47 新しい噂
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけるとうれしいです。
読みに来てくださる方も増え、とてもうれしく思っています!
どうぞよろしくお願いします。
作文の直しを手伝ってから、ジュースの氷の様子を見に行くとウォロが来た。
「さっきのもしかしてアリスのお母さん?」
私は頷く。
「うん、アリシア夫人、だよ。私に気が付かなかったんだね。
4年ぐらい会ってないし、髪型もいつもと違ってシーラがやってくれたからかな。
会いたくないから、ばれなくて良かった……」
「何したかったんだろ?」
「ウォロのこと上級生だと思ったみたいだね。
エミリアの悪口言いたいだけじゃないの……」
そこへエドワードも来た。
「ネモ、大丈夫か?」
「エドワードはアリシア夫人を知っているの?」
「前に見かけたこと……はある。
アリスと兄様が婚約してからも辺境伯爵夫人は王城に来たことなくて。
今日会って、前に見たことあると驚いたけど」
「今日、エドワード達が慰問に来ていることをわかって見学に来たんだろうね。
アリスが知らせたんじゃない?
幼児部でも何か言ってるのかな……。私のこと気が付かなかったみたいだね、それは良かったんだけど……」
エドワードが様子を見てくると幼児部へ行ってくれた。
「アリスが婚約者から降ろされるかもしれないということを知って、動き出したのかもしれない」
ウォロが考えながら言った。
「何でエドワードに?」
「アンドレアス王子の耳にネモの悪口が入ることを狙ったんでは?」
「まだそんなことしてんのかな~」
エドワードとティエルノがこちらに戻ってきた。
アリシア夫人は幼児部でもみんなを褒めながらエミリアの悪口を言っていたらしい。
みんな意味がわからず黙っていて、途中でオードリーが気が付いて言い返そうとしたけれど、エドワードとティエルノが止めてごまかしたそう。
シスターが戻って来て「急な見学が入り、申し訳ありませんでした」と謝ってくれた。
「シスター、こちらこそ申し訳ありません。あのご婦人、私の身内です」
「えっ?」
「あの悪口言われてたエミリアというのが私です。
たぶん私への嫌がらせに来て、私に気が付かなかったんじゃないかと。
先日の4年生アリスの母で私の義母になります」
「まぁ!」
「ミーア帝国のネモと紹介してもらって助かりました。また何かありましたら、気にせずミーア帝国大使館に連絡してください」
「何したかったんだろうな?」
ティエルノが言うとエドワードが答えた。
「ネモというか、エミリアの新しい噂を流そうとしてるんだろ。
アリスが兄様の婚約者から降ろされるかもしれないからって」
「そんな話があるの?!」
ティエルノが驚いている。
◇ ◇ ◇
エドワードが睨んだ通り、エミリア辺境伯爵令嬢の新たな噂が王都で流れ始めた。
あーあ、実際に流し始めのところを見ちゃったので、もう怒りすらわかない。
何やってんだろうという呆れの感情の方が大きい。
2日後、大使館に1寮のみんなが遊びに来てくれた。
1寮のみんなは怒ってくれたけれど、もう本当に関わりたくない。
ウォルフライト王国では18歳を過ぎないと結婚できない。
でもミーア帝国だと16歳で結婚できる。
魔法学校に結婚してても在学が可能なら、16歳になったらさっさと結婚してミーア帝国民になろうか。
私が結婚しても学校にいられるだろうかと言うと「……ウォルフライト王国の学校だもんな。難しいんじゃないか?」とティエルノに返された。
「そうかあ……」
私ががっかりしてるとウォロが言った。
「今度カトレア先生に相談してみたら?」
「そうだね、無理だと思わず聞いていてもいいか!」
夏休みもあと1週間半ぐらいで終わる。
セレナとお泊り会したいと思っていたことを話すと、やはり王城に泊りに来なよという話になった。
えー、王城かぁ。
するとライトが控えめな感じで意見を言った。
「あのさ、王城で野営ごっこしてみない?
寮で野営用の調理とかしてただろ?
本当に野外で火を焚いたりしてできるのかやってみたいんだけど」
面白そう! キャンプだよね!
