65 ズールと謎の魔道具職人
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
クラウス先生の魔道具の登録申請が無事に通り、ギーマ先生が国の警備局と協力して学校周辺を重点的に捜索に回っている。
魔道具の登録申請は書類を提出なんだけど、あれ、ウォロ、ネックレスくれた時、出来上がりをすぐくれたよね。あれ、その後に申請出してたみたい。申請通る前に発動してたら大騒ぎになるとこだったんじゃない?!
ま、無事に過ぎたから良かったけどさ。
その後、ウォロが持ち帰ってきたふたつの魔道具はやはりズールの使用した魔道具と同じ職人の手になる物と確認できたがそれ以上はわからず……。
正規品ではない魔道具の方にも同じ職人の物が見つかったが、まだ捕まったことがないということで情報もなく行き詰った。
うーん。彼(彼女かもしれんか?)の狙いは何なのだろう?
何故、ミーア帝国風のデザインにするのかな?
帝国に恨みがあるとか? 実際、ウォルフライト王国ではミーア帝国の物と考えてしまっていたわけだし……。
または帝国と王国を仲違いさせたいとか?
それにズールの目的とどうつながるのだろう?
1月の最後の休みの日。
孤児院のボランティアにエドワード、ティエルノ、セレナ、ライトとボランティアに参加のみんなが出かけた。
私はオードリーと留守番。
ウォロ、ランス、クラウス先生は魔法研究所へ行き、その後、王城の警備局に寄るそうだ。
その王城にはアンドレアス、アポロ、アリスが出かけた。
アリスは王妃様とお茶だそう。
アンドレアスとアポロは警備局の方に魔道具とズールについての新しい情報がないか調べに行くと。
2月には入学テストもあるし、兄弟が受験する人は励ましに家に戻ったり、特に5年生は就職や卒業後のことなどで外出している人が多かった。
私とオードリーは図書館で勉強していたが、カトレア先生が探しに来た。
何やら慌てている。
孤児院から子ども数人と庭園に散歩に行ったセレナとライトがいなくなったというのだ。
子ども達が泣いていて保護されたとのこと。男の人がふたりを連れて行ったと話しているという。
ズールがライトにまた接触しようとしたのか?!
王城の方は警備が厳重だからこそ、ギーマ先生はほとんど捜索していない地域では?
とりあえずボランティアのみんなは孤児院で待機して、エドワードとティエルノが王城に向かいアンドレアス達と合流したそう。
何が起きているんだろう?
ウォロがアンドレアス達と合流すれば、何か伝えてもらえるかも。
カトレア先生によるとギーマ先生も王城へ向かったという。
孤児院や教会は王城に近いエリアだもんね。
私とオードリーはカトレア先生と学校長の部屋へ向かった。
今日は学校長が在校だったのは幸い。
移動中にマッちゃんから伝言が入る。
『ライトとセレナ、子ども達や周囲の人間に危害を加えると脅されて付いて行かざるえない状況だったらしいことがわかった。引き続き探す。そっちも気をつけて!』
私はカトレア先生とオードリーにも伝えた。
途中、マリアに出会いこれまでの話を伝える。
ズールは何を企んでいるのか?
狙いは私だとすると、学校に……。
あれ、今、王城に強い生徒ほぼ集まってない?
休みの日だから先生も少ないし。
魔道具持ってるギーマ先生も王城に行ったし……。
嫌な感じがする……。
学校長に会って、カトレア先生が報告し始めた時、爆発音が遠くから聞こえた。
学校長の部屋にオーサム先生が飛び込んできた。
「学長! 王城で爆発があったようです!」
学校長はカトレア先生を見た。
「とりあえず、学内の生徒を集めて安全を確保しましょう。
もし避難するにしても、しばらく動けないにしても、食堂がベストでしょう。
マリア、ネモ、学内に呼びかけをお願いするわ! オードリーは私を手伝って!」
私はマリアについて学校長室の隣の部屋に入った。
「ここは?」
「学校中に声を届けられる場所と言ったらいいかしら?
緊急の時のね」
マリアは部屋の魔道具を起動させた。
「緊急連絡、緊急連絡。
王城で爆発がありました。学内に残っている学生と職員は食堂に集合してください。
これは緊急避難です。速やかに安全を確保しながら、食堂へ集合して下さい」
窓から外を見ると、小走りで食堂の方へ向かう生徒や職員の姿が見えた。
「これで学内には声は届いているはずだけど……」
不安げなマリアに声をかける。
「うん、食堂の方へみんな向かい始めたよ!」
『王城でセレナを保護した。爆発はセレナが魔法で起こしたもの。王城に目を引き付けるための策だったようだ』
マッちゃんの伝言に驚く。
セレナは保護、ライトは?
マリアに伝えると「えっ? 王城に引き付ける策? 違う場所……」と言って私を見た。
「本当に狙われてるのって……」
慌ててまた魔道具を起動させるマリア。
「緊急連絡、緊急連絡。
王城の爆発はそちらに目を向けさせるための策だったようです。
警備が手薄になった学校が狙われている可能性があります!
