41 みんなに怒られる
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
一番問題だと思われていたエドワードがすぐに納得してくれたそう。
それぞれ別荘に戻ることになったが、マリアと先生達が私を送りがてら別荘で待っていたお父様と兄様に説明してくれた。
一緒に聞いていたのだが、そこでズールが封印されていた魔法については何も話していないことがわかった。何が封印されているか知らず、興味からライトを唆し、私の血が必要なので呼び出したが儀式は失敗したようだと話したよう。
おかしいな。
私的には公にならないからいいけれど、ズールは私が何かしら得たことを感づいていると思うんだけど、な。
先生達とマリアが帰ったら、お父様と兄様にすごく怒られた。
私がライトの呼び出しにひとりで行ってしまわなければ……。
ズールも何もできなかったんだもんね。
助かったから良かったけれど、もうひとりで行動はしないようにと言われた。
ひたすらお小言を聞いて、もうしません、気を付けますと頭を下げ続けた。
ウォロももっと気を付けるし、居場所がわかる魔道具(今回もこれのおかげで遺跡にいることが早い段階でわかったそう)のほかにも何か考えて、私の保護を強化すると言ってくれた。
でも、それって、私のことを信用してないってことじゃあ?
お父様と兄様はやっと落ち着いて解放してくれた。
ああ、もう眠いよ。
ウォロが部屋に連れてってくれたけど、ふたりきりになると、もう一度なぜひとりで誰にも相談せず動いてしまったのか、説明させられた。
確かに、それはみんなにも本当のことは言っていない。
ライトの手紙にセレナのことを相談したいとあったので、誰にも知られたくないんだろうなと考えてしまったことを白状した。
「なるほどね。それで納得できた。
だから、人のこと考えすぎ!
夜、誰にも言わずにひとりで外に出るってことがどれくらい危険か、普通にネモはわかるだろ?
人の事情を考える前に、自分の身を、安全を考えて!」
それはそうなんだけど……。
「また、何考えてるの?」
ウォロが私の頭に自分の頭を寄せてくる。
「うん、ごめん。ウォロに言えば良かった。
ライトを待たせたら? とも思っちゃったし。
そうだよね。
やりようは後から思うとたくさんあるのに……。心配かけてごめんなさい」
私は素直に謝った。
「わかってくれたならもう言わないけど。
それから、ネモに古代魔法が封印されたってこと、カトレア先生達が隠してくれてるけれど、どこから漏れるかわからない。
狙われることだって出てくるよ。
それを忘れないで。自分から、離れないで……」
ぎゅっと抱きしめられて、ウォロが少し震えてるのがわかった。
心配かけてしまって申し訳ない……。
「うん、わかった。
心配かけてごめんね。もうしない」
私はもう家族やウォロに心配かけるようなことはしまいと決意した。
「じゃあ、ここを離れよう」
えっ?
驚いてウォロの顔を見ようとしたが、ウォロが離してくれない。
「どういうこと?」
しょうがないのでそのまま言う。
「みんなから少し離れた方がいい。
そうしないとネモが参っちゃうよ」
「でも、今、私がここからいなくなったらライトが自分のせいだと思っちゃうんじゃない?」
「だからそういうとこ!!」
ウォロが声を荒げたのでびっくりして身体を固くする。
「……ごめん」
ウォロの声が弱々しくて、なんとかしたくて抱きつき返す手に力を入れた。
「わかった……。ここを離れる。けど、ひとつだけ我儘聞いて。
明日はみんなに会いたい。
ライトの様子も……、このまま会わずに離れたらずっと気になっちゃう!!
明日、会ったら、そのままここを離れる。ウォロと一緒に行く」
「うん、ネモのお父さんには自分から伝えておくから。
それと王城に行かなきゃいけない日も確認しておく。
それまでには王都に戻ろう」
「うん、わかった。
我儘聞いてくれてありがとう」
私は抱きついていた腕の力を緩めた。ウォロも力を抜いてくれたのがわかった。
「で、どこ行くの?」
「内緒。教えると誰かに言っちゃいそうだから」
確かに聞かれたら、知ってるのに言えないってなりそう。
「わかった。明日の朝、荷物まとめておく」
セレナにお泊りできなくなったこと謝らなきゃ。
「遅いけど、風呂に入るの?」
「どうしようかな……。
入った方が気持ちよく寝られそうだから、入るよ」
「じゃあ、ネモのお父さんに話してくる」
ウォロが部屋を出て行くのを見送る。
『大切にされておるの』とマッちゃんの声が聞こえた。
そうだった。
静かにしてるから忘れかけてたけど。
今のずっと見てたのか?
