57 魔法対戦大会(後)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけるとうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
ライトも落ち着いたというので、みんなで試合を観に行く。
まだ試合始まってなかった。
変則な対戦についての説明をギーマ先生がしていた。
選手は立ち見なんだけど、試合場のそばから観ることができる。
私はマリアに囁いた。
「マリア、アリスが来ているみたいなんだけど、見つけたら私に教えて」
マリアがびっくりした表情で私を見てから、視線を試合場の方へ戻す。
「見つけてどうするの?」
「アンドレアスとちゃんと話をしてもらいたいんだよね」
「アリスのこと許すわけ?」
「許すというか……、うーん、やられたことは確かに腹が立つし……。でも、今は悪い方へ悪い方へ行きかけてるアリスを引き戻してやり直しさせたい。
彼女にとって楽な事ではないけれど、今までやってきたことに対して向き合って責任取らせたい」
「ネモが、それでいいなら。
アリス、スタッフに紛れてるわよ。いつものではなくどこから手に入れたのか普通っぽい制服着てる。
髪色までは変えられないから、マスクして帽子を被ってるわね」
「えっ? どこ?」
「3時の方角。清掃スタッフの待機場所ね」
マリアが教えてくれたところを見ると、確かに今は清掃中ではないので他の人はマスクを外しているのに、マスクと帽子を被ったままの女子スタッフがいる。背格好的にアリスっぽい。
「よくわかったね」
「関わりたくないから意識しないようにしてたのに、逆に意識してたからね……」
「マリアはアリスが学校に戻ってきたら、嫌?」
マリアが笑みをこぼす。
「ううん。戻って来てくれた方が……いいと思う」
「ありがとう」
笛が鳴り試合が始まった。
ウォロが土の防御壁を展開させ、火球の攻撃を始める。
アンドレアスが風を竜巻のようにして自分の前を行ったり来たりさせ始める。
なるほど、移動させやすい竜巻を防御壁のようにして使うのか!
そして大きめの火球攻撃。
火球がぶつかり合って爆風が起きる。
私はマリアを守る様に抱きついた。
ウォロが土の壁をアンドレアスの方に出現させ竜巻を動けないようにしてストーンバレットを打ち込む。
アンドレアスがすごい暴風を起こしてストーンバレットの威力を弱めた。
ウォロのストーンバレット威力かなりあるんだけど……。
届かない。
アンドレアスが打ち込まれたストーンバレットを利用して風で打ち込んでくる。
私がよくやる相手の土魔法のリサイクル……。風魔法に威力がないとできないんだよね、あれ。
やはり風と火のかなりの使い手だ。
次の対戦相手のランスは水と風。アンドレアスは相性不利だな。
でも、風魔法の力がランスより強ければ、勝つことも不可能じゃない。
ウォロの土壁にストーンバレットがぶつかり止まる。
今のところ、どちらもノーダメージ。
アンドレスの方がちょっと押してるけど、次の試合のことを考えるとあまり長引きたくないだろう。
アンドレアスが火と風を組み合わせて火の竜巻を送り込んでくる。
ぐるぐる不思議な軌道を描きながら土壁にぶつかりさらに変則的な動きをしてウォロの方を襲う。
土壁の隙間から炎風がウォロに向かって吹き出し、ウォロに初めてダメージが入った……。
土壁もぼろぼろ崩れてきてる。
やっぱり4属性だけと限定されると厳しいな。
私は思わず下を向いてしまった。
ライトが「ネモ、見て。ウォロ、笑ってるよ」と言った。
その声にウォロを見ると、確かに笑ってる。
土壁を大きな塊に分け、炎の爆風で持ち上げて炎とともにアンドレアスの陣地に降らせる。
得意な古代魔法をまねた戦法だ!
土塊が大きすぎて風では止められず、アンドレアスが風魔法と火魔法の爆発を利用してその反動で何とか防いだ。
ウォロの防御壁が何もない。強い風魔法がウォロを襲う。
ウォロのダメージが一気に減った。
笛が鳴り、試合終了。
ウォロが負けた。
けど、今はアリスを捕まえないと!
私はダッシュして清掃スタッフのところまで走るとアリスを捕まえる。
帽子を取ると、確かにアリスだった。
「何するのよ!」
「来て!」
「離せ!」
ちゃんと鍛えてるから、力は私の方が強いんだからね!
「アリス! 今のままでいいの! ちゃんとアンドレアスに向き合ってよ!
このままじゃ、時間切れになって戻れなくなるよ!!」
「わかってる! そんなこと、言われなくても!」
「じゃあ、ちゃんと自分で歩きなさいよ!!」
「わ、私は……、だから……」
「ごちゃごちゃ言い訳すんな! 歩け!! 私もウォロのとこ早く行きたいんだから!!」
アリスは最初は抵抗してたが話すうちに自分で歩くようになった。
アンドレアスの所へ連れて行くと「後は任せた!」と引き渡した。
それから急いでウォロの所へ走る。
ぜーぜー。
座り込んでるウォロの周りにはもうエドワードやライトがいて私が反対方向に走って行って行ったのを心配してたみたい。
私もウォロの前に座りこんで向き合う。
「……ごめん、……すぐ、来れなくて」
ウォロより私の方が疲労困憊状態だ。
「……悲しかったけど、マリアに話聞いたから、わかった」
悲しかったんだ!!