「寝るのも外で寝るの?」
私が聞くと「えっ、そこまでは考えてないけど」とライトの返事。
「野営の授業も秋にあるよな。野外で毛布持参で寝るんじゃなかったっけ?」
ティエルノが言った。
「じゃあ、それもやってみようよ。兄様にどんな感じだったか聞いておく」
エドワードが乗り気になったようだ。
「いつ来る?」
エドワードに聞かれてあれっ? と思った。
セレナとのお泊り会だよね?
「セレナとのお泊り会が野営?」
私の質問にティエルノが大笑いした。
「じゃあさ、2泊すればいいじゃん。
1泊は野営体験して、次の1泊、ネモはセレナとオードリーと女子で過ごせばいいんじゃないか?」
それなら、楽しそうかな?
オードリーはうんうんと頷いている。
ウォロは微妙そうな表情だ。
女子で過ごすってことは、もう一方は男子で過ごすってことだもんな。
「まあ、1晩ぐらいならいいか」
ウォロが言ったので決まりになった。
王城の方で確認して用意ができ次第連絡してくれることになった。
次の日、マリアとカトレア先生、ギーマ先生が大使館に来てくれた。
ズールに関する報告と、私の新しい噂を心配して訪ねてきてくれたよう。
ズールは相変わらず見つからないとのこと。全く情報も出て来ないらしい。
噂の内容はもちろん全然嘘であることはわかってくれているのだけれど、噂が流れることで私の所在がはっきりしやすくなるということがあるらしい。
目新しい噂は注目されるし、つまり私がどこにいるか見つかりやすくなる心配があるということだ。
そこまで話したところで、ウォロとギーマ先生は魔道具の話があるとかでウォロの部屋に行ってしまった。
私は孤児院でアリスの母のアリシア夫人が実際に、私であるエミリアの悪口を言っているのを聞いたことを話した。一緒にいたご婦人方や周囲で聞いた人達の話題になり、噂となるのだろうと。
噂はどんどん尾ひれがついて、カトレア先生とマリアが聞いたものでは、新調したドレスが5着に増え、エドワード王子とアンドレアス王子まで籠絡し、同学年の男子達を侍らせている、という話になってきているそうだ。
でも、それってアリシア夫人の狙いとは少しずれてきているのでは?
なんかエミリアが我儘だけどすごい美貌で男の子に人気がある令嬢って感じじゃない?
残念でダメな貴族令嬢あたりが狙いだったんじゃ?
噂が王家の人々の名前にも関わり始めてるので、なんか問題になりそうな気がする。
カトレア先生には在学中に結婚できるか聞いてみた。
「前例もないし、基本学生は寮生活だから、夫婦ってのは考えてないわね。
なんで結婚を急ぐの?」
仕方なく陛下にアンドレアス王子との婚約を考えて欲しいと言われたこと、何度断っても、学校にいる間5年もあるのだから考えて欲しいと言われて、早めにミーア帝国民になっちゃった方がいいかと思ったことも話した。
「……あの国王ならやりかねないわね」
カトレア先生?
「時間をかけても自分の思い通りにするしつこさがあるわ」
カトレア先生がこの国に残る様にとか条件つけられた話にも国王陛下は絡んでるのか?!
たぶん陛下の方が年下だよね。
カトレア先生がそんだけ言うなら、十分用心しないと、だな。
「あなたも大変ねぇ……」
カトレア先生がため息をついて言った。
「はい……。あ、そうだ、秋に野営実習がありますよね。
夏休み中に1寮でやってみようと話しているんですけど、どんな感じなんですか?」
マリアが説明してくれた。
全学年で野営実習はあるのだが、1年は焚火を起こして自炊、毛布で一晩過ごすというのをまず寮のグループでやり、次に2~3人の小グループで同じことをするのだという。
学年が上がる度に、期間が長くなったり、場所が森や山になったりと難易度が上がるらしい。
なるほど、1回でも実際に体験しておくとやはり良さそうだ。
読んで下さりありがとうございます。
夏休みも最後の方になってきました。
もう少しというかしばらく夏休みの話がまだまだ続きます。
今日も午後投稿します。
これからもよろしくお願いします!