73 陛下の企み
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「ごめんねウォロ。お母様が直してくれたドレスはライトとセレナの婚約お祝いで着させてもらうね!」
「うん、あの場にいて自分でもよかったら手を挙げてたと思うから……」
「ウォロの付き添い! ちょっと見たいかも!」
オードリーと顔を見合わせてくすくす笑ってしまう。
私とアリスが付き添い役をすることは大ニュースとなって学校中に知れ渡り、その話題で持ちきりとなった。
平民のノンナが花の女神で付き添いを集めるのに苦労していることは貴族令嬢の間で話題にはなってたみたい。手助けするな的なね。
私もアリスもほぼ自分の寮以外の令嬢達とつるんでない、まあ、影響力もお互いないし、悪口言いにくい相手よね。
まあ、私の方が言いやすいか……。第1王子の婚約者であるアリスには絶対言えないだろう。
でもアリスと付き添いをするの楽しみだし、第1王子の婚約者がやるなんて、これで付き添いがハズレ役という感じじゃなくなる事もあるかも?!
今日は寮ごとにダンスの練習時間が設けられていて、1寮は1時間目だったので、学年で朝の挨拶と連絡事項を聞いてから、移動を始めた。
教室を出たところで「ネモ!」と声をかけられた。
「ミカ! 午後の剣の授業よろしくね!」
声をかけてきたのはミカだったので立ち止まった。
「ネモにお礼言いたくて。ノンナの付き添いやってくれるんだってな。ありがとう」
「ノンナと友達?」
「ああ、家が近所で幼馴染なんだ。
だから気になってた。助けてくれたんだってな」
「いえいえ、素敵な花祭りになるといいね! じゃあ、後で!」
久しぶりのダンスの練習というか先生がいるから授業?
1年の時の様にみんな交代で踊る。
最初、久しぶり過ぎてちょっとぎこちなかったけど、すぐ感覚を思い出した。
すぐに先生からOKをもらえて、各自自主練になった。
セレナはライトと練習してるので(婚約のお祝いでも踊るのでかなり真剣に練習してる)、私達も5人で練習した。
エドワードと組んだ時、話しかけられる。
「ウォロとは最近どう?」
「どうって?」
「アルテイシアは?」
「あー、まあウォロの場合は出会った時だけなので、追いかけてはこないから……。
でも、わかっているのに……。
わかっているのに予想できるのに、なんでダメージ受けるんだろう……」
「あー、それはしょうがないよ。
それだけウォロのことが好きってことだろ」
「そうか、人を好きになるとこんなせつなさとか痛みがあるってわかったよ。
エドワード、ありがとう。そしてごめんね」
「……なんでまた、俺が振られたみたいになってるんだよ」
「いやいや友達だから、ちゃんと伝えたくて……」
「ふん、わかった。友達だもんな」
「うん、友達だから協力するけどね」
「対アルテイシア共同戦線だな」
エドワードが笑って言った。
午後の剣術の授業ではミカとペアを組んで全体練習した。
自由練習の時にエドワード、ティエルノ、ダリルにも紹介した。
「花祭りが終ったら、また自主練やるでしょ!
その時に私達も参加させて!」
「ああ、今回は早めに始めようと話してたんだ」とエドワード。
「選抜の前にある程度仕上げときたいからな!」
ダリルが真剣な感じで言った。
あー、確かに全員長剣じゃなくなったこともあって、代表決めるの混戦かもね。
「ミカ、放課後っていつも何してる?」
「えっ、寮で勉強したり、本読んだりかな?」
「曜日決めて、体力作りしない?」
「いいけど……。俺となんて変な噂になるんじゃ……」
「大丈夫、ウォロも連れて行くから!」
「……ま、それなら大丈夫か」
とりあえず、今度の月曜日の放課後に1回集まってみようということになった。
みんなの自主練に参加するまでにもう少し体力筋力をあげておきたい!
◇ ◇ ◇
休みの日、いよいよ王城に行くんだけど、昼食からということだったので午前中、私達3人は大使館に行くことにした。
ダイゴからのプレゼントであるオードリーの靴を受け取りに行かなくちゃだし、私も直してもらったドレスを見たかったから。
銀と青の薄い生地をスカート部分に多く使い、胸や肩袖の部分にミーア帝国の錦が使われていて、とても優雅で上品な感じ。
これを着て踊ったらスカートの部分の揺れがとても素敵だろうなとワクワクした。
マリヤム様にお礼の手紙を書くね! とウォロに話したらとてもうれしそうにしていた。
まだ時間に余裕があるので、お店によって花祭りのドレスを、試着して確認、受け取った。
オードリーの白銀のドレスもかわいらしい感じでとても良かった。
花飾りがとても映えそう!!
