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40 古代魔法の封印(後)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

今回は転生物。

魔法学校の夏休み中の話です。

ゆっくり書き進めている話なのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 魔法陣の文字がひかり出したので、私はあわてた。

 発動を解除するには!

 私は左手にナイフが刺さっているままなんとか地面から抜くと、血溜まりに右手の人差し指を突っ込み、血で▲に▽を重ねて書き足した。六芒星が完成して光出す。

 

 書き足しをすれば発動が止まるか、逆になるか、封印の力が強まるか?

 とりあえず、何らかの妨害にはなるはず?!


 文字が光るのは止まらない。

 発動は止まらない!

 えー、何が起こるのよ?

 文字の光が柱に流れていき、柱を光が駆けあがっていく。

 きれいだなぁ。

 こんな状況なのにぼんやり思ってしまった時、柱から強い光が私の方に伸びてきた。

 

 えっ?

 逆って?

 こっち?


 私、血筋の者じゃないんだけど?!

 まわりが光で何も見えなくなり身体中が熱くなる。


 やばい!

『やばいとは?』

 突然頭に男の人の声が響いた。

 誰?

『サンマチネスじゃ』

 魔法使いの?

『この中ではお前が一番まともそうだな。神の愛し子よ』

 そうだよ、ズールに封印が解かれたらやばいでしょ?!

『ほう、なるほど。ではお前にこの力を授けよう』

 私あなたの血筋じゃないけど?!

『ほほう。なかなか面白き魂の娘じゃな。

 よし、儂が守護霊となろう。それならば問題あるまい』

 守護霊?

『いついかなる時もそばにいて見守ろう』

 えっ? おじさんがずっとそばにいて見てるの?!

 そんなんちょっと嫌なんだけど?!

 私にもプライバシーというものが……!

『文句の多い娘だな。

 よし、そのプライバシーとやらは考えてやるから、早く儂を受け入れろ!

 死ぬるぞ!』

 えっ、わかった。受け入れます! 守護霊、わかった!


 頭の中に何かがすごい勢いで流れ込んできた。

 それにひたすら耐える。

 

 これいつまで続くんだよ……。


 あと少し、あと少し……。

 呪文のようにそう頭の中でくり返す。

 左耳が熱くなる。

 熱い? 痛いのか?

 

 フッと光が消えて、身体が楽になった。

 身体も動く。足の縄も消えた。

 なんで消えたの?

 でも助かった。

 あわてて起き上がるとふらっとした。

 貧血っぽい。

 あわててしゃがみ込む。

 縄は消えて、動けるようになったけれど、左手のナイフは刺さったままだ。

 落ち着け、落ち着け、まずズールは?


 ズールの方を見るとへたり込んで呆然としている。

 

 ライトは?

 

 立ちすくんでる。


 ふたりとも無事!


 で、どうする?

 ズールに仲間はいないか?

『いないようじゃ』

 そう、ありがと!

 

 私はライトの所へ行くと手を引いて魔法陣から出ようとする。

「ライト、行くよ!」

「……ネモ?」

「しっかりしな!

 ズールに騙されてたんだよ! 逃げるよ!」


『娘の仲間がこちらに向かってるぞ!』

「どっち?」

『こっちじゃ!』

 指し示す光が目の中に見えた。

「こっちだって!」

 ライトの手を引き小走りになる。

「ネモ、誰と話してるの?」

「魔法使いのおじさん!」

『サンマチネスじゃ。お前の名は?』

「ネモ! ネモフィラのネモ!」

『いい名じゃな!』

「ライト、今、私の中にサンマチネスがいる。

 こっちに行くとみんなと合流できると言ってくれてる! 走って!」


 ライトもあわてて走り出す。

「どういうこと?」

「私だってわからないよ! 

 ズールはライトを騙してた。

 ズールも血筋の者なんだよ!

 封印を奪おうとしてた!」

 

 振り返るとズールが追ってきているのが見えた。

 私は空にナイフが刺さったままの左手を向けて光魔法を打った。

 ちゃんと打てるか心配だったけれど、打ててほっとした。

 向かって来てくれているのがウォロやカトレア先生なら気が付いてくれるはず!

『おお、面白い使い方だな。仲間が気が付いたぞ!』

 おじさんすごいな! そんなことまでわかるのか!

『サンマチネスじゃ!』

「マッちゃん! ありがと!」

『マッちゃん? うーむ、ま、いいか!

 愉快愉快!』

 愉快じゃねえ! 

 ズールに追いつかれそうになり、私は振り向いてズールの頭に思念化した光魔法を叩きこんだ。


 ズールが目を抑えて倒れこむ。

 もう知らない! とにかく逃げないと!!

