302 男子会?!
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
女子会はその後、エリザベスとアルテイシアに聞かれて、学校の授業選択の話や今後の予定とかそんな話をした。
ふたりからは孤児院の慰問や勉強会が下の学年にうまく引き継がれて続いている話とか、生徒会や学校で話題になっていることを教えてもらったりした。
ミーアのスパイス料理が流行していて自分でスパイスを調合する猛者も現れたのだとか。
寮の部屋がスパイスの香りですごいことになってるとか……。
「下町のレストランにも、スパイス料理、食べに行きたいなあ」
私の言葉にセレナも「私も行きたいわ」と言った。
サーシャが「デートで?」と聞く。
セレナが間髪入れずに答える。
「ううん、友達とわいわい行きたいかな」
ライト……大丈夫か?!
夜、遅くなってからサーシャが言い出した。
「ちょっと偵察に行ってみない?」
「野営の様子? いいね!」
オードリーが面白そうに返事する。
あんまり気が進まないけど……。
向こうは向こうで好き勝手なこと言ってそうだしな。
でも、ライトとセレナのことも気になるし……。
私達は上着を羽織ると部屋の灯りは付けたままにしてこっそり離宮の裏口から庭に出た。
たぶん、前に野営の練習したとこだよね。
そこからだと離宮の窓が遠目だけど見えるんだよ。
私達はこっそり焚火の灯りを眺めて、どのように近づくか思案した。
ちょうどウォロとティエルノが離宮に何かを取りに行くという話になったようで、立ち上がり離宮の方へ向かって歩き出した。
その隙に私達はもう少し近づいて、それぞれ木や茂みの影に隠れた。
私はセレナと一緒に茂みの影に座りこむように隠れた。
エドワードの声が聞こえる。
「ライト、セレナとはどうなんだ?
最近、セレナ、おとなしい気がするんだけど……」
うん、おとなしい?
私がセレナを見ると、苦笑いしている。
「別に普通だよ。
卒業したら、すぐ結婚して家を一緒に盛り立ててもらおうと思っている。
セレナにもそう話してるよ」
「そうか……」
エドワードのなんだかはっきりしない返事にトーマの声が被った。
「セレナ、働かないの?
あんなに頭いいのに。
俺、セレナみたいに頭がいい人なら文官とかなったらいいのにと思ったよ」
「文官って、大変じゃん。
セレナには務まらないよ」
ライトの言葉に私はびっくりした。
「セレナはさ、お嬢様だし、おっとりしてるから、あんまり大変な目に合ってほしくないんだよな。
僕のそばで笑ってて欲しい」
セレナは複雑そうな顔をしている。
ミカの声がした。
「その考え、どうかと思うな。
セレナのことを思っているようで、彼女の可能性とかやりたいことを言い出せなくさせてるってことない?
ウォロは……、今ウォロがいないから言いにくいけど、ウォロはネモがやりたいことさせるよね」
「それはネモがはっきり言うからだろ。
いや、言わずにやるか?!」
エドワード……。
「でも、セレナはネモと違って自分の中に言いたいことを溜め込むことがあるから。
それについ、俺もそうなんだけど、必要以上にセレナのことを手助けしてしまうというか……。
たぶん、自分でできることを周囲から手伝おうとされたり、心配されたりするの、嫌だと思うんだよな……」
エドワード見直した!
よく見てるじゃん。
まあ、セレナは幼馴染だしな。
「……まあ、わかるけど。
僕はセレナにそばにいて欲しいし……」
「セレナ、教職取っているよな。
学校の先生やりたいって言ったらやらせるの?」
ダリルが聞いた。
「……う、あんまり外には出ないで欲しい……けど。
セレナが望むなら、考えるかな……」
考えるってライトが?
セレナのことなのに?
なんかそこからずれてる気がするけど……。
そこへウォロとティエルノが戻ってきた。
飲み物を取りに行ってたんだ。
「なあ、ウォロ。
ネモがやりたいって言うこと、やらせるよな?」
エドワードの言葉にウォロが返事をしない。
あれ?
「……ネモはやりたいことないって言ってたけど……」
戸惑いながらそう言うウォロの声。
「やりたいことないって?」
意外そうなトーマの声。
「こないだ言われたんだ。
私に何かしたいことはないのか? って。
だから、ネモのこと食べるみたいに愛したいって言ったらOKしてくれて。
その時にネモはそういうのないの? と聞いたら、そういうのはわかんないから特にないって言われて」
おい!!
ウォロ!
待て!!
全然方向性が違う!!
私は頭を抱えた。
セレナが笑いを嚙み殺している。
「あー、でも、やりたいって言うなら、何でもやらせてやりたいけど」
そこでウォロの声のトーンが変わった。
「あれ、何か、間違った?」
「食べるみたいに愛するってなんだよ?!」
トーマのちょっとあきれたような声。
やめろ!
深掘りするな!!
「えっ、そう思わない?
ネモが特別なのかな?
胸とか柔らかいのに口に……」
私はもう我慢できなくなって「ウォロ、黙って!!」と言って立ち上がってしまった。
びっくりする男子達。
セレナも私の後ろで立ち上がりオロオロしてる。
「セレナも? お前らいつからいたんだよ?!」
エドワードが叫んだ。
私はウォロにつかつかと近づくと胸倉をつかみ叫んだ。
「言うな!
そういうこと!!」
どんと突き放して、私はそこから離れた。
でも、離宮に戻る気もしなくて、外灯のある池の方へ来てベンチに座った。
あー、やってしまった。
男子達ならそういう話が少しは出るだろうとは想像はしてたけど、あれはひどすぎる……。
ノアが足元に擦り寄ってきて、気づく。
ノアを抱き上げ「あーあ、やっちゃったよ」と呟く。
「ネモ」
背後から呼ばれた。
ウォロの声。
私はどうしようと思った。
怒ってはいるけど、胸倉つかんで突き放したのは悪かったかな……。
「ごめん……。
オードリーに聞いた。
ネモは、その、自分のこと守ろうとして、聞かれても、そういうことは話さなかったんだって……」
「……当たり前でしょ。
ウォロとの大事なことだもん。
ふたりだけのことだもん……」
自分でもびっくりするほど悲しそうな声が出た。
「ごめん……」
ウォロのしょんぼりした声が聞こえる。
くうぅぅっ。
ここは許すしかないか……。
私もこっそり立聞きしていたっていうこともあるし……。
「ウォロ、座って」
ウォロが隣に座る。
私はため息をついて言った。
「うん、私もごめん。
そういう話が少しは出るだろうなとは予想しながら、隠れて立ち聞きしたのは悪いと思う。
ごめん。
でも……、あそこまで言わないでよ……。
ウォロと私は結婚しているから……、みんなよりそういうことは普通かもしれないけど。
まだみんな結婚する前だしね。
それに、お互いを大切にするって……。
そういうふたりの秘密というかウォロだけに見せる姿を、人に話されてると思ったら、ウォロのこと信用できなくなる……」
「本当に、ごめん」
「……もう言わないでくれれば……。
それに、わかんなかったらちゃんと確認してから話し出しなよ。
あれは、学校を卒業してから、婚約者や妻に仕事をさせるかみたいな話の流れだったんだよ」
「……そうだったんだ。
ごめん、ネモとのこと考え過ぎてた」
「……うん、考えてもいいけど、人には話さないでね……」
読んで下さりありがとうございます。
ネモもけっこう早とちりというかあるんですけどね。
似た者同士なのかもしれません。
これからもどうぞよろしくお願いします。




