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292 一筋の光(メイリール視点)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

今回は時々入る他視点の話です。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします

 サボイ公爵の養女となったのは12年前、18歳の時だった。


 うちの男爵家を援助してくれるという約束で……。

 覚悟はしていたけれど、実質は愛人になりに来たようなものだった。


 私より3年早く養女になっていたマレーヌはマイと名付けられた女の子を産んでいたが、その子が金髪でなかったので、次に私が呼ばれたというわけらしかった。


 そして私が生んだ女の子……、メイと名付けられたが、その子も公爵様お望みの金髪ではなかった……。


 マレーヌと私は、自分の娘が1歳になり乳を与え終わると引き離され、母だと名乗るのを禁じられた。


 その後、マレーヌは公爵との仕事で屋敷を訪れていた闇社会の男が公爵に譲って欲しいと持ち掛け、そちらに移って行った。

 その男は妻を亡くし、息子がふたりいるが、ひとりはまだ幼く女手を欲していたとのことだった。


 私はマレーヌから、マイを託された形になった。

 マイとメイ、どんなことがあっても、できる限り守っていこう。


 私は屋敷にずっといるためにはどうすべきか考えた。

 この屋敷で働けばいい、そして必要な人材になればいいのだ。

 

 私は実の母だとメイに隠し通すことを条件に、屋敷のメイドとして働き始めた。

 元々家が貧しく、家事はこなしていたから、重宝されるようになり、前のメイド長に気に入られ、メイド長の仕事を仕込まれ、引き継ぐことになった。

 

 娘達のそばで見守れるのは良かった。


 そして、8年前にアイリーンが来た。


 私とマレーヌは18歳で養女になったが、アイリーンはまだ16歳。

 18歳になるまではメイやマイと一緒に姉妹のように育った。

 それでも卑劣な公爵には身体を見られたり触られたりと嫌な思いをしていたようで……。

 優しく接してくれるクレール様を兄と慕い、やがて愛するようになり……。


 18歳になる前に、このまま公爵に愛人にされるくらいならとクレール様と駆け落ちまでしようとしたけれど……捕まってしまった。


 クレール様は他の令嬢との結婚を勧められ、アイリーンを人質に取られたようなもので、断ることもできず……。

 奥様を迎えられた。


 アイリーンはその後公爵と……。

 でも、その時にはもう、アイリーンはクレール様のお子を授かっていたのではないかと思う。

 生まれた女の子はアイリーン譲りの金髪とクレール様の瞳と同じ緑色の瞳だった。


 公爵は喜び、セリーナと名付けられた女の子ごと、どこかへ連れ去ってしまった。


 公爵としては、アイリーンに今度は男児を産ませたかったようだが……。


 3歳になったセリーナが屋敷に連れてこられ、クレール様の奥様のリーリエ様に養育するように言いつけた時は、本当になんと言っていいかわからないけど、公爵を殺してやりたいと思った。

 リーリエ様も私達と同じ被害者だ。


 なんとかしたいと思っても、私はマイ、メイ、セリーナを見守ることしかできない……。


 アイリーンはその後、子どもを授からなかったようで、5年前にミネルヴァ、3年前にフィオナが養女となった。

 最後のふたりは屋敷で過ごすことなく、そのままどこかへ連れ去られてしまった。

 たぶん、アイリーンと一緒に3人でどこか別の所にいるのではないかと思われるが、全く見当がつかず……。

 クレール様と公爵家の帳簿や金の流れ、どこか別の家を構えている情報がないか調べても見つからず……。


 クレール様とアイリーンのこともあり、公爵はかなり用心深くなっているのだろう。


 そんな時、ビルが公爵の古い友人の息子ということで屋敷に召し抱えられた。


 彼も何かを探っていることに気がついたのは、私と同じように公爵の交友関係について気にしていることを知ったからだ。


 それに公爵に良い感情を持っていないことが感じられた。


 徐々に、私達はお互いが同じ目的のために動いていることを知り、仲間になった。


 クレール様はアイリーンを。

 ビルはフィオナを。

 私は3人とも救い出したい。

 そしてこのままだと勝手にどこかへ嫁がせられてしまいそうなマイとメイ、そしてセリーナを連れて、この屋敷から出られたらと思っていた。


 そんな時に、国王が私達5人を探していることを知った。

 公爵を追い落とすために私達を証人としようとしているのだろう。

 

