが「えーっと、ネモが……」と言いかけてまた笑ってしまう。
「何だよ!」とダリルに言われて私が答える。
「ミカになんで練習につきあってくれるの? と聞かれたから……。
ミカが強くなるのうれしい!! これはお母さんの気持ち? と言ったら大笑いされた……」
「お母さん?」
ティエルノが目を丸くしてくり返した。
「ネモがミカのお母さん?」
ダリルも変な顔をしている。
「やだなあ、母のような気持ちってそういうことだよ!」
私がムッとして言い返すと、ふたりも爆笑した。
「は、母って!!
ありえないだろ?!
ネモって本当にどういう発想してんだよ!!」
ダリルが大きな声で言うから、みんなにも知れ渡った……。
ウォロにも笑われたけど、ちょっと安心したような顔してた。
そーなんだよね。
ミカって、黒髪なのと言葉が少ない感じがウォロに似てるし、濃いめの青い瞳なのでなんか自分の身内みたいな感じがして……。
途中で陛下とマリアが見学に来た。
ミカとダリルをエドワードが紹介している。
ミカが私の剣の授業のペアと聞いた陛下がお願いした。
「ネモのことよろしく頼むよ」
「はい、息子として頑張ります」
ミカが言って周囲のみんながまた大笑いした。
陛下とマリアもエドワードにその理由を聞いて笑っていた。
「もー、ミカは私にもウォロにも似てんだよっ!」
私の言葉にアポロが「じゃあ、ウォロとの間に息子が生まれたらこんな感じなのかもな」と言った。
後でミカに謝った。
「ごめんね、私が変なこと言って。嫌だったら言われたことに返事しないでいいからね」
「ううん、うれしかったよ。俺、母を小さい頃に亡くしていて、あんまり記憶がないんだ。
だから、ネモみたいなお母さんだったらと思えたら、なんだかうれしいよ」
「そうなんだ……。でもごめん、同級生に言うことではなかった気がする……」
「ネモはそういうところあるよね。後先考えずに言ったり行動するところ。
でも、それがみんな素直な気持ちからのことだから、嫌じゃないよ」
「ありがとう、ミカ」
陛下を見ると5年生達と話していて、エドワードがマリアに話しかけていた。
昼食をご馳走になり、午後も少し練習してから早めに学校へ帰ることになった。
「ウォロとネモはちょっと俺に付き合ってくれない?」
エドワードに言われて、違う馬車に案内された。
王家ではなく文官が仕事で使う時の馬車だそう。
マリアにお願いしたのかな?
「どこに行くの?」
私の問いに「着いたらわかるから」とエドワードが答えた。
着いたのはジュンとミクラの家だった。
ミクラが出迎えてくれ 庭まで馬車を入れ、降りる。
家の中に招き入れてくれた。
ジュンが大きなお腹でソファーに座っていて迎えてくれた。
「ジュン! 会いたかったよ!!」
「お嬢様、私も会いたかったです!!」
そっとジュンと抱き合った。
「もう産まれるんだよね! 楽しみだね!」
「楽しみではありますけど……、ここからどうやって出てくるのかと思うと心配になります」
ジュンがお腹を愛おしそうに撫でながら言った。
「私も撫でて良い?」
「どうぞ!」
「わー、聞こえる? ネモだよ。ネモお姉ちゃんだよ! 早く会いたいなあ。元気に生まれてくるんだよ!」
「ネモお姉ちゃんって」
エドワードが後ろの方で笑っている。
ウォロも「お姉ちゃんになったり、お母さんになったり、今日のネモは忙しいな」と言った。
「エドワード、ありがとう。
学校からや大使館からだと私達ってわかっちゃうかなとか考えちゃって、来られなかったから……」
「うん、この前会いたいんだけど会いに行けないと聞いたから。
王城からの馬車なら、大丈夫じゃないかと思って。
さっきマリアに頼んだんだ」
「エドワード、どうもありがとう」
ウォロもお礼を言った。
そしてミクラと話し始めた。
私はジュンの隣に座った。
「次、いつ会えるかわからないけど、本当に楽しみにしているから。
手伝いに来られなくてごめんね」
「大丈夫ですよ。日中、近所の女の子が手伝いに来てくれてるんです。
お嬢様も学校が襲われたり……、無茶したこと聞いていますよ。
もう、本当に気をつけてくださいね!!」
「はい、気をつけます」
私達は馬車に乗り学校へと戻る。
「エドワード、本当にありがとう。ずっと気になっていたから……」
「うん、力になれて良かったよ」
エドワードがやさしい表情で言った。
◇ ◇ ◇
2年の選手選抜は長剣以外の子もいるので全員で試合をして決めることになった。
ちょうど14名が剣の授業を取っているので、くじで試合をすることになった。
私は長剣で参戦することにした。
二刀流の方は試合というよりかは本当に実戦向きなんだよね。
魔法と合わせて使うことを考えたら、長剣をもっとできるようにしておきたいし。
それに長剣でも基本から外れた使い方や戦術ってのをやってみたくて。
ミカも私も1回戦は勝ちあがることはできた。
次の7名での試合。
ウォロ、エドワード、ティエルノ、ダリル、ミカ、私、3寮のジョアン。
ダリルかジョアンと当たれば……、ミカ行けるんじゃないかと思う。
私はもう誰と当たってもチャレンジするのみ!
