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44 王様と王妃様

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めているのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 大広間のドアが開かれ、私達は中に入った。


 一番奥の玉座に王妃様と国王陛下が座っていて、そのそばに第1王子のアンドレアスとアリス。第2王子のエドワードが立っている。

 

 本当に謁見だ。聞いていた今日の流れと全然話が違う。

 ミーア帝国で全然説明がなくて戸惑った時のことを思い出した。


 お父様がまずオードリーをミーア帝国第2王子の婚約者で魔法学校の留学生と紹介してくれ、次にミーア帝国第3皇子のウォロとその婚約者である次女のエミリアと私を紹介してくれた。


 私達は礼の姿勢をとり、声をかけられるまで待つ。

 王妃様が「みなさんどうぞ顔を上げて。エドワードと同じ寮ですよね。話は聞いていますよ」と仰った。


 うーんと?

 返事を求められている感じではないから、ただ姿勢を戻して顔を上げればいいのか?


 私はウォロと顔を上げて正面の王妃様と国王陛下を見た。

 王妃様はニコニコしているし、国王陛下はこちらを試すような目で見ている。以前のアンドレアスやエドワードの目と似ているな。やっぱり親子だ。


 陛下が「エミリア、前に」と仰ったので一歩前に出る。


「ローベルト、こんなに大きな娘がいるのになぜ一度も王城に連れて来なかったのだ?」

 私を前に進ませておきながらお父様に質問した。


「次女はずっと辺境伯爵領のダナンで育ちました。王都へはほとんど出てきていないもので」

「何故、ダナンで過ごしていたのだ?」

 噂のことをこちらから言わせようとしているのか?

「王都での娘を傷つけるような噂から守るためです」


 私はアリスをそっと見た。不機嫌そうな顔をしている。

 そうだよな。アリシア夫人とアリスが流した噂ならば、何をやらせてもできない失敗ばかりの私に呆れたお父様がダナンに追い払ったことになっているんだから。


 まあ、もうどっちでもいいや。


「エミリア。

 ミーア帝国の皇子との婚約を決めたのは、噂から逃れるためでもあったのかな?」

 意地の悪い聞き方をするな。


「いいえ、ウォロ皇子が私と生きることを望んで下さったからです。

 私もそう願いました。それだけです」

 にっこり微笑んで答えてやる。

「……ほう」

 そんな面白そうな顔しないで下さい。戦いたくなるじゃないか!


「それでは、もうひとつ聞きたいことがある。

 姉であるアリスとは仲が良いのかな?」

 アリスが自分の名前が出たことに驚いて陛下を見た。

 私が答えようとすると、アリスがそれを遮る様に話し出した。

「エミリアのこと、私はとてもかわいがっていますわ!

 学校でも花祭りで、私が女神役だったのですが、1年生には声のかかることのない役目である付き添い役をお願いしてずっとそばにいられるようにしましたし!」

 うーん、付き添い役がハズレ役だと知らなければ、目をかけているように取れるか。

 そんなことを考えていたら、みんなの目が私に集中していることに気が付いた。

 ここで私が何か言うのか? 何も思いつかない。

「そうですね……。

 私はアリスのことは何とも思っていません。放っておいてもらいたいと思います」

 正直な気持ちを言った。


 王様がさらに面白そうな表情をする。

 アリスが「陛下、無礼な妹をお許しください」と言う。

 いや、陛下に無礼なこと言ってないけどね。

「お聞きになられたことに正直にお答えしたまで。無礼なことを言ったつもりはありませんが」

 私はアリスとアンドレアスに向かって言った。


 アリスがさらに何か言おうとしたのを手を挙げて止めた陛下が続けた。

「そうかわかった。では質問を変えよう。

 王都に出ることを嫌っていたのに、なぜ魔法学校で学ぶことにしたのだ?」

「授かった魔法の力があるなら学んで使えるようになりたいと思ったからです」

「……それだけか?」

「はい」

「アリスは私にエミリアはアリスの真似をして学校へ入学したと話していたが……」

 アリスが弾かれた様に声を上げた。

「そうです! この子は私に憧れ、私の真似ばかりしようとするのです!」

 うん、さっきはかわいがってるって言ったのにね。

 嫌がってるように聞こえるね。


「なぜ私がアリスの真似をしなければならないのですか?」

「それは、あなたが何もできないから、私のことをねたんでいるのではなくて?

