4 石拾い
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなり挑戦しています。
今回は転生物に挑戦しています。
ゆっくりと書き進めていきますので、お付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
10歳になった最近の私の楽しみは『石拾い』だ。
ここアリステラ辺境伯爵領でこのダナンが一番大きい街になった理由が『魔石や聖石が産出する鉱山が近くにあること』だ。
あまり知られていないが古代の遺跡もあり、ここを整備したら観光資源になるのではと思ったことがきっかけで、ハロルドに手伝ってもらって遺跡について本を調べてまとめたり、実際に見に行ってということをしていたら、鉱山だけでなく、今の川原や、昔、川が流れてたと思われる地形の辺りで石拾いができることに気が付いた。
これは観光資源チャンス! とお父様にハロルドの名前を借りて手紙を送ったら、一度見に来てくれることになった。
私がお父様と会っていることを他の人に見られて、アリシア夫人の耳に入ると面倒なので、私は男の子の格好をして、現地で待ち合わせすることにした。
「ここがその川原かい?」
お父様が足元の石をよく見ようと身をかがめた。
「ほら、ここに魔石があった!」
私は小さい赤い魔石を拾い上げて見せ、お父様の手のひらに載せる。
「うん、小さいけれど質は良さそうだな」
「鉱山の方から川を下ってきた鉱石が砕かれたものだと思います。
雨が降った後に来ると大きめの石が見つかることがあるんだよ!」
「お! これは……」とお父様が青い魔石を見つけて拾う。
「これはなかなか楽しいな」
「ね、楽しいでしょ! 子どもにも楽しめるし、宝探し的な感じもするし!
遺跡を見学して、その後石拾いを楽しめるという観光資源にならないかな?」
「うむ、いいアイデアだと思う。
資料はハロルドとエミリアがほとんどまとめてくれているから、明日にでも街の有力者や商会議所のみんなに提案してみよう」
私達はその後も石拾いを楽しみ、最終的に小さめの魔石を7個、小さめの聖石を2個、少し大きめの結晶がきれいな聖石を1個拾えた。
拾った石もまとめて30分ぐらいの間に3人で拾えた物として資料に加えることにした。
その後、辺境伯爵家の金銭的な援助も約束され、遺跡は整備され、説明の札や冊子や観光地図も作成された。
ウォルフライト王国だけでなく、隣国のミーア帝国にも観光地として売り込みをかけることになったとのこと。
確かに、王都より、ミーア帝国領の方がここに近い。
「いろいろな人が楽しみに来てくれるといいな! 石拾い楽しいし!」
私の言葉を聞いてお父様が言った。
「もしかしてエミリアは領地経営に興味があるのかい?」
「興味はそれほどない。ただ石拾いが楽しかったから……」
お父様はため息をついて話し始めた。
「実は辺境伯爵を継いでくれる人物を探さないといけないんだ」
「あ、アリスは王子妃になるから?」
「私はエミリアに領地経営や商才があると思うんだが……」
「でも、それは難しいでしょ?
アリシア夫人やアリスが嫌がると思う。
ふたりが納得するような才能のある親戚の男の子を養子にしたら?」
「……その子がいい子だったら、エミリア、婚約しないかね?」
「いや、それはやっぱりだめだよ。
私は、辺境伯爵家から離れた方がいいと思う」
お父様は寂しそうな顔をした。
「お父様の娘ってことは変わらないんだから!」
私が励ますように言うと、笑ってくれた。
お父様が王都に戻ってしばらくしてから、ハロルドと石拾いの川原に行くと、私より大きな少年が石拾いをしていた。
ちょっと異国風な服を着ている。
「ミーア帝国の方のようですね」とハロルド。
「こんにちは!」と私は声をかけた。
今日も男の子の格好をしてきたので、男の子なら知らない少年にこちらから声をかけても大丈夫なはず。
「こんにちは。地元の方ですか?」
「はい! 石拾いにいらしたんですか?」
「僕は珍しい石収集が趣味でして。ここは素晴らしいですね!
魔石と聖石の両方が産出する土地は珍しいです!」
おお、なんか趣味が合いそうな人だな。
「遺跡も見に行かれましたか?」
「この後行く予定です!」
「良かったらご案内しましょうか?」
「それはありがたい」
その時「ダイゴ様……」と異国の騎士風な服を着ている男の人がそばに来て少年に声をかけた。
ダイゴ様と呼びかけられた少年は私より年上。
アリスよりも年上そうだから13、4歳くらいかな?
銀髪に明るい緑色の瞳。
きれいな男の子だ。
「ミクラ、大丈夫だ。
話の途中にすまない。
これは僕の従者でミクラと言います。
まだ、名を名乗っていなかったね。
僕はダイゴ、ミーア帝国から観光に来ました」
「私は……」と言いかけてちょっと困る。名前を名乗ったら女の子だとばれる。
「名前はネモです。ダナンに住んでいて、遺跡や石拾いによく来ています。
よろしくお願いします。
一緒に来てくれているのは私の家の執事でハロルドといいます」
「俺はミクラだ」
従者の人ももう一度自分で名乗ってくれた。
黒髪に青い瞳で涼し気な雰囲気のカッコイイ男の人だ。
背も高くとても強そうに見える。
「ネモは何歳?」とダイゴに聞かれる。
「10歳です」
「僕の弟と同じだ!
僕は13歳だよ。
今度弟を連れてくるよ!
いい友達になれそうだ!」
喜んでくれているけれど……。
女だと最初から言えばよかったかな?
ちょっと心が痛んだ。
石拾いの後、それぞれ乗って来ていた馬車で移動し、遺跡を案内した。
「今日は楽しかった! 今度また弟と来た時に連絡したい!」
ダイゴにそう言われて、ハロルドが自分の連絡先を教えてあげていた。良かった!
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!