62 ウォロの帰還(後)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めているのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
ウォロの着替えを脱衣所に用意して、脱いだ服を軽く払ってから畳んで洗濯に出せるようにしておく。
「ネモは服のまま?」
ウォロに言われて笑ってしまう。
「いや、ちゃんと洗えてるか、風呂で寝ちゃわないか見張るくらいで、脱がないけど……。
あー、でも濡れちゃうか……」
でも下着ってわけにもいかないし寒いから、ゆったりした大きめの部屋着の上だけ持って来て着ることにした。
「自分は裸なのに、ネモは……」と言われ「一緒に裸ってわけにはいかないでしょ!」と言い返した。
風呂場に入りシャワーを出してまず浴びてもらう。
「移動中風呂に入れてたの?」
「あんまり。帝国にいた時は入ってたけど」
「そっか」
石鹸を泡立てるのを手伝う。もこもこいっぱい泡が作れた。
自分で洗ってもらいながら、背中だけ洗うの手伝った。背中を流すとか言うんだっけ。
「頭は自分で洗うよね?」
「洗ってくれるの?」
「……洗って欲しいなら洗いますけど」
頭と髪をよく濡らしてもらってから「寒いだろうから湯舟に入っちゃって」と言って浸かってもらいながら、髪の毛を洗って流した。
「洗ってもらうのおもしろい。気持ちいいし」
「それは良かった。うーん、もう一度洗っていい?」
二度洗いしたら、まあ、きれいになったかな。これくらいならいいか。
「最後に全身よくシャワーして出ておいでね!」と声をかけながらシャワーを元の位置に戻したら、くしゃみが出て目をつぶって立ち止まってしまった。
足とか濡れたから冷えたかな?
早く拭いて、私も女子の方で風呂に入ろう。
動き出そうとしたらウォロに捕まえられて湯舟の中に引きずり込まれた。
「ネモ、冷えてる」
湯舟の中で顔をもにゅもにゅ触られる。
いや、ちょっと待て、これは私が服を着ているとはいえ、やばいのでは?!
とりあえず湯舟から出ようともがくと服が濡れて張り付き重いし動きにくい。
「脱いだら?」
「ダメ、脱がない!! ほら温まったらシャワー浴びて出て!」
「まだ温まってない」
押し問答していたら、オードリーが来てくれた。
心配になってオードリーとティエルノが先に戻って来てくれたそう。
「何やってるの?!」
「お風呂に入るの手伝ってたら引きずり込まれた……」
「……風邪ひいちゃうね。着替え持ってきてあげるから、このままこっちのお風呂使わせてもらいなさい。ほら、ウォロはもう出る!!」
「ありがとう、オードリー!」
ウォロを先に出したら、ティエルノに怒られてる声が聞こえて脱衣所を出て行ったようだ。
湯舟から出て、お風呂のお湯を入れ替えるか悩んだが、時間もないので足すことにする。
部屋着の上を脱ぐ。ぐっ、脱ぎにくい……。
絞ってシャワーの水が跳ねないところにポンと投げた。
下着も脱ごうと手を掛けたら「ウォロ! まだ風呂?」と浴室のドアをエドワードに開けられた。
目が合って数秒、エドワードが静かにドアを閉めた。
少し間があってから「開けちゃだめだよ! ネモが入ってるから!」とオードリーの声が聞こえた。
「何でネモがこっちに……」
「ウォロが入るの手伝おうとしたら湯舟に引きずり込まれたんだってさ。
服着てたから濡れちゃって着替え取りに行けなくて困ってたし冷えちゃうから、そのままこっちに入っちゃいなって。
エドワード、開けてないよね?」
「あ、開けてない!!」
「ネモ、ここに着替え置いておくからね!」
「ありがとう、オードリー!」
あわててお礼を伝えた。ドアの前から人の気配が消えた。
あー、全部脱いでなくて良かった……。
下着を脱いで身体と髪を急いで洗って、湯船に入って温まったら急いで出た。
着替えて、脱いだ服と下着も確認! 湯舟の栓も抜いてざっと流しておいた。
何も忘れてないよね!
