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275 4年の野営実習(中)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 昼食抜きだったから、お腹空いた。

 パンを半分食べることにした。

 カップに魔法で水を出し、よーく噛みしめて時間をかけて食べる。


 途中で火の魔道具を取り出し、焚き木に火をつけた。

 ここらの木は油分が多いのかな?

 よく燃えるけれど、燃え尽きるのが思ったより早い……。


 多めに集めておいて良かった!


 暗くなってきて、火を絶やさないように焚き木をくべながら、時々うとうとする。

 本当にひとり……という環境になって、なんかいろいろ考えてしまう。


 ホウエンで逃げている時は追われていたから、ひとりのようでひとりきりじゃなかったんだよね。


 今は、本当にひとり。

 まあ、何かしら(ナイフとカップは全員支給だからどっちかだと思うけど)魔道具で先生達に追跡はされているんだろうけど、追われているわけでもなく追っているわけでもなく。


 自分だけの時間、何もしないでいい時間ってのも最近なかったなと思って、大きく深呼吸した。


 寝る前にはミーアに届けるため魔石に浄化魔法入れるのが日課になってたし……。


 少し身体を動かそうと立ち上がって、焚火と反対側のトンネル口へ出て空を見上げる。


 ちょうど風が空の雲を吹き払っていて、満天の星が見えた。

 すごーい!!

 そうか、今日は月が細いんだ。


 山の上の方の風が強そうだな。

 ウォロ、風が除けられるようないい場所を見つけられただろうか?

 みんなもこの星々を見ているのかな……。


 腕を上げて身体を伸ばし、屈伸運動をしてから、身体をねじる。

 トントンと軽くジャンプして身体の緊張を抜く。


 せっかくのなのでいろいろ思いついた魔法の実験をすることにする。


 まず直径5センチくらいの水球を空中に作り、そのまま焚火のそばへ。

 水球の中で気泡が……。

 あんまり熱くない方が良いかな?

 カップに移動させ静かに水の状態に戻す。


 おお、熱い!

 すごい! やかんいらず!!


 温かいお湯を飲んで身体がほっとした。


 後やって見たかったのは……。

 実は光魔法で火を起こせるかも?! と思いついたんだよね。


 私の光の粒って元気でぴょこぴょこしてるじゃん。

 電気みたいなバチバチもできるし……。

 

 だからバチバチを一点集中させて、さらに光の粒を高速ぴょこぴょこさせるとかしたら……、火、つきそうじゃない?!


 乾いた細い枝を選び、枝先をつまんで電撃と光の粒をぴょこぴょこ……、うん、高速難しい。

 えっと、あ、光にぐるぐる回ってもらったらいいかも。

 光の粒が輪になりぐるぐる追いかけるみたいに回り始めた。


 指先が熱くなり、慌てて離した。

 煙が出てる!


 もう1回!

 今度はつままずに人差し指を押し当て、場所を確認しすぐ離して、イメージしてみる。


「わ、できた!!」


 うん、燃えやすい物なら火を点けることができる!

 これはすごくない?!

 いざという時、便利かも!


 焚火を気持ち多くくべて、ぼんやりする。

 静かだな……。


 風の音が変わった。

 私は立ち上がり、さっき星を見た場所で身体を伸ばした。

 見上げると山の上の方から星が見えなくなってきている。

 かすかに雨の匂いがした。


 雨か……。まだ12時にもなっていないだろう。

 体感的には10時くらいかな?

 念のため、早めに防水フードを取り出し被った。


 お腹空いたなあ。

 水球でお湯を作り、パンをもう少し食べた。

 残りは四分の一。

 これは朝食に取っておきたいな。


 雨が降り始めた。

 防水フードを早めに着られたのと、トンネル状の屋根のおかげで濡れずに済みそう。


 雨風が少し吹きこんできたが、風除けの枝のおかげで焚火が消えることはなさそうでほっとした。


 雨の音で外の気配が全くわからなくなった。

 少し怖いな……。

 ウォロは大丈夫かな。

 ウォロに会いたくなった。


 何故か頭の中に小さなエドワードが現れて『何怖がっているんだ。らしくない!!』と言った。

 確かに、らしくない。


 私はふっと微笑んだ。


 雨がかなり強い。

 湖近く近くの子達は大丈夫かな?


 北東より東寄りに進んだ子達だ。

 湖や川から離れているといいんだけど。


 その時、雷の音が鳴り始めた。

 ああ、ここは大丈夫だけど、林の中で大きな木の下にいるとか……。

 先生方はそれぞれの生徒の状態を、どこまで把握しているんだろう?

 ここまでの荒天になるとは……。

 でも、みんなだって、ちゃんと準備して、学んで実習に臨んでいるわけで……。

 それぞれの力を信じるしかない。

 今の私には何もできないし。

 その時、東の方に雷が落ちた音がした。

 ミカ、東寄りだったけど大丈夫かな。


 その時、また、頭の中に小さなエドワードが現れて言った。

『同じ学年の奴らのこと、もっと信用しろよ!』


 そうだよね。そうだ。


 私は大きく息をついた。


 ……でも、なんでエドワードなんだ?!


 雨が止んだ。空に星が戻ってきた。


「ネモー! いるかー!

 返事してくれ!!」


 誰の声?

 先生じゃないよな?


