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6 大好きな場所

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。

今回は転生物に挑戦しています。

ブックマークと評価ありがとうございます!

うれしいです!


まだ主人公が11歳……、学校に入学する前にいろいろしておきたいこともあり、ゆっくりと書き進めていますので、お付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 レストランの個室が空いていたのでそこを使わせてもらうことになり、私はちょっとほっとした。

 男の子の格好をしているとはいえ、知っている人が見たら、悪役令嬢の噂がある私が男装して異国の男の人達と食事しているなんて……噂のネタ以外の何物でもない。


 食事の時はさすがに髪を入れ込んでいる帽子を取らないといけないし……。

 ウォルフライト王国、ミーア帝国ともに男性で長髪の人も少なくないので(この場にいる人だとミクラとウォロが長髪で後ろに結んでいる)、シンプルに後ろでひとつ結びくらいならそう珍しくないのだが、さすがに令嬢としての私を知っている人が、男装とはいえ長髪の私を見たら気が付くだろう。


 ミーア帝国の文化や習慣の話は面白かった。

 ウォルフライト王国と魔法の系統は同じような感じらしいが、古代魔法について研究している人もいるそう。

 古代魔法は初めて聞いたかも。

 古代の遺跡である神殿と密接な関係があるらしく、ウォロが詳しいとダイゴが教えてくれた。

 そう言われて私がウォロを見ると苦笑された。


「古代魔法と神殿についてはそんな簡単には説明できるものじゃなくて……。

 明日、もう一度神殿跡に行けたら説明しやすいんだけど……」

「明日……。んー、午前中なら大丈夫!」

 私が答えるとウォロが頷き、ダイゴを見た。


「わかった。

 明日の午前中はもうひとつの石拾いの場所に行くつもりだから、そこで待ち合わせしよう」

 ダイゴが予定を教えてくれた。

「もうひとつの場所という以前川だったところですね」

「うん、この地図の……、ここ」

 ダイゴが地図を広げると指差した。


「大丈夫、わかります! 

 ではそこに何時ごろ?」

「朝、8時には宿を出ようと思う」

「早いですね!! 

 では8時半頃、行ってみます」


 食事が終わり、私とハロルドはお礼を言って、家に帰ろうとした。


「ここから家は近いのか?」

 ウォロに聞かれる。

「……はい、街の中心部に戻るよりかは近いです」

「そうか……」

 また馬に乗りたかったのかな?


「明日も、馬に乗りますか?」

 ウォロの表情が明るくなる。

 そんなに楽しかったのかふたり乗り。

「では明日も馬で行きますね! また明日!」


 家に着くとハロルドに「とても楽しそうでしたね」と言われた。


「うん、楽しかった。

 ダナンだと噂のことを言ってくる人はほとんどいないけど、みんな知らないわけではないので……。

 こんな風に自分の身分とかそういうのに関係なく友達になれたのは初めてで、とても楽しかった」

 私はにっこりと笑顔で言葉を続けた。

「明日も楽しみ!」

「そうですね。

 そして午後はいつもの教会ですね」

「うん、教会に行くのも楽しみ。

 子ども達に会えるし!」

 明日は楽しいことがいっぱいだ。



 次の日の朝、仕度をして8時過ぎにハロルドと家を出た。

 遺跡でお茶をしようと水筒とお菓子も用意した。

 ウォロ、喜んでくれるといいな!


 昔、川だった石拾いの場所に着くと、もうダイゴとミクラが大きな石をハンマーで割ったりしていて、そのそばでウォロも石拾いをしていた。


「おはようございます!」

 馬の上から大きな声であいさつすると、ダイゴが手を挙げて応えてくれた。

 ウォロがこちらに走ってくるとそのまま私の馬に乗ってきた。

「え、このまま行くの?」

 ダイゴが行っていいというように、手で払うような仕草をしている。


「ハロルド、このまま遺跡まで。よろしく!」

 私が声をかけ、遺跡に出発した。


 昨日と同じように、馬を遺跡前で預け、歩いて遺跡に入るとウォロは遺跡の真ん中に向かって速足で歩いて行く。

 私は小走りでついていく。

 ウォロが私をちらりと見てはっとすると立ち止まり「ごめん、速すぎたな」と言った。

「大丈夫だよ。ウォロのペースで。ちゃんとついていくから!」

 ウォロが左手を伸ばしてきて私の右手を握った。

「こうすればいい」

 そうして歩き出す。

 

 うん? 

