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66 結界が解けて

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。


 マリアが私の前に光の壁を張ってくれた。

 これで水の防御壁と光の壁の2重の防御が完成。

 ライトも水の防御壁を展開させていた。


 風魔法で小さな竜巻をたくさん作ってライトの水魔法の防御壁を襲う。

 これで防御壁は相殺できるはず。

 やはりライトにダメージが行くことを考えると大きな攻撃はできない……。

 

 ズールがにやりと笑う。

「だいぶ遠慮しているようで……。舐められたものですね、ライト。やりなさい!」


 ライトがアイスファイアの防御壁を展開する。

 あ、この小さい水球のびりびり攻撃は届かないな……。

 うー。

 その時、上級生の中に本物の長剣を持っている人がいることに気が付いた。

「その長剣貸して!」

 私のお願いに持って来てくれる。

「ネモ?」

 マリアの訝しげな声。

「ライトに近づいてセレナのこと伝えられれば……」

「接近戦は無謀よ! 防具も付けてない、あっちにはズールもいるし!」

「でも、剣で魔法を斬れれば、もう少し近づける!」


 私は光魔法を長剣に纏わせた。

「水球を防具代わりに使うよ! あっちの防御壁、炎で攻撃して弱めて!」

 マリアが慌てて大きな火球を作り始めた。

「一気に近づく!」

 私の言葉に火球を送り出し、ストーンバレットを打ち込んでくれた。

 ストーンバレットの後ろから走りだす。

 ズールが自分が攻撃されると思ったのか自分の周囲に土の防御壁を張った。


 私は一気にライトとの距離を詰め、防御壁を失って慌てたライトが放った風魔法を剣で斬ってできた隙間を、水球の攻撃でこじ開け、身体をねじ込んだ。

 身体に小さな風の刃がいくつか当たる感覚がしたが、なんとかライトの所にたどり着いた。

「ライト、セレナは王城で保護した! ズールはまだ知らないけど、保護してるから! 逃げて大丈夫だから!」

 それだけ小さな声で言って、素早く離れた。


 ライトがびっくりした顔をしている。

 なんだ他に何かあるのか?

 

『学校に到着したが、結界で入れない!』

 マッちゃんの声。

『ネモ、無理するな!』

 それはウォロの言葉?

『儂の言葉じゃ! 右頬が切れておるぞ!』

 あわてて右手の甲で頬をぬぐうとぬるりとして、血が付いた。

「あ、左耳を庇ったからか……」

 風魔法を斬って抜ける時、左耳の耳飾りを傷つけまいと意識して、左側を庇ったんだよな……。


「ネモ!! ごめん!!」

 ライトが悲痛な声で叫ぶ。

 そんなのいいのに。


 ズールが私にストーンバレットを飛ばしてきた。

 やば、そっちを気にしてなかった。

 水の防御壁が私の前に立ち上がり、礫をギリギリで止めてくれた。

「ライト?」

 ライトが私を守ってくれた。

「セレナは本当に保護されたんだよね!」

「うん、ウォロから連絡あった。ランスやクラウス先生も一緒だから、魔道具つけられてるとかもないはず!」

「うん、信じる!」

 

 ズールが何か手に持ち上に掲げて叫ぶ。

「ライト、裏切るのか! セレナがどうなっても……」

 その時、急にあたりが明るくなり風が吹き始めた。


「結界が解けたー!」

 私は歓声をあげた。

 ズールが慌てている。ライトが風魔法でズールを突き飛ばす。

 手から何かが地面に転がった。

 私は風魔法でそれをこちらに拾い上げた。

 手に取ってみると、ただの壊れた灯りの魔道具だった。

『壊れておるな?』

 マッちゃんの声。

「灯りの道具だし、壊れてるって」

 ライトに言うとライトが怒りをにじませてズールに向き直る。

「その魔道具を発動させればセレナを傷つけることができると言われて脅されてたんだ!!」

 ズール、ブラフかましてたんか?!

 

 その時、すごい火球がズールめがけて飛んできて、私はあわててズールに大量のアイスファイアをかけた。

「ネモ?」

 ライトが驚いている。

「ズールが死んだら、魔道具の謎が途絶える! 殺しちゃダメ!」

『ズールは殺すな。魔道具の謎解きのために! とネモが言っておるぞ!』

 ありがとマッちゃん!

 

 私のアイスファイアでも火球のすべてを相殺できなかったようで、ズールの両手がやけどで赤くなって苦しんでのたうちまわっている。

 すごい殺気を感じて振り返るとウォロがいた。

 やっぱり、あの火球ウォロのか……。


 すごい力で捕まれ、すごい勢いで右頬に光魔法をかけられる。

「ウォロ……」

 ウォロがすごく怒っているのでなんと声をかけていいのかわからない。

「バカ、バカネモ!」

 治療しながら言う言葉ではない気がするけど、ウォロの気持ちはわかる。

 私とウォロが逆だったら、私もウォロが傷つくのは絶対に見たくない……。

「ごめん……、ウォロ」

「……いつもそうだよ。ネモは! 本当にバカなの? なんでこんな無理するの?!」

 

 横目でズールを確認すると、警備局の人やギーマ先生に取り押さえられていた。

 捕まって良かった。

「あ、セレナは?」

 私の言葉に頬の傷を確認していたウォロがまたブチ切れた。

「いいかげんにしろ!」

 ウォロの左手に力が込められ、あ、闇魔法かけてる?

