284 潜入捜査?!
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「これから王城?!」
「今日は土曜日だし、明日はお休みでしょ?」
それはそうなんだけど。
まだウォロと会えてないし、お祝いも言えてない。
私はカバンからノートを取り出し、ウォロに手紙を書いた。
『ウォロへ。
魔法対戦優勝おめでとう。
すごく強かったし、格好良かったよ!
決勝戦後、すぐに抱きつきに行きたかったけれど、優勝取り消しとかになったらと考えてしまって、逃げちゃってごめんね。
お祝い直接言いたくて、ラボでお昼過ぎまで待ってたけど、会えなかったから、寂しかった。
マリアが来て、陛下に呼ばれてるみたいで、これから王城に行くことになりました。
帰りはもしかしたら明日になるかもしれない……。
マリアと一緒だから、大丈夫。
ウォロも疲れたでしょう。
ゆっくり休んでね。
早く会って、直接おめでとうが言いたいよ。 ネモ』
事務棟に行き、外出届を書いて、ノートのページを切り離し折ると、オーサム先生に託した。
「急に王城に行くことになりまして、ウォロにこれを渡して下さい」
「わかった。気をつけてな」
オーサム先生に見送られて、マリアの馬車に乗り込む。
「アルテイシアから聞いたけど、今日決勝だったんですって?
早く聞いてれば、午前中から来たのに」
「ウォロ優勝しましたよ。
2位がレイモンド、3位がエドワードって感じかな」
「それはそれは、おめでとう」
「ありがとうございます」
王城に着くとすぐに陛下の執務室みたいなところへ連れて行かれた。
この部屋に入るのは初めてだ……。
「ネモ、先日は巻き込んでしまい申し訳なかった。
その説明と協力して欲しいことをこれから話したい」
陛下はいつになく真剣な様子で話し始めた。
闇社会に圧を掛けられてるというのは、前に私を引き取りたいと言ったサボイ公爵の悪事を調べているから……であろうということだった。
サボイ公爵には女性問題以外にもいろいろ悪評があり、それを調べていくとミーアやホウエンの闇社会ともつながっている可能性があるそう。
しかし、その罪でサボイ公爵を断罪することは難しいのだという。
国際的な軋轢を生む話……になりかねない。
ウォルフライト王国としても、各国が抱えている闇社会の問題にウォルフライトの高位貴族が密接に関わっていることは……、かなりよろしくない。
そこで国内問題である女性問題で断罪したいと考えていたのだが……。
過去にサボイ公爵の養女になった女性達が本当に見つからないのだという。
もしかしたら、屋敷に軟禁されてるとか、他国へ連れて行かれた、最悪のパターンだと殺されてるかもしれない?
それを調べるのを手伝って欲しいということだった。
「手伝うのはできますが……。
例えばホウエンの闇社会って、ハイレディン商会の裏ですよね。
なら、商会をこちらに引きこむことを考えたら?
彼らは契約で動きます。
闇とか裏と言いながらも、進んで悪に加担している感じじゃないんだけどな。
ダーゼンならそれぞれの国の闇社会に詳しいと思いますが……。
王国ときちんと取引ができれば、サボイ公爵とは切れるのではないかと……」
陛下が笑った。
「なんですか?」
私は顔をしかめた。
「いや、ダーゼン……、カルタロフと同じことを言うなと思って」
は、そうなんだ。
いや、私も闇社会通な人になりつつあるのか?!
それはどうなんだ?!
戸惑った表情の私を面白そうに見て陛下が続けた。
「それぞれの国の闇社会への働きかけは水面下で進めているよ。
それから、サボイ公爵のことだが、ネモ、冬休みにサボイ公爵の屋敷に潜入してきてくれんか?」
「潜入?!」
「ああ、危険な仕事だが、飲み物食べ物を浄化できるネモは危険を回避できるだろう?」
「うーん、そうですね。
他の人よりかは向いてるかもしれませんが……。
それがマリアの結婚とどう話が?」
「サボイ公爵が闇社会に依頼して、私に圧をかけるために襲ったことは知っているな?
