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79 王城での仕事(マリア視点)(後)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



「倍返しの魔道具?」

 ネモが立ち上がりながら叫んだ。

「そうよ! あなたが持ってるのより強力よ! 5倍返しにしてもらったから!!」

 アルテイシアが叫び返す。


 そんな危険なもの!! どこで学生が手に入れたの?

 魔道具が相手ということでみんな手を出せず、睨み合っている状態になる。


 アルテイシアがレイモンドの制止を振り切りながら「エドワード様、私と一緒に! ご友人の安全が大切でしょう?」とエドワードに声をかけている。


 この子、何考えてるの? 


 するとネモがエドワードの前に立って言った。

「アルテイシア、何してるかわかってる? それは脅迫だよ。今すぐやめて!」

 カッとなったアルテイシアがテーブルの上のお茶のカップを掴み、ネモに向かって……。

 空中に投げ出されたお茶はその軌道を何かに曲げられたようにアルテイシアの方に向かった。

 

 ネモは敢えてアルテイシアに攻撃させて、ウォロの魔道具を発動させて対抗したのだ。

 ネモもすごいがウォロもすごい!


 お茶が顔にかかり何が起こったのかわからず立ちすくむアルテイシアのペンダントをネモが引きちぎった。

「きゃああっ! ひどいわ! 泥棒!! ネモは泥棒よ!! 捕まえて! 泥棒!!」

 アルテイシアが騒ぐ声だけが食堂の中に響き渡る。


 ネモはアルテイシアに一瞥もくれずに、ペンダントをオーサム先生に渡し、アレジの所に向かうと腕と肩を光魔法で治療してくれる。

 さすが! 私は心の中でネモに拍手した。

 私はレイモンドの所に行き、話を始めた。


 ふと見ると陛下がネモに話しかけてる!!

 何やっているんですか?! ばれるじゃ……あ、ばれた!


 ネモの表情でアンドレアスとウォロも気がついたよう。

 とりあえずレイモンドにアルテイシアを学校長室に連れて行くことをお願いした。


「兄様!! お父様を呼んで! お父様なら、何とかしてくれる!!」

「もう、やめなさい。エドワード王子はこんなことをしたお前を許さないだろう」

「でも、こうでもしないと誰も私の言うことをきいてくれない!!」

「それは、お前の人への対し方がおかしいからだ! 何度も言っているだろう!!」

「でも、お父様の魔道具が……!」

「もうお父様の話はするな!!」


 レイモンドが怒った声で対応し、アルテイシアが今度は涙を溢れさせてしゃくりあげて泣いている。

 アレジとオーサム先生がふたりを連れて食堂から出て行ってくれた……。


 その後、ネモとアリスはパレードのために門の方へ移動し、ウォロとランスとエドワードが付いて行った。


 アンドレアスが陛下に近寄り「本当に変装してたんですね……」と呆れたように言った。

「なかなか似合うだろ」

 陛下が笑いながら答えている。


 食堂の前に出て、今年のパレードの様子を見た。

 アリスが馬車に乗り、ネモは……またしんがりの花束係だ。

 本当に人の嫌がることを引きうけて、なんなく、しかも楽しそうにこなしてしまうよね、ネモは。 

 

 ネモがこちらに気が付き、花束を片手に抱えると手を振ってくれた。


 陛下が大きく手を振りかえす。

 本当に陛下はネモがお気に入りなんだな。

 この国から出さないようにと考えていたことは知っているが、まだあきらめていないのかも。


 陛下として参加したステージでも、陛下はネモにダンスを申し込み、それは楽しそうに過ごしていた。

 ネモも陛下に物怖じせず話をしているので、そういうところも気に入っているんだろう。

 

 ダンスが終ると、陛下がネモを抱きしめ頬にキスした。

 あれ、これって去年のエドワード?!


 親の方がまだあきらめていないっ?!

 私はため息をついた。




   ◇ ◇ ◇




 王城に戻った夜、カトレア先生が王城を訪ねてきた。

 大事な話が陛下にあるという。

 カトレア先生が陛下に?!


 私は陛下に連絡し承諾をもらうと執務室に案内した。

 そこで、学校を襲撃したズールの協力者として警備局や魔法研究所が追っていた謎の魔道具職人が、アルテイシアの魔道具からカルタロフ伯爵ではないかという推測が生まれ、それを確かめようとしたネモが闇魔法で精神的な攻撃をされたことを知った。

 

 これ以上ネモやウォロには無理はさせられないので、仕方なく(この仕方なくをカトレア先生はすごく強調した)陛下に協力をお願いする……、とのことだ。


 陛下は険しい表情で話を聞いていたが、協力すると即答した。

 明日、学生達にこれからのことを説明するので同席していただけないだろうかとの言葉に私を見る。

 明日は午後3時から王城で会議があるが、それまでなら……。

「午前中から昼までなら時間が取れます」

 私の言葉に「では10時に学校の私の部屋に来てください。マリア、あなたも」と言い置いてカトレア先生は帰って行った。


「こんなことなら、アルテイシアを不敬罪で捕まえて、親である伯爵も強制捜査させれば良かったな」

「それはさすがにやりすぎです!」

 私は返事をしながらネモとウォロのことを心配していた。

 確かにネモとウォロの聖魔法の力はかなり強い。カトレア先生もギーマ先生もつい頼りたくなるだろう。でも、彼らはまだ2年生。14歳の少年少女だ。守ってやらねばならない。


