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32 初めての反撃

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 その週の半ばに、学校長に呼び出された。

 呼び出されたのはエドワードと私のふたり。

 どうやら孤児院での出来事が教会から学校に報告されたよう。

 

 放課後、オーサム先生に付き添われて学校長の部屋に入るとアリスとアンドレアス第1王子もいた。


 孤児院への慰問について聞かれたので、私達は王都教会孤児院への訪問は2回目であること。

 私自身はダナンにいた時、月1回定期的に孤児院への慰問を続けていて、慣れていることを説明した。


 アリスと第1王子には、当日慰問に行った経緯や差し入れのお菓子をどのように選んだのか、子どもの命を危険に晒すようなことになりどう思うのか、と厳しい質問がされた。


 第1王子がエドワードから孤児院への慰問について聞き、アリスに話したところ、アリスが素晴らしい行為なので行きたいといい、さらに私達と同日の訪問を希望したとのこと。


 だから、なんで同じ日なんだよ!

 聞いていて思ったが、逆に同じ日で良かったのかも……と思った。


 菓子店で孤児院への慰問の品を包んで欲しいと依頼して、用意された品を持って出たので、年齢によって危険なものがあるとは認識していなかったこと。


 その時、アンドレアスの言葉を遮ってアリスが言った。


「ですからあのような菓子を用意した菓子店の責任です! 

 のどに飴を詰まらせた子も助かり、大事に至らず良かったです。

 でも、あの子が気をつけて食べていればこのような事故も起きなかったはずです!

 今回、菓子店の不注意、子ども自身の不注意が偶然に重なり、このようなことが起こりましたが、私達4-1寮の善意は変わりませんし、責任を問われるようなことはないはずです」


 私はその言葉を聞いて、怒りが湧いてきた……。

 今まで、アリスとアリスの母親にはできるだけ反撃しないようにしてきたが、この言葉はどうしても許せなかった。

 頭の中にアリスに助けを求め手を払われた男の子の姿が浮かぶ。

 ユーチャリスに転生の間に置き去りにされた私の記憶も重なった。


「アリス!

 まだ3歳にしかなっていない子どもの不注意ってどういうこと?!

 3歳の子に自分で責任取れって?!

 お店の人だって細かく年齢や気を付けることがないか伝えていれば、実際に以前どの様なものを用意したとか記録を見たり、孤児院に問合せしたりしてくれたはず!

 子どもの好きな物としか言わなかったのはあなた達でしょ!

 シスターと私が飴は危ないけれど、せっかくの好意だからと児童部へ回そうとしてたこともちゃんと伝えたよ!

 それなのに取られるから早く食べろなんて!!

 食べることを急がせないでと言ったのに!!

 あの事故はお店でも子どものせいでもない。

 アリスがやったことが重なって起きたことなんだよ!!

 第1王子! あなたもあなただ!

 子どもにただ物を与えればいいわけじゃない! 与える側の責任があるんだ!」


 途中からもう止まらなくなってアンドレアスにまで怒ってしまった。

 オーサム先生もエドワードも私の剣幕にびっくりしている。


 アリスが大きな目に涙を浮かべアンドレアスにしがみつきながら叫んだ。

「エミリアが私をいじめる!

 ひどいわ!

 私だって子ども達の笑顔を見たいだけだったのに!」


 アンドレアスは戸惑いながらもアリスをかばうようにして言った。

「エミリアの言っていることは正しいが、アリスもわざとしたわけではない。

 不幸なことが重なり事故が起きてしまったが、君が事故を防ごうとしてくれていたことや子どもの命を救ってくれたことは感謝している。アリス、君もお礼を言うべきだ」

「嫌よ! 私を責めたのよ!

 私のせいじゃないのに!

 お店や意地汚い子どものせいなのに!!」

「アリス!!」

 私は本当にブチ切れた。アリスに掴みかかろうとしてエドワードに止められ、そのまま叫んだ。

「子どもをそんな風に言うな!!

 あなたは将来王を支える立場になる人でしょ!

