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272 不穏な人物

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 みんなで「いただきます」と手を組んで言うと食べ始める。

 

 牛肉のキノコ炒め、うん、いい味にできてる。良かった。


「このお肉おいしい!」とラーナが言って、「このちゃいろいの何?」とレーナが私に聞く。


 茶色いの? みんな茶色だけど?


 レーナがフォークで示した、皿の上のものを覗き込むとたれというか醤油のことかな?


「味付けね。

 牛肉に少しだけ塩コショウして、キノコと炒めてからバターと醤油ってのを入れたよ。

 醤油はミーア帝国で使われてる調味料なの」

「ミーア帝国? 東の?」

 サンくんが質問してくる。


「そう、ここから東に進むとウォルフライト王国があって、その奥がミーアって感じかな」

 ウォロが答える。


「ネモちゃ、さんがミーアの人?」

 サンくんがまた……。


「サンくん、私のことはネモでいいよ。

 私もサン、ルイって呼ぶから。

 ウォロがミーア出身なの」

「ネモがウォルフライトだ」

 ウォロが付け加えた。


「へー、そうなんだ!

 ふたりとも違う国の人なんだね!」

 ルイがびっくりしていた。


 8時頃、ダイさんが子ども達を迎えに来た。


「パン、ありがとうございます」

 お礼を伝える。


「お父さん、ネモのご飯おいしかった!」

 ルイが言って、ダイさんが「さんだろ!」と言っている。


「あ、いいんです。

 子ども達、ネモちゃんさんとかになっちゃってて。

 もうネモでいいよって。

 私もルイ、サンって呼ぶことにしたんで」


「明日もまた来ていい?

 あの、ご飯じゃなくて、勉強に……」とサンが言った。


「いいよ、どうぞ」

 ウォロが笑って答える。


「新婚さんなのに子ども達が押しかけて悪かったな。

 でも、楽しかったみたいだありがとう」

 ダイさんの言葉に私は言った。

「この時間くらいまでだったら、うちは全然大丈夫ですよ。

 私達も楽しかったです」


「ありがとう」


 それから、何かウォロに話しかけてから、手を振って子ども達と隣の家に帰っていった。


 ドアを閉めてからウォロが言った。

「店の店員がネモに話しかけてくるんだって?」


 あ、あのことウォロに言ったんだ。

 まあ、私からは言いづらいからよかったのかな。


 皿を一緒に片付けながら、店員との昨日のやり取りから説明した。


「初めて店に行って会ったのに、名前も家も知っているようだったのか……」

「うん、なんか変な感じがして、それ以上は……」

「で、今日はダイさんが一緒だったから話しかけてこなかったけど、ダイさんが変だなと思うくらい、ネモのこと見てたり話しかけるタイミングを計っているような感じだったんだろ」

「うん、ダイさんが見てもそう感じたらしいね」

「ひとりで店に行かない方がいいかもな」

「うーん、でも、食材、買いに行かないと……」

「じゃあ、明日は帰りに治療院に寄るから、少し遅くなるかもだけど待ってて。

 一緒に帰って店に寄ろう」

「うん」


 ウォロが一緒なら安心。


「じゃあ、風呂用意してくるから一緒に入ろ」

「えっ?」

 なにが、じゃあ、なのだ?