 私はあわてて歩き出して考える。


 あ、私のペースに合わせてくれようとしてるのかな?

 それにしてはぐいぐい引っ張るな?

 自分のペースだけど、私のことを置いて行かないように気を使ってくれたのか?


 そんなことを考えながら、さっきのペースよりかはちょっと遅めの速足で歩いて行くと真ん中に到着。


 ウォロが床を見て歩き、しゃがみこんだ。

 私も一緒にしゃがむ。

 手をつないだままだから……。

 

 そのままウォロが床の上にフーッと息をかけた。砂ぼこりが向こう側へと舞い上がる。

「見て。ここに魔法陣の跡が微かだけど残ってる」

 

 ウォロの右手が指差すところを見ると、何やら古代の文字がうっすらと部分的に残っている。


「まちね……のじゅ? マチネって名前かな?」

 私が言うとウォロが驚いて私を見た。

「古代文字が読めるの?!」


 ん? 

 あれ、読める。

 あ、この文字! 

 転生の間のステータスの文字だ!

 だから、読めるんだ!!

 読めることは……、ばらしちゃいけなかったのでは?!


 冷や汗が出てきた。

「えっと……、なんとなく、ま、ち、ねかな? と。

 まさか合ってたの?」

「うん、これは古代の大魔法使いサンマチネスの術式だと思う」

「……へー、サンマチネス、初めて聞いた」

「うん、古代魔法は魔法陣を描いて術式を書きこむ方法で、その土地周辺に結界を張ったり、攻撃を弾き返したり、離れた所にもうひとつ対になる魔法陣を書いて転移、ということができたそう。

 昔は今より、魔獣がいる場所も人里に近かったし、ドラゴンもいたそうだし。

 街や神殿を守るために書かれていたんじゃないかな」


 確かに、昔話には魔獣やドラゴンが良く出てくるけれど、今は魔獣でも珍しく、ドラゴンが出たなんて聞いたことない。

 森や山に深く入れば魔獣には出会うくらいらしく、前世の感覚だと、魔獣ってよりは凶暴な野生動物って感覚に近い。


「じゃあ、ここは森と川の自然豊かな土地で魔獣やドラゴンがいて……。

 ご先祖様達が切り開いて神殿を作り、街を守ったという感じなのかな?」

「そうだね。きっとそんな歴史なんだと思う。

 ウォルフライトでは教会派が主流なんだろ?」

「うん、生まれて名前を届けるのも教会だし、魔法の属性を調べたりするのも教会が中心だよ」

「たぶん教義的には似ていると思うけれど、儀式や術式や解釈が神殿と教会では違ってくるんだろうな」

 ウォロが自分で言ったことに対して、うんうんと頷いている。

 どうやら、私が古代文字を読めたのは偶然と思ってもらえたようだ!


 ウォロがフフッっと笑った。

「何?」

 私の問いに笑顔で答えてくれる。

「ネモといるととても楽しい。

 こんなに楽しいのは今までにない」

「……私も楽しいよ。

 私、ダイゴとウォロが初めてできた同じくらいの歳の友達なんだ。

 とても楽しいよ!

