305 最後の魔法対戦(後)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
完結まで後5話になりました。
最後までお付き合いどうぞよろしくお願いします。
エリザベスが出てきてこの試合の勝者が優勝であることを宣言する。
先生達が魔道具を確認。
試合場の観客達はシーンとしている。
ウォロが強いのはよくわかっている。
エドワードも予想されてた。
ライトは一度だけ決勝に残ったことがあるが、その後はくじ運が悪く決勝前にその年の優勝候補と当たってしまうことが続いていたからね……。
だから、みんなびっくりしているんだと思う……。
試合が始まった。
さすがにふたりとも防御壁から始めた。
ウォロは土、ライトは水だ。
そして魔法陣を張り始める。
ウォロの後ろに蜂の巣のような魔方陣が広がり、ライトの後ろには巨大な円の回りに小さい円がくっついているような不思議な魔法陣が現れる……。
「曼荼羅?」
私が呟く。
セレナがびっくりした顔で私を見た。
「知ってるの?」
「あ、昔、古代の宗教画であんな絵を見たことがあって……」
「………ミュラー伯爵家の古い本にね、あった魔法陣なの。
ライト、すごく研究して……」
魔法で名高いミュラー伯爵家門外不出の魔法陣?!
巨大な円からは魔法が増幅される効果が。
小さな円は回転することで、打ち出すスピードを上げることができるようだ。
水球が真ん中の魔法陣で増やされ、回転する魔方陣から切れ間なく打ち出されてくる。
ウォロは自分の魔法陣に巨大な火魔法を入れ、水球が防御壁を濡らしたのを乾かして蒸発させている。
そうなんだ。
濡れて、凍らせられたら、土の壁は脆くなる!
流星群をライトの上に降らせる。
ライトが水を含んだ重い竜巻を大きな魔法陣から打ち出し上空へ急上昇させる。
うまく弾くことができた。
おお、ライト!
ウォロの防御も攻撃に対して、対策をばっちりしてきてるんだ!!
ウォロがエドワードの時と同じように古代魔法で泥を地表に引きずり出した。
えっ、ライトは水を凍らせることができるから?!
怪訝に思っていると、泥をライトの防御壁に向かわせたのが見えた。
ライトの水の防御壁が泥で濁り、土が一定以上入り込んだことで、ライトの水の属性魔力から逃れて崩壊し始める。
そこへウォロが火魔法を打ちこむと、水魔法は相殺され、乾いた泥の欠片がばらばらと落ちる。
ウォロがストーンバレットを魔法陣に打ち込む。
たくさんのストーンバレットが打ち出されて防御壁を無くしたライトに向かう。
ライトが風魔法で竜巻を展開したとたん、乾いて崩れた泥の残骸から土埃が湧き上がる。
ウォロがニヤリとした。
あ、もしかして?
土を含んだことで相手の属性魔法の威力が落ちる?!
土は泥でも土埃でも、どんな状態でも土なんだよね。
だから、風や水と混ぜやすい性質があると言えるだろう。
でも、いままで、人の違う属性魔法に土を入れ込んで弱めようとする人なんていなかった……。
ウォロは属性魔法は火と土だけど、聖魔法も古代魔法も得意なので、今は聖魔法を封じられて戦っている状態だ。
試合では、その条件で戦うことがほとんどだ。
属性魔法をもっと他の形で使える方法がないかずっと考えていたんだろう。
ライトの風魔法の竜巻が、威力を失い、消えた。
ライトは土が入り込まないよう、氷魔法の防御壁を自分の回りだけに素早く展開。
ストーンバレットを止めた。
土の防御壁にアイスバレットで氷を大量に打ち込む。
ウォロが氷の威力を弱めるため、ファイアを魔法陣で打ち出す。
今度はライトがニヤリと笑った。
あ、ウォロ、氷を熱で溶かしたらっ!!
土と交じり合う前にライトが溶けた氷を再度凍らせる。
ウォロの土壁にひびが入る……。
ライトは大きな竜巻を作り出し魔法陣に入れ、真ん中から出現した大きな竜巻を、土の防御壁の上部に当てて行く。
さっきのミカと違って、削るのではなく押している。
下にひびが入っているからだ!!
ウォロが防御壁が崩れる前に崩すと、ライトが作り出した土入りの氷を魔法陣に入れ打ち出した。
ライトは慌てて水の防御壁を張ったが、そこに土入りの氷が入り込んで、またもや壁を崩壊させようとしている。
ウォロの魔法陣から火球が飛び出し、ライトが慌てて竜巻を展開して巻き取った。
その隙にウォロは再び土魔法の防御壁を立ち上げる。
どっちにもダメージが入っていない!!
