267 新婚旅行(後)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
「本屋にでも行ってみるか?」
ハイルが言うので私達は頷いた。
ノアは私について行くつもりの様だったので、また上着の中抱っこで行くことにした。
ハイルと私とオードリーとノアで馬車で出かける。
馬で護衛騎士がふたり付いてきてる。
大きな本屋に入り、オードリーは店員さんと話し込んで、いろいろ本を出してもらっているようだ。
私は近くの書棚をぶらぶら見て回り、ホウエンの料理理本を見つけ、ライトを思い出して手に取った。
それから、草魔法について書かれた本を見つけた。
草魔法持ちの魔法使いが自分の生活を書いたエッセイみたいな感じ。
パラパラめくって拾い読みして見ると、この人の練習方法や私はこうイメージする! みたいなことも書かれていて、けっこう面白い。
カノンに買って行こう。
2冊の本を手に戻ると、オードリーは10冊も選んでた。
私の本も一緒に買ってもらうというか、結局、ハイルがお金を払ってくれて……。
後でウォロに言わなきゃ……。
本は馬車に積んで、オードリーのリクエストで次は菓子店に行く。
私はノアがいるので、外で待つことにした。
ショーウインドーを見ているだけでも楽しい。
ホウエンは焼き菓子と飴細工の菓子が多いんだな。
なんだか高級な菓子はまるで工芸品や芸術品のようだ。
きれいな色と形の飴をいくつか買ってもらったオードリーだった。
王城に戻ると、まだウォロ達は戻っていない。
どうしたんだ……?
ちょっと心配になり始めた時、戻ってきた。
ダイゴはとってもご機嫌で、ウォロはムッとしてる……。
ハイレディンが教えてくれたところによると、馬車で30分ぐらいのところに石が拾える海岸があり、
大使館で石の話になってダイゴがその場所のことを知ると「行きたい」と言い出し……という感じだったらしい。
ウォロは早く王城に戻りたがったみたいだが「ウォロはまだいるんだからいいだろ!!」と押し切られたそう。
聖石の結晶がたくさん拾えたそう。
ウォロも仕方なく石拾いしてたそうで、けっこう拾ったと言う。
何気に楽しめていたようで良かったよ。
夕食を食べてから、部屋でゆっくり話を聞く。
「ダイゴが本当に石のことしか言わなくて……」
なんて言いながらも自分が拾った石を見せていろいろ説明してくれる。
ダナンの川の魔石や聖石とは違い、なんだかバリエーションが多いと言うか……。
不思議な色合いや不透明だけど鮮やかな色の魔石とかあってきれいだった。
「きれいだね……」
「欲しいのあったら、あげるよ」
「えー、もういろいろ貰っているから」
「そうだな、指輪にネックレス、イヤリング……。
じゃあ、外出時に身につけられる髪留めとかは?」
私は急に思いついたものがあって言った。
「あ、このいろいろな石でブレスレットとかきれいかも」
「ブレスレットか、いいね。
それなら自分も身につけられる。
いい思い出になりそうだ」
「うん、ふたりで身につけられる物なら、もっとうれしい」
「ネモ……」
「うん?」
「……なんで、そんなかわいいこと言うの?!」
えっ、普通なんだが?
「今日も、まだ、ダメ……?」
「ごめん。もう少し!
まだ、少しだけど血が……」
「新婚旅行なのに……」
「だって、こればかりは仕方がないよ……。
あ、今日、本屋に連れて行ってもらって、ハイルに買って貰っちゃったよ、本2冊。
私からお礼は言ったけど……。
お金を返すか、お礼を言うか、ウォロに任せる。
ダイゴはどうするかな。
オードリーは………10冊買ってもらってて……」
「10冊?!
それは多いな」
「昼食もレストランでご馳走になったし、菓子店にも連れて行ってもらった。
私はまだこっちにいるから買って貰わなかったけど、オードリーは明日帰るから買って貰ったので……」
「わかった、ダイゴとふたりでハイルに話をして礼をしとくよ」
「うん、お願いします」
次の日もう一度聖石を見たいと言うダイゴのために、再度神殿を訪れた。
聖石の柱の前で祈る若い女性が3人いる。
聖魔法持ちの令嬢達で、時々浄化のために祈りに来てくれているのだそう。
ハイルと言葉を交わしている。
おお、花嫁候補、いるじゃんね。
ちょっと安心した。
令嬢達が去った後、ダイゴが「ネモ、また祈ってくれない?」と言う。
うん、祈らせてもらう。
私は右手を聖石に触れ、浄化魔法を流しながら祈った。
聖石と身体の中を光が巡っていく。
私の黄色の光と、この大きくまばゆい強い光は?