「中和するなよ!」 

 ウォロが怒ってる……。

 私は何もできずに身体が重くなり、睡魔に引きずり込まれるように寝てしまった。




   ◇ ◇ ◇




 気が付いたら寮の私の部屋で寝ていた。

 横を観たらウォロがむすっとした顔でベッドのそばに座っていた。

 ドアが閉められてる。

 あわてて起き上がろうとして、身体がスースーすることに気が付いた。

 下着しか着てない!

 なんで?!

 また布団に潜り込んだ私を見てウォロが言った。

「身体の右側に傷がたくさんあって、それも治療したから」


 あ、そうか。右頬だけじゃなく、腕とかもひりひりするところあったわ。

 制服も擦れたり切れてるとこあったし。

「……ありがとう、ウォロ。で、その……ドアは……」

「何?」

「ドアは、寮のルールで……」

「じゃあ、ちゃんと服着て!」

「はい……」

 正論ですね。

 えっと、服を取りに行きたいのですが……。

 ウォロはそこにいるのかな?!

「何?」

「えっと、服を取りに布団を出ると、その……」

「見るなってこと?」

「いや……」

 そうか、もう治療で見られてるんだ。ならいいか。

 私は思い切って布団から出てクローゼットに向かった。

 シャツとズボンを慌てて取り出し、急いでシャツを羽織ろうとするとウォロに止められた。

「治したとこ、ちゃんと確認して」

「いいよ、寒いし……」

 ベッドまで戻されて座らされた。とりあえずシャツは腕を通さず羽織っていた。

 暖房は軽くついているけど、下着だけじゃ肌寒い……。

 すぐ前に椅子を移動させてウォロが座って向き合い、右頬に触りながら説明してくれる。

「右頬が一番傷が深かった。周囲にも擦り傷がたくさんできてた。でもすぐ治療できたから、きれいに治って良かった。

 それから首のとこ、細かい擦り傷がたくさんできてた。

 右上腕、服のおかげでそこまで傷はなかったけど、2本切り傷になってた。

 右手の手の甲と指、小さな傷がたくさん」

 だんだん触ってる場所が移動していき、説明してくれるが、もう傷はきれいに消えている。

(頬と首は見えんかったけど、見えないと言える感じじゃなかった……)


「右足も制服のおかげで切り傷が3本ぐらいで済んだ。

 右の脛に打ち身2か所。

 膝ついたからか両膝に打ち身。

 左太腿に打ち身、ここにあった、何か当たったんじゃない? 

 それから 左の肩に切り傷1本。左耳を庇おうとしたんでしょ」

 だんだん左側になってきたけど……、これでおしまいかな?


 ウォロの手が左頬に戻り「何か言うことは?」と聞かれた。


「治してくれてありがとう。……それとごめんなさい」

「なんに対してのごめんなさい?」

「……ウォロに辛い思いをさせた。

 私だったら、ウォロが自分のいないところで大怪我したりしたら……」

 そう考えただけで涙が滲んだ。

「ウォロが大怪我したら、嫌だ……。なのに、私は怪我して……。

 治すのには怪我見つけないとだし、見つけたら見つけたで、こんな怪我してって思うだろうし……。

 ごめん、ごめんなさい……」

 熱い涙が両目から零れ落ちた。鼻水も出そう。

「……うん、わかってくれたならいいけど。

 自分のこと、もっと大切にして。痕が残っちゃう怪我も、あるんだし」

 ウォロが私の左の手のひらを撫でて見ながらぽつりぽつりという感じでしゃべる。

 うん、そこは傷が残っているから……。


「うん、ごめん」

「……本当に、戻ってきても結界で学校に入れなくなってるし……。

 もうどうしたらいいか……。ネモが顔に怪我したとマッちゃんに言われた時の絶望感、わかる? 

 本当にズールを殺してやろうと思った」

 私は頷いた。

 何もできないというのは私も一番嫌いな状態だ。


 鼻をすすってぶるっと震えた私を見て「ごめん、服着て」とウォロが言って手を袖に通すのを手伝ってボタンをするのも手伝ってくれようとする。

 急に恥ずかしくなり赤くなりながら「ボタンは自分でできるよ!」と言うと「前にもこんな事あったな」とウォロが笑った。

 あ、ありましたね。

 あれは……。

「変だよね。ウォロに服着させられる方が恥ずかしいなんて、さ」

「うん、普通脱がされる方が恥ずかしいんじゃないの?」

「脱がされたことないし。今回だって気が付いたら脱いでる状態だったし……。

 うん? ウォロが治療したということはウォロが脱がした?」

「脱がせるのはカトレア先生とオードリーが手伝ってくれたけど、治療は自分がしたいと言ったから、ふたりきりにして、ドア閉めてくれた」

「えっ?」

 いいのかそれ?

「婚約者だからいいんじゃないかって、カトレア先生の判断で。

 それに風呂でネモは自分の裸見ているし、お互い様だろ?」


 それはお互い様というのだろうか?!

 服を着終え、リビングに出るならと室内用の上着を着た。


 ライトとセレナはどうなったんだろう。

 ズールは魔道具のこと何か話しているんだろうか?

読んで下さりありがとうございます。

午後投稿する予定です。

これからもよろしくお願いします。

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