一度、そこで試合終了になった。
ギーマ先生が説明する。
「試合終了時間となったが、双方どちらにもダメージが入っていない!
このまま、試合を再開し、ダメージを先に与えた方を勝者とする!」
試合が再開される。
ウォロは土の防御壁。
ライトは竜巻を防御壁という感じかな?
ウォロが小さな火球をたくさん魔法陣に入れを繰り返す。
たくさん打ち出されてきた火球は巨大に育っていく。
ライトも水球をたくさん大きな魔法陣に入れて巨大にしていく。
水と炎なら水の方が有利かな……。
ウォロがストーンバレットをライトの水球に打ち込む。
水でしかも厚みのある水球だと貫通できず、水の中に……。
水球の中でストーンバレットがゆらゆらしてぼろぼろ崩れ始める。石じゃない! 土の塊?!
水球が、水の属性魔法が維持できなくなる!!
慌てるライトにウォロは鋭く硬いストーンバレットを打ち込んだ。
ライトが竜巻を移動させるが、竜巻を突っ切って、ストーンバレットがライトに被弾っ!
ダメージが入った……?!
ギーマ先生が手を挙げて、試合終了……。
シーンとしている。
「優勝、5年、ウォロ!」
ギーマ先生の声に、実習場の観客席から歓声が沸き起こる!
私とセレナは抱き合って泣いていた。
サーシャが私達のところに駆け寄り、抱きついてきて叫んだ。
「ウォロ優勝おめでとう!
ライトもすごく強かった!!
エドワードも……、頑張ったんだからぁ!!」
3人で大泣きする。
泣きながら試合場を見ると、エドワードやミカがふたりの所に駆け寄り、4人で抱き合っていた。
そこにネイサンとティエルノが駆け寄る。
それを見て、トーマとダリルが「行こう!!」と観客席から試合場に走って行く。
5年男子が、4年男子がなだれ込んでいき……、決勝に残った5人を次々に胴上げしている。
なんじゃこりゃ?!
私はおかしくなって、泣き顔で大笑いした。
そんな私を見て、セレナとサーシャも同じく笑った。
表彰式後、私は父様やダーゼン達とウォロの元へ行った。
ウォロが笑顔で私を抱きしめてくれる。
私もぎゅっと抱きついた。
「おめでとう……。
疲れたよね。
見てて、はらはらしたし心配した……」
「負けると思った?」
「ううん。
でも、少し不安だった。
私はハラハラドキドキしたけど、ウォロは楽しかったんだね」
「うん、すごく」
「それは良かった!!」
エドワードとサーシャも、ライトとセレナも笑ってた。
うん、なんだかみんなで優勝したみたいだね。
5年生、優勝!
みんな大好き!
◇ ◇ ◇
魔法対戦が終わってた次の日から、またいつもの勉強の日々。
試験の準備に、卒業レポート、資格試験……。
12月になり、オードリーから卒業作品として提出する小説の誤字脱字チェックを頼まれた。
「ネモにしか、頼めないのよ!!」
えー、しょうがないなあ。
なんか責任重大……。
黙読していると見逃しやすく……。
しょうがないから、少しゆっくり目のペースで音読していく。
すごい時間がかかったけど、何とか2周できたから……。
もう許して……。
3組の若い恋人達が愛を育んでいく1年間の様子を短編を繋げて描きだしていて。
それぞれに同じ友人が出てきたり、友人として他の恋人達が登場したり、イベントごとに違う恋人達の視点でとか、工夫がいっぱいされていて面白かったんだけど……。
なんか、これって、1寮のことをどーしても想像させるんですけど……。
まあそのまま書いてないのはわかるよ。
王子じゃなく、公爵令息にしてたりしてるけど、架空の学校にしてるけど……。
この魔法対戦戦闘狂の鈍感な感じの女の子が、もしかして私?
この上級生と恋しているのはオードリーとダイゴの妄想が入ってるみたいだよね?!
まあ、ちょっとしたわちゃわちゃはあるけど、うまく校則違反にはならないようにしてる……か。
学校生活の楽しく面白いところが良く出てるし。
2年生の花祭りから3年生の花祭りまでをうまく繋げているから、恋愛模様もまだ初々しい感じでいいと思う。
まあ、もういいや。
面白いよ。
カノンが喜んで読みそうだな。
読んで下さりありがとうございます。
あと少しですが、どうぞよろしくお願いします。




