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46 久しぶりに孤児院へ

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけるとうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 次の日の午前中、ティエルノがミーア帝国大使館に訪ねてきた。

 明日、都合が合えば久しぶりに孤児院に行かないか? という話だった。

 

 私達は大丈夫なので、クッキーを作っていくことにした。

 ティエルノ達は冷たいジュースとお茶の用意をしてくれることになった。

 大使館から孤児院の方へは連絡を入れてもらい、返事が来るまで待つことになった。


 ティエルノに昨日のその後の様子を聞いた。

「エドワードがなかなか帰って来なくて、一度自分達の部屋に引き上げたんだ。

 夕食の時には戻ってきたけど、すごく考え込んでたよ。何かあったのか?」

 私の方が知りたいから聞いてるんだけど……。


 ティエルノが思い出したようにカバンから本を取り出して私に渡した。

「エドワードから。次のお勧めの歴史本だって!」

「……ありがとう。そう伝えておいて」


 昼食時に孤児院から明日OKの返事が来た。


「じゃあ明日、待ってるね!」

 明日の昼過ぎに4人が大使館に寄ってくれることになった。

 準備しなきゃ。

 

 ティエルノを送り出して、クッキーの種作りをオードリーとした。

 ウォロは魔道具作りをしたいと言って部屋に籠った。

 そういえば、私を保護するというか居所がわかるというかそんなのをもうひとつ作るとか言ってたっけ?

 マッちゃんもいるし、そこまでいいのではと思うけど。

 まだズールも捕まっていないし、まあ、油断はしないようにしないと、だ。


 作ってもどんなものか教えてくれないんだろうなー、きっと。


 夕食時になってもウォロは出て来なかったので、食べやすそうな物を選んで部屋に持って行った。

 作ってるところを見られると落ち着かないと追い出された。


 戻ってオードリーと夕食を食べ、「今度セレナを呼んでお泊り会をしたいね!」と話した。

 するとオードリーが心配そうに言った。

「セレナがこちらに泊るのは難しいのでは?

 王城に私達が行く方が現実的かも。

 でもそうすると、1寮のメンバーでお泊り会ということになっちゃいますね」

 うーん、そうだな。

 王城、王城かぁ。

 あんまり行きたくないなぁ。


 寝る前にウォロの部屋に様子を見に行くと、少し前に出来上がったみたいで、工具を片付けていた。

「できたの?」

「うん」

 見せてくれたのは小さな青い魔石が付いた細い鎖のネックレスだった。

 ペアじゃないということはなにか身を守る系なのか?


 ウォロから一度受け取るが、鎖が短めで自分ではつけにくいからつけてもらうことにした。

 下ろしていた髪を手でつかんで押さえている間に鎖を留めてもらった。

 そのままウォロの方に振り向いて「どう?」と聞く。

 ちょうど首の根元辺りに魔石の位置が来ているので自分では見えない。

「うん、似合ってる」

「ありがとう。で、これはどんな効果が?」

「……それは教えない。ネモは気にしないで普通に過ごして」

 やっぱり教えてくれないか。


「わかった。外したいときはどうしたらいい?」

「外さない。ずっと付けてて。あ、マッちゃん、教えちゃだめだよ!」

 先回りしてマッちゃんに口止めした!

 そうか、マッちゃんに聞くこともできたわけだ。

『面白そうな魔道具だな、効果を見るのが楽しみじゃ!』

 ……楽しみって。私は実験台か!


「明日は外に行くから間に合ってよかった」

 だから急いで作ってたのか!

「ありがとう。

 食事足りた? 何か食べるのなら用意するけど?」

「大丈夫。もう寝る」

「じゃあ、おやすみなさい」

 ウォロが疲れた顔をしていたので、私はウォロの右手を取り手の甲に軽くキスするように唇を当てて光魔法をかけた。

 最近攻撃系ばかり練習していたこともあり、そこまで上手ではないけれど、少しは疲れを癒せるはず。

「ネモの光魔法、やさしくて好きだな」

 ウォロが左手で私の髪を撫でながら呟いた。

 それを聞いて、急に照れてしまい顔が赤くなる。

 あわてて手を離すと「おやすみっ!」と言って部屋から飛び出してしまった。


 次の日、朝クッキーをたくさん切って並べて焼いてをくり返し、私とオードリーは大量のクッキーを作り上げた。

 大使館のみなさんに、孤児院の子ども達に、1寮のみんなにと分けることができるくらいはある!


