57 魔法対戦大会(前)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
剣術大会は全員参加ではないので公開されていないのだが、魔法対戦大会は保護者や来賓が招待される大イベントだ!
お父様に手紙で知らせたら、お父様と兄様が来てくれると返事が来た。
その手紙にアリスのことも書いたのだけれど、アリスは休学して家で過ごしているという。
まだ1学期しか終わっていないし、このまま休学が3ヶ月以上になってしまうと復学しても4年生をやり直しになるだろう。
そうなったら、アリスの性格的に復学はあきらめてしまうだろう。
アンドレアス第1王子の婚約者でもあることから、頑張って今月中には戻って、きちんと卒業して欲しいんだけどな。
あれからアンドレアスと話す機会が多くなり、入学テストの時からの無礼な態度はすまなかったと謝られた。
アリスが嘘をついていたことがはっきりしたが、アリスのことは憎めない、むしろそばにいて彼女が変わる手伝いをしたいと思っていることを話してくれた。
アリス! アンドレアス、いい人じゃん!
『魔法対戦大会、アンドレアス王子も出るし、アリスも見に来ないかな?』
お父様への返事にそう書いてみた。
とうとう、魔法対戦大会の日になった。
魔法実習場の入り口でお父様とジョシュア兄様と合流した。話をしているとマリアがやってきた。
ジョシュア兄様とマリアがにっこり微笑み合う。
「いつもお手紙ありがとうございます」
マリアが兄様を見つめる。
「いえ、こちらこそ。勉学のお邪魔になっていなければいいのですが……」
「邪魔だなんて……。いつもお手紙が届くのを楽しみにしています。ジョシュア様からのお手紙を……」
あら、なんか……。
お父様の腕を取ると「先に席取っておくから後で来てね!」と兄様に声をかけて、移動しする。
「あのふたり、お似合いだよね!」
私がそう言うとお父様は頷いた。
「ジョシュアにもエミリアにも、アリスにも、本当に愛する人と結婚をしてほしいと私は思っているよ」
「アリス、今日は?」
「誘ってはみたが……。アンドレアス様はアリスによく手紙を下さるよ。だからアンドレアス様を応援するというのはいいきっかけになるかと思ったんだが……」
「アンドレアスはアリスのことちゃんと見てくれてるよ。
でも、アリスの方の本心がわからなくて困っているみたい……」
良さそうな席を2席確保することができた。お父様に隣を確保しつつ座っていて頂くことにする。
「楽しめよ!」
選手として控室に向かう私にお父様がそう声をかけて送り出してくれた。
控室に戻るとウォロとマイネ、ライトとエドワードが話していた。
「ネモ、遅かったな」とエドワード。
「父と兄を席まで案内してたので。
今日は陛下も来るんでしょう?」
「ああ、みんなに会うの楽しみにしてたぞ」
陛下が絡むと『楽しみ』の意味がちょっと違う感じに思えてしまう。
20名の選手がそれぞれくじを引く。
1回戦目の対戦表が徐々に埋まっていく。
私は最後の10試合目。対戦相手は3年の女子、ノーラだった。水と土と火の3属性持ち。けっこう強敵じゃない?!
ウォロは2年のレイモンド、属性は水と火。
ふたりとも、聖魔法が使えるが、お互いが了承しないと使用禁止になる。
ウォロもレイモンドも申請しなかったみたい。
エドワードは3年の女子で水と火。
ライトは4年の女子で水と風。
ウォロとエドワードは危なげなく勝利し、ライトはさすがに4年生相手ということで苦戦したが、優勢勝ちとなった。
マリア、アンドレアス、ランスも無事に勝ち上がったが、マイネが5年の男子と当たり、負けてしまった。
10試合目。
相手のノーラが一番得意なのは火らしい。最初から火魔法で攻撃してきたので、アイスファイアの防御壁を張った。
こちらが風魔法と水魔法(予選でティエルノに使った小さな水球戦法)で攻撃すると土壁を展開してきたので、上から水球を落とす。
少しだけどダメージが与えることができた。
相手が使ってないのが水魔法。何をしてくるだろう?