 私は「ここにいる!」と大きな声で返事をして風除けにしていた枝を移動させた。

 焚火の光がより外から見えやすくなるはずだ。

 焚火から長めの枝を取り出してトンネルから出て振ってみた。

 向こうは火魔法で灯りを作って移動しているようだ。


 必死にこちらに上がってこようとする人影が見えた。

 あれ? やっぱり先生じゃない。


 出発した時、私のすぐ隣にいた3寮のケイオスだっけ?!


 私はこちらからも岩山を滑らないように気をつけて降りて行き、ケイオスと合流した。

「どうしたの?」

「悪い、緊急事態だ!

 本当はルール違反になるのかもだけど……。

 俺の隣の方向の3寮のコーディがさっきの雷で怪我して倒れてて!

 その隣のミカも来てくれてさ。

 ベースキャンプまで戻るより、治療のできるネモの方が近いって!」

「わかった!

 焚火消してくるから、ここで待ってて!」


 私はトンネルまで戻ると焚火に水をかけて念入りに消した。

 松明みたいに使っていた枝はそのまま持って行くことにする。


「お待たせ! 行こう!」

「いいのか? もしかしたら失格になるかも、だけど……」

 申し訳なさそうに言うケイオス。


「怪我をした人を助けて失格になるなら、失格でいいよ」

 私がそう言うとケイオスは笑ってから真顔になった。


「助けてくれ。こっちだ!」


 東の方に進み、湖の方へ戻る感じになる。

「林の中にいたの?」

「ああ、俺は林の端の低木や茂みが多い辺りにいたんだけど、コーディはその奥の大きな木の下にいたみたいで。

 雷が落ちた時、近いなと思ったんだけど、同時に人の叫び声も聞こえた気がして。

 隣がコーディとわかってたから気になって、見に行ったんだ」


 ケイオスが周囲を見回し「ここに俺はいた。あっちだ!」と叫ぶ。


 ケイオスが示した方にかすかに明かりが見えた。


 急ぎながらもケイオスが説明を続けてくれる。


「行ってみたら、コーディが倒れてて。

 ミカも来てくれてさ、ふたりでコーディの様子を確認したら、意識がないし、呼吸も弱くて……」

「雷に当たった?」」

「いや、そんな感じじゃなかったけど、わからない」

「ミカが背中を叩いたり呼びかけたりしたら、呼吸は戻って。

 でも、頭に怪我しててさ」

「先生には? 魔法を打ち上げるとかした?」

「そうか、そうすればよかったんだ!

 着いたらする!」


 明かりが焚火だと認識できるように見えてきて、横になっている人と付き添うミカの姿が見えた。

「ネモ!!

 来てくれてありがとう!」


「ケイオス!! 上空に火魔法で助けを求める連絡を!」


 私はそう言いながら横になっているコーディの身体をざっと目視で確認する。

 顔色が悪いかな?

 額から目のあたりに泥? 血かな?


 そばにいるミカに聞く。

「怪我って?」

「どういう状況での怪我かわからないんだけど、額に怪我して出血は多かったみたいだ。

 見つけた時には顔が血だらけになってて、口や鼻の辺りはきれいにしたんだけど……」


 ああ、暗いな。

 私は自分の右手を光魔法で光らせた。

 光魔法の力だけだと私には見えたりするんだけど、灯りとしては使えない。

 何か光らせる媒体となる物があれば可視できる光を発動することができることはわかっていたんだけど、ホウエンで自分の身体も光ることがわかったのでこういう使い方ができるようになった。


 巻かれているタオルをそっと外してコーディの頭の方を確認する。

「ああ、額だね。

 ぶつけたのかな。切り傷がある。もう血は止まってるね」

 傷を洗いたいけど、今は全身症状の方が先だな。

 傷を覆うようにタオルを巻き直した。

 

 私はコーディの右手を左手で握り、光を流し始める。


 上空に炎魔法が打ちあがった。

 3回繰り返してくれた。


 うん、感電したという感じではないな。

 近くに雷が落ちたことでショック状態になって、倒れて額を切って失神したという感じかな?


 意識がなくなり、呼吸が弱くなって身体も濡れていたというのはとても危険だった。

 ミカとケイオスの迅速な応急処置のおかげで危機は脱している。

 私はコーディの身体の中に光を巡らせながら「コーディ! コーディ!」と呼びかけた。


「目が開かない……」

 コーディの呟きに私は自分のタオルを取り出し、端の方を水魔法で湿らせて目の辺りを拭こうとしたら、ミカがタオルを受け取ってくれ丁寧に拭いてくれた。


 目を開けたコーディは「あれ? ネモ?」と言った。

 意識はしっかりしてるみたいだ。


「今、治してるから、大丈夫だからね!」

「どうして?」

 うん?

 私がなぜいるかということか?

「ケイオスとミカが倒れているコーディを見つけて応急処置して、私を呼びに来てくれたの」

 私は自分の毛布も取り出してコーディの身体に掛けた。


「ネモの手、気持ちいい」

「大丈夫。そばにいるからね。

 ケイオスもミカもいるからね」


「ネモ! 

 3回火魔法を打ち上げた。

 もう少ししたらまた打ち上げる」

 ケイオスが戻ってきた。


「うん、ありがとう。

 ケイオスはコーディと仲が良いんだよな。

 左手握って何か話してあげて」

「えっ、俺そんなに悪いの? 

 死にそうとか?」

 コーディが不安そうに言うので笑ってしまう。

読んで下さりありがとうございます。

午後投稿はお休みします。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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