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287 サボイ公爵家のお子様達(前)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 メイド長が現れた。メイド長にしては若いかな?

 サボイ公爵が私をちらりと見ながら言った。

「ネリー・コービル男爵令嬢……だったな。

 行儀見習いということで我が家でメイドとして預かることになった。

 よろしく頼む」


 メイド長がサボイ公爵に一礼してから、私を見て「こちらに来なさい」と言った。


 私はダーゼンと公爵に一礼してからメイド長の後を小走りでついて行った。


「ネリー・コービル、男爵家、か。

 私はメイド長のメリルといいます。

 どうぞよろしく。

 メイドとして働いた経験は?」

「カルタロフ伯爵家で少しだけですが、給仕やお掃除の仕方を教えていただきました」

「他に得意なことは?」

「……子どものお世話は好きです」

「そう……、では若奥様のところに入ってもらおうかしら」


 屋根裏に近い3階に使用人の生活する部屋があり、3つのベッドがある部屋に入るように言われる。

 窓際のベッドを指し示される。

「ここがあなたのベッド。

 荷物や服はあの棚を使いなさい」

 作り付けの細いクローゼットがのようなものが3つ並んでいた。

「これに名前を」

 白い札とペンを渡され名前を書くと、そのひとつの扉に差し込んだ。

「この札を差し込むと開きます。

 まあ、簡単な鍵だと思って。

 中にメイド服が入っているから身につけて1階の厨房まで降りてきなさい」

 それだけ言うと出て行ってしまう。


 ふむ、窓際のベッドが空いていたのは寒いからだろう。

 ということは他のふたつに、もう人がいると考えていいだろう。

 私はベッドをざっと確認する。

 うん、特に異常なし。

 クローゼットからメイド服を取り出し着替えた。

 着ていた服と荷物はそのままクローゼットに入れておくことにする。

 白い札を確認する。

 うん、ただの札だ。少し角に特徴的な切り込みがあるので、一応、他人には簡単には開けられないようにはなっているのかな。

 でも、メイド長は全部開けられるマスターキーを持ってたりするんだろうな。


 階段を下りて1階へ。

 厨房はどっちだ?

 通りかかった、使用人と思われる若い男性に厨房の場所を聞いた。


「新しく入った子だね。

 よろしく私はビルだ」

「ネリーと申します。よろしくお願いします」

「厨房はこの廊下を進んで突き当りを右だ」

 お礼を言って言われた通りに進んだ。


「迷わなかったかい?」

 メイド長が迎えてくれた。

「途中でビルさんに場所を教えていただきました」

「そう、貴族令嬢にしては素直だね」


 厨房と厨房の横に使用人が休んだり食事をする部屋があり、その間ぐらいでメイド長は声を張り上げた。

「今日から行儀見習いでメイドとして働くネリーだ!」

 誰も聞いてないような……。


 私は1歩前に出て「ネリーです! どうぞよろしくお願いします!」と叫んで挨拶した。


 お茶を一杯のませてもらう。

 そこで子育て中の若奥様、つまり公爵の息子のお嫁さん付きのメイド見習いとしてのスタートを告げられる。


 若奥様、リーリエ様は伯爵家からお嫁に来たそうで、6歳になるポーリン様とセリーナ様、2歳になるアレク様をお育て中だという。


 6歳の女の子ふたりだから双子かと思っていたら、違った。


 ふたりは全然似ていない。

 ポーリン様はリーリエ様に似て茶色の髪。

 セリーナ様は金髪で……、それに表情が暗い。


 アレク様も、リーリエ様と同じ茶色の髪だった。

 3人とも瞳は緑色だったけれど。

 

 リーリエ様は優しそうな人だった。茶色の髪に青い瞳。

「ではポーリンとセリーナのお世話を頼もうかしら」と言われる。


 ポーリン様が私を上から下までツーっと見て言った。

「私、こんな地味な人嫌だわ。

 この人はセリーナにあげる」


 若奥様は苦笑して……、何も咎めたり注意することもなく……。

「では、セリーナの専属になってもらいましょうか」と仰った。


 セリーナ様はリーリエ様のお子様じゃないんだなと思った。

 私はセリーナ様に近づき、しゃがみこんで目線を合わせた。

「ネリーと申します。

 どうぞよろしくお願いします。セリーナ様」

 セリーナは大きな目をびっくりしたように開いたけど、頷いてくれた。

 おずおずと手を差し出すので、そっと握ると表情が柔らかくなる。

「私のお部屋へ」

 そのまま手を繋いで歩き出し、若奥様の部屋を出て、少し離れた所にある部屋に到着した。


 そこは小さな部屋がいくつか並んでいるような感じだ……。

 一番端っこのドアをセリーナ様が開けた。


「おじゃまします」

 私が言うとセリーナ様が笑った。


 その部屋は公爵家の令嬢の部屋とは思えない小ささで、学校の寮の個室と同じくらいだった。


「あのね、あのね。

 髪の毛、お姉様みたいにしたいの?」

「お姉様? ポーリン様ですか?」

「いえ、リーリエ様みたいに……」


 リーリエ様が『お姉様』ということは義姉で、セリーナは公爵の子?!

 探している養女の誰かが母親かもしれない!


