282 魔法対戦の決勝戦の続き(後)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
最後の流星群の直撃をいくつか受け、ダメージが定数を越えてしまったけれど、試合時間もほぼいっぱいで……。
本当にどちらが勝ってもおかしくない試合だった。
エドワードがこちらに戻ってくる。
悔しそう……。
そうだよな。
レイモンドはもう卒業だもの。
来年の対戦はない。
「ああ!! 負けた!
悔しーいっ!!」
叫んだら落ち着いたみたいだ。
「はあ、ネモ、敗因は?」
「……せっかくの魔法陣を固定魔法で使っちゃったとこかな」
私の言葉に項垂れる。
「だよなぁ……。
でも、あの魔法、魔法陣に繋げとかないと維持できないんだよ…」
私は試合を思い出しつつ独り言のように言ってしまった。
「それにレイモンド、魔方陣を展開するの早かった……」
「だよなぁ。
試合途中で展開するってすごくないか?!」
あ、いつものエドワードに戻ったな。
「ノア、心配してくれたのか?」
私の肩に手を伸ばし、ノアを抱き取る。
そのままノアを抱いたまま、向こうを向いてしまう。
サーシャがどうしたらいいか、困っていたがそっとそばにいることに決めたようだ。
ダリルとライトが係として実習場に入っていった。
次はウォロ VS ハイディ
ハイディは水風なんだよな……。
私と同じ。
でも、言っちゃ悪いがそんなに強くない。
まあ決勝まで残ったんだからそれなりに強いけど、運が良くて残ったという感じなんだ……。
というわけで、開始早々、あっさりウォロが勝った。
そしてレイモンド VS ハイディ
こちらもすぐ勝負がつき……。
本当に最後の決勝戦はウォロ VS レイモンド となった。
マイベルは複雑だろうな。
兄と恋人が戦うわけで……。
ああ、なんか神話の物語みたい!
私が頭の中でウォロとレイモンドに神様みたいな服着せて対決みたいな構図を取らせ、それを悲しげに見ている乙女マイベルみたいな図を想像してにやにやしてたら、トーマに気味悪がられた。
「ネモ……、なにニヤニヤしてんだよ。
気持ち悪いな……」
「へっ?
ああ、なんかお兄さんと恋人が戦うんでマイベル複雑だろうなと思ったら、神話にこんな話ありそうだなって、絵にしたらこんな感じかなって想像したらなんか素敵で……」
「……へー、ネモにもそんな女の子みたいな趣味あるんだな」
「ん? 女の子みたいな?
ん?
私、女だけど?」
「……ネモは普通の女の子とは違う」
ミカがぼそっと言った。
トーマが頷いた。
えっ?
なんで?
「確かに……、普通の女の子ならエドワードにあんなこと言わねえよな」
トーマの言葉に私は反論する。
「敗因は? って聞いてきたのはエドワードだよ?!」
「それでもなぁ……。
普通、あんなにずけずけ言うか?
しかもレイモンドを褒めるようなことも言うし」
あ、それは……。
うん、それは、思わず言っちゃってから、まずいと思った。
反省。
ティエルノが次の試合の勝者が優勝であること、聖魔法も使用OKとなったことを説明してから、ふたりが試合場に出てきた。
はあ、緊張してきた。
私が緊張してどうする?!