「ほら、もう遅いしさ。

 時間の節約!!」


 節約、ねぇ……。




   ◇ ◇ ◇




「ネモちゃん、こんにちは!」

 お昼頃、助手のカオル先生が治療院に来た。


 王都の医学校で学んでいる学生で週に2日実習がてらここに泊まり込みに来ているそう。

 今日明日泊まって、明後日の午後王都へ帰る。


 ローラ先生の親戚らしい。

 ローラ先生にしてみれば孫娘みたいな感じなのかな。

 気さくな感じで話しやすい。

 私がここに来た時、ちょうどいらしてて、いろいろやり方を教えてくれたのもカオル先生だ。


「ネモちゃんは私が帰ってすぐ、アーニャ達が戻ってきたら戻っちゃうんだよね。

 だからここで会えるのは今回が最後だね。寂しいなぁ」


 その時、ローラ先生が自宅の方からカオル先生を呼ぶ声が聞こえた。


 昨日、ダイさんが頼んでいた食材などが届いたみたいだ。

「後でね!」

 カオル先生がローラ先生の自宅(治療院の隣が、ドア越しの廊下続きでローラ先生の自宅になっている)へと走って行った。


 私は休憩室でパンを切ったり、冷蔵庫の食材を見て、目玉焼きとサラダを作り、お茶を入れる。


「ダイさん、昼食できました。

 ローラ先生とカオル先生は自宅の方だから、食べちゃいましょ!」

 声を掛けた。


「ありがとう」とダイさんがやって来て、一緒に食べ始める。


「昨日はありがとう。

 サンもルイもラーナもレーナも大喜びだったよ」

「それは良かったです。

 後4日間しかいないけれど、いつでも勉強がわからなくて困ったらどうぞ! ってサンとルイにお伝えください」

「サンとルイが行くと、もれなくレーナとラーナもついてくるが……」

「もれなくなんですね! まあ、大丈夫ですよ」


 カオル先生がやって来た。

「ネモちゃん、お店の人が話があるって、治療院の玄関の方で待ってるよ」


「お店の人?」

 私は首をかしげる。


「食材を届けに来た店員ですか?」 

 ダイさんが気がついたように言って、私を見た。

「ネモちゃん、行かなくていい。

 私が聞いてくるよ」

 言いながらダイさんが立ち上がるが、私も立ち上がり言った。

「いえ、ダイさんひとりで何かあったらやだし、私も行きます」


 カオル先生が「何?」と言い、ダイさんが「その店員、ネモちゃんに声かけてきたり、じっと見てたり、怪しいんです」と言った。


「なら、私も行くわ」


 3人で玄関に行くと、やはりあの店員だった。

「何か御用ですか?」と私が声を掛けるが、一緒のふたりに驚いているよう。


「君は彼女に夫がいることを知っていて声をかけているのかな?」

 ダイさんが質問する。

 店員は頷いた。

「じゃあ、何の用事が……」

 カオル先生が言った時、店員は表情を変えた。

 戸惑いから怒り、そして何か気がついて怖がるような顔をして、急に身を翻して走り去っていった。


 私達はぽかんとそれを見送った。


「なんだ?」

 ダイさんが少し薄気味悪そうに言った。

 カオル先生も不思議というか理解できないという表情をしている。


「ネモちゃんのことを好きになった、恋しちゃったとかかと思ったけど……。

 なんか違うみたいね。

 警備の人や商会の人にも相談しといた方が良さそうじゃない?」


 カオル先生の言葉に私は頷いた。


 午後、転んで足を捻った人が治療院に担ぎ込まれてきて、ローラ先生の診察後に歩けるくらいまでという指示が出て、光魔法で治療した。


 カオル先生が湿布を作り包帯を巻いてくれる。

「今日は風呂に足を入れないように。

 明日の朝、また来て下さい。

 湿布を替えますから」

「仕事は……」

「1日休んで下さい」

 カオル先生にビシッと言われて、がっかりしつつも頷いていた患者さんだった。


 夕方、ウォロが迎えに来てくれた。

 カオル先生と挨拶をしている。


 ダイさんとカオル先生が昼にあった、店員との出来事をウォロに話した。


 店と警備(つまりウォロの上司、サーブさんより上の商会の人だね)に話をして店員について調べた方がいいと言ってくれ、ウォロと警備の詰所へ行くことにした。


「ノアは?」

「午前中のパトロールの時は一緒にいたけれど、午後はどこかへ行ったようだ」


 警備詰所に行くとサーブさんとスニフさん、それにハイレディンの護衛をしていた人がいた。


「ネモさん、先日はありがとうございました」と言われる。


 私とウォロは店員のことを話した。

 ダイさんとカオル先生も変だと思うので、店に店員のことを確認し、商会の警備にも話した方がいいと勧められたので相談に来たと説明した。


「ネモちゃんに恋でもしちゃったんじゃないの?」とスニフさん。


「でも、結婚していることを知っていたし……。

 ダイさんとカオル先生も最初そう思ったみたいなんだけど、店員の反応が思っていたような雰囲気ではなく、薄気味悪いと思ったみたい……」


 それを聞いた護衛の人は頷いた。

「サーブ、ウォロ達と一緒に行って店で確認して来てくれないか!」 

 

 3人で店に行くと店員がいなくなったと店主が困っていた。

「いなくなった?」

 サーブさんが驚く。


 店で雇った店員でハイレディン商会を通していない雇用だったそう。


「何か嫌な感じがするな。

 ネモは家に帰っていた方がいい」

 サーブさんが言ってくれ、とりあえず多めに食材を買って、ウォロと家に帰ることにした。


 サーブさんが警備詰所に報告してくれるという。


 私とウォロが家に着いて、食材をしまっていると、外の子ども達が何か騒がしい。


「ラーナ?」「ラーナー!!」

「おーい、ラーナー?!」

 みんなでラーナの名前を呼んで探しているみたいだ。

読んで下さりありがとうございます。

いいね、ブックマーク、いつもありがとうございます。

昔、バイト先で○○ちゃんと呼ばれていて、入って来た新人社員さんから「○○ちゃんさん!」と呼ばれたことを思い出しました。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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