……ネモが聞いて証言してくれたんだったな。
そこで、私に近しい女性の文官に怪我をさせるということが言われていたんだろう。
サボイ公爵はマリアを公爵家付けの文官にしてほしいと言って来て、断ったことがある。
それを恨んでいるんだろう」
「それって……」
「まあ、サボイ公爵家とのやり取りの専任にマリアをと言うことだな。
つまり、マリアをいつでも屋敷に呼び出せるような……」
「!! そんなのダメ!! 絶対!!」
「ダメだろう?
だから断ったんだが、それを勘違いして、マリアを私の愛人だと思ったようで……」
「愛人?! 陛下の?!
バカも休み休み言えっての!
サボイ公爵め!!」
そうだよ、なんであんなのが公爵で、権力持ってるんだ?!
「わかりました! やります!」
「……ウォロに話をしなくていいのか?」
あ、そうか……。
でも、話したら反対されそうだけど……。
ううー。
「私だけじゃないですよね?
連絡をつける人とかいるわけで……」
「それはランスに頼もうと思う」
ランスか……。
なら何とかなるかな。
「もう少しウォロが安心するような人がチームに入ればなんとかなるんじゃないかな?」
「なるほど……、カルタロフ伯爵にも協力してもらうつもりだ。
エドワードにも何かさせるか……」
「エドワードって、第2王子なのにいいんですか?」
「ああ、エドワードもアンドレアスをこれから補佐するのにいろいろ社会勉強をしなきゃいけないからね」
「ギーマ先生、カトレア先生にも話を通しておいてくだされば……、大丈夫かな?」
「明日、ランスやエドワード、カルタロフ伯爵らを王城に呼ぶから、今日はこのまま泊っていきなさい」
確かに、もう窓の外は真っ暗。
日が落ちるのが早い。
アリスと会わせてもらえて、一緒に夕食を食べた。
アンドレアスも一緒。
アリスは幸せそう。
体調も落ち着いてきたという。
うん、もう安定期だもんね。
良かったよ。
陛下に圧をかけるのに近しい人、大切な人が襲われる可能性があるというならば、アリスもその中に入ってくるだろう……。
その後、離宮に案内されるけど、ここにひとりで泊まるのってかなりアウェイ感がありますけど。
そういや、ノアはどうしてるかな。
まあ、オードリーやエドワードもいるし、ウォロもいるから大丈夫だよね。
私はカバンから図書館で借りた本を取りだし、読み始めた。
ドアがノックされ、出たらマリアで、着替えをいろいろ用意して来てくれていた。
「ありがどう!」
「急に連れてきちゃったからね。ごめんね。
明日はエドワードやウォロも来ると思うから、今日はのんびりしてね」
「はい、おやすみなさい!」
私は着替えを確認してクローゼットにしまう。
ああ、楽そうな服がある。
これ着て寝よう。
風呂にお湯を溜めておき、窓のカーテンを閉めた。
制服を脱いで吊るしておく。
着替えは……、ひとりだし、部屋に出てきてから着ればいいか!
いつもと勝手が違くて、ネックレスを付けたまま裸になってしまったことに気が付いた。
あー、まあ、後で拭けばいいか!
ゆっくりお湯に浸かる。
「あー、こんなゆっくりお風呂に入るの久しぶりだな~」
寮だとゆっくりというわけにはいかないからね。
そういや、潜入って何するんだろう?
使用人のふりして潜入捜査とか?
私の顔、サボイ公爵は知ってる……けど、メイクした令嬢の顔や姿しか知らないか?!
それならホウエンの魔道具とかで髪色変えればいけるかな?
ぼーっと上を向いて考えていたからか、全然気が付かなかった。
目の前の景色がぼやけたと思ったら、ウォロが立ってた。
「なっ?!
