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283 拗ねてるのか?

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 結局、カトレア先生に表彰式が終わったらラボで待っているとウォロに伝言してもらうことにして、私は実習場を後にした。

 正規の成績にならないとしてもせっかく優勝したんだもの、取り消しとかは避けたい。


 ラボで薬の火入れをして、魔石に浄化魔法入れて……と1時間ぐらいいたけど、ウォロは来なかった。


 ん?

 優勝した時、私が逃げたから、怒ってる? 拗ねてるのか?


 私は薬の火入れが終わったので、食堂に行き遅めのお昼をテイクアウトした。

 その時に思った。

 あー、寮のみんなとお祝いの昼食を食べていたのかもね。

 ま、それなら、いいか!


 いい天気だし、土曜日なのでこれから外出する生徒も多い。

 私は人気のない静かな方の庭に行き、のんびりとひとりランチを楽しんだ。


 もう11月半ば。

 秋も終わりだ……。

 落葉樹は葉の色を変え、落としている。

 日の光の中でそんな景色がとてもきれいだ。


 5年生はもう資格試験や就職試験に向けてギアを上げてく時期だよね。

 ぼんやりそんなことを考えていたら「ネモ!!」と声を掛けられた。


 レイモンドだった。

「こんな所でひとりで? ウォロは?」


 私は微笑んだ。

「表彰式後に会う約束したつもりだったんだけど、ウォロが来なくて……。

 今、お昼食べてる。

 レイモンド、すごく強かった。

 試合中にもどんどん発動や展開が早くなっていたし、すごいと思ったよ」

「……それはありがとう。

 やはり実戦というのが一番伸びるものだね。

 エドワードもウォロもすごく強かったよ。

 ウォロと試合するのも最後だと思ったから、全部使って戦いたいと思ったけれど……。

 やはり聖魔法は無謀だったかな」

 レイモンドが苦笑いして言った。

 

 そうだったんだ。

 でもなんか気持ちわかるな。


「うん、でも、気持ちわかる。

 最後だから、後悔しないように全力でやりたいと思ったんだね」

「ああ、だから、後悔はしていない。

 ウォロに早く会ってお祝いを伝えられるといいな」

「うん!

 マイベルによろしくね!」

「ラボ少し使わせてもらうけど良いかな?」

「うん、どうぞ!」


 教職員棟の方に歩いて行くレイモンドに手を振って見送る。


 むー、しばらくはラボに近づかない方がいいか。


 どこにいよう。

 

 そう思って、笑ってしまった。

 ウォロのそばにいないだけで、こんな気持ちになるなんて……。

 もう少し、自立しなきゃいけんかもな。


 立ち上がり、ゆっくりと歩き出して教職員棟が見えるところまでくるとカトレア先生とギーマ先生にばったり会った。


「ネモ! ウォロと一緒じゃないの?」

 カトレア先生が驚いたように言った。


「ラボでしばらく待ってたんですけど、お昼の時間過ぎちゃって。

 ひとりでランチしてました」

「あら、そうなの……。

 ラボに戻るの?」

「あ、レイモンドにラボ借りたいと言われて、どこかで少し時間を潰そうかと……」

「なら、うちに来なさいよ。

 お茶を御馳走するわ!」

 私はギーマ先生を見た。

 ギーマ先生も笑って頷いてくれた。


 カトレア先生とギーマ先生は結局、カトレア先生の部屋で一緒に暮らしている。

 やはり学校の防犯や安全を魔法で引き受けているカトレア先生は学校外に新居をという件はダメになってしまったそう。

 ギーマ先生の部屋もそのままで、仕事部屋のようにしているそう。

 ギーマ先生は警備局とも仕事をすることが多いので、結構うまくいっているとのことだった。

 

 ギーマ先生からウォロと進めている魔法陣の転移魔法についての発表の準備について話を聞いた。

 まずふたつの魔法陣を設置してその間を行き来する転移魔法について、11月末に発表するそうだ。

 もう普通に使ってるから慣れちゃってるけど、これも十分すごいんだもんね。


 もうだいぶ時間たったし大丈夫かな? とラボに戻ると誰もいなかった。


 ノアのご飯を作ったり、水やトイレをきれいにしたりした。

 うーん、ウォロ、どうしたんだろう?


 私はため息をついてラボを出て鍵を閉めた。


 まだ3時くらい……。

 図書館でも行くか!