「ごめん!」
私はウォロに抱きついた。
その時、歓声が上がった。
何事と見ると、アリスとアンドレアスが抱き合っていた。
あ、ちゃんと話せたんだ。
アンドレアスの気持ちがアリスに伝わったんだな。
「良かった……」
私が呟くと「良くない。また他の人のこと気にしすぎ」とウォロに言われた。
みんな、アンドレアスとアリスの方を見ている。
「こっち見て!」とウォロに言われて向き直ると頭をがばっと抱えられてキスされた。
「!!」
ちょっとふざけんな!
私はウォロの肩や背中をバシバシ叩いた。
どよめきが起こり、ギーマ先生とオーサム先生が走って来るのがちらりと見えた。
学校の人だけじゃない!
陛下や学生の保護者である高位貴族の人たちも多いし、うちのお父様と兄様もいるんだぞ!!
問題ありすぎだろが!!
私が抵抗してる姿を見て、あわててマリアやエドワードが止めに入ってくれて、ウォロが私を解放してくれた……。
私とウォロは控室に連行され、オーサム先生にすごく怒られた。
おかげでランスとアンドレアスの試合、見られなかった……。
すごくぎりぎりの試合でアンドレアスが勝ったことだけ教えてもらえた。
表彰式も見せてもらえず……。
私達を見張っているオーサム先生にも「試合も表彰式も見たかったのに!」と嫌味を言われた。
これはとんでもない罰が用意されるんではないだろうか?!
みんなが控室に戻ってきた。
学校長と陛下と王妃様も来た。
あーあ、何言われるんだ……。
学校長とオーサム先生が話していると、アンドレアスとランスが近寄っていき、何か話している。
陛下と目が合うとウインクされた。
面白がってるな……。
お父様と兄様に合わせる顔がないよ……。
学校長が選手達を労う声かけをしてくれた後、陛下のお言葉があり、私とウォロを残してみんな解散ということになった。
学校長と一緒に陛下と王妃様も控室を出て行ったのでちょっとほっとした。
でも、アンドレアス、ランス、マリア、エドワード、ライトは心配してるのか一緒に残ってくれている。
オーサム先生から学校の風紀を乱して、品位を落としたと言われ、罰を与えることになったと言われた。
謹慎とか?
「生徒会に入り、毎日生徒会室に顔を出すこと」
アンドレアスが急に言った。
「生徒会でお前達を預かって仕事をさせて見張ることになったから。毎日、生徒会室に来いよ!」
ランスも言った。
罰が生徒会活動?!
「という訳だ。学校のために働くように!」とオーサム先生。
「いつまで?」
私が期間を確認すると。
「とりあえず1年生の間はずっと来い」とランスが答えた。
エドワードとアンドレアスが陛下の所に行くので付いてこいと言う。
ランスとライトとマリアも誘われている。
一緒に行くと、食堂の上の階の入ったことのない場所で、客間みたいなところがあった。
陛下と王妃様とアリスと……、お父様と兄様がいた。
部屋に入るなり兄様に「ウォロ、ネモ!」と怖い声で名前を呼ばれた。
マリアが「ネモは抵抗してましたから、許してあげて」と言ってくれ、兄様は何も言わなくなった。
マリア、ありがとう!
アリスが私の前に来ると「……エミリア、ありがとう」と言った。
「私、学校に戻らなくちゃと思いながら、母に相談してもお前は悪くないから事態が好転するまで待つようにとしか言われなくて……。でも、ひとりになっていろいろ考えた時に、客観的に自分をみることができて……。アンドレアスの言ってくれてたことがよくわかった。その時はなんで私が悪いと言うのと怒ったり、話題を変えたくてすり替えたりしてたのにね……。
せめて、アンドレアスの試合を見て、陰からでも応援したいと思って……。メイドに協力してもらって何とか学校に来てスタッフの中に紛れたの。
エミリアがアンドレスのところまで連れて行ってくれなかったら、自分で行く勇気は出なかった。
ありがとう。そして、今までごめんなさい」
「アリス、エミリアじゃなくてネモって呼んで。……姉というよりは、今は新しい友達だと思うから。
私以外にも謝らないといけない人がたくさんいるよね。
ちゃんとみんなに向き合って謝って。そういう姿を見せてくれれば私は、……姉のアリスがしたこと許せるから」
「うん、そうなれるように頑張るわ。お父様、お兄様、今まで我儘ばかり言ってごめんなさい。
私、やり直してみる」
アンドレアスがアリスの手を取って言った。
「生徒会でネモとウォロにしてもらいたいのは、アリスの勉強や魔法の復習に付き合うこと。
マリアも協力してくれるし、私とランスとアポロも手伝うから、よろしく頼む」
「まあ、そういうことなら」
ウォロが答える。
私も頷いた。
「ウォロはまた偉そうだな。これは罰なんだぞ」
ランスが言って、みんな笑った。
読んで下さりありがとうございます。
アリスはいい方向に一歩踏み出せましたが……。
アリシア夫人が黙ってないので……と、今はそんなところを書いています。
これからもどうぞよろしくお願いします。