そのまま王城に向かい、王城の部屋に通されると、もう2-1寮のみんなと、アンドレアス達が到着しておしゃべりしていた。
エドワードが私を見てちょっと驚いた。
ああ、前にもらった緑のワンピース着てきたからね。
夏の服だけど、その上に羽織り物をすれば今の時期でも全然大丈夫。
ずっとしまいこんでいて、もう着ることもないだろう(もったいないけど)と思っていたけれど、陛下にもお礼を伝えていたし、ウォロに相談したら「陛下に見せてやるぐらいしたら」ということでお許し(?)も出たということで解禁した。
みんなで豪華な昼食を頂く。
おいしかったけれど、その後のことを考えるとかなり緊張する……。
陛下のいるところへ行くのかと思っていたら、何と陛下がこちらに来た。
「今日は父親として息子の相談に乗りに来たからな。
皆、いつもアンドレアス、エドワードと仲良くしてやってくれてありがとう。
セレナ、ライト婚約おめでとう。
ネモ、その服は例の服か? よく似合ってるじゃないか!」
セレナとライトが慌てて、お祝いの言葉に対してお礼を伝えた。
私ももう一度服を頂いたお礼を伝える。
アンドレアス達は服のことを知らないので不思議そうな顔をしている。
ま、それは終わったことなので……。
アンドレアスがエドワードからの相談と伝えてくれ、エドワードに説明するよう促す。
アルテイシアが入学してきて、追いかけられ待ち伏せされと自由に校内を動くことができず困り果てていること。
セレナの婚約がまだ発表になっていないのにこの調子では、婚約発表後にもっと状況がひどくなるのではと不安であること。
また、なぜかウォロに対しても声をかけて近づこうとすることがあり、ネモが困っている。
なにかいい打開策がないか、相談したいと思ったことを伝えた。
「面白そうな話だな。
まあ、一番の解決策は婚約者を決めてしまうことだがね。
私はまだネモがいいと思うんだが……」
「お断りしましたよね」
私はすぐ言った。
「でも、在学中は考えてくれと言ったろう」
「はっきり振られたんだから、もう言うな!」
エドワードが言ってくれた。
「そうか、それは残念。ふむ。
カルタロフ伯爵令嬢アルテイシアだったな。
カルタロフ伯爵は不思議な男でな、以前から調べさせているんだが……。
わかったことがあったら、知らせよう。
それから確認なのだが……、エドワードのことが本当に好きでそのような行動を起こしているとしても、受け入れることはできないのか?」
「……ああ、悪いけれど、無理だ」
エドワードが答えた。
「そうか、わかった。
ウォロの方へは何か裏がありそうだな……。
そういえば私が頼んだ孤児院へのボランティア、なかなかうまくいっているようだな。
今年もメンバーを募集するのだろう?
それにアルテイシア嬢が参加して来たらどうするのだ?」
エドワードがはっとする。
「は、その可能性があったか!!
わー、もうどうしたらいいんだ!」
「……花祭り、私も参加していいだろうか?」
「えっ、保護者は入れないけど?」
「いや、来賓としてならいけるだろう。面白そうだ。いつもの様子を見てみたい」
陛下がすごくワクワクした顔してるよ。これ大丈夫なのか?!
陛下がお付きの人に何か伝えると、その人は出て行きマリアを連れて戻ってきた。
マリアは、女性文官の制服なのかな?
