71 心の痛み
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
今は魔法学校の2年生。14歳です。
どうぞよろしくお願いします。
「メインの色を赤にしようかと思っているの」
「うん、いいと思う! ライトの瞳の色だね!」と私。
「そうね。赤一色だと強いから、白とか銀とかうまく組み合わせるとセレナに似合いそう!」
オードリーがいいアドバイスをしている。
うんうん。いいね。
「ネモはどうするの?」
セレナに聞かれてちょっと困りながら答える。
「うーん、花祭りっぽくないんだよね……」
オードリーが笑いながら言う。
「確かに! ウォロの色だと銀と黒だもんね!
でも、白っぽい銀とかならいいんじゃない? 花で色を足せるし!」
「あ、なら、去年の白いドレスに花とか飾り付けてもいいかな。
かなり特徴あるデザインなので、花祭りぐらいしか着る機会ないんだよね……。
去年の緑のドレスと大きな花の飾りもとても素敵だったよね! よく似あっててかわいかった!」
女子で盛り上がっているとエドワードが急に会話に入ってきた。
「そういえば、ネモ4月誕生日だよな!
お祝いとかしないのか?」
「オードリーは3月、私とウォロは4月だよ。去年は入学したばかりだったから特にお祝いしなかったけど、今年は花祭りの後に何かしらお祝いしようか! とは話してる」
「5月にセレナとライトのお祝いの会を考えてるんだけど、そこで一緒にやらない?」
「……婚約のお祝いだよね? それだけお祝いしてあげたいな。
そういや、みんなの誕生日知らないや、エドワードはいつ?」
「……7月。ティエルノは2月だ。セレナも7月。ライトは……?」
「ライトは10月よ」とセレナが教えてくれる。
「オードリーとティエルノが一番お姉さんとお兄さんだね!」
私の言葉に「そういう言い方やめろ!」とエドワードが言った。
「なんで?」
「その、同じ学年に年上年下はないからだ!」
エドワードが言いきる。
うーん? そうか?
「じゃあさ、ちょうど真ん中あたりで2-1寮の全体誕生会やろうぜ!
6月あたりが真ん中か?」
ティエルノが言った。
「あ、それ面白いかも!
みんなでおいしいもの食べてお祝いするのいいな!」
私が言うとみんな笑った。
「おいしいものって……、ネモは本当に子どもみたい!」
オードリーが私の頭をなでなでした。
「えー? でも、花祭りがあって、ライトとセレナの婚約のお祝いがあって、寮のお誕生会があって、楽しいことが続くね!
それで剣術大会か! まあいい流れじゃない?」
みんなには言わなかったけれど、6月あたりにジュンとミクラの赤ちゃんも生まれる予定だし。
楽しみ~♪
◇ ◇ ◇
2年生の日々はなんだか過ぎるのが早い。
あっという間に1週間が過ぎた。
オードリーと私は初めての休みの日に花祭りのドレスの準備を始めた。
それからもう週の半ば、だいぶ花祭りのことがいろいろ話題になってきている。
昼休みにオードリーとウォロと食堂で昼食を食べている時にウォロから急に提案された。
前に12歳の時にプレゼントしたドレスを直したらどうかと。
青と銀だったよね。
あー、でもあれ、正式な謁見式用のだったからちょっと動きにくいんだよね……。
「素敵なんだけど、ダンスには向かないデザインかな」
「うん、自分もそう思う。でも背も伸びてもう着られないだろ?
この前、母からあのドレスをどう直すか連絡があって、王国ではダンスをすることが多いからと伝えたんだ。
そうしたら、大使館に届いたって連絡が……。オードリーの靴とかもダイゴから届いてるって」
「わ、予定通り! ダイゴ様、さすがだわ! 今度の休みに取りに行こう!
その時に私のドレスも受け取りに寄ってくれる?」
先週の休みの日、私が去年のドレスを作ったお店に白いなんちゃってギリシア風ドレスの直しをお願いする時にオードリーは銀色のドレスを頼んだのだ。
私は背が少ししか伸びていなかったので丈はそのままで良かったけれど、その分の栄養が横にいったようで胸とお尻の部分を少し出してもらうことになったのだ。
決して太ったわけではない。
うん、たぶん第2次性徴ってやつだ。
「もしかして帝国は私のサイズを細かく把握しているのか?」
あれっ? と思った私はそう呟いた。
ウォロがその呟きに答えてくれた。
「大使館に行くと毎回測ってるでしょ?」
大使やお医者さんとは話しするけどさ。
その時になんか計測器みたいなの持たされたわ。あれ、魔道具だったのか?
