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42 王都にて(オードリー視点)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

今回は時々入る、他人視点のお話です。

ゆっくり書き進めてますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 ウォロとネモがザーレの別荘から出て行って10日。

 約束通りなら、今日王都に戻ってくる。

 私とダイゴ様は王都のミーア帝国の大使館に逗留しながらふたりを待っていた。


 ライトを騙し、ネモを傷つけたズールが逃亡したことを私達が聞いた時には、もうウォロとネモは姿を隠していた。


 エドワード達も次の日に王都に帰ることになった。ライトを守るために残りの夏休みを王城で過ごすという。

 ネモとウォロがどこに行ったか知らないか?

 もし連絡が付くならウォルフライト王国の王城で守ることができると伝えてくれ、とエドワードに頼まれたけれど、私に連絡するすべはなかった。


 4人を見送ってから、私達も王都に戻る準備を始めた。

 ネモも、ウォロも、私に何も言わずに行ってしまうなんて!

 次に会ったら、文句言ってやる!!


 王都に戻る馬車の中でダイゴ様が結局ズールが逃亡したから、それで身を隠したように思われているけれど本当は違うんだよ、と教えてくれた。


 ウォロは以前からエドワードの存在にかなり不安感を募らせていたらしい。

 そのため、事前にダイゴ様にお願いして、ミーア帝国の旅券やら、ネモと姿を隠すことをいろいろ準備していたそう。

 

 そんな風には全く見えなかったので、そう聞いて驚いた。

 

 まあ、学校ではネモとふたりきりになれる機会もそうなかったし(そういえば入学当初、部屋でネモを抱きしめて離さず、私とティエルノに見つかったこともあったっけ)。

 だんだんエドワードのネモに対する気持ちの変化や隠しているようで隠しきれていない気持ちに周囲は気が付いていたけれど、ウォロはエドワードに対して特に行動を起こしているようには見えなかったし。


 ネモだけがエドワードの気持ちに気が付かず、友達として接していて、そんなふたりを見ていると時々笑ってしまいそうになることもあったくらいだ。


 ネモはエドワードのことを気にし続けているセレナのことをとても気にかけていた。それでエドワードに対しても気を配るようになり……。

 

 確かに夏休み、エドワード達が追いかけてくるとは思わなかったし(待ち合わせしたりして会うことはあるだろうなとは思っていたけれど)、あんなにエドワードがネモに関わろうとするなんて思わなかったことは確か。

 

 勉強中に手を握っていたのはびっくりした。

 後でネモに聞いたら午前中の剣の稽古で握力がおかしくなっていて、それに気が付いたエドワードがマッサージをしてくれてたらしいけど……。それって普通じゃないよね?

 ネモもネモだよ!!


 ウォロは何も言わず、顔や態度に出していなかったけれど、そんな様子を見たり聞いたりして不安だったのだろう。


 実は、私は、ウォロのことが好きだったことがある。子どもの頃のことだけど。

 ウォロは私より1か月後に生まれた皇子様。


 父からはダイゴ様かウォロ様と結婚することになるだろうと言われて育った。


 子どもの頃の私から見たふたりは……。

 ダイゴ様はきれいでみんなに優しく頭の良い方。

 ウォロ様は私より1ヶ月年下なのに大人びていて無口で不思議な雰囲気を持っている方。


 ダイゴ様は誰にでも優しくて憧れではあるけれど……。小さな私からは憧れ以上の気持ちにはならなくて……。

 歳の近いウォロ様の方が気になっていた。

 不思議な感じも見ていて面白いと思ったし、あの不思議な銀色の瞳を近くで見てみたいと思ったこともある。

 

 でも、そのうち、私も含めて、誰もあの瞳には映っていないのだと気が付いた。

 ダイゴ様とは仲が良いけれど、周囲に、特に家族以外の人にはほとんど興味がないみたい。

 

 あれは何歳の頃だろう?

 8歳? 9歳?

 5月のある日、私は王宮に遊びに行き、ウォロ様が庭に入っていくのを見かけた。

 散歩という感じではなく、目的を持って歩いている感じだったので、とても気になって、後をつけた。

 すごく足が速くて、やっと追いついた時、私の目の前にきれいな青色が広がった。


 青い可憐な小さな花が群生して咲いていた。

 ウォロ様は跪いてその花をとても愛おしそうに見て、そっと触れていた。


 その時、私は気づいたのだ。

 彼はこの花に、この花のような人にずっと恋しているのだと。 

 彼の銀色の瞳には未来に出会うはずのその人しか見えていない。


 私の初恋はそこで終わった。告白したわけでもなく、振られたわけでもなく、不思議な自然消滅。

 思いが昇華したような清々(すがすが)しささえあった。


 その後、私はダイゴ様と親しくなり、ダイゴ様のことをよく知り、恋をして思いが通じ合った経験をした。


 ウォロとネモは何故か思いが最初からあって、それがふたりを引き合わせたような気がする。

 そう、前世から繋がっていたような。


 そんな関係のふたりでもウォロは不安を募らせていたのだ。

 ネモは本当にウォロに愛されているのだな。

 そんなふたりの関係を羨ましく思うと同時に、ふたりには本当に幸せになってもらいたいとも思う。


 隣に座っていたダイゴ様が立ち上がった。

 視線の先を見ると、ウォロと男のような恰好をしたネモが笑い合いながらこちらに歩いてくるところだった。


 ふたりともとても幸せそうだ。きっと素敵な10日間を過ごせたのだろう。

 さらにふたりの絆を強めるような10日間を。


 私はネモに駆け寄り抱きつこうとした。

 また、ウォロがネモを抱き上げて私の手から攫うように取り上げた。

 

 ふふん、私だって学習してるのよ。

 バランスを崩さずに立ち止まると、ウォロごとネモに抱きついた。

 

 ネモが笑って私に手を差し伸べてくれ、ウォロがびっくりしている。

 ダイゴ様が私の後ろから来ると3人をまとめて抱きしめた。


 良かった。戻って来てくれて。

 もしかしたら戻ってこないのでは……なんて、ちょっとでも思ったことは内緒にしておこう。

読んで下さりありがとうございます。

オードリー視点の話でした。

ネモにとってけっこう頼りになります。

最初はもうちょっとおとなしい感じだったのですが、けっこう周囲を見て考えて動いているところもあり、ネモを明るさで助けてくれる子です。

結婚すれば義姉ですね! 


ブックマーク、いいね、評価、ありがとうございます!

とてもうれしいです!

今日も午後の投稿はお休みします。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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