『ほう、これも面白き魔法の使い方じゃな?!』

「マッちゃん! まだみんなに会えない?」

『もう少しじゃ。頑張れ頑張れ!』

 

 遺跡の入り口あたりに明かりと人影がこちらに向かって来るのが見えた。

「ウォロー!」

 叫ぶと「ネモ!」とウォロの声がした。

 良かった助かった!


 ライトが急に立ち止まり、手を繋いでいた私も立ち止まる。

「ライト?」

「……みんなに合わせる顔がないよ!」

 右手を振りほどこうとするので、あわててそのままライトに抱きつく。

「ダメ! 帰るの!  

 私は大丈夫だから! ライトも大丈夫!」

  

 ライトが私の左手を見て悲鳴を上げる。

「大丈夫じゃない!!」

 あ、ナイフが刺さったままだった。

「これは処置できるところで抜かないとまた出血しちゃうからそのままにしてんの! 

 大丈夫だから!」


 ウォロとエドワードとティエルノが駆けつけてきてくれて、ライトを捕まえてくれた。

 

 ウォロの顔を見たとたん、左手に痛みを感じた。自分の感覚が戻ってくるのを感じた。

『そいつがウォロか? そやつも面白き魂の……』

「ズールがライトを騙してて……」

「わかった、左手は血は止まってるな。このまま行こう!」

 私は頷いてウォロに支えてもらって歩き出す。

 カトレア先生がいたので「少し前にズールにつかまりそうになって光魔法の思念化を頭に打ち込んだので倒れてました。どうなったかはわかりません!」と報告した。

 カトレア先生とギーマ先生が頷いて遺跡の方へと数人の男の人達と走って行った。


 遺跡近くのホテルの部屋にセレナとオードリーとダイゴがいた。

 そこで、ウォロにナイフを抜いてもらい、止血がてら光魔法で治療してもらった。

 古い出土品のナイフだったみたいで、傷もふさがり痛みもなくなったが傷が残った。

 ウォロがすごく治癒魔法を頑張ってくれたけど、傷は消えなかった。

『もうそれは無理だぞ』

「もう消えないって。

 ウォロありがとう。痛みもないし大丈夫だから」

「ネモ、その左耳のは?」

 セレナに言われて左耳を触ると何か耳たぶにぶら下がっている。

「ん? なんだ?」

『転移魔道具フープじゃ』

「フープ? 転移魔道具って言ってる」

 私が言うとみんな固まっている。

「何?」

 オードリーが私を抱きしめて「変になっちゃうほど怖い思いしたんだね!」と叫んで泣き出した。

「えっ? 全然変じゃないよ! 

 なんだかマッちゃんが守護霊になってて話せるんだよ!」

「マッちゃん?」

 ウォロが聞き返してくる。

「サンマチネスだよ。

 ずっと私にみんながここに来てるとか、教えてくれてた。

 だからこっちに逃げてこられたんだよ!」

「えっ? 何でネモに?

 じゃあ封印は解けてネモに?」

 ウォロがあわてている。

 あわててるウォロ、レアだわ。……じゃない!


「カトレア先生たちが帰って来たら説明する。今はライトの所に行きたいんだけど」


 ライトは隣の部屋にエドワード達といた。マリアもいてくれてる。

「ライト、見て、もう左手も大丈夫だから!

 ライトは騙されてたんだからもう気にしない!」

「ごめん、ネモ、ごめん……」

「もう、謝らないでよ。無事でよかった。

 ズールの思う通りになっていたら、私達殺されてたと思う。

 助かったんだから、ね!」

「ネモは許してくれるの?」

「許すも何も、怒ってないよ」

『ほんとじゃな。あれだけのことをされたのに怒ってないとは……。儂の血筋の者がすまんな!』

「ほんとだよマッちゃん、変な封印残すなよ」

『いやいや、面目ない。

 そう簡単には解けぬと思ったんだがなあ……』


「ネモ?」

 みんなが変な目で見ている。

「あ、みんなには聞こえないけど、私にはサンマチネスの声が聞こえてて……。

 ライト、マッちゃんも怒ってないよ」

「マッちゃんって……サンマチネス?」

「うん、長いから呼びにくくてさ。

 マッちゃんって呼んだら気に入ったみたい。愉快愉快とか言ってたし」


 カトレア先生達が戻ってくるまでライトの話を聞いた。

 ズールにおだてられ自分に資格があるなら強力な古代魔法を手にしてみたいと思ってしまったこと。

 ズールに私を呼び出して魔法を使えない状態で気絶させることを教えられ、少量で即効性のある薬を注入する指輪についた針を渡され使ったこと。

 私が気絶した後、そばまで来ていたズールと遺跡まで運んで儀式の準備をして、ネモが目覚めて左手にナイフを刺された時に話が違うと恐怖に襲われたけれど、もう引き返せなかったこと……。