「あれか! 血圧とか測ってるのかと思ったよ」
「けつ……何?」
ウォロに不思議そうな顔をされたので、ウォロの耳に口を寄せて囁いた。
「前世の時の健康診断的なもの」
ウォロが笑った。
「今日の放課後は聖魔法の授業よね! アルテイシアに気をつけてね!」
食堂を出てオードリーと別れる。
私達はこれから午後、剣の授業があり、放課後が聖魔法の特別授業。
急いで寮に戻り、着替えて準備をして、剣術の実習場に向かった。
エドワードとティエルノはもう先に練習を始めていた。
気合入ってるなー。
まあ、今年は1、3年から全力で挑まれ、作戦立てたりしてくるだろう。
私は剣術の先生に呼ばれた。
例の長剣に光魔法を纏わせたときのことを聞かれる。
実際にやってみろと長剣を渡されたので、光魔法を纏わせてみた。
「おお、本当にできるんだな。話を聞いた時には信じられなかったが!!」
先生が驚いている。
「光魔法だけは思念化と物に入れ込むということをすごく練習したので、できるんだと思います。
他の魔法はよくわかりません……」
正直に言った。
「ああ、それはこれから習うことだから気にするな。
これができるなら先のことを考えて長剣も練習した方が良さそうだな……。
大変だけど、長剣の全体練習には参加しろ。
その後の自由練習の時は二刀流の方を練習できるか?」
「はい、大丈夫です!」
「そうか、ネモの体格なら細身の長剣の方がいいだろう……、これ振ってみろ」
細身の木剣を渡される。
うん、ちゃんと振れるし、持った感じのバランスもいいみたい。
「良さそうだな。頑張れよ!」
「はい、ありがとうございます!」
ウォロのところに戻ると長剣の木剣を見て「長剣に戻るの?」と聞かれた。
「全体練習は長剣に参加することになったよ。自由の時は二刀流の方やる」
「一緒に練習できるの楽しみだな」
「うん!」
ま、体力的にはかなりきついんだけど、ね。
エドワードとティエルノとダリルに歓迎される。
「歓迎してくれるのはうれしいけど、みんなとやるのは体力的にきついし、みんなの練習にならないから……。同じくらいの体格の子と組もうかな」
私はぐるっと見回した。
私と同じで長剣の全体練習だけ参加らしい黒髪の子がいた。背も同じくらいで、木剣も細身な感じ。
確か4寮の子だ。
えーと、名前わからん。
私はその男子に近づいて声をかけた。
「長剣の全体練習だけ参加するの?
私もそうなんだ! 体格似ているから、一緒に組まない?」
その男子はびっくりしたように私を見た。
「あ……、いいけど。ネモ、だよな?」
「うん、ネモです。よろしく。
ごめん、2-4寮なのは覚えているんだけど、名前教えてくれる?」
「あ、うん。ミカ。ミカ・トゥールだよ」
「ミカ。よろしくね!」
「うん。でも、俺でいいの? 俺、平民だよ」
「なんも問題ないけど。一緒に頑張ろうね!」
「……やっぱ変わってるね」
「そう?」
「うん、よろしくネモ」
がっちり握手した。
「で、魔王に挨拶した方がいいかな?」
「うん?」
指差された方を見たら、ウォロがこちらをじっと見ている。
「……お願いできるかな?」
「了解!」
ミカが苦笑しながら言った。
ミカは学校に入学して初めて剣術を習ったそうで、とてもきれいな構え方をする。
動きも悪くない。
私と一緒で体力というか筋力というか、そういうとこだね。
自由練習も一緒にやろうということになり、ミカの木剣を見せてもらった。
片刃の細見だけど長めの剣だった。日本刀に近い。
「へー、細身だから実戦だと突き刺すことも得意そうだね!」
私の言葉にびっくりする。
「女子なのに剣見て『突き刺す』とか、そんなのわかんの?」
「えっ? 女子も男子も関係なくない? じゃあ素振りしよ」
素振りを始めると先生が見に来てくれた。
「お、ここはなかなかいいペアになりそうじゃないか?」
「体力なしペアですけどね」
ミカが自虐的に言う。
「体力は難ですけど、この学年で勝ち抜きしたら私達、けっこういいとこ行くと思うけど」
私が言うと先生が頷く。
「ネモの言う通り。自分の利点を生かすことを考えろ」
ミカの素振りや構えを重点的に見てくれて、先生が立ち去った。
「……さっきのいいとこって、どういうこと?」
「あ、長剣しかしてない子達って、私達みたいな変則的な剣術にけっこう弱いのよ。対応できないの。
それに比べて私達は長剣もやってるから、相手の動きけっこう読めるんだよね!」
「そうなの?」
「うん! 今度一緒に練習しよう! そうするとわかると思うよ」
剣の授業の後の聖魔法か……。時間割がそうだから仕方ないけど、ちょっと体力的に辛い……。
教室について椅子に座るとウォロが「光魔法かけるか?」と聞いてくる。
「私、そんなに疲れた顔してる?」
「いや、そこまでじゃないけど。辛いのかなって」
「……じゃあ、腕と手だけかけてもらってもいい? やっぱり握力がきつい。
ウォロは大丈夫?」
「……実は自分も握力はちょっと……」
私達は笑ってお互いの手を取り光魔法をかけ合った。
「……今日は口でやってくれないの?」
あ、夏休みの時か!