「こっちの風呂使ってごめんね」
明るく言いながらリビングに出て行って、そのまま自分の部屋に入った。
あー。
この記憶も葬りさる案件だな。
濡れた服と下着を軽く洗って部屋の陰に干してから、室内用上着を羽織ってリビングに出た。
エドワードとセレナが風呂に入っているのかいなかった。
ティエルノやオードリーがウォロにアンの事件のことを話していたよう。ライトもまた聞いてたみたい。
私を見てウォロが「部屋で話そう」と言う。
「早く寝ないと! 寝る仕度してベッドに入って。そうしたら少しおしゃべりつきあうから」
ドア大解放で、ベッドに横になったウォロが笑って言った。
「なんだか夏の時と反対だね」
「あー、そうだね。あの時はウォロが、私が寝るまで抱きしめててくれたっけ」
期待の目をされる。
「ここでは無理。そばにいるだけで我慢してくれ」
手を繋いでベッドのそばの椅子に座った。
「えーとさ、セレナを助けて操られていたアンに腕掴まれたんだって?」
「あ、うん、あの時はやられたと思った」
「いいかげん、自分のこと大切にしてよ……」
「はい、すみません……。ウォロの魔道具のおかげで助かりました。
10倍返しにしとかなくて本当に良かった……。薬の量はよくわからないけど、5倍とか10倍だったら、アン死んじゃうかもしれなかったよ。
あ、ズールの狙いが耳飾りかもしれないこと。まだウォロと分けたことは気が付いてないと思うけど……」
「うん、まだね。どこに潜伏してるか、どうやってこちらを伺ってるのかわからないから気をつけないとな」
このことで魔道具の一部と言われた耳飾りが注目されてしまい、ウォロの耳にも同じような耳飾りがあるとランスとアンドレアスに疑問に思われたようだが、私からは封印やマッちゃんのことなどは何も話していないことを報告した。
「言うならウォロと相談してからと思ったし……」
「うん、わかった。明日話そう。みんなにミーア帝国のことも報告したいし……」
ウォロがうとうとしだした。
「おやすみ……」
部屋の灯りを消してから、ウォロのそばに戻り、そっと頬にキスして部屋を出てドアを閉めた。
振り返ったらエドワードがちょうどリビングから戻って来た。
「さっきはごめん。ウォロだと思って……」と謝ってくれた。
「あ、こちらこそ、お見苦しいものを……、申し訳ない。気にしないで! じゃあ、おやすみ!」
そのままリビングを横断してオードリーの部屋に行き、風呂と着替えのお礼を言った。
「まあ、何かしらやらかしてるかと思ったけど……、お風呂に一緒に入ってるとは想定外でした」
「一緒には入ってないよ!」
「服着てても一緒です。ウォロは裸だったんだし」
そうか、ウォロは裸だった……。
「でも風呂では裸になるの当たり前だよね?」
「お風呂とはいえ女子の前で同年齢の男子が裸になるのはなかなかないけどね。
ネモ、またあんまり深く考えなかったみたいだけど……。
ウォロ以外の男子にお風呂の手伝いとかそんなことしちゃだめだよ!!」
◇ ◇ ◇
始業式が終わり、そのまま授業が始まった。
ウォロの報告は長くなりそうとのことで、放課後に生徒会室に集合することになったので、昼休みはウォロと一緒に、カトレア先生とギーマ先生を訪ねた。
ギーマ先生は戻って来ていて、ズールが本当に見つからないとぼやいていた。
そこでマッちゃんにズールには私の光魔法の残滓が残っていると言われたことを話してみた。
何かズールを追うヒントにならないだろうか?
「ネモの光魔法のエネルギーを感知できる魔道具があれば……ということか?」
ギーマ先生がウォロを見る。
「理論的に作れなくはないけれど……」
ウォロが考えながら答える。
「じゃあ、作ってみてくれ!」
「えっ、自分が?!」
その時、クラウスとカトレア先生が戻ってきた。
私はクラウスにウォロを紹介する。
「君が決勝まで行った火と土の属性持ちで、魔道具を作る1年生か! よろしく」
「よろしくお願いします。クラウス先生の魔道具の本、読んでいます。
魔法研究所にミーア帝国は今回のズールが使用していた魔道具についての調査協力をします。
自分の兄が帝国内で引き続き調べてくれていて、魔道具協会や警護局に協力すると返事をもらってきました」
「アンを操っていた指輪も調べたんだが、辺境伯爵家の使用人のブレスレットと同じ職人の手によるものだった。協力してもらえるとありがたい。……君の左耳の耳飾りも古代の魔道具の一部かい?」
ウォロが頷く。
「クラウス先生は魔道具の専門ですよね。古代魔法にも興味が?」
クラウス先生と呼んでいる。確かにどう呼んだらいいかちょっと迷ってたんだよね。私もそうしようかな。
「私は聖魔法の魔道具についての専門だよ。魔道具つながりで古代の魔道具にも興味はある」
「なるほど。それで耳飾りが古代の魔道具の一部だとわかったんですね……。聖魔法の魔道具の専門なら聖魔法が使える?」
「ああ、使えるよ」
「じゃあ話が早い!
さっきギーマ先生と話をしたんですが、ズールの頭には夏にネモが打ち込んだ光魔法の残滓が残ってます。ネモの光魔法のエネルギーをサーチできるような魔道具を作ろうと話したんですが、作ってギーマ先生に渡してあげて下さい。クラウス先生なら自分が作るより早いでしょうし」
「ネモの光魔法の残滓……。それはいいアイデアかもな。
ネモ、光魔法の思念化を入れた石を持ってないか?」
急に聞かれて思い出す。
「魔石で良ければ入れたものあります。今持ってきますか?」
「これから昼食だろ? 放課後は……」
「放課後は生徒会室に行く予定なんです。なので今取ってきます!」
「ありがとう。では食堂で待ち合わせよう。急がせたお礼にデザートでも奢らせてくれ」
私とウォロは急いで寮に戻り、ふたつの魔石を取り出した。
「ふたつあるんだ」
「うん、それぞれ20回ずつ入れたと思う。懐中灯みたいに使えたら便利だなと思ったんだけど、石だけだとうまく調節して光らせられなくて……」
「ひとつ、もらってもいい?」
「うん、好きな方選んで。残ったの持って行こう」
ウォロは青い魔石の方を選んだ。
緑の方をクラウス先生に持って行って、昼食を食べた後、デザートにミニパフェをご馳走してもらった。
次の授業の教室に向かいながらふと思ったことをウォロに聞いた。
「そういえば、魔道具作ると作った人がわかるとマッちゃんが言ってたけど、私の光魔法を溜めた魔石を使ってクラウス先生が作るとどうなるの?」
「あー、どうなるんだろうな?」
マッちゃんが答えてくれた。
『現代はよくわからないが、古代では最後に魔力を込めたものが作成者になる。
ネモの光魔法サーチのための石だと思う。なので最後にこう動けと魔法の動きを組み立てて実行する者が作成者となる』
「なるほど、私ではなくてクラウス先生とちゃんとわかるということだね!」
読んで下さりありがとうございます。
今日の午後も投稿予定です。
これからもどうぞよろしくお願いします。




