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289 人々の繋がり

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 サボイ公爵を追っているが、馬車の中をずっと見てるのも……なので、屋敷の中の光に少しずつ切り替えて行く。


 公爵の部屋に人がいた。

 クレール様と……ビルさん?!

 こことことが繋がってる?!


 何か書類を探している様子。

 何を探しているかわかれば目的がわかるんだけど……。


「ないな……」

 クレール様がため息をついた。


「やはり、別邸に関するものは置いていないんでしょう」

「君の方の情報からは無理そうか?」

 クレール様の言葉に首を振るビルさん。


「一度誓約したことですからね。

 マレーヌにも言わないそうです……。

 ああ、あの3人の居場所さえわかれば……」

 その時ドアが小さく開いてメイド長が顔を覗かせた。

「クレール様! 執事が見回りの時間を変えました。

 お戻りを!」

「ありがとう、メリル」


 クレール様とビルさんは頷いて部屋を出て行った。


 なんとメイド長も?!


 あの3人って?

 私が探してるのは5人だけど。

 もしかして目的は一緒なのか?!


「今、若い男がマレーヌって言ってなかったか?」

 陛下の言葉に思い出す。確かに!


『ビルさんですね』

「ビル?

 あの男はサボイ公爵が契約している商会か何かの息子なのか?」

『いいえ、私が知っているのは……、この屋敷の執事見習いで、小さい子ども達の家庭教師もしていて……。

 悪い人じゃないんだけど……」

「周囲を騙そうとしているのかもしれんし……。

 用心はした方がいい」

 

 私は頷いて、公爵の馬車の方に視線を切り替えた。

 王都の中の歓楽街のような場所だ……。


 馬車から降りると、艶めかしい衣装を着た女性達がたくさんいて……。

 あー、ここって、いわゆるお姉ちゃんがいる酒場……というか、もう娼館って場所かな?


 ランスが「エドワード達は手を離せ!」と慌てたように言っているのが聞こえた。


「もう隠してもしょうがない年齢だろ?!」

 陛下の声。

 えーっ、陛下……、いいのか、親として?!

 それに……。

『私への配慮はないのか?』

 ぼそっと呟いてしまった。


「だって、ネモはもうそういうこと知ってるだろ?」

 この声はエドワードか?!


『……知ってるとはいえ、夫婦とか恋人のと……。

 金で買うとかは違う気がするけど……』

「もしかしたら、誰か仲間や貴族と密会するかもしれないし。

 ネモ、悪いけど、もう少し我慢して見せてちょうだい」

 マリアの声に『はい』と返事する。


「お待ちしていました!」

 お店のちょっと偉そうな年配の男性が声を掛けてきて礼をする。

 上げた顔は満面の笑みだ。

「どうぞこちらへ」

 先に立って歩く男の後を公爵と従者がついて行った。


 奥の調度品が少し豪華な感じの部屋に入る。

 客間や貴賓室って感じかな。


 そこのソファに4人の女の子がいて、手を握りあったり、肩を寄せ合って震えていたり、泣いていたり……。

「今月の新人です」

 男が揉み手しながら、女の子達を紹介するように言った。

 公爵が女の子達を見下ろす。


『いっいいいいいっや、何これ!』

 私は我慢しきれなくなって呻いた。


「ネモ、もう少し我慢して!」とマリアの声。


「私に会わせたいというのは? この子か?」

 公爵の言葉に男がひとりの女の子の腕を上に引っ張り上げる。


 女の子は抵抗しようとしたが、釣りあげられるように立ち上がった。

 金髪に青い瞳の肌の色が白い、きれいな女の子だった。


「北部の大きな商家の娘でした。

 最近の大雨で大損しましてね。

 それまで大店のお嬢様として、大切に育てられていたようですよ。

 18歳、さる貴族の家との婚約が決まっていましたが、それで婚約破棄になりましてね。

 公爵様は金髪に青か緑の瞳がお気に入りでしたから、お取り置きしておいたんですよ」

「ああ、いいな、今日はこの子にしよう」


「ネモ、もういいぞ!

 娼館に女性を買いに来ただけのようだな」

 陛下がため息をついて言った。


『良くない!!

 陛下、これは人身売買では?!』

「すまん、ネモ。

 この店は合法だ。

 彼女達は自分で契約書を読み、成人として契約している。 

 警備局でも確認して、営業を行っている店のひとつだ」


『んなわけあるか?!

 泣いてるし!!』

「ネモ、手出しするんじゃないぞ!」

『黙ってるなんてできるか!!』


 私は公爵が、部屋を移動し、ひとりきりになってベッドに腰かけて酒を飲み始めると、光の粒を通して闇魔法をかけ始めた。


「そんなことをしても今晩しか彼女を助けられないし、他にも同じような子は……」

 陛下の諭すような声が聞こえるが、やめない!


『そうかもしれないけどっ!

 見て、知ってしまったら、そのままにはできないっ!

 自己満足かもしれないけどっ!

 目の前の人を、今、この時だけでも助けられるなら……、無駄だと言われても助ける……』


 確かに、彼女は自分で覚悟して来てるのかもしれない。

 家の借金とか、家族のためとか、そういう理由でさ!

 でも、でもやりたくないことなんだよ。

 泣いてまで。

 でも、本当はやりたくないんだよっ!


 私の寝かせる闇魔法はそんなに強くなく、時間がかかるけど……。

 公爵もおじいちゃんと言われる年齢になりつつある人だし、聖魔法持ちじゃないし、お酒も飲んでるから、いつもより効いている気がする。


 女の子が着替えさせられたみたいで、薄い絹の服を着て泣きながら部屋に入って来た時には、公爵はすっかりおねんねしていた。やった!


 女の子はオロオロしていたが公爵から離れた所に(ベッドなんかでかかったので)ちょこんと横になると、掛布団にくるまりほっとしたように目を閉じ、寝てしまった。


 私もほっとした。

 涙が滲んだ。


「ネモの自己満足だな」

 陛下の声がした。


『自己満足だって、何だっていいよ……、もう……!

 今日は、もう遅いから、おやすみなさい……』


 私は視覚共有をやめ、明日の仕事のことを考えて目を閉じた。


 イライラする……。


 次の日、寝不足気味。

 ユーリに「あんなに早く寝たのに!」と言われてしまった。


「場所が変わるとなかなかぐっすり眠れないよね」

 ミミが声を掛け慰めてくれる。


「そうかもしれません……。

 今日も早く寝ます……」

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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