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38 早く終わらせればいいのに(ティエルノ視点)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

今回はいつものネモ視点ではなくティエルノ視点の話です。

どうぞよろしくお願いします。

 エドワードと俺とセレナは幼馴染だ。

 そしてセレナはエドワードの一番有力な婚約者候補。

 俺はこのふたりを支えていくんだとずっと思っていた。

 魔法学校では寮に将来の友人ともなるべき家柄の令息令嬢が集まると聞いていたのだが……。

 去年度からミーア帝国からの留学生を受け入れることになり、今回は皇子が来るということで同じ1寮になってしまった。

 本来なら、ここでエドワードを王子として支える人物がさらに集められるはずだったのに想定外だ。


 ミーア帝国の第3皇子ウォロはつかみどころのない奴で信用できないし、もうひとりの留学生オードリーはしっかりしていてこちらの様子をよく見ている。

 一番想定外だったのはエミリア・ネモフィラ・アリステラ辺境伯爵令嬢だ。

 アンドレアス第1王子の婚約者アリス様の妹だが、本当に妹なのか?

 男のような制服で行動や発言も男っぽい。

 噂やエドワードがアリスから聞いたという話と印象もずいぶん違う。

 そう、別人ぐらい違う。わざとなのか?


 最初は、できるだけ関わらないようにしようと思っていたが、マイペースに自分達らしく楽しそうに生活していくミーア帝国の3人(ネモはまだウォルフライト王国の令嬢といえるが)に巻き込まれて、俺達はすっかり3人を認めてしまった。

 確かに3人ともとても気楽に付き合えるいい奴らだったのだ。

 ネモもオードリーももう婚約しているということもあり、恋愛感情抜きで友達として付き合えるということも大きかったかもしれない。(ミーア帝国って婚約や結婚が早いのか?)

 

 エドワードだけは3人を認めながらも、どこか最後まで気を許していないところがあって、それを敏感に察知したセレナが戸惑いつつエドワードに従っているところがあった。

 

 エドワードは少し短気な所があるが、その欠点以外はいい奴だと思う。王子としての素質も十分備えているし、王子としての振る舞いや周囲への気配りもできている方だ。

 それなのになぜかネモに対してだけイライラしているような態度を取ることがあり気になった。

 今まであったことのないタイプの令嬢だから気になるのか?

 気になるのがまた癪に障るようで、婚約者であるウォロと仲良くしているネモを見ては(婚約者なんだからある程度は許されると思うのだが)変に突っかかったりとエドワードらしくない姿も見られた。

 セレナの様子もなんだかおかしい。


 セレナとエドワードは似ていると思う。

 お互い大事なことを言わない。もっと思っていることを言い合えばいいのにといつも思う。

 たぶんお互いに将来は婚約し結婚と思ってはいるのだろうが、エドワードの方はセレナを大切にしながらも幼馴染としか見ていないのではと思うことがあり、セレナはそんなエドワードに嫌われまいと顔色を伺うような、ちょっと傍から見ていていびつな関係になってきてしまっているなと感じていた。


 本来ならセレナがエドワードのそんな殻を破る存在になれば良いと思っていたのだが……。

 その存在になったのはネモだった。

 ネモと衝突しながらもエドワードはネモとの仲を深め、花祭りの準備の頃にはすっかり1寮としての仲間意識ができあがった。

 その時、その輪の中にいるようで疎外感を感じていたのがセレナだと思う。


 そして花祭りのダンスでエドワードがネモの頬にキスするという信じられない行動に出た。

 婚約者がいる女性に、周囲に人がいてその注目を集めているステージの上でのそのような行動は今までのエドワードには考えられないことだった。


 何か異常事態が起きている。

 俺はステージから降りてくるエドワードを捕まえて、ネモとウォロから引き離して、話をした。


「ウォロに殺されるぞ! 何してんだ!」と言うと、「キスしたかったからキスしたとしか言えない」と言われた。

 

 こいつ、今までのエドワードとは違う?!

 婚約者がいるネモを好きになってしまったのか?

 しかも隣国の皇子の婚約者だ。どう考えても、無理だろ? 国際問題に発展するぞ?

 そういうことをちゃんと考えて生きてきたはずのエドワードが、おかしくなってる?!


