39 遺跡観光
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
今回は転生物。
ゆっくり書き進めていて、まだ魔法学校1年生の13歳です。
長ーく書くことに挑戦していますので、お付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
その日は夕食までうちの別荘でみんな食べていった。
明日はセレナのうちの別荘でご馳走してくれるそうだ……って、なんだ全然夏休みじゃないみたいだ!
別に嫌ではないけど、嫌ではないんだけど……。
兄様がマリアを送って行ってくれると言うので、ウォロと一緒に馬車を見送った。
ダイゴとオードリーは仲良く客間でお茶を飲みながらおしゃべりを楽しんでいる。
別荘の玄関まで戻ると「疲れたから先に休むね。ダイゴとオードリーにおやすみって伝えておいて」とウォロに言って自分の部屋に入った。
ひとりになるとため息が出た。
うーん、この疲労感はなんだろう?
久しぶりに馬に乗ったからなのか、癖でいろいろ考えこんでしまっているからなのか?
寝る仕度をしてさっさと寝てしまおう。
明日は早起きして、朝食の前に身体を動かしてもいいかも! と考えると少し元気になった。
部屋の中に浴室&トイレとつながるドアがあり、その隣のオードリーの部屋と浴室は兼用だ。
浴室通れば、行き来もできる。
オードリーが戻ってくる前に入っちゃえ。
湯舟にゆっくりつかると身体も心もすーっと楽になる。
偉大だよお風呂って。
温泉とか入りたいよ。
この世界にも探せばありそうだけど。
寮ではけっこう慌ただしく風呂に入っていたから(女子3人でも大変だったのに4人いる寮はもっと大変ってことだよね!)、久しぶりにのんびりお風呂に入ってホカホカ気分になった。
部屋着を着て自分の部屋に戻るとウォロが部屋の椅子に座っていてびっくりする。
「いつからいたの?」
「下でネモと別れて、まもなくかな?」
「ごめん、全然気が付かなかった!
けっこう待ったんじゃない!」
「いいんだよ。ネモ気にするから、早く出ようとしちゃうでしょ」
はい、その通りです。
「ゆっくり入れた?」
「うん、久しぶりにのんびりお風呂に入れたよ」
ウォロはやさしいな。
「ウォロの部屋は向かいだよね。同じ造りだからダイゴとつながってる感じ?」
「そう、ここと同じ」
「ダイゴが戻ってくる前にお風呂に入っちゃった方がいいんじゃないの?」
言いながらベッドに腰かける。
「まだ大丈夫」
ウォロも言いながらベッドの方に来て隣に腰かけた。
えっと?
抱きしめられて「やっとふたりっきりになれた……」と言われる。
いつもの感じですね。
確かに学校でも、休みの日でも他の人が常にいたから、ね。
私もウォロに身体を預けてくっついた。
「ネモあったかい」
「お風呂入ったばかりだからね」
で、どうしたいんだよ。
やっぱりこっちから聞いた方がいいのか? と思っていたら、抱きしめられたままベッドにごろんと寝ころんだ。足がぶらぶらする。
横になると眠くなりそう。
私が何も言わないので「眠いの?」と聞かれる。
「ちょっとね。でもこうやっているのも幸せだよ。気持ちいい」
そう言ったら、ベッドの上に引き上げてくれ、まっすぐ寝かせて布団をかけてくれた。
「これでいつ寝てもよし」
「なんだそれ」と私が笑うと「寝るまで抱きしめてていい?」と聞かれた。
「うん!」と頷くと寝ながらぎゅっと抱きしめてくれた。
あー幸せだ……。
何も考えられないくらい幸せ。
「ウォロとこうしていると幸せ過ぎて何も考えられない……」
私が呟くと頬を撫でてくれる。
「何も考えないで……おやすみ」
「おやすみ……」
私はウォロの温もりを感じながら眠った。
朝、目が覚めたらウォロがそのまま隣に寝ていてびっくりする。
えっ?
一緒に寝落ちしてしまったのか!!
えっと、これ見つかったら怒られないか?
「ウォロ、起きて!」
小さな声で揺り起こす。
「……おはよ、ネモ」
「おはよう。昨日あのまま寝ちゃったのかな?」
「うん、ネモが寝て少ししたら自分も寝ちゃった……。すごく良く眠れた」
「それは私も……。だけど、見つかったら怒られるよ。
ウォロ部屋に戻ってお風呂に入りな!
昨日入ってないでしょ」
「うん、わかった……」
私の部屋のドアから廊下を見ると誰もいない。
「気を付けて! じゃあ、後で!」
ウォロが自分の部屋に入るのを見届けてほっとした。
ありがとうね、ウォロ。元気になったよ!
