72 嫉妬の感情
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけるとうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
寮についたらライトが夕食を作っていてくれた。
醤油と赤ワインでお肉にからめるタレを作ったんだそう。
ウォロは機嫌がいいのに、私は元気ない感じなのに気が付いたオードリーに心配されて、一緒に私の部屋に入る。
「何かあったの?」
オードリーに聞かれて、部屋着に着替えながら思い出して悲しくなる。
私はアルテイシアがウォロの手を握ろうとしたのを見た時に、嫌だと思って、心が痛くなったことを話した。
「心が痛いの、つらい……」
「今更?! というか、今までそんな気持ちにならなかったの? ウォロのこと好きだったんだよね!?」
「好きだよ! 大好きだよ! でも、今までウォロにそんな風に感じたことなくて……。
こんな風に他の人に対して触るな! とか思うものなの?」
「で、ウォロにたくさんの痛みを与えていたことに気が付いたわけだ」
「……はい」
「ウォロだけじゃないよ。……エドワードにもセレナにもね」
「!! そんな!」
「……もう過ぎたことだからしょうがないけど。
セレナももう次に進んでるし、エドワードも、かな?
ネモがこれからしなくちゃいけないのはウォロとちゃんと向かい合って伝えること。
苦しくなるくらい大好きって、愛してるってことなんだから」
「……はい」
「本当に大丈夫?」
私はこっくり頷いた。
ライトの料理はとてもおいしかった。
食べながら涙が出たよ。
「ネモは本当に食いしん坊だな。肉食って感動して泣いてる奴、初めて見たよ」
ティエルノに言われたけど「本当においしいんだもん!」と言い返した。
寝る仕度をしていたらウォロが部屋に来た。
「今夜見張ろうか?」
そう言われて笑ってしまう。
「大丈夫」
「本当に?」
「……じゃあ、抱きしめてもらおうかな」
ウォロが空いているドアに背を向けて手を広げたのでこっちから抱きついた。
「今、すごく幸せだ……」
ウォロがしみじみ言うので私はウォロを見上げた。
「今まで幸せじゃなかったの?」
「そういう訳じゃないけど。ネモをとうとうがっちり捕まえたって感じがする」
「じゃあ、気が付かせてくれたアルテイシアに感謝しないとね……。
あー、でも、無理! なんでエドワードを追いかけてるのに、ウォロに近付いてくるの!!
もう!!」
ウォロがにっこり笑って言った。
「あー、幸せ!」
次の日、朝食の時にエドワードに言われた。
「今日の昼休み生徒会室に来れる?」
「うん、行ける! ウォロもオードリーも大丈夫だよね?」
ふたりが頷く。
「ボランティアの方の新年度募集をしようと思って、その相談。
じゃあ、昼休みに生徒会室で昼食食べながら話をしよう!」
オードリーが気が付いたように言った。
「ここのところ、昼食時に食堂でエドワードとティエルノを見かけないのは、もしかして毎日生徒会室で食ベてるの?」
エドワードが困ったような表情で頷く。
「アルテイシアのせい?」
頷くエドワードにさらに言葉を継ぐオードリー。
「そっか……。花祭りどうすんの?」
「とりあえず、ライトとセレナの婚約発表は花祭り後だから……」
「いや、ふたりの服装で当日ばれるって!」
オードリーの指摘に私も頷く。
うん、そう思う。
エドワードの顔色が悪くなる。
「アンドレアスとアリスに相談してみたら?
あと、こういう時は陛下に相談するのもありかもよ」
私は考えながら言った。
陛下もたぶんアルテイシアは気に入らないんじゃないかな?