 私が王子の婚約者に選ばれた時も喜んでくれなかったじゃない!」

「おめでとうと言ったら『悔しがりなさいよ』と蹴られたけど。覚えてない?」

「!! なんてことを! 私はそ、そんなことしてないわ!」

「いえ、お義母様がおめでとうを言う資格は愛人の子である私にはないって言って、アリスが私の足を蹴ったので痛くて座りこんだら、私の髪の毛を掴んで『悔しがりなさいよ』と言ったじゃない。

 本当に忘れちゃったの?」

「……陛下、王妃様。この子は私を貶めるためにこんな嘘を!!」

「喜んでくれなかったというから、おめでとうって言ったと話しているだけです」

「じゃあ、私も言ってやる!

 私はエミリアから暴力を受けてました! でも許したわ!」

「私は覚えがありませんが、どんな暴力を?」

「叩いたり、蹴られたり、突き飛ばされたり……。母が証言してくれるわ!

 あなたには証言してくれる人はいないでしょ! ひとりぼっちだったもんね!」

「はい、私はひとりぼっちで義母ははとアリスからの嫌がらせや暴力に耐えるしかできませんでしたから」

「!!」

 アリスが急に私の所に歩いてくると、扇を振り上げた。

 おいおい、ここで暴力振るうとか、何を考えているんだ?

 私は打ち下ろされるタイミングで一歩後ろに下がり元の位置に戻った。


 バランスを崩したアリスが私を睨んだ。

「アリス、私も大きくなってただ耐えるだけではなく、逃げることも言い返すこともできるようになったの。

 あなたがイライラするだけだと思う。

 お願いだから、もう私のことは放っておいて欲しい」

 そして陛下に向かって言った。

「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。

 私、このようにアリスとは仲が良くありませんので、陛下からも私のことは放っておくように言ってくださいませんか。

 どうぞよろしくお願いします。

 同じ学校の生徒同士ではありますが、それ以上にアリスと関わることは()()()()()しませんので」

 『これからも』というところに力を入れた。ウォルフライト王国とも関わるつもりはないよと。

 陛下には伝わったらしい。苦笑いを浮かべている。


 王妃様が場の雰囲気を変えようと明るい声で言った。

「エドワード、エミリアをお茶会の席にエスコートして差し上げて!」

 えっ? 

 思わず隣にいるウォロの腕をつかんだ。

「婚約者と来ていますので大丈夫です」

 

 大広間が変にシーンとなった。

 あ、これは変なこと言っちゃったのかな?


 するとお父様が「エドワード王子、オードリー嬢のエスコートをお願いできますか?」と言ってくれた。

 エドワードはちょっと躊躇したが「あぁ」と返事をしてオードリーをエスコートしに降りてきてくれ、私とウォロに「ついてこい」と言った。

 私はお父様を見た。頷いてくれたので私もウォロと歩き出す。


「オードリー、ウォロ、ネモ、久しぶり」

 大広間から出たところでエドワードが立ち止まり言った。

 ウォロは文官から預けていた荷物を受け取ってくれていた。

「お茶会にセレナやみんないる?」

 私が聞くと「うん来るよ」と返事してくれた。


 歩き出したエドワードの後をついて行くと庭にお茶会の用意がされていて1寮のみんながいた。


「元気そうだな」とティエルノが声をかけてくれ、特に挨拶やどうしてたかとかの言葉のないまま、いつもの雰囲気になった。


 エドワードが「荷物を預かっておこうか?」と聞いてくれたので、お茶会の最後でいいのでみんなに渡したいものがあるのでどこか見えるところに置いて欲しいと伝えた。


「わかった。あそこの四阿あずまやに、後でみんなで行こうと思っているからそこへ運んでおく」

「ありがとう」

 エドワードが従者に荷物を渡して指示してくれた。


 その時、王妃様がいらして、私達は席に案内された。


 エドワード達4人のテーブル席。

 王妃様と私達4人のテーブル席。

 それ以外の人はいなかった。

 あれ? アリスは?