みんなで朝食を食べ出掛ける準備をする。
兄様とハロルドは馬で行くと言うので、もちろん私とウォロも馬にした。
オードリーとダイゴは馬車。シーラはお留守番。
伯爵家の方から1寮のみんなが合流した。
ティエルノとエドワードは馬に乗っている。
セレナとライトは馬車だ。
このままマリアの別荘を通るので合流する。
マリアの別荘近くに行くとマリアも馬に乗っていた。
かっこいい!!
みんなで遺跡に向かい、遺跡近くのホテルで馬と馬車を預けた。
ここは遺跡の近くのホテルや宿が馬車や馬を預かってくれるんだ。
ふーん、この制度、ダナンにもいいかも!
朝早い時間だったけれど、もうすでに人がけっこういた。
各自好きに回ることにした。
私とマリアとジョシュア兄様はウォロについて行くことにした。
ウォロがざっと見まわして「あっち」と言い、私の手を握って歩き出す。
中心から少し離れた神殿跡に到着した。
「ネモ読める?」
聞かれて床に刻み込まれている魔法陣を見る。
「これもサンマチネスだ!」
「そう、サンマチネス。
ダナンのと比べるとこちらの方が新しいし、よく整備されてる」
古代のなのに新しいって、なんか久々に神様的な発言な気がする。
「ネモ、古代文字読めるのか?」
兄様にびっくりされる。
「ウォロに教わってて……」ということにしておこう。
マリアも熱心に覗き込んでいる。
「これは結界を構成するひとつの魔法陣ね」
「そう、たぶんここから見える。あそことあそこの3カ所だと思う」
ウォロが違う神殿跡をいくつか指差した。
「ダナンより大きいと言うことは、何かここにその理由があったんだね」
「うん……。ここまで大きいということは何か……。何を守っていたんだろう?」
ウォロが私の言葉に何か気が付いたように呟いた。
地面に指で3カ所の神殿跡の魔法陣の位置を描き線で結ぶ。
「たぶんこの真ん中。あの柱……、何かあると思う」
ウォロの言葉にその柱にみんなで向かった。
なぜか1本だけ立っている柱。
何か文字が刻まれている。
薄れかけている文字も多いが何とか読める。
ここはサンマチネスの家があった所みたい。
この柱の下に古代魔法を封印していると。
必要な時にはサンマチネスの血筋の者がきっと現れ封印を解く。
みたいなことが書かれていた。
「封印された古代魔法か、どんな魔法なんだろうね?」
私が呟くとウォロが「血筋の者か……。これだけ人がいたら誰かいるかな?」と言った。
血筋ということは子孫ということだよね。
「何もヒントが無くて探すのは難しいよね」
私が言うとマリアが言った。
「貴族の中にはサンマチネスの血筋だと伝承がある家があるはずよ。
家紋にヒマワリの花が入っているんじゃなかったかしら?」
ヒマワリかあ。
ミーア帝国もうちも違うなあ。マリアも違うと言う。
「みんなにも聞いてみようか!」
戻りかけるとエドワード達が神官のような服を着ている人に話しかけられていて、ハロルドがその間に入り困惑している。
「どうしたの?」と声をかけて近づいていくとライトが「ネモ!」と叫んだ。
その声に神官がこちらを見る。
はい?
神官が今度はこちらに近づいてきたので、ウォロが私の前に守るように出る。
「ネモフィラの贈名を持つのはあなた様ですね」
神官がお辞儀をして言った。
「私はこの神殿遺跡を管理研究しているズールと申します。
古代魔法の謎を解くのに協力してはいただけないでしょうか?」
はい?
私はウォロを見た。
「……必要な時に封印は解かれる。
今解く必要はないのでは?」
「しかし、今、封印を解く鍵の人物が揃ったのです。
サンマチネスの血筋の者と神の贈名を持つ者。
これは必要な時だからではありませんか?」
エドワード達がこちらに来た。
「ネモ、僕がサンマチネスの血筋の者らしいんだ」
ライトが言った。
「家紋にヒマワリが入ってるの?」
「ツェルニー子爵家の家紋には入っていないんだけど……。
母の方の伯爵家に入ってる」
うーん?
「そんな封印って簡単に解いてもいいの? ダメじゃない?」
「とりあえず私の研究について話を聞いていただきたい。
研究所へどうぞ。ご案内します」
ズールが歩き出し、みんなでぞろぞろついて行く。
そういえばオードリーとダイゴがいないぞ。
ハロルドに「ダイゴとオードリーは?」と聞いてみると「探してきます!」と行ってくれた。
研究所に着いた。本当に遺跡のそばの出土品などを管理展示している研究所だった。
国の支援が出ている国立の研究所だから、そう怪しくないかな?
