後日談 エドワードとサーシャの結婚式(前)
完結後の後日談となります。
ネモとウォロは22歳になっています。
息子のレオンハルト(レオ)は3歳!
「じゃあね、ネモ! ウォロ!
結婚式には絶対来てよ!」
サーシャが私の手を取って何度目かの確認を取ってくる。
私は笑って答えた。
「必ず行くよ!
サーシャ、エドワード、博士課程修了、本当におめでとう!
それから、結婚もね! 大丈夫、絶対行くから!」
「ウォロ! 絶対だからね!」
レオを抱いているウォロを睨むようにして言うサーシャ。
ウォロが嫌がらせでウォルフライト王国に里帰りさせないとでも思ってるのか?
「そんなに睨まなくても……、レオも連れて行くから。
それにカノンとノアも!」
ウォロのその言葉にサーシャは頷いてから「あー、オードリーが来られないのは残念……」と呟いた。
そうなのだ、オードリーは2カ月前に出産したばかり。かわいい銀髪の女の子をね。もう陛下とダイゴがメロメロだよ。名前はルチア。
直系ではないので貴石の名前はつかないけれど、ダイゴのルチルに近い響きで、しかも、私達にとっては、とても大事な名前だ。
なので、今回はダイゴとオードリーは大事を取ってミーアでお留守番。
「もう、すぐに会えるんだから。それにオードリーももう少しすれば、ウォロに転移魔法で連れて来てもらえばいいだろ!
じゃ、ウォルフライトで待ってるからな!」
エドワードがそう言って、サーシャと従者、迎えに来た文官と一緒に転移して行った。
私達はエドワードとサーシャが転移帰国した1週間後、約束していた日時にウォルフライト王国王城に転移した。
私、ウォロ、レオ、カノン、ノア、それに私のメイドのミレイユ。
マイベルとレイモンドも招待されているが、レイモンドの仕事の関係で結婚式の前日に転移してくるそう。レイモンドも転移魔法が使えるようになっている。
ウォルフライトの王城に転移するといつもの客間に出た。
アリスが「ネモ!!」と抱きついてくる。
「アリス! 体調はどう? アンドレアス、アンドリュー! 元気だった?」
私はにっこり微笑んでアリスをそっと抱きしめ返した。
アリス、第2子懐妊中なんだよ。めでたいこと続きだね!
ダーゼン、陛下、マリア、アルテイシア、ネイサン、ダリル、アポロ、ティエルノ……。
もちろんエドワードとサーシャもいた。
「ずいぶん勢ぞろいして!!」
ウォロが少し驚いたように言った。
「レオンハルトが驚いてないかしら?」
マリアが心配そうに言ってくれるが、ウォロの腕の中のレオはニコニコしている。
陛下が「レオンハルトは大物だな」と笑った。
アリスの体調もあるので、私達は離宮に滞在することになった。
今の離宮はエドワードの宮みたいな扱いになってるらしい。まあ、昔から、王子達が友達を呼ぶ場所だったしね。
アリスとアンドレアスは結婚してから王城に住んでいたし、まあ、エドワード達の新居って感じかな。懐かし過ぎるけど。
アポロとダリルは同じ騎士団に所属しているそう。もうアポロは副団長なんだとか!
ティエルノとマリアとネイサンは文官。
マリアはダナンから王城勤めに戻っている。辺境伯爵家の屋敷から通いで来ているそう。屋敷ではお父様がかわいいお孫ちゃんのティーナの面倒をよく見ていてくれるそう。ティーナは今月3歳になる。レオと同い年。
アルテイシアは王城に女官として勤めていて、アンドリューの世話係を任されている。すごくない?!