 国民に対して責任ある立場だ!

 そんな言葉を自分を守るために吐くなんて恥ずかしいと思いなさい!

 あなたの命もあの子の命も、同じ命なのよ!」

「ネモ! 落ち着いて!

 兄様、あの日の帰り、ネモは怖くて震えて泣いていたんだよ。

 あの子の命を助けるために真っ先に駆けつけて、命に関わる責任を最初に背負ったんだ。

 アリスはあの子の手を払って逃げたけどね。その残酷さがわかるかよ!

 兄様がちゃんとアリスに伝えるべきだ! 先生方もね!」


 エドワードそんな風に思ってくれていたんだ……。

 私の中で怒りがすっと治まった。身体の力を抜いて、エドワードを見た。

「エドワード、ありがとう」

「落ち着いた?」

 私はこっくり頷いた。


 アリスはわなわなしてるし、アンドレアスも呆然としてる。

 学校長は黙ってるし、オーサム先生は驚いた表情で私達とアンドレアス達を交互に見ている。


 あー、やっちゃったなー。

 でも、言いたいことが言えてすっきりした。


 やっと学校長が口を開いた。

「状況はよくわかった。

 4-1寮はもう訪問しての孤児院への慰問は行わないように。

 1-1寮はぜひまた来てくださいと孤児院からお礼と連絡が来ている。

 君達は我が校の誇りだよ。これからも自分達で考えて良いと思うことに取り組んでいきなさい」


 私達は戻っていいということか?

 オーサム先生を見ると頷いたので「では失礼します」と言って出ようとすると、なぜかエドワードだけ残る様に学校長が呼び止めた。

 私はエドワードだけ残していってもいいのか躊躇したが、エドワードが「大丈夫だから」と言ってドアのところまで送り出してくれた。


 1寮まで戻ると寮の前でティエルノ達が剣術の自主練をしていた。

 おかえりと声をかけられたので、学校長との話し合いは終わったけれどエドワードはもう少し話があると言われてまだ残っていることを伝えた。

 ネモも自主練やるか? と言われて、やる! と返事して部屋に準備しに戻った。

 寮の前にいればエドワードが戻ってきた時すぐ会えるしね。


 なかなかエドワードは戻って来ず、夕方遅くなったので私達は自主練をやめてそれぞれの寮に戻った。

 夕食の準備をしているとエドワードが帰ってきた。

 すごく疲れた表情をしている。

「おかえり! お疲れ様。

 何の話だったの?」

 私は気になって話しかけたがエドワードは少し微笑んで「今はごめん。孤児院とは関係ないことだから気にするな」と言った。




  ◇ ◇ ◇




 6月最初の休みの日、ダリルも誘ってミクラとジュンの家に行った。

 ダリルは男爵令息だったけれど従者はいないという。

 11人か。

 でも、男子は剣術の練習だし、女子は何するかな?

 あ、ライトもいるんだ。魔法の練習してもいいかも。

 私はどっちにも顔出すつもりだけど。


 女子とライトは部屋で魔法についての話をしたり、どんなイメージをして取り組んでいるかなどを話していたが、セレナが庭を気にしていたので様子を見に行くことにした。

 タオルたくさん用意したよ。

 セレナに1枚渡しておく。

「エドワードの汗拭いてあげて」

 セレナはちょっと赤くなったが、タオルを抱えて頷いた。

 私とオードリーはたくさんのタオルを抱えて庭に行った。


 セレナはエドワードの所にまっすぐ行ったし、私とオードリーはタオルを他のみんなに配って歩いた。

 最後の1枚をウォロに渡しながら「どう? 楽しい?」と聞いた。

「ああ、けっこう楽しいよ」

 にっこり笑ってくれて、私もうれしくなる。


 ダリルがそんな私達を見て言った。

「1寮は男子と女子の仲が良くていいな。2寮は全然ダメ」

「え、そうなの?」

 オードリーが驚いた。

「女子、自分の部屋からほとんど出てこないよ。

 食事の時ぐらいだし、登校や朝食も男子と女子といまだに分かれてる」

「そうなんだ。うちも最初はミーア帝国のこっちの3人とウォルフライト王国の4人でなんとなく壁あったけどね。男女で別れてなかったから、仲が良くなるの早かったのかもね」