 その直後にネモが連れ去られたり、セレナが倒れたり、いろいろあったが、なぜかエドワードはウォロともネモとも普通に友達としてつきあえるようになっていた。

 ネモは何も気が付いていないが、ウォロはエドワードの気持ちに気が付いていると思う。


 セレナとのこともあるし、俺はエドワードに言った。

 さっさとネモに気持ちをぶつけて玉砕しろと。

 ウォロとネモの様子を見てたら他の奴が付け入る隙なんて無いとわかるから。

 それから言わなかったけれど、ネモとの踏ん切りがついたらセレナともちゃんと向かい合えるのではと思ったからだ。


 返ってきたエドワードの答えに俺は驚愕した。

「ネモが好きだ。ウォロという婚約者がいて思い合っているのはわかっている。

 それでもこの気持ちはあきらめきれない。

 ネモのそばにいる5年間だけはネモを思い続けてみたい」


 5年だぞ! 失恋決定の片思いの恋を5年もし続けるなんて、辛すぎるだろ?!

 チャンスがあればウォロから奪う気なのか?

 そこまでは聞けなかった。


 セレナとエドワードがまた重なって見える。

 ふたりとも自分の気持ちをはっきり伝えて、また次に進めばいいのに。

 俺ならそう思うんだが……。


 ネモにはなかなかエドワードの気持ちが伝わらない。

 ネモが鈍感すぎるのか、ウォロ以外を男性と思っていないのか?


 エドワードもセレナも言ってしまって関係が終わりになるのを恐れているんだと思う。

 あー、見ていて歯がゆい。

 

 孤児院の事件があった後、学校長が能力の高いネモを国外に出さないように王家に進言するとエドワードや第1王子に話してきたそうだ。

 それが実現したら、ネモはウォロと婚約解消になり、エドワードと婚約することになるだろう。

 エドワードはそれを喜ばなかった。学校長に反対したと言った。

 

 ネモがウォロではなく自分を選んでくれたらうれしいと思いながらも、国の力を使って無理やりというのは自分自身、許せないと言う。

 

 こじれてんなー。

 まあ、エドワードらしいと言えばらしいか!


 俺はもう見ていられなくなり、ネモにエドワードと話をするように頼んだ。

 もう早く言っちゃってさ、終わりにした方がいいよ、エドワード。

 ネモなら、その後もちゃんと友達してくれると思うぞ。

 他の誰かにばらされるような事態になるよりその方が絶対いい。


 言えない自分と、相変らず鈍感なネモにイライラしたエドワードは、思わずネモに乱暴に当たってしまったらしい。しかも無意識にキスしようとしてしまったと。危ないだろそれ?!


 幸いなことに鈍いネモは自分がエドワードを怒らせてしまった思って、謝ってきた。

 ネモがエドワードを友達としか思ってないことをこれで思い知ったと思うんだが……。

 まだあきらめていない。王子だからか?

 メンタルどんだけ強いんだ?


 まったく……。


 それでも学年対抗剣術大会の時はネモの存在に助けられた。

 エドワードがネモの声に反応して限界まで力を出し切るのを見て俺は感動したね。

 愛の力って本当にすげえな。


 夏休み前、今年はどこへ行こうかとセレナとライトも誘って相談したら、ネモ達が行くと話していたザーレの街を挙げてきたのでもう笑うしかなかった。

 ネモ達が泊る別荘まで調べてあって(国の情報網すげー)、セレナまで協力し始めた。

 セレナはエドワードの気持ちに気づいている。

 エドワードが失恋するのを待っているのか?

 なんかもうよくわからない。


 でも、そんなエドワードの方が以前のエドワードより、人間として好ましく見えるのはどうしてだろう?

 辛い恋をしている方が人間として大きく成長できるのかもしれない?!


 ただ、ウォロとネモは災難だよなと思う。

 異性同士がふたりきりになかなかなれない制約が多い学校を離れて、やっと家族(恋人)水入らずで過ごせるのに、寮の仲間が学校の時のようにいつも周りにいるって状態。

 

 もし俺だったら、嫌だな。

 ご愁傷様。 

読んで下さりありがとうございます。

今回はティエルノはエドワードに意見もでき、見守ることもできる頼れる親友です。


今日は午後投稿する予定です。

これからもよろしくお願いします。

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