ダーゼンはランスと同じく、陛下直属の文官というか交渉係としてこき使われて、世界のあちこちに行くことが多い。最近はふたりで神聖ホウエン王国の方に行くことが多いと聞いていたが、私達を迎えるために王城に来てくれてたみたい。
そんな話をしているとあっという間に夕方になり、ライトとセレナ、エリザベス、ランスも会いに来てくれた。
ランスがカノンを見て「ずいぶん大きくなったな?!」とびっくりしている。
そうなのだ、ホウエンの方の魔道具関係の仕事を任されて、しばらくミーアに来ていなかった。ホウエンの魔道具の規制とか整備するの大変そうだったしね。
カノンがふふんという感じで言う。
「もうあと少しで成人よ!」
「ミーアでは、だろ!」
「ネモだって16歳で結婚したもん!」
「ん? ……婚約してたっけ?」
「……してないけど」
「相手がいないなら、結婚できないだろうが! そういうこと言うのは早いだろ」
ランスに言われて、悔しそうなカノン。
ノアを抱っこしたまま、ふいっと部屋を出て行ってしまう。
私は慌てて後を追おうとしたら、ミレイユが「私が参ります」とカノンを追ってくれた。
何だか、ランスとカノンはまだ小さい頃のままなような……。
エリザベスはティエルノと婚約中で、来年結婚する予定だという。今は王都の辺境伯爵家の屋敷で花嫁修業的なことをしているそう。エリザベスなら、そんなことしなくても全然大丈夫な気がするが……。
「ルーシーは?」
私の質問にエリザベスが教えてくれた。
「学校の先生をしているわ!」
「えっ、魔法学校の?」
「ううん、王都から少し離れた場所にある学校なんだけど」
それからメラニーとサミュエルも婚約して、メラニーは薬師の資格を取り、学校を卒業してからは病院専属の薬師をしているそう。サミュエルは外交官になったそう。あら、レイモンドと同じだね。
みんな元気にやっているんだ。良かった。
ライトとセレナは週に2日ぐらいミーアで顔を合わせているからね。
「明日は魔法学校に行くのよね?」
セレナが確認するように聞いてくる。
「うん、家族で訪ねようと思って」
次の日、魔法学校へ。時々顔を出すなんて言っておきながら、結構忙しくて、全然来れていなかった。ウォロは何回か来ていたみたいだけど。
ミレイユは王城のメイド副長をしているメリルの案内で王城のメイドの仕事やウォルフライト王国のマナーとか教えてもらったり、案内してもらうという。
ふふ、メリルも元気に働いているんだ。
ウォロ、レオ、ノアを抱っこしたカノン、私。それにお父様とマリアがティーナを連れて来てくれて一緒に行くという。
ランスとダーゼンも一緒に行くという。
ティーナは初めてレオと会ったんだけど、お互い気に入ったようで手を繋いでニコニコしている。
金髪に銀の瞳のレオ。茶色の髪に青い瞳のティーナ。
かわいいふたり。
お父様がもうすっかりおじいちゃんという感じで「かわいいな。本当に孫はかわいい」と言う。
その言葉にダーゼンが「そうか、それは私も、楽しみだな」と微笑んで言った。
レイモンドとマイベルもそろそろ結婚という話になっている。アルテイシアもネイサンと婚約しているし、ね。
学校に到着すると、うおーっ、懐かしい。あっという間に気持ちが学生の時に戻って行く。
受付で手続きして食堂に向かうとカトレア先生とギーマ先生とクラウス先生が待っていてくれた!
みんなで学校内を歩いていく。
ノアもカノンの抱っこから降りて、自分の庭のような顔で歩き始めた。その姿にレオとティーナがちょこちょこついて行き、マリアとランスとカノンが様子を見ながら追ってくれている。おかげで安心して先生達と話をしながら歩くことができた。
今年度からカトレア先生が学校長になった!!
孤児院へのボランティアは続いているそう。それから聖魔法の薬作りのラボも、それに加えて魔道具作りの工房も作られたそう。
「ネモとウォロがこの学校に残してくれたものね!」
カトレア先生の言葉にうれしく思った。
生徒達はとても明るくて元気!