 私が言うと、ティエルノが笑って言った。

「うちの寮にはネモがいたからな」

「あれ、ティエルノ、私のこと褒めてくれるの?」

 私が言い返すとティエルノが「ああ、女子なのに男みたいなネモがいてくれて本当によかったよ」と言って逃げた。

「ティエルノー!」

 私が追いかけるとみんな笑った。


 ティエルノが家の裏まで逃げようとするので「ちょっと! 逃げてんの本気?」と声を掛けたが止まらない。

 なんだ?

 裏に回った壁のところでティエルノが急に止まった。

「何でこんなところまで……」

 私が怪訝そうに言うとティエルノが「ちょっと相談」と言った。

「あのさ、ウォロを応援するのはわかるけど、4人全員応援してくれない?」

「応援してるよ?」

「いや、そのさ、エドワード、元気ないんだよね。なんでかわかる?」

「……この間の学校長との話?

 でも、あの時聞いたんだけど、気にするなと言われて……。

 それ以上聞けなかったんだよね。それ以外になんかある?」

「あー、それも関係あるか。そのもう少しエドワードの話聞いてやって欲しい」

「……私が?」

「うん」

「……とりあえずわかった。機会があったら話しかけてみる」

 その時、エドワードが私達の様子を見に来た。

「何やってんだ?」

「いや、その……」

 ティエルノが焦っているので助けようと私はエドワードに言った。

「もう練習始まるの?」

「いや、まだだけど」

「じゃあ、エドワード少し話さない?」

「なんで?」

「ほら、なかなかエドワードと話せてなかったから気になってて」

「ティエルノともその話を?」

「うん、まあ、エドワードに話を聞いてもいいかな? と聞いてた」

「俺、戻るわ」

 あ、ティエルノ逃げたな!


「……ティエルノに俺と話せとか言われたの?」

「エドワードを心配してることだけ聞いた。

 私もこの前の学校長との話の後、全然話す機会なかったし、気になってた。

 あの時はありがとうね。

 エドワードが言ってくれたことうれしかったよ。

 だから、私もエドワードが悩んでいることがあれば、話を聞くけど……」


 エドワードはちょっとの間、私のことを見つめたけれど、目を逸らすと言った。

「言わない。ごめん、言えない」

「そうか、わかった。

 言える時が来たら言って。待ってるから。

 じゃあ戻ろう」

「待って!」

 左手首をつかまれて引き留められる。

「何?」

「言ってもいいの?」

 なんだ、疑問文に疑問文で返されたぞ?


「……言えないんだよね? 無理しなくていいよ」

 私も疑問文で返しちゃったよ。

 なんだこの不毛な会話。

 くすっと笑ってしまった。


「何で笑う?」

 エドワードが不機嫌そう。


「あ、ごめん。なんかお互い疑問文でずっと会話してるって気づいておかしくなって。

 言いたいのか、言えないのか、それとも言わせたくないのか。

 なんだかよくわからなくなる話をしてるな、と」

 つかまれた手首を押されて壁に押しつけられた。

 頭はポニーテールのおかげでそこまでぶつけなかったけれど、思わず「いてっ!」と言って目を閉じてしまい、目を開けたら目の前に怒った表情のエドワードの目があってびっくりする。

「エドワード?!」

 焦って上ずった声になってしまった。

 エドワードはすぐ身体を離し、つかんでいた手首を離すと「ごめん」と言って走って行ってしまった。


 そんなに私、怒らせるようなことを言っちゃったかな?

 ティエルノ、ごめん。なんか逆効果だったかも!!

読んでいただきありがとうございます。

今日も長めの話になったので午後の投稿はお休みします。

どうぞよろしくお願いします。



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