69 マリアの卒業
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めているのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
1月最後の週はウォロに見張られてるみたいにして過ごした。
学校結界の魔道具は遠隔で発動させることができるようにされていて、手動スイッチより遠隔の方が優先されるように改竄されていたということだ。
だから、その遠隔操作のための調整のおかげで、マッちゃんと結界を気にせず話ができたらしい。
でも、改竄って、そんなことできるのか?
ウォロによると作った人より強い力があればできるそう。
だから前に危ない魔道具の処分をウォロがクラウス先生にお願いしてたけど、それは、より強い魔力を流してショートさせて分解するという流れらしい。
結界の魔道具もカトレア先生とウォロの聖魔法でショートさせたんだし、そういうことか。
その強い力の人が悪いことを考えれば、その魔道具のプログラムを破壊するのではなくて乗っ取り書き換えの改竄もできるわけだ。
なるほど……。
Xはすごく強い力のある人?
そんな希少条件でも見つからないんだから、いったいどういうことなんだろう?
ズールが捕まったので、私は学校からの外出がウォロと一緒ならOKとなった。
ウォロの怒りも治まったように見えるが、忘れてはくれないようだ……。
2月1日の入学試験も無事に終わり、最初の休みの日。
1-1寮のみんなと孤児院に行くことにした。
セレナとライトが子ども達に会って謝りたいというし、子ども達も心配してただろうしね。
まだXのことがあるのでジュンとミクラの所に行くのはやめておく。
もう知り合いだとばれてるかもしれないが、Xの狙いがよくわからないので、しばらくは気をつけた方がいいだろう。
孤児院も午前中にみんなで挨拶に行き、子ども達と少し話すぐらいで今回は切り上げた。
次回はボランティアとしてゆっくり来られるといいな。
その後はみんなと別行動で、私はウォロと大使館に行くことにした。
その前にどこか寄りたいところがないかウォロが聞いてくれたので本屋に行きたいと答えた。
セレナお勧めの恋愛小説と魔法陣の本が欲しいなと思って。
せっかく古代文字が読めるのだから、魔法陣のことをちゃんと勉強してみようと思ったのだ。
ウォルフライト王国では主流ではないが、ミーア帝国ではまあまあ研究されている分野らしい。
古代魔法のコーナーで探して、良さそうと手に取る本の何冊かはウォロがもう持っていると言われる。 そうか、では超初歩的な本でウォロが持ってない本を選ぼう。
探しているとウォロがこれがわかりやすいとお勧めしてくれたので、それを持って恋愛小説のコーナーに行った。セレナお勧めの小説はすぐ見つかった。やはり人気があるらしい。
どちらも読むのが楽しみだ。
この後は大使館で大使に挨拶して(ズールの件でしばらく外出できなかったし)、ゆっくり過ごそうと言われる。したいことがあるそうだ。
なんだろ? 魔道具作りかな?
ここのところ、私を見張る(?)のに忙しかったもんね。
ちょうど本も買ったことだし、そばで本読んでりゃいいか。
久しぶりの大使館。
ウォロは工具とかも置かせてもらっているため、自室のように使わせてもらっている客間がある。
その部屋に入った。
ウォロが窓の方へ行くので、私は靴を脱いでベッドに上がり本を読もうと座った。
ウォロがカーテンを閉めたのでびっくりした。
「あれ、魔道具作るんじゃないの?」
ウォロは何も答えずこちらに来るとベッドに腰かけた。
「あのさ、服脱がせていい?」
一瞬何を言ってるのか意味がわからなかった。
「え?」
「だから、脱がせたことないから、脱がせていい?」
「は?」
どういうことだ?