 次の日、学校に着くと、カトレア先生とギーマ先生に迎えられた。

 カトレア先生の部屋に通され、これまでの経過やこれからどうするかという話を聞いた。

「たぶん危険だから手を引けと言われても、もう無理だと思うのよね。

 ウォロにしてみればミーア帝国のことも関わっているし、昨日のことを考えると、伯爵はミーア帝国を戦う相手とみなしているようだし……。なので、学生達にはこのように学校の中でできる仕事をお願いしようと思います」

 カトレア先生の言葉に私は頷く。

 それがいいと思う。危ないから何もかも忘れて手を引けでは、特に5年生は納得しないだろう。

「そろそろネモ達が来る頃よ」


 私がドアを開けると、研究室の前にネモとウォロとオードリーがいた。

「こっちよ! ネモ!」と呼びかけると「マリア!!」と名を呼んでくれた。


「そっちじゃ狭いからね。こちらにって」

 部屋に入ったネモ達が陛下を見てびっくりして立ち止まる。

 楽しそうな表情の陛下と苦笑いのカトレア先生。


「ネモ、そんなに驚かなくても……。

 こうなったからには嫌でも、この……陛下と手を組まざるを得ないわ。

 もう、あなたのせいよ」


 次々にみんな集まって来て、私はカトレア先生から指示されていた敷物を出して広げた。

「ここに座って」と言って、自分も直に座って見せる。


  カトレア先生がアルテイシアの処分を伝える。やはり学生であることからかなり軽い処分になったことにみんな言葉には出さないが不満に感じたようだ。


 陛下がアルテイシアのことを話し、エドワードにみんなに協力しもらい何とかしろと言う。

 陛下のリードで話がこれからのことになっていく。


 魔道具の話をしている時、気になることがあった


 ウォロが悪意ある言葉や仕草を遮断して認識できない魔道具を作れば、ネモを守れるかもと言い出し、ネモが「ウォロ! それやりだしたらキリがないし、私が周囲を正確に認識できなくなるから、それはやめて」と言い返した時。

 

 ランスと陛下が同時に笑ったのだ。

 ふたりも意外に思ったのか思わず顔を見合わせ、陛下がニヤッと何かを企むような表情で笑った。

 ランスは慌てて目を逸らしたが……、これは何かあるかもしれない……。


 昨日の話になり、ネモとウォロももう前向きに考え始めていることがわかり安心した。

 先生方がほっとしている。

 

 ここでギーマ先生が警備局と魔法研究所の方の動きを説明してくれ、学生達に頼みたいことがあると話を進めていく。

 

 それはアルテイシアのこと。

 アルテイシアが父である伯爵が魔道具につながるようなぼろを出し、そこから追って辿るというのが今のところ可能性が一番高い……。確かにあのアルテイシアならすぐにいろいろやらかしたりしそうだ。


「アルテイシアを泳がせるということですか?」

 ランスがアポロと目で相談するように見合いながら質問した。

「まあ、そういう言い方もできるか」

 ギーマ先生が言うと、ふたりは頷き、ランスが2年生に声をかける。


「ティエルノ、エドワード! ボランティアの方、俺達も参加するからグループ作ろうぜ。

 Aがティエルノと俺。Bがエドワードとアポロ。って中心にして、アルテイシアはAで引き受けよう。どうだ?」

「交互に参加するみたいな?」

 エドワードが聞き返す。


「たぶん、今年はエドワード効果で女子がたくさん参加してくると思うぜ。

 人数がいれば、グループ作って、当番制みたいにもできるだろ?」

 ランス、なかなか仕事ができる。以前まではアポロの陰に隠れていたところがあったけれど……。


 ランスの兄であるクラウス先生が言った。

「まあ、やり方は任せるけれど、伯爵の方の調査はこちらに任せて、アルテイシアの方をよろしく頼む。

 何か気が付いたことや話したことから何か突破口が見つかるかもしれない。

 ただ……、アルテイシアがいるということは伯爵も関わろうとする可能性もあるな。

 孤児院に来るとか?」

「あ、前に孤児院にいる時に貴族のご婦人方が見学に来たことがありました!

 アルテイシアから聞いて、見学に来たりするかも?!」

 ネモが答えた。


「それは孤児院の方に活動中の見学を断るように要請すれば防げるな」

 アンドレアスが対応策を言った後に「よし、ネオとウォロはこっちのグループな」とアポロが言った。


 ランスが一瞬不満そうな顔をしてから「あ、そうか、しゃーないな」と呟いた。


 やっぱり、ランスはネモに特別な感情を持っているのかも?!

 陛下を見るとランスを見ながら何か考えているようだ。

 もう、これ以上引っ掻き回すようなこと言い出さないでよ!

 ネモとウォロを引き離すような仕事だけは絶対に拒否してやるんだから!!

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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