ウォロはこういう時、けっこう落ち着いてるんだよね。
落ち着け私。
ミカが「ウォロー!! 頑張れよ!」と叫び、エドワードも「頼んだぞ!」と叫んだ。
ウォロがこちらに片手を挙げてにこやかに振っている。
「ウォロー!!」
私も大きく両手を振って跳びはねた。
トーマとミカが顔を見合わせて笑った。
聖魔法OKなんだ。
ふたりとも闇魔法はかなりの使い手だけど……。
レイモンドは水の防御壁。
ウォロは闇魔法の小さなボールをいくつか作り浮かべてからさっきのミカの時と同じく蜂の巣みたいな魔法陣の集合陣みたいなのを展開した。
手元の魔法陣に闇魔法のボールを入れるとたちまち増産されたみたいになり、防御壁として厚くなる。
レイモンドもさっきのエドワードに対する3枚重ねの魔法陣を展開。
どちらも先ほどの試合で手の内をかなり見せたことになっているのかな。
でも、ウォロはまだ技ありそうなんだよな……。
前の2試合とも試合時間もそこまで長引いてない。
レイモンドはエドワードと死闘と言ってもいいような試合内容だったわけで、そこでも少しウォロが有利だな。
ウォロがファイアというより巨大な火球を作り魔法陣に入れた。
一瞬、魔法陣に入るの?! と思ったぐらいの大きさだけど、炎って大きく見えんのね。
本体は魔法陣に入る大きさだったみたいですんなり入り(確かに、ウォロがそんなミスするわけない、私ならやりそうだけど……)、ウォロの背後に太陽か?! と思うぐらいの一面の炎が出現した。
そこからレイモンドめがけて飛んでいく。
レイモンドは水球を魔法陣に入れ、もう時間差などせずに全部放出した。
それでも全部の炎は相殺できず、防御壁に被弾。相殺されてしまう。
レイモンドは古代魔法の氷の防御壁を発動。
ウォロは今度はファイアを魔法陣に入れ、それからゆっくりと光で弓矢を形作り……。
マッちゃんとエドワードへのオマージュ?!
その隙にレイモンドが流星群を放ってくる。
かかる時間かなり短縮されてる!!
戦いながらもスキルが上がっているんだな!
ウォロは動く魔法陣を上空に向け、手元の魔法陣に光の矢を打ち込む。
レイモンドにも上空の流星群にも光の矢が飛んで行き、流星群は相殺できた。
レイモンドの氷の防御壁も相殺でき、ウォロは2番目の光の矢を放つ。
さすがレイモンド!
自分の前だけに最低限の防御壁を展開し、自分へのダメージは何とか凌ぐ。
ファイアを魔法陣に入れ、時間差で打ち出してその間に光魔法を展開して防御壁にする。
ウォロが闇の防御壁、レイモンドが光の防御壁……。
ウォロの魔王感が半端ないっ!
でも、ウォロがまた闇のボールを魔法陣に入れるとさらに増える。
防御と攻撃にこのボールを使う。
光の防御壁の中和と相殺を狙うなら、闇魔法を使うのが最も効率が良いはず。
ウォロが押してるけど、まだレイモンドにダメージが入っていない。
ウォロが今度は炎の弓矢を形作り、魔法陣に打ち込む。
レイモンドの光の防御壁が相殺された直後に炎を屋がレイモンドを襲う。
レイモンドがアイスファイアを展開するが、全部を止めることはできず被弾。
さらにウォロがストーンバレットを普通に放った。
魔法陣を通さないので早い。
レイモンドは水の防御壁を張ろうとしたが間に合わず被弾。
ダメージが一定量を越え……。
ウォロが勝った!
あー、レイモンド、光魔法OKにしない方が良かったのかもしれない……。
大きくため息をついたレイモンドはウォロに歩み寄り、何か話しかけ握手した。
ふたりで笑っている。
ティエルノがウォロが優勝と発表した。
係をしていたみんながウォロに駆け寄る。
私も観客席から行こうとしたら、エドワードに注意された。
「あんまり近づくなよ!」
あ、そうか!
言うだけ言って、ノアを抱っこしたままウォロの元に行ってしまうエドワード。
ずるい!!
「トーマ……、私の防御壁になってくれ!」
何が何やらという顔をしているトーマに頼む。
「防御壁?」
「ああ、ウォロが……。
試合した後、気持ちが盛り上がっちゃうみたいで、前にも前科があって……」
「ああ! ウォロがネモにキスして怒られた時が! 何回かあった?!」
「……そうだよ」
トーマが試合場の方を見てぎょっとして慌てて私から離れようとする。
「ダメだ! 断る!」
私はウォロの方を見た。
あれ、さっきよりこっちに近づいてきて……。
私も慌てて観客席にいたカトレア先生の方に逃げた。
読んで下さりありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。