 包む分は冷ましている間に焼きたてをつまみながらウォロとオードリーと勉強をして過ごすことができた。

 今日は忙しいけれど、明日は剣の練習もしないとな……。


 久しぶりに見る王家の馬車が大使館に到着した。すぐに用意していた大使館の馬車に私達とシーラが乗り込み2台の馬車で孤児院に向かった。


 今回はティエルノがグループ分けを考えてきたという。

 そうか、前は女子、男子で別れたっけ。

「幼児部担当が俺、ライト、セレナ、オードリー、シーラと俺の従者。児童部がエドワード、ネモ、ウォロ、エドワードの従者」

 ま、幼児部の方が大変だから、人数もシーラがいた方がいいと思う。それでいい。

 ジュースを冷やす魔法ができるのもライトと私だから方が効率良い。


 それぞれの場所に行き、手早くテーブルを準備した。

 児童部なので6~11歳の子ども達。

 クッキーと冷たいジュースを飲んでもらって話をしていたら、学校の勉強について聞かれた。

 孤児院で字と計算は教えてもらえるがそれ以外の科目までは手が回らないらしい。

 図書館で歴史の本を借りて独学している男の子がいて、本を手に内容を質問された。

 簡単なことは答えられたが、もっと詳しい人がいるからとエドワードを紹介した。

 話が盛り上がり他の子ども達も寄って来てふたりの話を聞いている。

 

 私はジュースの冷え具合を確かめ、魔法で氷を作り出し追加した。

 それをじっと見ていた女の子が近寄って来て「氷って魔法で出せるの?」と聞いてきた。


「うん、水魔法を工夫すれば氷も出せるようになるよ。やってみたいの?」

 女の子はコクコク頷く。

 水魔法は少し使えるという。

 私は彼女の手のひらの上に氷の欠片を載せる。

「本物のイメージを覚えて。どれくらい冷たいか、どんな感触か、手のひらの上でどんな風に溶けていくか。

 透明でどのように輝いているか……」

 彼女が頷いたので氷を戻し、手をハンカチで拭いてあげた。

 そして彼女の手の下に私の手を差し入れて「さっきの氷が掌に載ってるのをイメージしてみて……」と囁いた。


 周囲の音がすっと聞こえなくなる、彼女の集中が伝わってくる。

「……できた!」

 女の子のうれしそうな声。

 さっきと同じくらいの大きさの氷が手のひらに出現している。

「私が出したんだよね?!」

「うん、そうだよ。私は見ていただけ」

「教えてくれてありがとう! お姉ちゃん!」

 女の子はうれしそうにそう言うとシスターの所へ走って行った。


 ウォロが来て隣に座ると言った。

「ネモ、教えるのうまいね」

「あー、実物があればイメージしやすいけどね。

 でも、魔法学校に入学してくる子達は実物以上のイメージが持てる子達ということだよね。

 やっぱり、貴族の方が周囲に魔法が使える人がいて実際の魔法を見たりすることができるからということもあるのかな?」

「それはあるかもな。でも、まずは実物を覚えて再現するという方法、初心者には悪くないと思うよ」


 シスターと女の子の話を聞いていた男の子が私達の方に来た。

「僕にも魔法教えて下さい。僕、火属性があるって言われたことがあるんだけど、なかなか出せなくて」

「火ならウォロだね」

 私が言うとウォロが「どうしたら?」と聞き返してきた。

 そっか、すぐできた人には練習方法が思いつかないのか?!


「ウォロ、指先に小さい炎出せる?」

 ウォロが右手を出し人差し指の先に炎を出現させた。

「指先の炎、よく見て」

 男の子は真剣な表情で見ている。

「ありがとう」と私が言うとウォロは火を消した。


「じゃあ、手を出して」

 男の子の右手に私も手を添える。

「さっきの指先の炎を自分の指に重ねてイメージしてみて……」

 男の子が自分の指先をじっと見つめると、小さい炎がメラッと揺れるように出現した。

「できた!」

 男の子が興奮するのを抑えるように冷静に声をかける。

「できたね。これを今度は消すよ。消えたところをイメージして」

 男の子が「消える、消える……」とぶつぶつ言う。

 指先の炎が消えた。

「うん、いいね。つけるのも消すのもできた。もう一度やってみよう」

 くり返してみると、もうマスターできたようだ。


「気を付けて使うんだよ。消すまでをちゃんと意識してね」

「うん、ありがとう。これでシスターのお手伝いができる!」

 私は男の子が自分のためではなくてシスターのために使うことを一番に考えていたことがとてもうれしく思えて、ほっこりした。


 その時エドワードが「おい、ウォロ、こっちにきて勉強教えるの手伝え!」と声をかけてきた。

 見ると、日陰にテーブルを追加で出して、勉強をしている子ども達とエドワードがいた。


 わー、なんか新たな展開じゃない?