「ズールは最初から自分が封印を解くつもりだったんだよ。

 ライトが立ってるように言われた場所、全然関係ないところでさ。

 ズールが立っていたところが封印を解く血筋の者がいる場所だったんだ」

 私が言うとライトはしくしく泣き出した。

 あー、もう泣かないでよ。

 私はライトのそばに行き隣に座ると抱きしめた。

「また一緒に魔法の練習しよ」

 ライトが落ち着いたのでエドワード達に頼んで元の部屋に戻った。

 

 鏡を見てみると左耳たぶに金と銀の細工が施された細い小さめの輪っかのようなものが貫通してぶら下がっているんですけど……。

 ピアス? でもこれじゃ外せないね。


 カトレア先生とギーマ先生が戻って来て、ズールが捕まったことを教えてくれた。

 見つかった時は動き出していたけれど、まだ視力が戻っていないような感じで周囲のことに気が付かず、逃げる素振りも見せなかったそう。


 今は視界もはっきりしたようで取り調べに応えているという。

 1時間ぐらいで元に戻るのか、な。

 命に関わりそうなときは使っても大丈夫そうだな?!


 私が気絶させられた薬や針を持っているだろうから、警備の人は注意するように伝える。


 ライトから聞いたことはウォロがふたりに伝えてくれた。

 私は魔法陣の発動を止めようと書き足しを行い、結果、何が起きたかを話し、『フープ』転送魔法について説明した。


「使い方は私の頭の中に入ったんですけど、取り出せない。

 つまり、封印の場所があの遺跡から私に移っただけと考えて下さい。

 災害があった時、必要だとサンマチネスが判断した時に使えるみたい。

 血筋の者でないと受け取り手になれないのに、書き足したことで受け取り手の位置が逆に発動してしまったみたい。

 私の血で発動させていたので、サンマチネスの意識? 魂? が私の所に降りてきてたみたいで……。

 守護霊になってくれたことで私の命は助かったみたいです。

 そのままだったら死んでたと言われました。

 で、血筋の者と同じと認められたようで魔法の術式の記憶を受け取り終わったら、拘束されてた縄とか薬の効果とか何も無くなっていて……。そういやナイフはなんで消えなかったんだろ?

 出血によるふらつきは少しあったけれど、すぐに逃げ出せたというわけです」

『儂の意思を受け取ってくれたからな。 

 儂、縛られたり自由を奪われるの大嫌いなんでな。

 解かせてもらった。

 あのナイフはな、儀式のための特別なナイフで魔法が干渉しにくい素材でできていてな……』

「そうだったんですね。

 だから傷が残ったのか……。自由を奪われるって私の身体でもそう感じるの?」

『うむ、あまり好ましくない。あまりネモには干渉しない方がいいかの?』

「困っている時に助けてくれるならそれはありがたいです」


 みんなが変な顔をしているので説明を続ける。

「縛られてた縄が消えてたりしたのはサンマチネスが助けてくれてたそうです。

 これからも私が困って助けを求めれば出来ることはしてくれるそうです」


「これは王国に報告すべきか?」

 ギーマ先生が唸った。

「……私は報告しなくてもいいのではと思う。

 とりあえずネモが卒業するまでは。

 だってここに封印されてたことはわからなかったし、知られていなかった封印が移動しただけよね。

 サンマチネス様はネモが王家に監禁されたりすることはお望みではないですよね!」

 カトレア先生が話しながら私に向かって呼びかけた。

「『封印の場所が変わっただけじゃ。このむすめが生きている限り、儂は何かことが起これば人々を助けよう。

 そのためにもこの娘を、ネモを自由に動ける状態にしてやってもらいたい』」

 私の口から私の声ではない声が出てびっくりする。

  

 あわてて咽喉を抑えたり、顎を触っている私を見てカトレア先生が笑った。


「ギーマ、このことは私達が預かることにしましょう。

 ライトやエドワード達には話したのよね?」

「はい、先ほどライトに説明した時に部屋にいた人は知っています。封印が私に移動した……という細かいことまでは言ってないけど」

「ではこのことは他言無用で。隣の部屋にも話してくるわ」

 カトレア先生とギーマ先生が隣の部屋に移動した。


「みんな納得してくれるといいな」

 ウォロが私の隣に来て座りながら言った。

 そして私を見てため息をついた。

「こんなことがおおやけになったらますますウォルフライト王国から出してもらえなくなるぞ……」

読んで下さりありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

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