エドワードがこんなに嫌がっているんだし。
「……ネモも一緒に来てくれるなら」
「えっ?」
「父はネモがお気に入りだから、一緒にお願いしてくれれば話を聞いてくれるかも……」
えっと……。
「ウォロとオードリーも一緒なら、いいけど」
ウォロとオードリーが「「えっ?」」と言う。
エドワードがふたりに「頼む!!」と拝むように言った。
「……わかった。とりあえず昼休みに話そう」
ウォロが言った。
昼休み、食堂でテイクアウトして出ようとすると声をかけられた。
「待って! エドワード様と合流するの?」
アルテイシアだった。
「違うよ」
オードリーが言ってくれる。
アルテイシアがウォロを見た。
お願いするような感じで両手を組んで、下からかわいく見上げて……。
「ウォロ様! 今度ゆっくりお茶でもいかがですか! 聖魔法のお話伺いたいです!」
心がズキッとした。こんなんでダメージ喰らうとは本当に情けない……。
ウォロは「失礼する」と言って、私を抱き寄せ食堂から出た。
「大丈夫か、顔色悪い」
心配してくれてる。
「うん、情けない。ウォロのこと信じてるのに、なんで痛いんだろう……」
私が情けなさそうに言うとオードリーがポンポンと肩を叩いた。
「たぶん急激な心の成長に反動が出てんじゃない?」
「えー? 反動? しばらくすれば治まる?」
「えー、それは無理じゃないかな?!」
生徒会室に着くと相談室に通された。
アンドレアスやアリス、ランスとアポロもいた。
「久しぶり~」とランスが言って「あれ、ネモなんか元気ない?」と気づいた。
いや、気づかんでいい……。
ランスってこういうところ神経が細かいというか、配慮できるというか……。
「……ちょっと」
私がそれだけ言うとオードリーが言った。
「ネモは今までの反動が出てるので、お気になさらず!」
「反動? なんの?」
恥ずかしくなりウォロにくっついて顔を隠す。
「はっ? ネモ? どうした?」
ランスの戸惑った声が聞こえた。
「何、急に女の子らしくなっちゃって……。あ、ウォロ、言うこときかせてなんかネモにしたのか?!」
「さあね」
ウォロがそういって私を腕で(両手にテイクアウトの容器と教科書とか持ってたから)抱きしめるようにした。
「あー、なんかむかつくなあ、その態度」
ランスが怒ったように言っている。
「ごめん、ウォロは何もしてないから。私が少し変わっただけで……」
振り向いて言うとシーンとしてしまう。
何?
私、変なこと言った?
「少し変わった? どう変わったの?」
アリスが心配そうに聞いてくる。
「えっと、それは……」
「とりあえず、座っていい?」
ウォロが言ってくれて、私達3人は座った。
「で?」とランスが聞いてくる。
「……ウォロが他の女子に話しかけられて手を握られそうになったのを見て、初めて……嫌だって、心が痛いっていうか、つらいのが……、嫉妬っていうの? 今までそんな気持ち感じたことなかったのに!!」
やっと言ったのにみんな『は?』という感じで……。
「えっ? 今更?
ネモって片思いとかしたことないの?」
ランスがあきれたように言った
「ない。最初からウォロ……だったから……」
まあ、考えすぎていろいろ悩んだことはあったけれど、片思いとか恋のライバルがとかで苦しむことは全くなかったので……。
「まあ、心の成長だな。悪いことではないよ、ネモ。
ウォロに対する気持ちをしっかり自覚できたと思えばいい」
アンドレアスがそう言ってくれた。
オードリーが言ってたことと同じだな。
私は大きく頷いた。
「エドワード、話を始めてくれ。食べながら聞かせてもらうよ」
アンドレアスが話を進めてくれる。
「あ、孤児院のボランティアの新年度募集をしようと思います。
やり方は去年度と同じ、食堂に周知ポスター、説明会開催の流れです。
花祭りが終ってから掲示する予定。
どうかな? 何か問題ある?」
「そうすると5月の最終週に行けるか?」とウォロ。
「新年度の募集者を入れなければ5月の中旬でも行ける」
エドワードの返事に、オードリーが言った。
「学校行事で行けない月がけっこうあったの。
今の2-2寮でそんな月に行ったりしてたんだけど。
ボランティアはできるだけ月1回のペースは維持した方がいいと思う。
もう4月は行けないから、5月の中旬に今のメンバーで行くの私も賛成!」
「わかった、その方向で調整してみる。意見ありがとう」
エドワードはそこで大きく息を吸いアンドレアスに向かって言った。
「兄様、相談があります」
「なんだ?」
アンドレアスが驚いたように言った。
「個人的なことですが、とても困っています。
その……アルテイシア嬢のことです」
「あ、この間のエドワードに迫ってた1年生!」とランス。
「待ち伏せされ、いくら断っても話をしたいと言われ……、本当に困っています。
で、今のところ俺の有力婚約者候補だったセレナが、5月に婚約します」
「……婚約しますって、誰と?」とアポロが聞き返した。
「ライトと」
「「えー!!」」
ランスとアポロだけ声をあげて驚いた。
「そっか、ライト、ミュラー伯爵家の後継に決まったんだっけ!
