279 闇社会のアジトからの救出
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
その時、ドアの鍵がガチャッと音を立てて開いた。
ウォロとミカが私の前に立ち、守る態勢を取る。
私はとりあえず自分が自由になるのが先だと思って、足枷を外すのに集中した。
右足の板を2カ所切って抜くことに成功した。
ドアが開き、大男がびっくりしたように叫んだ。
「どこから湧いて出やがった?!」
後ろに背の高い男が顔を覗かせたが、素早く覆面をするとすぐに下がったようだ。
ミカが風魔法で竜巻を作りドアからこちらに入れないように防ぐ。
ウォロが風の隙間をうまくついてストーンバレットで攻撃した。
マジな攻撃ですね……。
ふたりは無言で逃げ出した。
下からも上からも警備局が「動くな! 警備局だ!」と叫んでる声が聞こえてるし、ウォロとミカは強いし、さらに私が拘束を解きつつあるのが見えて、分が悪いことを悟ったのだろう。
「ネモ、もう足外さなくていいよ。
警備局が外してくれるし……。
監禁されてた証拠、残しておこう」
ミカが言った。
「あ、うん」
後1カ所切れば自由なんだけど……。
私はベッドの所に戻り座るとほっと息をついた。
ウォロが必死な表情で私の前に跪き、私の全身を触って確かめながら「どこもケガしてないよな、大丈夫だよな……」と言い続けている。
「どこもケガしてないよ。大丈夫」
ウォロの動きが止まって、ウォロの目から涙が溢れたのでびっくりする。
その時、エドワード達の声が聞こえて、私はウォロの頭をぎゅっと抱きしめた。
なんだか、誰にもウォロの泣き顔を見せたくなかった……。
「ウォロ、心配かけてごめん……」
「本当だよ。どれだけ心配したか……」
私の胸に顔を押し付けた状態でごにょごにょ言ってるウォロの声。
「そういえば魔法対戦はどうなった?」
私はミカに聞いた。
ミカはため息をついて話してくれた。
「決勝戦まで、俺達、何も知らされてなくって。
これから決勝戦という時、急に試合続行不可って発表されて……。
今年度は5名全員優勝者とすると言われてさ………」
「残った5人って?」
「ウォロ、エドワード、レイモンド、ハイディ、俺だよ」
「わ!!
あれ、ライトは?」
「2回戦でウォロに当たってさ。
運悪かったよ」
「そうか……」
ウォロが落ち着いたようだ。
涙止まったか?
私は頭を抱えている腕を緩めた。
私の胸で顔を拭いている。
なんかかわいい。
ノアが部屋に飛び込んできて、エドワードとティエルノとダリルが入ってきた。
ノアはウォロの身体に駆け上がり、肩から私の肩へジャンプして来ると首の後ろあたりに巻き付くように甘えてきた。
ゴロゴロとのどを鳴らしてる。
重い……。
けど、ノアも頑張ってくれたもんね。
ティエルノがコップを持っていた。
「あー水分!!
忘れてた!
のど渇いてる!!」
「だろうと思ってさ」
ティエルノに渡されたコップの水をすごい勢いで飲み干した。
「おいしい……、水がおいしいよ!!」
私は空になったコップに自分で水を入れるとまた飲んだ。
「いつものネモだな」
ティエルノが安心したように笑った。
ウォロが私の隣に座ったと思ったら、ウォロの胸に頭を抱え込むように抱きしめられた。
さっきと逆なんですけど……。
ノアが驚いてベッドに下りると私の膝に乗ってくる。
ギーマ先生と警備局の人も来て、頭に被せられていた黒い布の袋や壊して外した魔道具の手枷、まだ半分残ったままの足枷を見せて、どんな状態で監禁されてたか記録、確認してもらった。
残りの足枷もすぐ外してくれた。
安全に壊す機材があるのね。
馬車の方へ移動をと言われると、ウォロがノアごと私を横抱きに抱き上げた。
「大丈夫だよ!」
「離れたくないんだよ」
ウォロがぼそっと言った。
「……お腹空いた……」
私は呟いて力を抜くと身体を預けた。
ウォロとふたりで馬車に乗るとギーマ先生がどこからか(たぶん踏み込んだ酒場?!)パンを持って来てくれて、それを食べながら、ギーマ先生と警備局の人に話を聞かれた。
エドワード達は違う馬車で、ちょっと安心した。
トーマのことを話さないといけないけど、寮のみんなには聞かれたくなかったから。
どう話すか、迷ったけれど、事務棟の手前で出会って、どこに行くか聞かれて事務棟と言ったのに食堂まで行く私を心配して追いかけてくれたようだということ。
食堂2階の客間から逃げだした賊を追って廊下に出たら、トーマが階段を上がってくるところで、私を助けようと走ってくるのが見えたけど、背後から何者かに襲われ気絶したこと。
気が付いたら後ろ手に拘束されてるし、頭には袋を被せられていて何も見えず、振動と聞こえる音で馬車の中と判断したこと。
どこかに着いて部屋に連れて行かれ座らせられると、足枷を付けられ、放置されたことを話した。
トーマも廊下で気絶させられ倒れていたそうだ。
今は保健室で休んでいるという。
大体、私の話と合っているようなことを話していたそう。
気になることはいくつかあるけど、私はトーマを嫌いにはなれなかった。
野営実習で友人を気にかけ、ルールを気にせず駆け付けてくれたトーマ。
悪い人には思えないんだよな……。
でも、たぶん、トーマは私を連れ去った男に頼んで攻撃してもらい、自ら気絶したのだろう。
男達が逃げる時間を稼ぎ、自分に疑いが掛からないようにすること……。
トーマと話をしなければ……。
馬車が学校に着いて、学生チームは食堂の客間にまず向かった。
レイモンドもダーゼンと現地で別れ、4年生達と一緒に戻って来ている。
マリアとカトレア先生が飛びついてくるように迎えてくれた。
「ネモ!!
本当に!!
無事で良かった……」
「マリアも無事で良かった。
マリアの事を傷つけて、陛下に圧かけるとか言ってて、ムカッとした」
ギーマ先生が驚いて「そんな話聞いていないぞ!」と言い、私はあの建物を探索している時に、実行犯と思われるふたりが話していたことを慌てて伝えた。
「それから1階に足がしびれている男の人いませんでしたか?」
「逃げられたようだ」
「その男も学校を襲いに来たひとりです。
私が見たのは3人。
大男、背が高い男、それにマリアと戦っていた若い男……、この3人目の男の足に光魔法打ち込みましたから。他にいたのかな?」
「ネモのこと陛下のお気に入りと話していたのが最初のふたりだな?」
「はい、弱味のひとつ、交渉の手駒みたいなことを言ってました。
何の交渉だろう……?」
私はギーマ先生を見て言った。
「私を助けてくれようとしてたトーマにお礼を言いたいのですが……」
「ああ、保健室で休んでる。
トーマひとりだから行ってみたらどうだ」
「はい、じゃあ行ってみます」
「ネモ、寮のみんなも心配して待ってる」とウォロが言った。
うん、ダイゴとダンテとカノンもいるしね。
でも、このタイミングでトーマと話しておかないと、トーマが何か予想して先に動いてしまうかもしれない。
後で先に話しといたら……と後悔するのは絶対に嫌だ!
読んで下さりありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願いします。




