81 婚約パーティー
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
5000ユニーク、どうもありがとうございます。
最初の目標にしていたのでとてもうれしかったです。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
とうとう婚約パーティー前日の金曜日の夜。
セレナとライトはそれぞれの家に帰った。
次の日、私達は寮で仕度をして、エドワードの馬車に一緒に乗せてもらいミュラー伯爵家に向かった。
ミュラー伯爵家はとても庭が広くて静かな感じのお屋敷だった。
雰囲気が王城と似ている。建築年数が古いけれどよく手入れされていて、美しい。
マッちゃん、ここ紋章にヒマワリが入っている家だよ。
『そうか、儂の子孫じゃな。どれどれ楽しみにしていよう』
私はミーア帝国から直して再プレゼントしてもらった銀と青のドレス。ウォロも同じ生地で作られた式服を着て飾り紐をつけてくれている。
オードリーは緑のドレスにダイゴからのプレゼントの靴を合わせている。
私達は婚約のお祝いを持参していた。
ミーア帝国からは名産シルクの白い生地を2着分と私が選んだ薄い青の生地を1着分。
セレナのドレスに使ってもらえればうれしいな。
アンドレアス達は王国からということで素晴らしいティーセットを一揃い贈ったそう。
ティエルノの家はそれを聞いていたので、高級茶葉の詰め合わせにしたそう。
ランスとアポロは家から何かをすでに送ったそう。何かがわからないところが男子っぽいというか……。
玄関でお祝いを渡し、中へ入るとセレナのお父さん(バーンスタイン伯爵)とお母さん、ライトの母方のお祖父さん(ミュラー伯爵だね)とお父さん(ツェルニー子爵)とお母さんに挨拶する。
セレナとライトは別室で待機していると言われ、案内された。
セレナはかわいらしい淡いピンクのドレス姿でメガネを外していたが、私達の声に気が付きあわててメガネをかけ「ネモ! オードリー! みんな!!」と呼びかけてきた。
ライトは淡いグレーの式服にセレナのドレスの色のチーフをつけている。
やっぱりこのふたり、こういうやさしい色が良く似合う。
「……もう私、緊張して……」
セレナが震え声になっている。
「ネモ、オードリー、セレナのそばにいてやってくれない?」
ライトに頼まれる。
エドワードの方は他のみんなで大丈夫かな?
私はエドワードを見た。
ライトもエドワードを見て「エドワード、僕と一緒にいれば個別に声かけられにくいよ」と言った。
ウォロはティエルノやアリス達といれば大丈夫か。
私とオードリーは入場するセレナの少し後ろに付き添いとしてついていることにした。
エドワードもライトの後ろにいる。
ライトの思った通り、ライトのすぐ近くにいるエドワードに直接挨拶に行くような人はおらず、ライトの後に軽く挨拶され話しこまれることもなく済んでいた。
次の挨拶の人が待っているからね。
結果的に良かったみたい。
ミュラー伯爵とライトとセレナの挨拶や乾杯も終わり、ふたりがファーストダンスを披露した後に私達はみんなの所に戻った。
さっそくエドワードの所に、令嬢を伴った貴族が3組ほど来たがエドワードの周りにいるランスやアポロがエドワードに話しかけ、話を切り上げるきっかけを与えるみたいになっていた。
それでも何となくエドワードのそばにいる令嬢達……。
さっさと誘って踊っちゃえばいいのに。
ティエルノがそのうちのひとりをダンスに誘った。それを見てランスもアポロも誘いダンスを……。
アリスはアンドレアスがいるし、私はウォロがいるし、オードリーが「仕方ない、ファーストダンスは私で我慢しなさい!!」と言ってエドワードとダンスに行った。
ウォロとダンスを踊り戻ってくると、ミュラー伯爵にダンスを申し込まれた。
「ライトがネモと呼んでいるお嬢さんだね。
ザーレでも学校でもライトを助けてくれたそうだね。
会ってお礼を伝えたいと思っていました。
ありがとうございます」
初めて会った時、厳しそうなお爺さんだなと思ったけれど、話してみると威厳の中にやさしさを感じた。
マッちゃんもこんな感じだったのかな?
『儂はもっと大きかった』
そうなの?