 ここまで放置されてきて、何を今更という気持ちと、忘れられていなかった、もしかしたらみんな助け出せるかもしれないという希望と……。


 そんな時、私は公爵に呼び出された。

 家計を絞めたいと。

 どうやら、神聖ホウエン王国、ミーア帝国との商売がうまくいかなくなってきているようだ。

 これまで関わってきた組織や商会が手を引くと言っているらしい。


 かなり収入が落ち込む事態なのだそう。

 私はメイドや使用人でそこまで必要ではない仕事の者などリストアップし、解雇させることを相談にいった。

 そして、年末年始にお金をかけないためにも、若奥様とお子様達を実家に帰してはと進言した。


 手土産はこの家にある美術品など持たせればいい。

 ずっと若奥様は実家へ帰られていない。

 年末年始くらいお許しになってはどうかと。


 頷いた公爵だったが、リストに名前があるひとりの名前にチェックがつけられ、この者は解雇しないように告げられた。


 ユーリ……。

 屋敷中の掃除や飾り付けを中心に動いているメイドだ。

「飾り付けこそお金の無駄になりますし、生活を縮小するなら、仕事自体も減りますが……」


 私の言葉に公爵は頷くが「それでもユーリは私のために動いてくれることがある」と言う。


「それでは配置換えをして、人手の足りない洗濯業務にでも……」

「ダメだ!

 彼女は屋敷中を歩き回れるようにしなくては。

 ……屋敷の中の品性を保つために、努力してくれている」


 客もほとんど来ないこの屋敷で……。

 私はユーリが公爵の手の者であることを確信した。


 屋敷を歩き回り、他の使用人の動向をチェックしているのだろう。


 ネリーと部屋を一緒にしたことを思い出して心配になる。

 大丈夫だろうか?


 私はクレール様に若奥様がお子様達を連れて実家へ帰省する許可が出たことを伝えた。


 クレール様はさっそく私と一緒にリーリエ様に話をしに行った。

 喜んで下さると思ったのだが、なぜか渋られている。


「ずっと、実家の伯爵家に顔を出していないだろう。

 君の御両親にとってはポーリンもアレクもかわいい孫だ。 

 やっと父の許可が出たのだから……」

「……それは義父様のお望みの金髪の子を産めなかったからでしょうか……?」

 若奥様の瞳に暗い影が差した。


「リーリエ!

 そういうことではない!!」

「公爵家では認められなくても、私の家の伯爵家なら、孫として認めてくれると?!

 私達を追い出して……、セリーナがこの公爵家を継ぐ布石なのでは?!」

「リーリエ、落ち着いてくれ!」

「あなたもポーリンよりセリーナの方がかわいいのでしょう?!」

 

 クレール様が言葉に詰まる。

 私はつい前に出て言ってしまった。


「若奥様、このことはそのような話ではありません!

 実は公爵様の仕事がうまくいっていないのです。

 メイドの数を減らしたり、使用する物品の質を落とすようにまで言われています。

 この年末年始、このような状態の屋敷で過ごすのは、というのが理由なのです」


 リーリエ様の瞳に光が戻ってきた。

「そういうことなのね……。

 わかったわ。

 年末年始は私の実家で過ごすことにします。

 これから両親に手紙を書きます。

 義父の温情により、孫の顔を見せに行きますと」


 クレール様はほっとして言った。

「リーリエ、ありがとう」

「でも……、クレール。

 あなたもお顔を出して下さらないと……、ダメよ」

「ああ、わかっている」


 次の日、リーリエ様とポーリン様とアレク様は伯爵家で年末年始を過ごされるため出かけられた。

 メイドはミミとルネのふたりを付けた。


 セリーナ様が寂しそうに見送っている。

 ポーリン様がそんなセリーナ様に「私にはおじいさまとおばあさまが他にいるのよ。たくさん甘えてくるわ!」と言ってから馬車に乗り込んで行った。


 見送った後、ネリーがセリーナ様を慰めている。

 ふと、ユーリが棚の上の装飾を替えながらネリーを見ているのに気が付いた。

読んで下さりありがとうございます。

国王陛下達の水面下の交渉が一気に進んだようです。

きっとネモ、ウォロが今までに友人になった人脈がうまくつながってくれたんだと思います。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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