49 女子会
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「魔法ならネモも一緒にできるよね」
ライトの言葉に頷く。
確かに、ドレス姿でもできます。
「いいよ、何するの?」
「氷魔法の炎が出せるんだって?」
ランスが言ってくる。ライトが話したのか。
あれからふたりで練習してライトも出せるようになっている。
「うん、出せるけど」
「見せてくれる?」
私は頷いて手のひらの上に青い炎を出現させる。
炎なのに周囲の熱を奪って冷える不思議な炎だ。
「出すだけ?」
「今のところこんなぐらいかな」
私はそう言いながら風魔法と組み合わせて炎の渦のようにする。
「こうすれば攻撃に使えるんじゃないかとライトとやってみたんだけど、いまいち使いきれてなくて……」
「なるほど。自分を包み込むくらい大きくとかはできそう?」
「大きくかあ」
「一緒にやってみようよ」とライトが言うので、ふたりで目の前の地面に青い炎を出現させる。
ふたりで協力したからか、人がひとり入れそうなくらいの大きさになった。
「おー、できんじゃん」
ランスがキョロキョロ周囲を見てオードリーに声をかける。
「君、火魔法できるよね! ちょっと来て! ライトがあの中に入ったら、火魔法ぶつけてくれない」
「えっ、大丈夫なの?」
私はびっくりして言った。
「大丈夫、外の火魔法の熱を優先的に奪うから」
ライトが思い切って青い炎の中に飛び込んだと同時にオードリーがファイアボールをぶつけた。
ファイアボールが吸収されるように消えて、青い炎が小さくなる。
ライトは?
ライトは小さくなった青い炎からぴょんと出てきて「大丈夫だ!」と言った。
「うん、攻撃より防御的な方に使えると思う。
手に出した時ひんやりするけどそこまで体温は奪われないだろ。だから自分の防御壁に使える」
確かにそうだ!
「壁みたいに展開しても火魔法を防げるよ。水魔法を使うよりその後の状態もいいので、試合の時なども場が荒れなくていいと思う」
ライトと顔を見合わせた。そんな使い方、思いつきもしなかった。
「ランス、教えてくれてありがとう」
「いや、1年でアイスファイア出せるなんてすごいな。
俺は2年の終わりくらいに出せるようになったよ。アリスは3年生になってからだな」
アイスファイアって言うんだ。
アリスの魔法の話は初めて聞く。聖魔法の授業でもあんまりやって見せないんだよね、アリス。
「いつもライトとネモで魔法の練習してるのか?」
「そうだよ。使い方とかよく相談しあってるし。相談したことを授業で試したりしてるよね」
私が答えるとライトも頷く。
「へー、今度俺も混ぜてくれよ。4-1、魔法の話する人いなくてさ」
「なんで? 全属性持ちのアリスがいるじゃん!」
「あー、アリスね。アリスは寮で魔法の話ほとんどしないよ。
なんだろう、自分がどこまでできるのかとか人に知られたくないみたい。
魔法実技も1位じゃないしね」
「そうなんだ! 寮によって違うんだね。1-1はみんなで魔法のコツとか教え合ったりするけどね」
私の言葉に「そういうのいいな、本当」とランスが羨ましそうに言った。
剣の練習してる方を見ると、エドワードとアポロ、ウォロとアンドレアスが打ち合っている。
今夜も野営の練習するんじゃないのか?
疲れちゃうぞ!!
そちらに向かって歩いて行くと、見ているティエルノもすでに汗だくになっている。
交代でやっているんだな。
「今夜、野営するんじゃないの?」
私が心配そうに声をかけるとティエルノがきまり悪そうに答えた。
「あー、もう無理だな、この様子じゃ……」
その時、打ち合いが終り、みんなこちらに戻ってきた。
セレナがメイドに頼んでタオルを用意していて、みんなに配ってくれた。
私はウォロのそばに行って「お疲れ様」と声をかけた。
ウォロにしては珍しく汗をたくさんかいているし、ちょっときつそうな表情をしていた。
「アンドレアス、強いよ。前回勝てたのはネモの応援があったからだな」
「あ、今、応援してなかったから?」
私が笑うと、耳元に口を寄せてきて小さい声で言われた。
「ランスと一緒にいるから気になった」
「ライトもオードリーもいたし。魔法のアドバイスしてくれたんだよ。そんなに変な人ではなさそうだよ」
「誰が変な人だって?」
ランスがいつの間にか後ろにいた……。
結局1-1の男子達は今日の野営練習はなしにしてしっかり休むことにしたそうだ。
うん、それがいいよ。試合の時みたいに寝落ちしちゃうかもしれないし。
4-1の3人が夕食を一緒に食べようと4人に話しかけていた。
私達もと誘われたが、断って部屋に戻った。
セレナが4年生男子を少し怖がっている感じがしたからだ。
セレナの部屋でセレナのメイドのマナやシーラも一緒に食事を楽しんだ。
それから交代でお風呂に入って寝る仕度をして念願のお泊り会だ。
しかし、何をするのだ?
セレナが泊まりに来てと言ってくれたことから始まったけれど、まあ、もっと仲良くなれればいいけど、私もセレナもあんまりおしゃべりな方じゃないし……。
まあ、オードリーがセレナに話しかけて楽しそうにしているからいいか。
ニコニコふたりを見てたら、オードリーが急にこちらを見て言った。
「ネモはウォロともうキスしてるんでしょう?