ストーンバレットに火をつけて燃える礫にして攻撃してくる。アイスファイアを通過する時、火は消えるが礫はこちらに向かって来る。
水の防御壁を内側に展開。2重で守ることにする。水の中で止まった礫を凍らせて大きく鋭い角を作ると打ち返した。
鋭く土壁の下の方にめり込む。土壁の下の方に氷と礫が1列に並んだようになり、強めの風魔法を壁の上の方に当てると土壁が折れてノーラの上に倒れこんだ。
相手の土壁を倒しただけだったんだけど、思っていたよりダメージ量を多く与えられ、私の勝ちになった!
水魔法は使ってこなかったな?
もしかしたらこの後の試合を考えて取っておいたのかも?!
それは……くやしいだろうな。
1年生が4人。4年生が3人。5年が3人。合計10人が勝ち進んだ。
うまく1年生の対戦相手が2~3年生に集中したこともあり、1年全員勝ち進んだ!
次は4、5年と当たる確率が高くなるし、同じ1年も嫌だしな。
くじを引く。
うまく1年はばらけた!
でも、ということは4、5年と当たるということなんだけどね。
ウォロ(1年火土) 対 ザイン(5年火土)
ライト(1年水風) 対 シャーリー(4年火風)
エドワード(1年火風) 対 アンドレアス(4年火風)
ランス(4年水風) 対 ハーブ(5年火土)
ネモ(1年水風) 対 マリア(5年火土)
わー。また最後の試合だ。しかも、マリア……。
ウォロは同じ属性同士、こうなると魔力量と技の精度の勝負。
さすがに5年生は強かったけれど、何とか優勢勝ち。
ライトの方が相性有利。氷で防御しつつ水魔法で攻撃し勝利した。
エドワードとアンドレアスは同じ属性、しかも兄弟対決。
アンドレアスの方が技の精度が高く、しかも上位魔法を駆使して勝利。
ランスは氷魔法で防御しつつ水と風魔法をアレンジした魔法で(ライトや私の戦法と考え方は一緒)勝利した。
最後の試合。マリアが聖魔法の使用を申請。私も了承したので聖魔法OKとなる。
マリアは光魔法で防御壁を展開。光の壁?!
そしてそこから火球とストーンバレットのかなり威力ある攻撃を仕掛けてくる。
私は水を風で巻き上げた水竜巻防御壁を展開。
その奥で水球に光魔法の電撃(ずっと練習していたんだよ!)を纏わせて攻撃する。
光魔法なので光の壁をすり抜けることに成功して、少しダメージを与えられた。
その後何とか防御し切って、ほんとぎりぎりの差で優勢勝ちとなった。
マリアに勝てるとは思ってなかったので、うれしかったけれど、本当に疲れた……。
マリアが握手しに来てくれた。
「楽しかったわ。あのびりびりする攻撃、今度教えて!」
「私はもうずっと気が抜けなくて……。しんどかったー!
マリア、強い! 勝てたの信じられない!」
ここで昼休憩となり、2回戦を戦った10名は特別メニューを控室で頂けた。
1年が3人も残っているというかなり番狂わせな結果になっている。
国王陛下と王妃様が選手を労い&応援に来てくれた。
自分の息子ふたりもいるしね。陛下的にはとってもうれしいことなんだろうな。
私とマリアが聖魔法を使った試合をしたのが珍しかったので、次にウォロとネモが当たったら聖魔法OKにするのか? とライトに聞かれた。
「ウォロと私、対称的なんだよ。
4属性も火土 対 水風だし。聖魔法もウォロは闇魔法が得意なのと、私は光魔法の方が使えるし。
どんな感じになるんだろう?
ライトはウォロと当たったら、古代魔法OKにするの?」
そう聞き返すとライトがうーんと考えてから答えてくれた。
「古代魔法、絶対にウォロの方が強いもんな~。
今回はしない。2年になったら挑戦してみたいけどね」
読んで下さりありがとうございます。
魔法対戦始まりましたが、本当にゲームのような試合ですよね。
たぶん野外実習などで少しずつ実戦の場が出てくるんじゃないかと考えてます。
実戦だと実はネモのような防御がしっかりしている方が強いんじゃないかと思うのですが……。
これからもよろしくお願いします。