 私は作り付けの小さなドレッサーの前にセリーナ様を座らせるとブラシで梳かした。

 きれいな金髪だ。

 リーリエ様、ポーリン様、アレク様は茶色の髪をしていた。

 サボイ公爵は白髪交じりだけど……、たぶん元の髪の毛の色は濃い灰色という感じだと思う。


 リーリエ様の髪型……。

 緩やかに結い上げ、きっちりしていなかった。

 自然な感じで結い上げてから、ふんわり形を整えれば近い感じになるかな。


 鏡を真剣に見つめるセリーナ様の緑の瞳が輝いた。


 私は鏡の中のセリーナ様に「かわいくできました。お似合いです」と呼びかける。

「ありがとう」

 鏡の中のセリーナ様はさらににっこりしてくれた。


「セリーナ様のお手持ちの服を見せて頂いていいですか?」

「うん、あ、はい!」


 クローゼットの中を見る。

 一応数は揃っている。

 手入れがいまいちか?!

 古い物も混じっているな。

 これは繕った方が良さそう………。

 ワンピースを2枚手元に取り出した。


「それはマイ姉様のお古なの」

 他にも公爵のお子さんがいるのか?!

「こっちはメイ姉様の」

 しかも複数?!


「このワンピース、破れそうなところがありますので、直していいですか?」

「うん、いいよ!

 あ、いいです? よろしくてよ?」

「普通に『お願いするわ』とか『頼むわ』でいいと思いますよ」


 どこからか大時計の音がした。

 11時かな。

「勉強の時間だわ!」

 セリーナ様は机の上の本やノートを掴んで急いで部屋を出たので、私もワンピースをクローゼットに戻し、慌てて付いて行く。


 若奥様の部屋の方に戻ったところにある部屋に入ると、本棚や机が並んでいて、勉強部屋のようだ。


 ポーリン様がすでに着席されていて、セリーナ様を見て眉をピクッとさせた。


 家庭教師はさっきのビルさんだった。

「ネリーさん、こんにちは。

 セリーナ様付になったのですね。

 セリーナ様、こんにちは。

 かわいい頭にしてもらいましたね!」

「はい!」

 セリーナ様がうれしそうに答える。


 12時まで勉強というので、私はその時間まで退出することにして、メイド長の所に行き、セリーナ様の服を繕いたいのだけれどと相談した。

 2階に衣裳部屋があり、常勤のお針子がいるとのこと。


 私はセリーナ様の部屋に戻りワンピースを持って2階に行き、お針子さんに相談しながら2着のほつれそうなところを繕い、古くなりよれてしまったリボンなどは外して新しく付け替えた。

 うん、かわいくなった。

 私がすごくうれしそうな顔をしたんだろう。

 お針子さんが「そんなに喜んでくれるとやりがいがあるわ」と笑った。

「ありがとうございます。また、お願いします!」


 私は部屋に戻り、クローゼットにワンピースを戻した。

 

 屋敷中に光が到達したみたい、公爵の部屋の中や使用人の集まる部屋、リーリエ様が子どもと過ごす部屋など要所だと思うところに光を配置していく。


 そろそろ勉強が終わる時間!!

 

 勉強部屋に戻ると、セリーナ様の髪が乱れていて、涙目になっているのが目に飛び込んできた。


 んー、ここにも光配置だわ!!


 まもなく終わり、ポーリン様が「似合ってないから私が直してあげたのよ!」と私に聞こえるように言って出て行った。

 わお、ポーリン様、悪役令嬢コース?!


「大丈夫。

 すぐ直せますよ」

 私はセリーナ様に近づき、ビルさんにここで直していいか確認する。

「すぐに昼食です。お早めに」


 私はセリーナ様の涙を拭き、セリーナ様の髪を解き、手櫛でざっとまとめて結い上げた。

 さっきは結い上げてから引き出したりしてバランスを取ったけど、今回はすでに少し自然な感じになってる。

 少しバランスを整えれば、さっきと同じ感じに見えるはず。

 ビルさんが少し大げさな感じでセリーナ様に話しかけてくれる。

「さっきと同じかわいい髪に戻りましたよ!」


 セリーナ様は微笑んだ。

 立ち上がり、きちんとビルさんの方を向いて礼をした。

「今日のお勉強、ありがとうございます」


 私も軽く礼をしてから一緒に部屋に戻る。

 机の上に本やノートを置き、鏡で髪を確認したセリーナ様は「昼食に行くわ」と微笑んだ。


 食堂に行くと、私はメイド長に手招きされ、セリーナ様に給仕するように言われる。

 手を洗い、なんとか、見よう見まねとアルテイシアに教えてもらった知識で特にトラブルなくできているようだ。


 リーリエ様がセリーナ様を見て微笑んだ。

「セリーナ、かわいい髪型ね。 

 似合っているわ」


 セリーナ様は「ありがとうございます」とにっこりするが、ポーリン様の目が三角になっている。


 私は嫌な予感がして、セリーナ様とポーリン様の間に入り、セリーナ様に飲み物のおかわりなどいらないか聞いたりした。

  

 ポーリン様がイライラしたようで私の背中を叩いた。

 私はびっくりしたように振り返り「ポーリン様、何か御用でしょうか?」と聞き返した。


 そんな風に平然と返されると思っていなかったようで、ちょっと驚いたような表情をするポーリン様。


 食事も終わっているので、リーリエ様がアレク様に声を掛けながら立ち上がった。

 食事が終わったという合図。

 セリーナ様も席を立てる。

「ポーリンもいらっしゃい」

 リーリエ様が声を掛けて食堂を出て行くが、ポーリン様はぐずぐずしていて、さらに私の背中を3回ほど叩いた。

 ビルさんがセリーナ様を席から立たせて、外へ連れ出してくれる。

 私はそこでポーリン様に向き合うと「失礼します」と言って、ふたりの後を追った。


 残されたポーリン様がテーブルの皿を私に投げたのがわかったので、後ろ向きのまま、ひょいひょいと避けた。

 さらに怒りが湧いたようで「何で避けるのよ!!」と叫んでいる。


「当たったら痛いからです」

 それだけ言うと、私はドアの所で一礼した。

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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