『ああ、今のウォロより大きかった』
そうなんだ! 大男だったんだね。
「ライトにはいつもお世話になっています。
私達、魔法属性が一緒でいつも魔法の練習をよくしているんです。
私の婚約者のウォロが好きな古代魔法にも興味を持ってくれて、いろいろなお話ができるとても良いお友達です。
今日は婚約おめでとうございます!」
「ミーア帝国皇子のウォロだね。改めて紹介してもらえるかな?」
ウォロを交えてサンマチネスのことを聞いたり、私が魔法陣の勉強をしていると話すと、今度ゆっくり屋敷にある資料を見せてくれると言う。
それは楽しみだ!!
その時エドワードが来て私をダンスに誘った。
ウォロが「他の令嬢と踊ったのか?」と聞くと「3人とはもう踊った」というので、私に頷いた。
会場の令嬢達と踊ったらと条件つけてたらしい。
えーっ。なんかそれは私をいいように使ってないか?
別にエドワードと踊るのは嫌ではないのだが、そういう扱いをされると、ちょっともやもやする。
踊ってからウォロの所に戻るとあのままミュラー伯爵とずっと話をしていて、とても気に入られたみたい。
「君達のような学友がいてライトは本当に幸せ者だな」なんて言われた。
アリスとオードリーとランスがなんか企んでいるような表情で話をしている。
なんだろう?
私はそちらに合流した。
オードリーが囁き声で教えてくれる。
「ネモ! アリスがいいこと考えたの!! あのね、エドワードはおとなしいタイプの子が好みって噂にしたらどうかって!」
アリスも付け加える。
「追いかけてきたり、つきまとってくる子は好きではないって……、どうかしら?」
攻撃のための噂ではなくて、エドワードを守るための噂か!
それはいいかも!!
「でもどうやって?」
「うふふ! 見てて!」
オードリーがアリスを連れて、令嬢達のそばに近付きおしゃべりを始める。
オードリーが驚いたように少し大きな声で言った。
「まあ、エドワードっておとなしめの女性が好みなんですか?!」
アリスが答える。
「ええ、エドワードは奥ゆかしい女性が好きだそうよ。
追いかけてきたり、つきまとって我先にと話しかけてくるような方は恋愛対象として見られないっていつも言っているわ!」
「へー、そうなんですね! おとなしくて上品な感じがいいんですね!
知りませんでした!!」
ランスと一緒にふたりの会話を聞いていて、笑いをこらえるのが大変だった。
ふたりが戻ってくるとランスが言った。
「いやー、笑わないようにするの大変だったわ!
俺もアポロと学校でこれやるよ!」
オードリーが「私もネモと……」と言いかけて黙る。
「オードリー?」
私の問いかけに複雑そうな表情で答える。
「ネモはやめておいた方がいいか……」
「なんで?」
「……なんとなく、ネモがエドワードの好みとか言うのは変かな?」
「そうね。ネモは知らないふりしていた方がいいわね」とアリスにも言われた。
なんでだ?
ウォロがこちらに来た。
「ウォロ、ネモとダンスしていいか?」とランスが声をかけた。
「ウォロと踊ってからでいい?」
私は先に言った。
まだ1曲しかウォロと踊っていない。
「何話してたの?」と聞かれる。
小さな声でアリスとオードリーによる『エドワードの噂』の話をした。
「面白いこと考えたな。でも、それなら学校の方も少し落ちつきそうだな。
噂もいい噂なら、いいな」
「うん、そうだね。で、オードリーもアリスも私はその噂とは関わらない方がいいって言うの。
なんでだろう?」
「うん、ネモはしない方がいいよ。
だってネモはエドワードを振った人なんだし」
「あ、そうか。そういうこと?」
「うん、それにネモはおとなしくないでしょ?」
「えっ? ……ああ、噂の奥ゆかしい女性とは……、あ、そういう意味もあるのね」
あれ、エドワードの好みはおとなしい人として、私はそうじゃなくて……。
むー、頭がこんがらかってきた。
まあ、もう関わらないでおこう。
「それよりランス、最近ネモと距離が近いんじゃない?!
また油断し過ぎないでよ……」
「えー、油断……。うん、わかった気をつける」
ランスと1曲踊った後は、ずっとウォロと一緒にいた。
なにしろ大事な婚約者様ですからね。
読んで下さりありがとうございます。
どうぞこれからもよろしくお願いします。