273 ラーナとノアを探せ!(前)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
ウォロと外へ出てみると、ラーナの姿が1時間前ぐらいから見えなくなったのだそう。
最初はどこかでひとりで遊んでいるのかと思って、様子を見ていたが、そろそろ暗くなるのに、呼びかけても返事がなく、みんなで探し始めたとのことだ。
レーナが泣きそうになっていて、学校から帰ってきたサンとルイも不安げな表情をしている。
ノアも帰ってきていない。
「ウォロ、ノアも一緒かもね」
私はこっそり言った。
「ああ、自分も思った。
探索魔法できるか?
魔道具でノアを探して方向を教える」
「うん」
私は光を放出した。
「ノアを探す」
ウォロが小指のノアと繋がっている魔道具を発動させる。
薄い赤い光が林の方へ伸びていく。
私はその赤い光の筋を光の粒に追わせながら向かわせる。
ウォロが、サンとルイにラーナの姿が見えないことを警備の詰所に報告に行くように言った。
「もうそろそろ暗くなる。
暗くなったら、警備に協力してもらわないと探すのは無理だろう」
私は古い小屋のような建物の中でノアを見つけた。
やはりラーナと一緒だった。
そのそばにはあの店員と、もうひとり……。
フードで顔は良く見えないがあの服装は見覚えがある。
ホウエンの神殿の神官の服に似ている。
今の服は少し色やデザインが変わったのだが……、以前の服に似ている気がする。
私はウォロの手を握り視覚共有を始めた。
「あれ、これって……。
ホウエンの神官の服じゃないか?」
「そう思う? 私も前の神官の服に似ている気がして」
その時、神官らしい男がフードをはねのけたので顔が見え、私は息を飲んだ。
「知っている人?」
「あの時、私に薬入りのお茶を飲まそうとした人だと思う」
「旧大神官派ってことか……」
ラーナは手首を軽く縛られているみたいだけど、足は縛られていない。
ノアが寄り添い、慰めているみたいだ。
どうしてラーナが捕まってるのかわからないけど……。
私が原因なのは間違いなさそう……。
私は全部の光をラーナとノアがいる小屋とその周りに集中させる。
小屋の中に増えた光の粒を見てノアが目を細めたのがわかった。
光を通してノアに呼びかける。
「ノア、見つけたから、これから迎えに行く。
ラーナを守ってくれてありがとう。
ラーナに私の声を伝えられる?」
ノアは瞬きした。
「ラーナ、黙ったまま聞いてね。
気がつかれないように気をつけてね。
ネモだよ。
場所はわかったから迎えに行く。
ノアと離れないように。
ノアは強いから、ラーナを守ってくれるからね。待ってて!」
ラーナが微かに頷いた。
「元神官だと聖魔法を使えるかもしれない、私も行くから」
ウォロに言うと仕方がないなという表情で頷いた。
サーブさんとスニフさんがサンとルイとこちらに戻ってきたので、ウォロが説明する。
「店員がラーナを見張ってる?
そして元神官が一緒にいる?!」
サーブさんが首を捻る。
確かにわけがわからないよな……。
「ノアが一緒にいるからラーナは大丈夫。
ただ怖い思いをしていると思うから早く救い出したい。
場所はわかっている!」
私は林のその方向を指差して「こっちに小さな小屋みたいな。道から外れてるところで」と言うと「避難小屋か?」とサーブさんが言った。
「確かにこっちの方、魔獣からの避難小屋がいくつか建てられてるはずだが、3つあるはず」
私はサーブさんの手をつかむと視覚共有した。
「なんだ?」とびっくりされる。
「視覚共有、受け入れて」
私は説明を始める。
「ラーナがいるのはこの小屋」
小屋の外の光に視覚を切り替える。
「わかった! ここだな! 1号小屋だ!
