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7 石と遺跡(ダイゴ視点)

今回はダイゴ視点の話です。

ダイゴとウォロのことが少しわかるかなと思います。

ゆっくりと進んでいますが、お付き合いいただけるとうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 ある日、護衛騎士のミクラが2枚の紙を持って僕の部屋にやって来た。

「ダイゴ様、興味がありそうな知らせがあったので持ってきましたよ」

 ミクラに手渡された紙を見て僕は叫んだ。

「すごい! 魔石と聖石が拾える場所?!

 ウォルフライト王国のダナン。鉱山があるミーア寄りの街だな。

 おお、この観光地図、いい出来だな。遺跡もあるのか……。ウォロも好きそうだな」


 僕は石が大好きだ。

 将来は石の研究をしたいと本気で思っている。

 ミーア帝国第2皇子という身分がなければ、すぐにでも放浪の石採集の旅に出たいくらいだ。

 でも、この身分があるから、衣食住には困らず好きなことをできるともいえる。


 ミクラに宰相への確認を取ってもらうと、ウォルフライト王国への観光の許可が出た。

 友好国の隣国とはいえ皇子がホイホイ行ける感じでもないので(いろいろ連絡とか警備とか大変)、今回は母の実家の伯爵家の家名を名乗らせてもらうことにする。


 ミクラとふたりでウォルフライト王国アリステラ辺境伯爵領ダナンの街に入る。

 治安も良く落ち着いている、設備や建物も新しいものが多く、住民の表情も明るい。

 そのうえ観光にも力を入れ始めるとは、アリステラ辺境伯爵とやらはかなりのやり手らしい。


 宿が決まると川原の石拾いスポットに行ってみる。

 おお、小さいものが多いが、様々な石が見つけられ、面白い場所だ。

 夢中になっていると地元の少年に声を掛けられた。


 執事を連れていたことから貴族であろうと推察できたが、なかなか礼儀正しく上品な感じの少年だ。


 名前はネモ、10歳だという。

 弟のウォロと同い年だ。

 近くの遺跡の神殿跡を案内してくれた。

 ウォロと趣味も同じとは!

 これはぜひふたりを引き合わせねば! と強く思い、連絡先を聞いた。


 ミーア帝国に戻り、ウォロにダナンの話をしてやると、やはり遺跡に喰いついてきた。

 ウォロと同い年の地元の少年と友達になったことを話したら「ダイゴ兄さんは変わってるから声をかけやすいんでしょう」と言われた。


 かわいくない奴だ。

 せっかく今度行く時は連れてってやろうと思ったのに。


 ウォロは僕の弟で第3皇子になる。

 僕の母が、ウォロの母の姉である。

 つまり、弟であり、従兄弟でもある。

 だから、他の皇子や皇女より親近感があるし、より身内という気がする。


 僕が石好きなように、ウォロも遺跡が大好きだ。

 最近は古代魔法にも興味を持っている。


 そして、僕と違うところは人と仲良くしないというところか。


 僕はかなり人と打ち解けるのが早いほうだと思う。

 警戒はしているが、近寄らないのではなく、敢えてぐっと寄ってみて大丈夫か確認する感じだ。

 ウォロは警戒したまま、そしてその相手の存在をいつの間にか忘れてしまう感じというか……。

 だから、自分の母親と僕くらいしか親しい人間はいないと思う。

 決まった護衛騎士もいない。

 だから、外出したい時は僕とミクラを誘ってくる。


 すぐにでもダナンを再訪したかったが、学校の試験などもあり年を越してしまった。

 春になって自分で行く先を決められる実習課題が出ると、すぐにウォルフライト王国のダナンの街を選んだ。


 学校としては帝国内を想定していたようだが、遺跡があることや街の様子を説明して、他国の公共施設の見学をしてみたいと言うと許可が出た。


 ウォロも誘うと一緒に来た。

 

 石拾いも楽しそうだったが、一番楽しそうだったのはネモを紹介して遺跡を案内してもらい、帰ってきた時だ。

 あの、ウォロが、自分からネモのそばへ行ったり、馬に一緒に乗りたがったり、したのだ。

 そんなにネモが気に入ったのか! 

 僕が思った通りだ!

 

 遺跡を案内してもらったお礼に夕食に招待した時も、自分から次の日の約束をネモにしていた。

 今までにない姿だ!

 しかし、今日行った同じ遺跡とか、普通嫌がられるぞ。

 でも、ネモはいい子なので一緒に行ってくれるという。


 その日の午後は教会や市場を見学する予定だったので、午前中、僕は違う場所での石採集、ウォロはネモと遺跡に行った。


 ネモとの別れ際「手紙書くから」とウォロが言ったのには驚いた。

 僕に手紙を寄越したことすらないくせに。


 宿に戻り、昼食を食べてから、ダナンの教会に行った。

 ミーアにも教会があるが、神殿と教会があり、皇帝と関係が深い神殿の方が力がある。

 このように大きな教会はないので新鮮な感じがした。


 教会の周辺には薬草園や孤児院、病院などたくさんの施設が造られていた。

 これもアリステラ辺境伯爵が援助してくれているのだという。

 今日は孤児院の方に辺境伯爵令嬢が慰問に来ているという。

 

 どのような令嬢か質問したところ、修道士はちょっと困った顔をした。

「……実は辺境伯爵領に住んでおられる令嬢は、辺境伯爵の愛人のお子様になります。

 そのためか王都での噂はかなりひどいものが多く、令嬢自身もそれをご存じで……。

 あまり人目につくことを好まれないところがあります。

 もし、お見掛けしても声を掛けないでいただけるとありがたいです。

 本当の令嬢はとてもやさしく気さくな方で子ども達にも大変好かれています。

 今日もご自分で焼いたクッキーをたくさん差し入れしてくださったと聞いています」

 

 修道士の話の途中、ウォロが何かに気が付いたように表情を少し変えたのがわかった。

 何に気が付いたんだ?


「令嬢の名前を教えていただけますか?」   

 ウォロが修道士に訊ねた。

「エミリア・ネモフィラ・アリステラ辺境伯爵令嬢です」


 ミーアの皇族は名前がふたつ以上あるのが常識なんだが、ウォルフライト王国の名前にしては長いな。


 僕達は教会の2階から渡り廊下を通って病院の方へ向かった。


 修道士が立ち止まり「こちらから孤児院の庭が見下ろせますよ」と教えてくれた。

 

 子ども達が集まるテーブルの辺りにハロルドがいた。

 驚いてウォロに話しかけようとすると、ウォロが一点を見つめているのに気が付いた。

 視線の先を追うと、庭のベンチに座った金髪の少女が小さな子ども達に囲まれて絵本を読んでいた。

 

 その少女はネモにそっくりだった。


 そういうことか……。

 こいつ、友達どころか、運命の相手を、この僕を、兄を差し置いて、先に見つけやがったな。


 まあ、僕のおかげだな。かわいい弟よ、兄に感謝しろよ。

次からまた主人公エミリア(ネモ)の視点に戻ります。

どうぞよろしくおねがいします。

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