くじを引いたら、私はウォロとだった……。まあ、こういう運命ですよね。
エドワードが勝ち上がり枠に。(この後の試合の様子を見て先生が選抜を決めるので、くじで勝ち抜きという訳ではない)
ティエルノがジョアンと、ダリルがミカとの対戦。
「ネモ、くじ運残念だったな」とダリルに言われた。
「あー、でも、元から選抜に入れるとは思ってないから、一番強いと思うウォロと試合できるの楽しむよ」
「手抜きしないでよ」
「うん、そのつもり。あ……」
「なに?」
「……手抜きするって言えば、また言うこと聞いてもらえる権利の2回目が……」
「それは、ない。手を抜いたら先生に怒られるよ!!」
「残念」
ウォロと笑い合ってから試合場に入り、お互いに礼をして剣を構えた。
あー、アンドレアスの時みたいにわざと隙を見せているけど……。
自信があるからできる戦法だよね。
うーん、あの構えだと上から振り下ろすのに時間が……、いや、ウォロだと速いんだ。
うにゃあ!! どうしよう?!
攻めあぐねるが、わざと隙を作っている右ではなく、左側へ打ち込む。
上段と中段の当たりで払ってくるだろうから肘を狙って下段から切り上げてやる!!
ウォロが意表を突かれた様に左の腕をあわてて身体に引き付けた。
あっ、かすりもしない。
そこから中段で止め、剣を立てる。
予想していたように、ウォロの剣が右から左に振り下ろされ、木剣同士が激しくぶつかる。
私は後ろに飛んで力を逃がす。
うわ、力を逃がしたはずなのに、剣を持っていかれないように必死に握ったので手がびりびりする。
ウォロはもう正攻法でやろうと決めたようで、隙のない中段の構えで動かない。
もう打ち合うしかないけど、力で負けるのがわかっている。
でもやるしかない。
打ち合いながら、だんだん後ろに後退していくしかない。
最後の悪あがきで残っている力を全部叩きつける気持ちで打ち込んだけど、弾かれて剣ごと場外に飛ばされた。
何とか着地したけど、勢い余って地面に転がる。
「ウォロの勝ち!」
先生の判定が聞こえた。
「ネモ、大丈夫か?!」
ウォロの声が聞こえて助け起こされ、座らせてくれた。
「大丈夫。疲れたけど……。手を抜かないでくれてありがとう」
ウォロが私の頭の防具を外してくれた。
「手の握力大丈夫か?」
「よくおわかりで……、うわ……、手、震えてら……」
ウォロが自分の頭の防具を外して私の手を握る。
「自分で光魔法かけられるから大丈……」
最後まで言えなかった。
急にキスされたから!!
おい! ここ試合場!! 授業中!!
手もすぐに動かないので、頭を引こうとして抵抗するが肩を掴まれ……。
すごい野太い喚声が聞こえてビクッとした。
そうだよ、男子生徒ばっかじゃん!
ウォロがキスをやめた。
「この……なにするんだ!」
私は恥ずかしさと怒りでウォロに頭突きした。
読んで下さりありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。