学生、職員は速やかに安全を確保しながら、食堂へ避難して下さい!!」
「さっ! 私達も急いでいくわよ!」
マリアが私の手を取って走り出す。
私も周囲に気を配りながら走り出した。
食堂に向かう途中で、学校の空気感が変わり始めていることに気が付く。
「マリア! なんか空が見えない! 風がない?!」
「学校の結界が発動したのかも?!」
食堂に駆け込む。
私達が一番最後だったみたい。
50人ほどの学生、先生が15人ぐらい、他の職員や従者やメイドが30名ほどいる。シーラも避難して来ててほっとする。
「カトレア先生! この結界は学校が?!」
私の言葉にカトレア先生は首を振った。
「残念ながら、学校の結界が乗っ取られてるみたい。今、取り消そうとしているけれど、できない」
その言葉に女子生徒から小さな悲鳴が上がる。
「大丈夫! この食堂は頑丈にできているし、しばらく出られないにしてもここにいれば安全よ!」
マリアが大きな声で集まった人々に話しかけている。
「魔法が得意な人はこちらに集まって! 何かあった時のために役割を決めましょう!」
マッちゃん! ウォロにマリアの考えと現状を伝えて!
『王城に警備を引き付けるのが策なら、本当の狙いは学校、ネモだ。
みんな食堂に避難している。
学校の結界が乗っ取られて閉じ込められている』
カトレア先生とマリアを中心に、食堂の周囲を魔法が得意な生徒や先生達でいつでも防御できるように担当を決める。
それから、ちょうど食堂は学校の端(しかも門や出入り口に近い)なので、結界を破って外に逃げることができないか、学校長とカトレア先生がやってみることになった。
『セレナからなぜ上空に向かって派手な水蒸気爆発を起こしたか話が聞けた。ライトが人質になっていると脅され、時間を指定されやったそうだ』
時間指定で、ライトが人質?!
カトレア先生とマリアに伝えた時、食堂の前の外の広場にふたりの人影が現れた。
「ライト!!」
私は出て行こうとしてマリアとオードリーに捕まえられる。
「ライトがズールに!!」
『ウォロ、ズールとライトが現れた!』
マッちゃんが自主的に知らせてくれた。いっぱいいっぱいだったから助かる。ありがと。
その時、ライトが叫んだ。
「ネモ! ごめん! 捕まっちゃっ……。セレ……を人質……。 ネモ、こっちに来て!」
こちらは室内なので全部は聞き取れないが意味は分かった。
セレナは保護されてるけど、ライトはまだ知らないもんな。
ズールも知らないわけで、ウォロ達が学校に来るまでの時間が稼げれば……。
「まだ、ズールとライトはセレナが保護されたことと、王城の方と連絡が取れていることを知らない。
時間稼ぎましょう。ズールと話をします! その間に結界を!」
私は食堂の玄関に向かい、少しだけ外に出た。
マリアとオードリーが一緒に来てくれた。
「ズール!! 狙いは何? ライトを解放して!」
私は叫んだ。
「どうやら古代魔道具が封印されたままでまだ使えないというのは本当のようだな……。
使えるならば、そこから皆を連れて外へ逃れるはずだしな……」
「そんなことを確認するために?!
狙いはなに? 変な魔道具使って、関係ない人を巻き込んで!!
ライトを放しなさい!」
ライトは泣きそうな顔をしている。
「僕が逃げたらセレナが……」
ああ、時間を稼ぎたいし、ライトを早く安心させたいし、どうしたらいい?!
「ズール! 私がライトと人質代わるから、ライトを解放して!」
「「ネモ!」」
オードリーとマリアがびっくりして私の腕をつかんだ。
「ダメだよ! ネモ!」
オードリーが必死な表情で腕に縋りついてくる。
「オードリー、私だけじゃ古代魔道具は発動できないし、とりあえず、他のみんなを守らないと」
ライトは魔道具で操られているわけではなさそうだ。
こちらに来て、セレナが保護されていることを知れば自由に戦えるだろう。
「ふむ。人質交代か。良かろう。そろそろ王城の方でも学校の異変に気が着くころ……。
ネモ、こちらに来い」
「ライトの解放が先!」
ここはうまくやらないと……。
ふたりで人質になってしまったらシャレにならん。
「ごめんネモ!」
言いながらライトが風魔法で食堂の入り口を襲った。
私が水魔法の防御壁を展開して防ぐ。
「なんで?!」
「どうやら、私の攻撃はネモには弾かれるようなのでな」
ズール、今までの他人の意識を乗っ取っての攻撃がうまくいってないことに気がついて、自分ではなくライトに直接攻撃させることを考えたんだ!
私はマリアとオードリーに囁いた。
「ライトと戦って時間を稼ぐ。結界を解かないとウォロ達も入ってこれない。ライトとの戦いから食堂を守って」
「試合とは違うのよ! ダメージは身体や周囲が直接受けることになる!」
「だから、みんなを守って」
私はマリアとオードリーをぎゅっと抱きしめた。
「みんな大好き。ライトも大切なの」
「……わかった。オードリー、カトレア先生に伝えてきて。結界を早く破って、ウォロや警備局が入れるようにって。私はここでネモを助けながら食堂を守るわ」
オードリーは頷いて食堂の中に入っていった。
オードリーと入れ違いに上級生5人くらいが出てきて「マリア様、手伝えることがあれば指示を!」と言ってくれる。
「では、これから魔法の戦いが始まるから食堂をその攻撃や衝撃から守る防御をお願い。
私はネモを後方から援護します!」
私は食堂から出て、水球を作り出すと電撃を入れて周囲に展開させた。
とりあえず、防御中心に時間を稼ぐ!!
隙を見てズールを攻撃!!
読んで下さりありがとうございます。
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