どこから? って学校からか?!」
自分で自分に答えて、慌ててウォロの足元を見ると魔法陣が消えていくところだった。
上ばかり見てたから全然気が付かなかった……。
と、この状況は……。
とりあえず……。
「ウォロ、魔法対戦優勝おめでとう!」
私は風呂の中で湯舟に張り付いて身体を隠しながら、ウォロを見上げて言った。
「やっと言ってもらえた……」
ウォロがうれしそうに言ってから、ムッとした表情になる。
「約束、忘れてない?」
「……約束?
あ、ミーア大使館に行くことか……。
来週は?
明日、エドワードとウォロも王城に呼ばれると思うし……」
ウォロが手を伸ばしてきて私の手を掴んだ。
「今だっていいだろ?」
今?
この部屋で?
王城の離宮で?
えっ?
ここエドワードの……、友達の家みたいなもんなんですけど?!
「えっ?
ほら、避妊具もここにはないし!」
「持ってきた」
「えっ?」
「ネモに会うから、持って来てる!」
「そんな、用意周到だな……」
「ちゃんと追いかけて捕まえないと、ネモは捕まらない。
今日のことで良くわかった……」
どういうこと?
私の『?』な表情を見てウォロが笑う。
「今日、ネモの方から来てくれるの、待ってたんだ……」
「えっ? ラボで待ってるって伝言したよ?」
「でも、ほら、自分が行かなかったら、ネモの方から探してくれるかと……。
そうしたら、全然……」
えっ? そうだったの?
「後から探してると、ネモに会ったってレイモンドやセレナやライトに言われて、どこにいるかわからないから転移もできないし、魔道具で居場所を調べるのは……。
なんか同じ学校内にいるのに、緊急事態でもないし、使ったら負けっていうか……、なのに、いくら探し回っても見つからないし……」
何をごにょごにょと……。
あー、ちょうどすれ違いになっちゃってたのか?!
「エドワードに、マリアと一緒に食堂にいるって言われて、あわてて行ったら、ネモ、馬車に乗って行っちゃうし……」
「オーサム先生に手紙頼んだけど……」
「ああ、読んだ。
なんでそう思ってんなら、自分を探さないの?!」
「だって待ってるって言ったし、来ないってことは私より優先したいことがあるんだろうって……」
ため息をつかれる。
「ネモは……、自分より他の人を優先することがあるからな……」
「そんなこと……」
心当たりが……。
目を逸らしてしまう私を見てウォロが言う。
「あるでしょ?」
「それはっ!
ウォロはひとりでも大丈夫だけど……」
湯舟にの端に掛けていた手を掴まれ引き上げられ抱きしめられる。
「ウォロ!! 濡れちゃうよ!」
「……大丈夫じゃない」
「だから、濡れちゃったら大丈夫じゃないでしょ?!」
「違うよ………。
ひとりでも大丈夫じゃないっ!!」
ウォロが大声を出したのでびくっとした。
「あ、ごめん……」
ウォロが謝ってくれた。
人の足音が聞こえて来て、部屋のドアを開ける音がする。
ウォロが浴室の奥の衝立の陰に隠れた。
「ネモフィラ様! どうしましたか?!」
浴室のドアが開いてメイドがふたり飛びこんできた。
「あ、ごめんなさい。
その……、お風呂で気持ち良くなって、大声で、その……お芝居のセリフを、セリフの練習をしちゃって、叫んでしまいました」
ふたりとも去年私達が劇をしたことを知っていたので、なーんだという表情になり「セリフの練習ですか!」と笑った。
「お騒がせしてごめんなさいっ!」
「いえいえ、今回は男性の役なんですか?」
「えっ、ああ、そのいろいろな役のセリフを言ってみてたので……。
驚かしてごめんなさい」
メイドが下がると、湯船の中でため息をついた。
「これでネモも共犯だな」
ウォロが出てきて笑った。
「共犯って……。
早く寮に帰りなよ」
私は小さな声で言った。
「ネモこそ早く出なよ。そんなに浸かってるとふやけるぞ」
「もう、じゃあ、部屋に行っててよ!」
ウォロがにっこり笑って部屋の方へ出て行きながら言った。
「わかった……。
帰らなくていいのな!」
読んで下さりありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。