「着せられるのは恥ずかしいって言ってたけど、脱がされるのはしたことないからと言ってたから……。してみよう」
「な、なんで?! 恥ずかしいに決まってるじゃん! どー考えても恥ずかしいでしょ!」
私は少し赤くなりながら言ったのだが、ウォロの方が真っ赤になっていることに気が付いた。
「……ウォロは脱がしてみたいの?」
小さな声で確認するように聞いてみると頷く。
マジですか……。
また4年生ズに何か言われたのかと一瞬思ったが、脱ぐとか着せるという話はこの前の時に私とした話だから……。
「……脱がせるだけなら、いいかな……」
あー、何でいいって言っちゃってんだ!!
確かに学校ではそんなことできないから、ここでというのはわかるけど、だからと言って私が嫌がればしないはずで、でも、ウォロはしたいんだよね?
ブラウスの上のボタンをふたつ外して、面倒になったのか下からめくり上げられそうになり、あわてて手を掴んで止めた。
「なんかそれは脱がすのと違う気がする!」
「最終的に脱いでれば同じ」
「最終的って何? ちょっと待って」
「わかった、ちゃんと脱がすから」
押し倒されて太腿のあたりに座られて身動き取れない。
ボタンを全部外されていく。下着があるとはいえ、恥ずかしい……。
前をはだけさせられてしまい、私は両手のひらをウォロの方に向けてとても頼りなく目や胸のあたりを漂わせ隠そうとする。
「本当に恥ずかしいのわかったから!!」
両手を掴まれ、広げるように押さえ込まれた。
私の顔や身体がさらに熱くなった感じがした。たぶん真っ赤になってるんだろう。
顔を背けて目をつぶつた。
あ、あれ?
何も起こらないので目を開けてみたら、ウォロが少し困ったような顔で見降ろしていた。
「ごめん、いろいろわかった……」
手を離し、ブラウスの前を戻しボタンをはめてくれ、私の横にごろんと横になった。
「……わかったとは?」
私はウォロの方を向いて聞いた。
「ネモを脱がして押さえつけたら、ネモが自分のものになったような気がして、すごく興奮したっていうか、気持ち良かった……。でも、ネモは嫌なんだもんな……」
「別に嫌では……、恥ずかしいのと、大好きなウォロでも押さえつけられて逃げられないようにされたのは嫌っていうか怖いっていうか……。その怖いも何されるかわからないの怖いで、嫌だではないんだけど……」
「わからないから怖いなら、説明すれば大丈夫?」
「うーん? どうなんだろ? よくわからないよ……」
「少しずつ慣れればってこと?」
「うーん、ん、まあ、そうなのかな?」
「わかった……」
ぎゅっと抱き寄せられた。
抱きつくのは恥ずかしくないんだけどな。温かくて気持ちいいし。
ウォロ眠そう。
疲れてるんだよ、きっと。
「このまま少し寝ていい?」
ウォロが言ってくれてほっとした。
こちらから言おうか迷っていたから。
「うん、おやすみ」
私もそのまま目を閉じた。
ふたりでぐっすり寝てしまい、私達が昼食に降りてこないのを心配した大使館のメイドに昼過ぎに起こされた。
ちゃんと服着てて良かった……。
◇ ◇ ◇
2月末から期末試験があり、3月中旬の終業式の前々日に5年生の卒業式があった。
マリアは無事に文官試験に合格し、王城の文官見習として4月から登城することが決まり、1-1寮のみんなで相談して、卒業式に花束とハンカチを贈った。
マリアはとても喜んでくれて、卒業式後のパーティーにこの花束から花をいくつか身につけて出るから絶対にパーティーに来てくれと言った。
夕方の卒業パーティーに行ってみる。在校生は制服参加なので楽だ!