ふふ、なんだか、本当に懐かしい。
食堂の2階の客間を使わせてもらい、昼食を食べている時にギーマ先生に聞かれた。
「今は何に取り組んでいるんだい?」
私とウォロは顔を見合わせた。
「えーと、魔道具研究所やミーアの魔道具協会や警護局との体制とかはスムーズになった。
魔道具職人の養成もできている。闇の職人とかにならないようにね、効果は出ていると思う。
やっと、新しい魔道具の作成とかに取り掛かれるとこまで来たと思う」
ウォロの言葉にクラウス先生が頷く。
うん、最初はクラウス先生にとても協力してもらったもんね。
「ネモは? 薬の工房や学校の方は順調?」
クラウス先生に言われて、私は大きく頷いた。
「はい! 順調です。
薬の工房はカノンが協力してくれて、聖魔法使いの薬師を育てているところです。それにミーアの薬草を使った薬作りも一緒に研究しています。
国立学校の方は聖魔法クラスを担当してます。ウォロとレイモンドも忙しいけれど、魔法の実技講習とか時々やってくれるし。
誰でも学べる学校の方はオードリーやマイベル、それにセレナやカノンも手伝ってくれて!
そちらにはレオと一緒に登校している感じ。
それから、今、新しい親子のための施設を作っています」
「親子のための施設?」
ギーマ先生が興味深そうに質問してきた。
「はい、ミーアはまだ女性の地位が低いところがあって。
あ、皇帝家ではそんなことはないんだけど。
なので、民の中には母子で苦労している人がいるというか……。
ちょうど第4宮の敷地が空いていて……、そこに私達の宮を新しく建てないかという話になって。
なら、一番広い第1宮が空いている状態だし、そこを子どもを連れたお母さん達が気軽に寄って相談したり、子どもを遊ばせてる間にこれからのことを考えてもらえるような……」
ランスが気が付いたように言った。
「あ、2がシズカ宮、3がマリヤム宮、5がエルメス宮だっけ?」
「うん、1と6が空の宮。7はダンテの母のメイリンが使っているから。
一番大きな第1宮なら、奥に母子で泊まれるような施設も作れると思って。
保護しなければならない母子もいそうだしね。でも、なんでもかんでも受け入れちゃうと利用してやれって悪いことを考える人もいそうだし……。
警護局の子どもの怪我について対応している部署と協力していく予定」
「子どもだけでなく、親子で保護する必要がある場合ということだな?」
ギーマ先生の言葉に頷く。
「はい、子どもだけの施設なら、孤児院があるけど。一緒に逃げてきた親子が一度別れなきゃいけないし、母親を保護する場所がないかもと。それを防ぎたいなと」
カトレア先生がため息をついた。
「ネモはそういうことに気が付くのね。
皇太子妃になって、時間ができれば、聖魔法の研究をどんどん進めていくのではと期待していたけど……」
「そうですね。薬の効果を調べる魔道具とか……、そのままになっちゃってます」
私が反省の気持ちを込めて言うと、カトレア先生が首を振った。
「いいえ、ネモがしているのは素晴らしいことよ。
本当に、人のためになること。あなたのことを誇りに思うわ!
私ももっと頑張らないと! ね、ギーマ!」
「ああ、ネモ、その施設ができたら、見に行きたい。その時は警護局の担当の話も聞いてみたい」
ギーマ先生が力強く言ってくれる。
「ええ、もちろん! 大歓迎!
ウォルフライト王国が取り組んでいるやり方とかもあれば、こちらも知りたい!」
「ネモ、声が大きい」
ウォロに注意され、口を噤んで後ろを見ると、客間のソファを利用してレオとティーナがお昼寝していた。
「あ……」
「ネモは夢中になるとすぐ声が大きくなるから」
ウォロに注意され、口を押さえてコクコク頷く。
カトレア先生とギーマ先生、クラウス先生が微笑んだ。
「フフッ、そんなところ、全然変わっていないわね」
カトレア先生が懐かしそうに言った。
読んで頂きありがとうございます。
エドワードとサーシャの結婚式のためにウォルフライト王国に来ています。
久しぶりに懐かしいみんなに会えてうれしいネモです。