『見てたというか、見えちゃうからのー』
プライバシーに配慮するとか言ってくれてなかったっけ?
『だから静かにしておったじゃろ?』
えーと……、一時的にオフとかできないのか?!
私これから風呂に入るけど、それも見ているとか……。そういうこと?
『儂のことは空気と思え』
話しかけてくる空気はいないよ!
『そうじゃな。お互い約束しよう。
儂はネモに危険が迫った時、何かどうしても知らせたいことがある時にだけ話しかけることにする。
ネモも儂と話したいときは呼びかけてくれ。それでどうだ?』
うーむ。とりあえずそれでやってみるしかないだろう。
マッちゃんをおじさん(おじいさん?)と思うから気になるのであって、神様のように思えばいいのでは?
マッちゃんは神様! マッちゃんは神様!
私はお風呂のお湯を溜めに行き、待っている間に少しストレッチして身体をほぐした。
よし、もう気にしない!!
風呂から上がるとウォロが戻ってきてた。
「ネモ、お父さんから許可もらった。
10日間、ふたりだけで行動しよう。
10日後、王都のミーア帝国大使館でお父さんと会う約束したよ」
「ありがとう。ウォロも疲れてるでしょ。もう休んで」
「うん、おやすみ、ネモ」
ウォロは私の額に軽く口づけすると部屋から出て行った。
ベッドに入るとすぐに体が重くなり寝てしまったようだ。
次の日の朝、目が覚めると、窓の外がいつもより明るい気がする。
寝過ごした!!
慌てて跳び起き、仕度をして食堂に行くとお父様と兄様だけが朝食を食べていた。
「おはよう、早いなネモ。もう少し寝ていると思ったよ」
お父様が驚いたように言った。食堂の時計を見るといつもの時間から30分過ぎくらいだった。
「あ、目が覚めちゃって……」
私は席について朝食を食べ始めた。
「今日ここを出るでいいんだな?」
お父様に確認のように聞かれた。
「はい、昨夜話して決めました。10日後王都に戻ります。
オードリーとダイゴのことよろしくお願いします」
「わかった、大丈夫だ。で、どこに行くんだ?」
「さあ、私には教えてくれなかったから」
部屋に戻り荷造りを始める。
持って行く荷物と、お父様に持ち帰ってもらって保管しておいてもらう荷物と分けなきゃ。
とりあえず荷物をまとめているとウォロが部屋に来てくれた。
「おはよう、荷物はどれくらい持って行けば?」
「2~3日分の着替え、馬の乗れる服装で。
それと身支度に最低限必要なもの。
勉強のものも持ってく?」
「わかった!
後の物はお父様に預かってもらえるように頼んでおく」
荷造りもすぐできた。
エドワードから借りた本どうしよう?
本を手に悩んでいるとウォロに聞かれた。
「その本?」
「エドワードが貸してくれた歴史の本。
まだ読んでないから持って行っていいかな?」
「……いいんじゃない」
私は勉強道具と一緒の所に入れた。
中くらいのカバンひとつくらいかな。
貴族令嬢の旅行準備とは思えない量だな!
「仕度できたよ!
残すものはお父様に頼んでくる!」
ドアのそばに立っていたウォロに近づいてそう言ってドアに手を掛けようとした。
突然左手を掴まれて、ドアに押しつけられてキスされた。
「……ウォロ?!」
「ごめん、急に……」
ウォロが真っ赤になって、私もそれを見て赤くなってしまった。
「その……何か……、不安になって……」
不安? なんで?
私は空いていた右手をウォロの首に回すと背伸びして自分からキスをした。
ウォロが私の左手をそっと離すと、私の首と頭の辺りに手を添えるように支えてくれた。
ウォロの不安が少しでもなくなりますように……。
長いキスの後、唇を離した私達は目を合わせて笑ってしまった。
その後、馬にそれぞれの荷物を積んで、セレナの別荘を訪ね、ライトに会った。
落ち着いていて、もう大丈夫そう。
昼食をご馳走になり、セレナに今日はお泊り会ができないことを伝えて詫びた。
マリアとカトレア先生が兄様と一緒に訪ねてきた。
うちの別荘に行ったが私達がいなかったのでこちらに来たそう。
カトレア先生が言った。
「ズールが逃亡したわ。
ギーマが追っているけれど、ネモは十分気を付けて!」
ウォロが私の手を握り「行こう!」と言った。
「じゃあ、また!!」
私はみんなに声をかけてから、ウォロと外に出た。
読んで下さりありがとうございます。
今は夏休み後半の王城でのことを書いています。
今日は午後の投稿はお休みします。
これからもよろしくお願いします。