「学校ではね……無理かな」
その時、レイモンドとアルテイシアが教室に入ってきた。
「こんにちは」
私はふたりに挨拶した。
レイモンドはお辞儀をし、アルテイシアはプイッとした。
あー、なんだとう?!
いや、相手の土俵に立つのはやめよう。
うん。
アリスとカトレア先生、ギーマ先生、クラウス先生も来た。
去年の私達への説明や教科書を渡すのをカトレア先生がアルテイシアにしている。
私達はそれぞれ取り組んでいた課題をギーマ先生とクラウス先生に見てもらう。
「ネモの光魔法、面白いな」
クラウス先生が私の電撃を見て言った。
「これ医療系にも使えるんじゃないかと思うんですけど……」
「医療?」
「はい、心臓に異常が起きて正しく動かに時って、心臓にショックを与えて再度動くようにする治療があるんですけど……、今は物理的に押すとか叩くだと思います」
「その時にこれをするのか?!」
「はい。できないかなと思うんですけど」
「あー、なるほどなあ。今度医者の友人に会う時にでも聞いてみよう」
アルテイシアへの説明が終わり、みんなで自己紹介を交えながら雑談をする。
アリスと私が姉妹、レイモンドとアルテイシアが兄妹と聖魔法持ちだねという話になり、兄弟で持つことは珍しいということを聞いた。
確かにクラウス先生の弟のランスは持ってない。
「へー、珍しいんだ、一緒だね!」
私はレイモンドとアルテイシアに話しかけた。
「違うわ! 私達兄妹はふたりとも正妻の子だもの。愛人の子と一緒にしないで!」
アルテイシアが冷たく返事した。
あー、そういう感じなのね……。
アリスとウォロがムッとしている。
私はふたりに微笑んで『気にしてないよ』と目で伝える。
授業が終わり、レイモンドとすぐに出て行くかと思ったアルテイシアが私に近付いてきた。
ウォロが間に入ろうとする。
「ウォロ様、今度私に聖魔法教えて下さらないかしら?
このクラスで一番上手なのがウォロ様とお聞きしました」
アルテイシアがウォロに話しかけてきたのでふたりでびっくりする。
私に何か文句言ってくるかと思ってたから。
しかも、アルテイシアがさらに「お願いですわ!」と言いながらウォロの手を取ろうとして、私は胸が痛んだ。
えっ?
あれ?
ウォロが嫌そうにアルテイシアの手を払って掴ませない。
私は複雑な気持ちになった。
なんだ、この痛みは、……嫉妬って奴?
「失礼する。ネモ行こう」
ウォロが私の肩を抱いて促すので、頷いて一緒に教室を出た。
ぼーっとしている私を見てウォロが心配そうに言った。
「どうした? 大丈夫か?」
「うん、大丈夫……」
校舎を出るともう夕暮れ時だった。庭の道を寮に向かって歩く。
「今日、ライトが料理作るって言ってたよな」
「うん」
「……ネモ? 本当にどうした?」
ウォロが立ち止まる。
私は元気なく言った。
「嫌だった。心が痛かった……」
「えっ?」
「アルテイシアがウォロの手を握ろうとした時、すごく嫌で、心がギュッとした……。
そんなの、なんだか嫌なのに……」
「ネモ?」
私はウォロに抱きついた。
「オードリーやセレナとウォロがダンスしたって、今までそんなこと思わなかったのに……。
なんでアルテイシアがウォロの手を取ろうとした時、心が痛くなったんだろう……」
ウォロがぎゅっと抱きしめてくれて安心する。
「そうなんだ。自分はうれしいけど……。ネモ、いつもネモを見ている自分の気持ちわかったんだ」
「ウォロの気持ち?」
はっ、ミカと話している時、エドワードと一緒にいた時、アポロやランスにからかわれたりした時……、ウォロいつもちょっと怒ったり心配したりして見てたっけ?!
「ウォロ、いつもこんな気持ちだったのか?!」
「ネモ、わかるの遅すぎ!」
「あー、わかった。ごめん……」
「ネモを独占したい、自分のものにしたいっていう気持ち、わかってくれた?」
「……うん、前よりわかるような気がする。私もそう思っちゃったから……」
読んで下さりありがとうございます。
1月31日時点で12歳の子が入学テスト(2月1日)を受けられるので、2月生まれが学年の中で一番早く誕生日を迎えることになります。
これからもよろしくお願いします。