なら、セレナに婚約申し込めるか! 頑張ったな、ライト!」
ランスがひとりで言って、感動している。
「だから、俺の有力婚約者候補が空席になり、すると……」
「アルテイシアの猛攻勢が強まるという訳ね」
アリスが苦笑いしながら言った。
「……誰かいないのか?」
アンドレアスが言うが「いたら苦労してないよ」とエドワードが答える。
アポロが言った。
「ティエルノのところには妹いなかったか?」
「……いるけど、まだ8歳ですよ」
オードリーが手を挙げる。
「何、オードリー、婚約者候補に立候補?」
ランスが言うとオードリーがしかめっ面をして見せる。
「違います! そのアルテイシアですけど、ウォロもその子に付きまとわれてます」
「えっ? じゃあネモが嫉妬した相手ってアルテイシア?!」
エドワードが驚いたように言った。
「うん……。私には無視するかのような感じなんだけど、ウォロに対してはそんな感じで……」
私が言葉を止めてしまったので、オードリーが続ける。
「今日も食堂でエドワードを待っていて、エドワードのこと聞かれて、ウォロに媚びてきて、ネモが気分悪くなるくらいダメージ受けてる……」
「……兄様、なので王に相談してみたいんだけど……、どうだろうか?」
「父にか……。あの人は劇薬だぞ。こちらにもどんな作用が起こるわからない」
「でも、何もできなくて困って弱っていくよりはいい」
エドワードがきっぱり言った。
「でも、付きまとってくるぐらいで学校をやめさせるわけにはいかないけどな」とランス。
「まあ、カルタロフ伯爵のことは前から気にしているようだし、何か情報をくれるかもしれない。
何かしらの力にはなってくれるだろう。
今度の休みに王城に行こう。私から相談があるとだけ伝えておくよ」
「ありがとう兄様!」
相談室から出ると生徒会室で女子が泣いていて、みんなが慰めている。
「ノンナ、どうした?」
ランスが声をかけた。
生徒会長のロバートが困ったように話してくれた。
「今年の花の女神はこの4年生のノンナなのですが、付き添いが決まらなくて。
一度は決まったのですが、貴族の方達から降りると言われてしまい……」
「何でそんなに難航してるんだ?」とアンドレアス。
「すいません、僕の力不足で……」
「いえ、私が平民だからです! 会長のせいじゃありません!!」
ノンナがそう言って号泣する。
ロバートはノンナを他の女子役員に任せるとこちらに来た。
「確かにノンナが平民出身なのでそれへの反発もあるでしょう。
しかし平民だけで花の女神と付き添いを固めるのも……問題ですよね。
そこで個別に様々な方にお願いし、6人決まったんですが、貴族の方2名から付き添いを降りると連絡があり……。同じ学年の高位貴族令嬢から何か言われてしまったようです。もう心当たりの声をかけられる方もいず……」
約束したのに断るなんて……。
「私やりましょうか?」
思わず言ってしまっていた。
「ドレスも去年の白いのをまた着るつもりだったし」
「いいんですか!! ありがとうございます!!」
「私もやるわ!」
アリスが言って、みんなが驚いた!!
「白いドレスなら持っているし、葉の冠も友達に借りられるから!」
ロバートはかなり焦って、アンドレアスを見た。
「いいんでしょうか?」
アンドレアスが頷いた。
「アリスの意思を尊重するよ」
私とアリスは見合って頷いた。
「……ありがとうございます!! ノンナ! 付き添い決まったよ!!」
ロバートがうれしそうに大きな声で言った。
読んで下さりありがとうございます。
ストックが少しできたので、今日は午後投稿します。
これからもよろしくお願いします。