「エミリア、先ほどはアリスが失礼したわ」

 王妃様が謝ってくれたのでびっくりする。

「いえ、私も売られたケンカを思わず買ってしまったので……。

 もっと穏便に済ませれば良かったのだと、反省してます」

「王はあなたのことが気に入ったようよ。

 後で話をしたいそう。つきあってやってね」

 いやです、とは言えない。

「……はい」


 王妃様の合図でお茶が給仕された。

 さすがにとても美味しい紅茶だった。お菓子も美味しい。

 王妃様に学校での様子を聞かれたので、3人で話をした。

「エドワードのことをよろしくね」と言われ、なんて返事をしようか戸惑っていたらウォロが「はい」と答えてくれた。


 王妃様は「後はみんなで楽しんで」と退出された。エドワードに声をかけられ、先ほどの四阿あずまやにみんなで移動。


 おみやげをみんなに渡すことができた。

 南の方の街が革製品が有名だったので、それぞれの名前入りの栞を作ってもらったのだ。

 それからウォロとティエルノとライトが魔法の話を始め、セレナとオードリーと私は今日の髪型のことなど話していた。

 気が付くとエドワードだけ、庭を見てぼーっとしている。

 借りていた本を返してくるとオードリーに伝えて、エドワードの所へ行った。


「エドワード、本、長い間ありがとう。読んだよ。面白かった」と返した。

 エドワードは本を受け取り「どうだった?」と聞いた。

 私は考えてきた感想をきちんと伝えた。

「ちゃんと読んだんだな」と笑うので「ちゃんと勉強したよ」と私も笑って言った。

 その時、王妃様付きっぽいメイドがやって来て「エミリア様、一緒に来て頂きます」と声をかけられた。

「ウォロも一緒でいいでしょうか?」と聞くと「おひとりでお願いします」と言われる。

 さっきの王妃様の言葉を思い出し、陛下かな? と思った。


 マッちゃんにひとりで呼び出されたので行ってくる、陛下かな? と伝言を頼む。

『ネモからウォロへ。呼び出しを受けた。たぶん王では。行ってくる』

 マッちゃん声が頭の中で響いた。わかりやすい伝言、さすがマッちゃん!


 私が立ち上がりメイドについて行こうとするとエドワードが心配そうに「俺も行こうか?」と言った。

「大丈夫、ありがとう」

 私は断って、メイドと歩き出した。


 庭を少し行くと、また違うテーブルがあって、陛下がいた。王妃様はいない。

 促されて席に着く。


「ゆっくりと腹を割って話してみたいと思ってね。エミリア? ネモ? どちらがいいんだい?」

「……ではネモとお呼び下さい」

「ネモ、単刀直入に言おう。アンドレアスと婚約しないかい?」

 ……はい? えっ? ……それは想定外だ。


「私はウォロと婚約しています。他の方ともう婚約はできません」

「ローベルトと同じことを言う。しかしウォルフライト王国王妃になれるならミーア帝国第3皇子妃より考え直してみる価値はあるのではないか?」

 価値ってなんだよ?!


「私はウォロだから婚約してるんです。

 ウォロが皇族や貴族じゃなくても、ウォロとしか婚約も結婚もしません!」

「エレオノーラにもよく似ているな」

 陛下が笑った。

 なんで母の名を? 王様、お母様を知っているの?

読んで下さりありがとうございます。

王様と王妃様、味方になるのか敵になるのか?


これからもどうぞよろしくお願いします。

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