ロングスカートで上は男性の制服に似たかっこいい感じの上着を着ている。
私達を見て笑顔を見せる。
「まあ!」
「うれしいだろうマリア」
陛下の言葉に真面目そうな顔に戻り「お呼びでしょうか」と一礼した。
「今年の学校の花祭りを観に行きたいのだが、調整と付き添いをマリアに頼みたい」
「今年の花の女神はどなたに?」
私が答えた。
「4年生のノンナです。そして私とアリスが付き添いやります!」
マリアが驚く。
そこでアンドレアスがノンナが平民のために貴族令嬢達が付き添いを断ることが続き、生徒会が困ってしまったことを話してくれた。
「それでアリスとネモがやることにしたのね……」
マリアが納得したよう。
「なるほど、その点も気になる。身分ではなく能力で入学した生徒達が、身分のことでいがみ合うようなことは学校の在り方として見過ごせない。
学校長とも話をせねば。それに実際の学校の様子を見てみたいな……」
あ、陛下が悪そうな顔になってる……。
マリアと目が合った。首をすくめて苦笑いしている。
「よし! 隠密作戦だ!」
は?
「私は変装して参加するぞ!」
「えっ! 変装って無理だろ! 周りは生徒ばっかだぞ!! おじさんがいたら目立つって!!」
エドワードが呆れて言った。
「うむ、先生のふりならできるだろう!!」
あー、ややこしいことに……。
「アリス、ネモ、私ともダンスを踊ってくれ! 娘とダンスを踊るのが夢だったんだ」
アリスは「はい!」と返事をしたけれど、困惑気味にアンドレアスを見た。
私はウォロを見て、エドワードを見て、まあ、陛下の機嫌を取った方がいいのかな? と思い「はい」と返事した。
とりあえず、陛下に協力してもらわないとね。
「それからエドワード、毎月王城に顔を出せ」
「何で!!」
「セレナもネモもダメなら早急に新たな婚約者候補を考えなければならないだろう。
王妃が毎月お茶会を開くと張り切っている」
「何で……」
「出会わなきゃ、その先がないだろう?!
アルテイシア嬢が参加しないようにそこはうまくやるように伝えておく」
セレナもネモもダメって言い方……。確かにその通りなんだけど、そのふたりここにいるんですけど……。言い方……陛下……。
陛下はご機嫌で退出して行った。
マリアは残り、エドワードとウォロに対してのアルテイシアの話をした。
説明してた時、マリアいなかったからね。
「エドワード大変そうね。
でもウォロまで? それでネモが気分を悪くするなんて……意外ね」
「ネモ、やっと成長したんですよ」とランスが言った。
「成長?」
聞き返すマリアにアンドレアスが言った。
「初めてウォロに近付くアルテイシアに対して嫉妬したんだそうだ。
あまりいい感情でないとネモは悩んだようだが、それは普通のことだと思うし、心の成長だと思うんだ。恥ずかしいことではないよ、ネモ」
アンドレアス、優しい!
そう言ってもらえると、安心する。
「そうなんだ……。ネモ、幸せな子どもだったのね」
「そうなんだよ。好きになったのがウォロが初めてで、最初から両想いだったそうだ」
ランスが面白くなさそうに言った。
なぜ面白くなさそうなのだランス?!
「まあ、ふたりなら前世で恋人同士だったって言われても納得できるけど……」
マリアの言葉にエドワードが驚いたように言った。
「やっぱりそれ本当のことなの?!」
みんな、エドワードの言葉に驚いている。
あ、エドワードにはウォロと前世で会っていたって言っちゃったな。
「……んなわけないよな~!」とランスが笑った。
エドワードがこちらを見てくる。
『エドワードは前世のことを知っているのか? とウォロが聞いているぞ』
マッちゃんの声。
エドワードがウォロより先に私に出会っていたというので、前世で会ってて覚えてるからと一言だけ言った……。
『エドワードがウォロより先にネモと出会っていたと言うので、ウォロとは前世で会ってて覚えてると一言だけ言ったらしいぞ』
「そっか……。そう、ネモと自分は前世で会ってた。
ネモが先に生まれ変わって、あわてて追いかけたから……」
ウォロが言ってくれた。
「本当なの?」
オードリーがびっくりする。
「小説みたいな話ね! 素敵!」
セレナも言った。
「ほんとかよ?!」
アポロが驚いている。
「……まあ、そういうことにしておこう。前世のことはこれ以上聞かない方がいい。
このことは口外しないように。父の耳に入ったら、さらにややこしいことになる……」
アンドレアスがまとめてみんなに口外しないようにこれ以上聞かないように話をしてくれた。
「アンドレアス、ありがとう」
ウォロが言って、私も一緒に頭を下げた。
読んで下さりありがとうございます。
今日も午後投稿する予定です。
これからもよろしくお願いします。