 いろいろ教えてくれてありがとう」

 私も笑顔で答えた。


 他の跡も探して歩き、いろいろ教えてもらってから、遺跡の横の草原でお菓子を食べることにした。


 並んで座り、水筒から温かいお茶をカップに注いで渡し、カバンを広げてお菓子を取りやすくした。

「どうぞ好きなの多べて!」

 私はハロルドのお茶も入れてあげてから、自分のお茶を入れ、お菓子をひとつ取った。

「これはクッキー。小麦粉と卵と砂糖とバターを混ぜて焼いたもの。

 パンより甘くてサクサクしてる。

 ウォルフライト王国ではよく食べられてるお菓子だよ」

「ミーアにも似たようなお菓子はある。形が違うかな?」

 ウォロがひとつ手に取り眺めながら言った。

 私とハロルドが食べ出すとウォロも口にした。


 もしかして、帝国で身分が高い人なのかもと、ふいに思い至った。

 昨日のレストランでもミクラが先に食べ始めてから、ダイゴとウォロが食べ始めるということが多く見られたから。


「うん、美味しい」

 ウォロが喜んでくれた。

 今日の午後、教会に持って行くために、昨日の午前中にたくさん焼いたのだ。良かった。


「どこのお店の物?」と聞かれ、深く考えずに「作ったんだよ」と答えてしまった。


「ネモが作ったの? 上手だね」

 そう言われて、自分が男の子のふりをしていたことを思い出す。

 また冷や汗。

「……メイドが料理上手で、時々だけど手伝うんだ!!」

 あ、メイドが作ったと言えば良かった……。

 あー!!


 冷や汗のお茶タイムが終わり、馬に乗ってダイゴ達の所に戻る。


「おかえりー」と迎えてくれたダイゴが大興奮で見つけた石を見せてくれる。

 それは握りこぶしぐらいの紫色の魔石と、結晶が複数確認できる大きめの聖石だった。


「すごいね! こんな大きいの良く見つけたね!」

「そうだろう!! ここは本当に素晴らしい!!」

 ダイゴは大喜びだ。

 良かった。私もうれしい。


 私とハロルドは午後に用事があるため、そこで別れを告げ、家に帰ることにした。

 ダイゴ達も明日にはミーア帝国に帰国するという。

「ウォロ、一日早いけれど誕生日おめでとう! 

 それではまたお会いできる時を楽しみにしています」

「また来るときは知らせるよ」とダイゴ。

「ありがとう、手紙書くから」とウォロ。


「残りの滞在も楽しんでね!!」

 私は馬の上からも手を振って名残惜しく別れた。


 帰宅すると昼食を急いで食べ、いつもの女の子の服に着替える。

 教会へ慰問にいくので、普通の外出より動きやすい軽装な服にするが、それでも、教会の孤児院の子達からすれば豪華に見えるんだろうな……。


 馬車でハロルドとジュンと一緒に教会に行き、神官やシスター達に挨拶して、庭のテーブルにクッキーや飲み物を並べる許可を得る。

 準備をしていると小さな子ども達が寄ってくる。


「エミリアさま、ごほんよんで!」

 アンナが私のスカートをチョンチョンと引っ張った。

 アンナは3歳。

 前回来た時は一番小さい子だったけれど、先日、赤ちゃんが引き取られたそうで、一番小さいではなくなった。

 シスター達が赤ちゃんの世話で大変だったので、寂しかったのかもしれない。


「お嬢様、ここはいいですよ」

 ジュンが言ってくれたので、私はアンナと手をつないでベンチに向かう。

 座ると膝の上にアンナがちょこんと座ってくるので、アンナの膝の上に絵本を広げ、アンナの頭のすぐ横から覗き込む。


 あ、この感じ。ウォロも馬に乗った時にこんな感じがしたのかな?

 思わず微笑んでしまう。


「エミリアさま?」

 アンナに声を掛けられ、あわてて絵本の物語を読み始める。

 隣に座る子、ベンチの後ろから覗き込む子。

 たちまち私の周りに子ども達が集まってくる。


 私は母から読んでもらったことを思い出しながら、感情をこめ、時には声色を工夫しながら読み進める。

 子ども達がどんどん物語に引き込まれていることが伝わってくる。


 前世もそうだったな。

 ボランティアサークルに所属していたので、養護施設や福祉施設のイベントに参加することがよくあり、こうやって絵本を読んだり、人形劇をしたりしたっけ。


 私は温かい日差しをたくさんの子ども達と浴びながら、幸せだなと思った。


 ここは私の大好きな場所。

 そして、今日、遺跡の神殿跡も私の大好きな場所になったことに気が付いた。

読んで下さりありがとうございます。

次も頑張ります!

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