 私は図書館棟に歩いて行き、借りる本を選んでいるとセレナとライトに会った。


「ネモ! どうしたの? ウォロは?」

 セレナに聞かれて笑ってしまう。

 なんでみんなウォロのことを聞くんだろう!


 ラボでしばらく待っていたけど来なかったので、のんびりひとりで過ごしていると答えた。


「ウォロはみんなと昼食食べたんでしょう?」

 私の質問にライトが頷く。

「ああ、寮でみんなで食べたけど……。

 だいぶ前に解散したよ。

 まだウォロと会えてないの?」

「うん……。

 まあ、誰かと会ったり話したりしてるんじゃないかな?

 じゃあ、夕方には寮に戻るね!」


 私はふたりと別れて、書庫で薬についての本を何冊か見て、借りる本を決めた。


 それから、またラボに向かって歩く。

 ふぁ、なんかのんびりしていると眠くなる。

 

 ラボは鍵が開いててエドワードとオードリーとサーシャとノアがいた。


「あれ、来てたの?」

「来てたのじゃないよ! 

 どこ行ってたんだよ」

 エドワードが少し焦ったように言った。

「うん? 図書館に。

 ライトとセレナにも会ったよ」

「ラボで待ってるって言ってたろう!」

「待ってたよ。

 お昼過ぎまで。

 それでも誰も来ないから、食堂に行って……。

 レイモンドに会って、ラボを使わせてほしいと言われたから、カトレア先生達とお茶飲んで、ラボに来たけどまた誰もいなくて、図書館に行ってきた。

 あ、そうだ!

 サーシャ、これ興味ない?」


 私は机の引き出しから飾り紐用の紐や留め具を出した。


 オードリーが目を輝かせ「飾り紐の材料?! へー、今はいろいろな色があるのね!」と言う。


「ね、すごい色味が増えたよね!

 ここに入ってるから、作りたかったらいつでも使っていいからね!

 オードリーと私、教えられるから。

 あ、見本があった方がいいか!

 ちょっと取ってくる」

 

 私は寮に転移して、自分の机から自分用に作った飾り紐を取り出した。

 それを持ってラボに戻る。


「これ見本ね」

 サーシャに渡そうとすると「誰もいなかった?」と聞かれる。

「うん? 寮? 誰もいなかったよ」


 エドワードが「何やってんだ? あいつは!」と呟いた。


 その時、アルテイシアがラボに来て「ネモ! マリアが食堂に来てるよ」と教えてくれた。


「ありがとう!」

 あ、前に聞けなかった話かな?


「行ってくる!」

「ウォロは?」

 エドワードが慌てて言う。


「私のこと探してないみたいだし、誰かと魔法についての話でもしてて夢中になっているんじゃない?

 もし、探してたら夕方には寮に戻るって伝えておいて!」


 私はアルテイシアと食堂に向かった。

 アルテイシアは食堂前までくると「私はもうマリアと話したから、寮に戻るわ!」と言う。

「ごめん、わざわざラボまで呼びに来てくれたの!

 ありがとう!」

 寮に戻るアルテイシアを見送ってから、食堂に入る。

 マリアがテラス席で手を挙げた。

「マリア! お久しぶり!」

 紅茶をカウンターで受け取り、マリアの席に合流する。


「そういえばあの日も話があるって呼ばれたんだよね。

 何の話?

 おめでたい話?」

 私はニコニコして聞いた。


「来年の4月にダナンに赴任することになったの。

 それで、ジョシュアと結婚するわ」

「おめでとう! ……でいいんだよね?」

 ダナンに赴任?

 文官としてかな?


「やっぱり引っ掛かるか……」

 マリアが苦笑した。


「陛下が結婚しても文官は続けて欲しいって仰って……。

 だから地方行政を少し見てきた方がいいと提案されて、ダナンに3年赴任することになったの。

 文官的には他の人から見たら左遷……な感じよね。

 でも、私とジョシュアにしてみれば3年間はずっと一緒に過ごせるわけ。

 いい話よね」

「そうかぁ、それなら良かった!

 兄様もそれは納得しているの?」

「私が良ければって。

 自分としてはマリアと結婚生活をダナンで過ごせるのはうれしいって言ってくれたわ!」

 うん、それは良かった。


「……で、私がダナンに行く前にネモに協力してもらいたいことがあって……」

「私で良ければ、何でも協力する!」


 マリアが笑って立ち上がった。

「何でも、は言わない方がいいわよ。

 特に陛下の前ではね。

 じゃ、行きましょ」

「えっ、行くってどこへ?」

「王城へ。

 陛下がお待ちよ」

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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