スニフ、ラーナと店員と怪しい神官らしい男が1号小屋にいる。
俺とネモとウォロはそちらに向かうから応援を頼むと伝えてきてくれ」
サーブさんがスニフさんに指示をした。
「わかった!」
ルイが「僕も行きます!」と言って、スニフさんと一緒に走って行く。
サンが真剣な顔で「僕も連れて行って下さい」とサーブさんとウォロに言った。
サンがいたらラーナは安心するかもしれないけど……。
サーブさんが頷いた。
「ネモと一緒にいてくれよ」
「はい!」
私は家から長剣を出してきて身につけた。
それからサーブさん、サン、私、ウォロと4人で1号小屋に向かう。
まだ明るいので移動できているが、もう30分もすると暗くなって難しくなるだろう。
暗くなる前に1号小屋の近くにたどり着くことができ、中に3人とノアがいるのを確認できた。
「狙いは私のわけで、私がラーナとノアを探しに来たふりをして行っちゃうというのはどう?」
私が言うと「僕も行きます!」とサンが言った。
「僕がいたら、ラーナも安心するから」
その時、周囲を警戒させていた光から、スニフさんや警備の人達が松明や灯りの魔道具を掲げてこちらに向かっているのが見えた。
「みんながこちらに向かってきてくれているけど、灯りを持っているから、たぶんすぐばれちゃう」
私は慌てて立ち上がった。
「人が集まってきているとわかったら何をするかわからないし……。
私とサンだけの方が怪しまれないかも。
とりあえず行ってみる!」
「……わかった。気をつけて」
ウォロが言って私の額にキスをした。
「うん」
「ネモ達の後から、ドアの方に近づいて、すぐ近くに待機しているから」
サーブさんも応援を約束してくれる。
「ラーナ! ノア!」
「ラーナ!!」
私とサンは探しているようなふりをしながら1号小屋に近づく。
小屋の中で灯りが消されたのが小屋の中の光から伝った。
でも、私の光は周囲が暗くても見えるんだよね。
小屋の右側に元神官が隠れるように潜み、一番奥にラーナとノアと店員がいる。
「サン、あの小屋は?」
「避難小屋です」
私はサンの左手を握って、小屋の中の様子を見せた。
サンが頷いた。
「小屋の中も確認しよう」
わざと大声でそう言った時。
「サン兄ちゃん!」
ラーナの声が小屋の中からした。
「「ラーナ!!」」
私とサンは暗い小屋の中に飛び込んだ。
向こうは私達が見えないと思っているが、私と手を繋いでいるサンにも見えている。
私達はまっすぐにラーナとノアと店員の所に向かい、店員の足に光魔法のビリビリを打ち込む。
慌てた店員が灯りの魔道具を発動させた。
これで見える。
私はサンの手を離すと長剣を抜き、店員に突きつけた。
サンがラーナを立ち上がらせ抱きしめた。
「ラーナ、助けに来たよ」
「サン、外に!」
私はサンとラーナを背に庇うように元神官が隠れている方向へ立ち、剣を向けた。
サンがラーナを連れて外へ出た。
小屋の外の光の情報ですぐにサーブさんとウォロが保護してくれたのがわかった。
ノアは私のそばで一緒に元神官に対峙してくれている。
「聖女様、お迎えに上がりました」
元神官が急に話し出した。
「私達は真ホウエン神聖国という名の新しい神の国を作り上げようとしています。
どうぞ、お力をお貸し下さい!」
何が、真だ! 神聖だ!!
「……覚えていますよ。
あなたは私に薬入りのお茶を飲ませようとした人ですよね。
後で、薬が効いていないと驚いてた……。
そんな人に協力するわけないでしょう」
「あれはあなたをお守りするために!!」
「……言うことを聞かせるのが、私のため?!
今回も、あんな小さな子にひどいことを!!」
「これは……、あの少女の方がその猫から離れなかったのです」
「は?」
「私達は聖女様と話し合いたいために、あなたの飼い猫であるその黒猫を捕まえようとしていた。
あの少女はその黒猫から離れず、邪魔してきたため仕方なく……」
私はノアを見た。
「ニア」
ラーナはノアを守ろうとして自分から捕まったのか。
それでノアはラーナと一緒に……。
読んで下さりありがとうございます。
誤字報告どうもありがとうございます。
午後投稿する予定です。
これからもどうぞよろしくお願いします。