聖石のものか?
上着抱っこをしているノアを見るとちょこんと聖石に手をついていて、まるで私の真似をしているみたいに見え、微笑む。
その時、ノアを支えている左手が、外から見てもわかるぐらい光っていることに気がついた。
私の全身が光っているのか?!
私は何者かの記憶を頭の中で見ていた。
カイオーとグラードの大陸作り。
上から見下ろしている。
ふたりが上空を見上げる。
これはカイオーの記憶?
上空に黒いドラゴンが、ドラゴンと言うよりは……、私の前世の言葉だとアジアっぽい細長い体をくねらせている黒い竜がいた。
カイオーが海。
グラードが大陸。
そしてあの黒い竜が空。
三体でこの世界を守る聖獣なんだ。
前に聞いたことのある渋い声が頭の中に響く。
「我はレックウ。
空よりこの星を守るもの」
ハラル山で聞いた声だ。
ノアの声だと思っていた。
ノアがレックウなのか?
私はノアを見た。
ノアがゆっくりと目を閉じてからまた開く。
私も同じように瞬きした。
「大陸の聖石、海の聖石をこの世の汚れから守るために私は力を使い果たし、身体を小さくせねばならなかった。
今はネモとウォロのおかげで聖石は浄化され、私は力を取り戻し、いつでも姿を変えることができる。
しかし人間の世は、人間の思いは実に面白い……。
もう少し、ネモとウォロと一緒に人の世を旅したいと思う。
よろしく頼むぞ」
は、はい……。
そうか、ノアはドラゴンだったのか。
ん、グラードも西洋のドラゴンっぽいと言えば……。
カイオーもオルカに似てると思ってたけど……、哺乳類じゃなくて魚竜みたいな感じなのか?
みんな、ドラゴン?!
だんだん光が落ち着いてきた。
ウォロが私に触れてもいいものか躊躇しているのが見えた。
私はウォロに笑いかけた。
「祈り終わりました」
「ネモ、何ともない?」
ウォロが心配そうに聞いてきた。
私は頷く。
「大丈夫だよ。
聖石やカイオーの記憶を見せてもらってた……」
ノアのことはまだ言わなくてもいいだろう。
ダイゴが「聖石の記憶?」と聞いてきた。
「カイオーとグラードの大陸作りのこと」
私の言葉に大神官様が驚く。
「やはりカイオーは聖獣なのですね!」
「はい、そうです。
ミーア帝国のかなり深い地下に聖石のドームがあります。
そこに相棒の聖獣、グラードがいます」
私はウォロに手を差し伸べた。
「ウォロ、支えてくれる?
少し疲れた……」
ウォロが抱きしめてくれてほっとした。
そのまま皇宮に戻り、私はウォロにベッドに寝かせられた。
「……そこまで疲れてないよ。
それに時差もあるからお昼までにはダイゴ達、ミーアに戻らないと!」
苦笑いしながら言うと「本当に大丈夫?」と言われる。
「そんなに私の身体、光ってた?」
「光ってたと言うか、輝いてたと言うか……。
神と会話しているのかも思い、触れなかった……。
……とても不安だった」
私はベッドの上に身体を起こしてウォロの手を握った。
「大丈夫。私はウォロから離れない」
まだ心配そうなウォロと一緒に、王城のダイゴとオードリーの部屋に向かった。
もう仕度を終えて、広間でハイルやハイレディンと話をしているところだった。
時差もあるのでいつ頃ウォルフライトに戻るか聞く。
「うん、そろそろ帰らないといけないんだけど……」
ダイゴが言った。
もう荷物はまとめてある様子。
「ウォロ、私のネックレスの座標確認して。
さっき聖石の光を浴びちゃったし」
ウォロがネックレスに指を這わせて目を閉じて確認してくれる。
「うん、大丈夫。
ネモのところに戻ってくる」
「ダイゴ、オードリー、ではまた!
ミーアに戻るまで待っててね!」
ウォロがダイゴとオードリーを連れてミーアに転移して行く。
ハイルとハイレディンが「疲れていないか?」と椅子を持って来てくれた。
「ありがとう」
私が腰を下ろすとノアが膝に乗ってきた。
さて、ノアのことをどうウォロに伝えるか考えなきゃ。
読んで下さりありがとうございます。
最初はカイオーとグラードだけにしようと思っていたんですが、やっぱりもう1頭、頭にちらちらしてまして、出すことにしました。
今日も午後投稿お休みします。
ウォロの新婚旅行のプラン? お楽しみにしてて下さい!