 孤児院の子ども達のためにもなりそうだし!!


 その時、シスターが私の所に来て「急に見学にいらした貴族の方達がいて、こちらに案内して見学していただいても大丈夫でしょうか?」と聞いてくれた。

「大丈夫ですよ!」

 私は返事をして、シスターを見送り、私もできる手伝いはないかとテーブルの方へ行った。


 6、7歳の子達が字の練習をしている。私は空いている席に座り、周りの子ども達に字を教えたり文章を一緒に読んだりし始めた。

 

 シスターが戻って来た。4人の貴族夫人を連れていた。

 私はふと見て、顔が強張った。

 そのうちのひとりはアリシア夫人だったから。

 思わず瞬間的に顔を背けた。気が付かないふりをしてやり過ごそう。

 子どもの作文に集中しているふりをした。

 

 アリシア夫人はエドワードに気が付いたようで(というか絶対狙ってやって来たんだろう)近寄ると挨拶を始めた。

 エドワードもアリシア夫人を見て一瞬驚いたように見えたが、さすが王子、すぐにいつものちょっと尊大な感じに戻ると適当にあしらっている。


 アリシア夫人ではない方がこちらに来て「いつもいらしてるんですって? さすがエドワード王子のご学友ですわね!」と言って微笑んだ。

 私が誰かわかってないんだな。

「ありがとうございます」

 私は小さな声で言って、子どもとのやり取りに戻った。


「ジュースを冷やすのに氷を使うなんてすばらしい心遣いですね、さすが魔法学校の生徒さん達だわ!」

 アリシア夫人の声が聞こえて、他の3人が「さすがですわ。エドワード王子ですものね!」とか言ってる。

 何しに来たんだ? 

 シスターが「その氷はそちらのネモさんが魔法で出して下さったものです」と話している。

 言わなくていいのに! シスターは知らないからしょうがないか……。


「……ネモ? 変わった家名ですね。どちらの家の方かしら?」

「ミーア帝国貴族の方です」

 ミーア帝国大使館から連絡してたし、そう思ってくれていたのか、しかも家名と勘違いしてくれてラッキー! 辺境伯爵家と名乗ってなくて本当に良かった。


「そういえば、あなた、エミリアをご存じ?」

 アリシア夫人が急にウォロに話しかけた。

 ウォロは「知ってはいますが……」と返事した。


「あの子には困ったもので、先日も父親にねだってドレスを3着も新調したのよ。

 本当にあなた方のように素晴らしい社会奉仕をするような学生もいれば、エミリアのようにわがまま放題で、下々の者のことなど考えない学生もいるということね!」

 いや、2着だし、王城に呼ばれて必要だから買ってもらったんだし。


「アリスに聞いたところによると、同じ学年の男の子達を侍らせていい気になっているとか……。本当に母親があれですから、いくらアリスが姉として手を差し伸べても心を入れ替えるということができなくて困ったものです」

「まあ、そんなことが!」「やっぱりあの母親の娘ですものね」と取り巻きの方達のひそひそ声が聞こえた。


 なんでウォロに?

 あ、上級生だと思ったのかな?


「アンドレアス王子にもよろしくお伝え下さいね」

 やっぱり、エドワードのお目付け役みたいな上級生と思われてる?!


「そちらの方も励んで下さいね!」

 急に声をかけられて、とりあえずぺこりとしておいた。


 シスターが案内して出て行ったので、はーっとため息をついた。

「お姉ちゃん?」

 隣にいた子どもに怪訝な顔をされてしまった。

「ごめんね、あーいう女の人達苦手でさ」

 その子はうんうんと頷いて言った。

「確かにさ、あーいうのはやな感じするよね」

読んで下さりありがとうございます。

アリスがちょっとおとなしくなったかなと思っていたら、アリシア夫人が動き出しました。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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