マリアは青いドレスを着ていて、花束から黄色と青の花を選んで髪飾りにつけてくれていた。
「マリア、卒業おめでとう! すごくきれい!」
私はマリアのドレス姿にうっとりして言った。
「卒業しちゃうけど、王都に王城にいるし、例の件も王城の方で何か情報があるか気をつけておくからね! ネモも気をつけるのよ!」
「はい、今度は休みの日に外で会いましょう! 楽しみです!」
「そうすると、ウォロも一緒ね!」
マリアは楽しそうに笑った。
本当はジョシュア兄様も来たがっていたんだけど……。
お父様がなかなか王都から離れられず(アリシア夫人や屋敷の問題もあり)、ゆえにジョシュア兄様がダナンから離れられないということになる。
今度外で会う時にジョシュア兄様も一緒に行けたらいいんだけど。
終業式を迎え、学年の結果が出た。
ウォロとエドワードは結局3学期にエドワードが単独1位を取ったことで、学年でもふたりで総合1位になった。どんだけお互い負けず嫌いなんだろう!
まあそうやって競い合えるライバルがいるというのはいいことだよね!
学年3位はライト、4位はセレナと私。6位はティエルノ、7位がオードリーだった。
4年生の方もアンドレアスがダントツで総合1位。ランスが2位。アポロが6位か7位当たりで、アリスは3学期にかなり頑張り、何とか学年成績を10位にまで上げたと聞いた。
クラウス先生はそのまま聖魔法と魔道具の教師として学校に残ることになった。
今までは魔法研究所からの出向扱いだったけれど、正式に3年間の約束で学校に異動が決まったのだそう。
本当に先生になった!
ズールはXに会ったことがないということがわかった。
夏、ズールが手配犯となり、私に接触するため辺境伯爵家の庭師になったり、学校への侵入を試みるために下見をしていたりした時に、突然ズール宛に協力を申し出る手紙が届き、やり取りが始まったのだそう。
ということはやはりズール以前に正規品ではない魔道具でミーア帝国とウォルフライト王国を騒がせていた謎の職人ということだ。そう考えると、目的は私ではなく、学校やそれぞれの国に恨みがある人なのかも?
春休みに入り、エドワード、ティエルノ、セレナ、ライトはそれぞれ一度帰省した。
オードリーは大使館に親である公爵夫妻が訪ねて来るそうで大使館に行くことにした。
そうそう花祭りのドレスについても考えておこう! とオードリーとセレナとは約束してある。
マリアの制服は学校の洗濯場から私宛に届けられた。
卒業生が制服を譲りたい在校生を指名して預けると、洗濯してボタンなど確認してその在校生に届けてくれるサービスがあるんだってさ!
いいアイデアだよね!
私達はクラウス先生に誘われていたこともあり、寮にそのまま残り、魔道具の作業を手伝うことになっている。
で、寮に私とウォロだけ残るのを問題視した学校長から、私はカトレア先生の隣の部屋で夜は過ごすようにと命じられた。
ウォロはかなり残念がっていたけれど、仕方ない。
逆にふたりで寮で過ごすのが許されてたら、学校としての在り方が疑われるよ!
でも、野営実習では逆の意味で私はエドワードと組まされたけどな! たぶんあれも陛下や学校長の指示だろ!!
そんなことから陛下と学校長は、心を許してはいけない相手だと私は未だに思っているけどな!
夜は教職員の寮の部屋と風呂を使わせてもらい、朝は食堂でウォロと待ち合わせ、クラウス先生やカトレア先生と聖魔法や魔道具の作業をしたり、夏の遺跡の話をしたり、ウォロとマッちゃんに魔法陣についてわからないところを教えてもらったりして忙しくしているうちに春休みは終わった。
ひとつ、私は気になったことがあった。
クラウス先生とウォロとで例の2つの魔道具をショートさせ分解して処分したのだが……。
万全を期してふたりで協力して魔力を流しショートさせたのだ。
それができるなら、書き換えとか改竄もふたりとかいれば、単純に力が倍になるわけで、大きな力になるのでは?
するとXがひとりという説が怪しくなる。
最後にプログラムを書き換えるXの他に聖魔法持ちの協力者がいたら……。
読んで下さりありがとうございます。
先の話がだいぶ見えてきて、あ、ここでこれ書いときたいな、触れておきたいなということを朝から書き足していて、いつもより投稿遅れました……。
これからもよろしくお願いします。