私はライトに小さい声で聞いた。
「サンマチネスってそんなに有名な魔法使いなの?」
「歴史の授業にはこれから出てくるよ。
古代の大魔法使いって」
ズールは展示の間を進んで行き、書庫らしき部屋に入って大きな本を選んで台の上に出してめくった。
「これがサンマチネスの肖像です」
「「ライトと同じだ!」」
私とエドワードが同時に叫んで、思わず顔を見合わせた。
白髪に赤い瞳の成人男性が描かれていた。
「私にはすぐわかりました」
ズールが微笑む。
うーん、白髪に赤い瞳、稀だけど……。ライトだけってものでもないし。
でもそれに家紋にヒマワリが重なるのも珍しいのかな?
「贈名は何の関係あるの?」
「贈名を持つ神の愛し子は古代魔法の世界と密接に関りがあり、古代より神の代理人とも言われます。
ゆえに、封印を破るための神の許可を願う捧げものとして、血を頂きたい」
「……ち? ちって、血ぃ?!」
ちょっと待ってよ、そんな怖い話。
ギーマ先生とかカトレア先生に聞いてみたいよ、なんなのか?
やばいものが封印されてるんじゃないの?!
「えーっと、魔法学校の先生に相談したいのですが……!」
私があわてて言うとズールが頷いた。
「私が今日、学校に連絡します。
学校の先生を交えて、後日、またお話を伺ってもよろしいですね!」
マリアが話をまとめてくれた。
とりあえず、今日は無事に帰れそう。
研究所を出るとハロルドがダイゴとオードリーを見つけ出して遺跡で待っていてくれた。
マリアとジョシュア兄様が先に馬でこの街の役所に行き、学校に連絡を入れてくれることになった。
私達は街まで戻り、昨日と同じレストランで昼食を食べながら話をした。
ライトは古代魔法に興味津々。ウォロにいろいろ質問していた。
「どんな古代魔法が封印されているんだろう。
ね、ネモも知りたいよね!」
赤い瞳が好奇心で輝いている。
「うーん。
でも、血ってこわいな。
私が血でライトの方は? 何か代償を求められるのかも?
ギーマ先生とカトレア先生に相談して、もし挑戦するなら立ち会ってもらった方がいいよ!」
「そうかなあ。
学校が絡むと学校や国に古代魔法が取られちゃうんじゃないかな?」
ん?
「……ズールがそう言ってたの?」
ライトが少しあわてて言った。
「そうじゃないけど、できることなら自分の力で解いてみたいかなって」
「慎重に行った方がいい」とウォロが言うと、エドワードもティエルノも頷いた。
途中でマリアと兄様が戻って来て、明日、ギーマ先生とカトレア先生が来てくれることになったと教えてくれた。
緊急の用件ということで役所の魔道具を使ったやり取りをさせてもらえたそう。
「おふたりは我が家の別荘にご招待することにしたわ!」
ありがとうございます。
そのままセレナの別荘に行き、なぜかみんなで勉強することになり、私は苦手だった歴史の猛特訓をエドワードから受ける羽目になった……。
エドワード、やさしくない……。
かなりスパルタで何度も書き取りさせられた。
もう終わりかと思いきや、教科書を読まされて重要語句を書き出して、それがどの話と結びつくのか、どう重要なのか説明してくれるんだけど、聞いた後、復唱させられてと……。
さすが筆記1位。こんなにやってんだね。
その後、面白いからこれ読め! と歴史の本を貸してくれた。
「ネモは語彙力が少ない。まず増やせ!」
はいはい、確かにダンスの説明をするときにも『なんだその説明!』とか言われた記憶がありますよ。
あー疲れた。
私がげっそりした顔をしていたんだろう。ティエルノが「ネモ悪いな」と話しかけてきた。
「エドワード、厳しいだろ? でも悪気はないんだよ」
「うん、それはわかる……。
でも、やさしくない……。
できない子の気持ちわからないんじゃ?
それに私ができないとなんだかうれしそうだったよ……」
「……それはあるかもな。でも悪気はないんだよ!」
思わず机に突っ伏した私の頭をティエルノがなでなでしてくれた。
あー、小さい子になった気分。
「ティエルノお父さんみたい」
そう言うとティエルノは大笑いした。
読んで下さりありがとうございます。
明日も午前午後投稿する予定です!
よろしくお願いします!