そういえばキスマーク事件もあったもんね」
葬り去った記憶やらいろいろ思い出してしまい顔がぼっと赤くなったのがわかった。
「あ、あれはウォロのいたずらで!! その……」
「でも、キスぐらいはもうしてるでしょう?」
「……はい、でもいつもしているわけではなく!!」
オードリーがにやりと笑った。
「ネモは嘘つけないねー。全部ばれちゃってるよ!」
「オードリーだってダイゴとデートたくさんしたって言ってたじゃん!」
「私のはデートだけど、ネモとウォロはふたりきりで旅行してたじゃん!
一緒の部屋で寝てたんでしょ!」
セレナがその言葉にびっくりした顔をする。
「ちょっとオードリー! セレナが驚いてるからやめて!」
「こら、白状しろ!」と笑いながらオードリーがセレナを抱き寄せて「セレナだって知りたいもんね」と言った。
セレナも赤くなりながら「知りたいかも……」と言う。
マジですか?! セレナが!?
私がびっくりした顔してたらオードリーに言われた。
「今頃、ウォロだってみんなに質問攻めにされてると思うけど」
「えっ? どういうこと?」
「ウォロとネモがいつも一緒にいるからみんな聞けないんだもん。
ふふふ、こんなチャンス滅多にないからね―」
えっ、ウォロが話しちゃったら明日からどんな顔でみんなと会えばいいのか?
うん、ウォロは言わないよね?
「ウォロってやさしいけど、身体が大きいから抱きしめられたりしたら怖くない?」
セレナが真っ赤になって質問してきた。
えっと、これは答えないと。
「怖くないよ。セレナは男の人怖いの?」
「うーん……。わからない。苦手と言うか、何話していいかわからないし……」
「ライトやティエルノと普通に話してるでしょ。それと変わんないけど」
「ネモ、話がずれてってる! ウォロってネモにいつもやさしいけれど、強引な時とかないの?
ほら、顎をこうとか、壁にドンとか」
オードリーが言いながら私のあごに手を掛けて壁に手をついて顔を寄せたりした。
何やってんだ?
少女マンガか?
セレナが「キャー、小説みたい!」と言うので、この世界だとマンガはないけど恋愛小説があって女子には人気なのか?
今度読ませてもらいたいな。
オードリーの顔が近いのを見たら、ドアに押しつけられたことを思い出してぶわっと顔が赤くなってしまった。
「あ、あるんだ~! なになにどんな状況?!」
「……なんで私ばっかり!!」
「だってねぇ」
オードリーがセレナと目を合わせてから続けて言う。
「ウォロとネモって謎なのよ」
セレナが大きくうなずく。
「謎?」
「ウォロはネモをすごく大切にしてるのはわかるんだけど、変に大胆な時もあれば、何も言わない時もあるし……。
ネモもウォロのこと好きなのはわかるけど、エドワードとか他の男子と仲良すぎじゃない?」
「仲良すぎ? 友達としてだけど?」
「うん、ネモがあんまり男、女ってこだわらないタイプなのはよーくわかってる。けどね、私がウォロだったら、自分の彼女が他の男子とあんな風に仲良くしてるの嫌だと思うけど」
不安だと言ったウォロのことが頭に思い浮かんだ。
あれ、そういうことだったのか?!
「そっか、オードリーありがとう。ちょっとウォロの気持ちわかったわ……」
「わかった? じゃあ、もっとネモからウォロに気持ちを伝えないとね!」
「うん、こうやって!」とオードリーに抱きついた。
オードリーがあわてている。
「私じゃなくて、ウォロにやりなさいよ!」
「先にやってきたのはオードリーじゃない!」
ふたりで大笑いしてからセレナを見た。
オードリーが言った。
「ほら、セレナも悩んでることがあったら、相談乗るよ!」
セレナは特にないと言ったが、私は気になっていることを話してみる気になった。
「私、セレナが今でもエドワード様って呼んでるの、すごく気になるんだけど。
もうエドワードで良くない?」
「あ、なんか……、きっかけを逃しちゃって。
そうね。でも今更なんか難しいっていうか、このままの方が呼びやすいっていうか……」
「そうか……。まあ本人のペースってものもあるか……」
「そうよ、セレナはネモと違って油断しないしね」
オードリーが口を挟んできた。
「……はいはい、どうせ私は男か女かわからない謎の人物ですよ」
「噂の人物とは全くの別物だしね!」
「あはは、そうきたか!!」
「ネモは噂、嫌じゃないの?」
セレナが真剣な顔で私を見て言った。
「嫌じゃないと言えば嘘になるけど。
子どもの頃は嫌だった。でも、今は本当の私を知ってくれているみんながいるから、言わせておけばいーかという気持ちと、自分以外の人を悪く言うことは許せないと思ったりするかな」
「ネモは強いんだね……」
「強いというか、強くならざるを得なかったというか……」
私はにっこり笑った。
「でも、なにくそっていう気持ちの強さってけっこう脆くてさ。
そんな時にウォロと出会えて頼っていいって言ってくれてうれしかった。けど……」
「けど?」とセレナが聞き返す。
「ウォロってしっかりしてそうに見えて、あんまりしっかりしてないのだよ」
「あっそれわかる!! ダイゴ様がすごくぼやいてた!」
オードリーが叫んだ。
「本当にダイゴには婚約する前からずーっとお世話になりっぱなしで……。学校に来てからダイゴの苦労がよくわかったわ……」
読んで下さりありがとうございます。
PV10000を越えました!!
たくさんの人が読みに来てくださってうれしいです。
ありがとうございます。
本当にゆっくり話が進んでいますので、あきれずにお付き合いしていただけたらうれしいです。
これからもどうぞよろしくお願いします。
今日は午後投稿する予定です!