267 新婚旅行(中)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
ハイレディンと戻るとみんなデザートを食べていて「ノアの方が先に帰って来たよ!」とオードリに笑いかけられた。
その後、荷物を全部積んで馬車に乗り込む。
私は上着を羽織ってノアをその中抱っこしている。
大きな馬車で6人が悠々乗れた。
ホウエン王家の馬車だそう。
大きな道を進みながら、外を見て私は呟いた。
「やっぱり、この道を行けば王都けっこう近かったんだ。
あの時は遠回りを余儀なくされたもんな……」
「そうあの時は、この道を封鎖して、逃げたネモを捕まえようとしたのに、逃げ切られたよなぁ……」
ハイルも呟いた。
「あの時は、本当に大変だったんだから……」
ため息をつく。
すぐに王都に入り、まず王城に入った。
泊る予定に部屋に案内され、荷物を置かせてもらう。
「へー、王城の中の部屋ってこんなだったんだ!」
ウォロ達が広場や通りを見下ろせる窓の近くにいたのは光の探索魔法で見えたんだけど、部屋の様子まではわからなかったから!!」
ウォルフライトともミーアとも違う。
天井が高いのに、なんだか閉塞感があると思ったら、窓が鉄格子みたいな造りつけの窓枠で……、これのせいか。
まあ、王都の真ん中で庭の部分などがかなり少ない。
セキュリティーのために、こうなってるんだろう。
それから、歩いて神殿へ。
ハイルが一緒だから顔パスですね。
神殿に入ると光がいっぱい飛んでいる。
でも、前みたいにこっちに向かってこない。
そうか!
聖石の浄化の力が戻っているからだな?!
「カイオーも下にいるの? 今?」
ハイレディンに聞くと頷かれる。
神殿の奥に進んで行き、思い出の階段を下り、私が破壊した地下の部屋や廊下……、ちゃんと直ってた。
そのまま、地下へ地下へ降りて行くと、途中から自然の洞窟のトンネルに入っていく。
ダイゴが興奮して壁に触って言った。
「すごい!! 海に続く鍾乳洞?!」
その先が明るく見えてくる。
大きな空間に出て、地底湖(海と繋がってると湖じゃないのか?)から突き出す巨大な柱のような聖石にダイゴもウォロもオードリーもびっくりする。
「すごい!!」「これは見事だな!」「きれい! 光ってる!」
「聖魔法が使える者を集めて月1回浄化の作業を行って維持している。
それ以外もちょくちょく祈りに来てくれる聖魔法使いも多い」
ハイルが説明してくれた。
かなりきれいになってる。
カイオーが水面に顔を出した。
「カイオー! グラードも元気になったよ!」
ノアが私の上着から顔を出した。
カイオーと見つめ合っているように見えた。
ダイゴが「触ってもいいですか?!」と聞いている。
ハイルと今の大神官様が許可してくれた。
聖石の近くにまで足場が組まれ祭壇のようなものが造られてた。
「おお……」
ダイゴが感嘆の声を上げながら感動している。
「なんてすごい……」
涙ぐみながら「ウォロ、ネモ、ここまで連れてきてくれて、ありがとう!!」と言われる。
オードリーがダイゴを支えるように寄り添っていた。
ハイルに促されて私とウォロも触る。
ノアもちょいと手を出して、たしっと触った。
浄化魔法を流す。
「聖石が……喜んでいる?!」
ダイゴが呟く声が聞こえた。
聖石の光の輝きが増した。
「やっぱりネモは『聖女』だと思う……」
ハイルが言った。
神殿の外へ出ると、懐かしの市場があった。
ノアが私の抱っこからウォロの肩の上まで伝い上がる。
「重いよ」
ウォロが言うが、ノアにしてみればその方が周りが良く見えるらしい。
みんなで市場を歩いていたら「お姉ちゃん?」と声をかけられた。
王都に入る直前、一緒に過ごした家族の女の子と奥さんだった。
「……お久しぶりです。
お元気そうで良かった!」
私はふたりの手を取って言った。
「あなたも……、お元気そうで……」
私の後ろにいるウォロやハイルやハイレディン、護衛の騎士を気にしている。
私はウォロを連れてきた。
「私の夫です」と紹介する。
「あの後、婚約者だった彼と無事に結婚できました!」
奥さんは泣き出しそうな顔になり、私を抱きしめてくれた。
「良かったわ!!
それだけが本当に気になっていて……。
あの時は、息子が本当にごめんなさいね……」
「いえ、怖い目に合わせてしまって、こちらこそ、申し訳なかったです……」
ふたりを笑顔で見送って、ふと思う。
「あれ、ミーアってホウエンに大使館あるの?
ウォルフライトは領事館があったよね?」
ミーアの大使館もあるそう。
ただ、あの時はウォロがウォルフライト王国の方で動いていたため、王城から出られなかったし……。
大使館としても私を探してはいたが情報がほとんどなくお手上げ状態だったらしい。
「明日、大使館にダイゴと行ってくるよ」とウォロが言った。
「ウォルフライトの領事館は……」
「それはごめん。
今回の旅行のことは王国には伝えてないから」
そうか、ひょっこり私が挨拶に行ったら、驚かれるか?!
居場所がなく、彷徨った街を、観光するのは変な気分だ。
市場であの時は食べられなかった果物やアイスクリーム……どちらかというとシャーベットかな?
クレープみたいのとか食べ歩きも楽しかった。
もうお昼ごはんはこれでいいよ! というくらい色々食べて満足。
王城に戻り、部屋に戻り、クローゼットを開けてびっくりする。
ハイルとハイレディンが私を監禁していた時に作らせた服が、そこにたくさんあった……。
「着替え持ってこなくても大丈夫だったね……」
私とウォロは顔を見合わせて苦笑いした。
次の日、ウォロとダイゴとハイレディンは大使館に出かけ、私とオードリーとノアはハイルに王城の中を案内してもらう。
そういやハイルもハイレディンも婚約者はいないのか?
部屋に戻り、オードリーとふたりでお茶してる時に話してみたら……。
「ネモ。
それ、あなたから絶対聞いちゃダメだからね!」と言われた。
そうなの?
まだウォロ達は帰って来ない。
私はこの時間を使ってミーアの皇帝陛下に手紙を書くことにした。
ホウエンでジュニア(モーゼウス・サーザ)が亡くなっていることがわかったこと。
彼の最後を看取ってくれた人から、銀の小鳥が彼の元を訪れ、彼が息を引き取ると一緒に息絶えたと聞いたこと。
ふたりの墓にお参りすることができ、祈ったが、ふたりの魂はもう留まっていなかった。
神の元へ、無事に行けたと思うこと。
もう、ジュニアとメイリンの心配はしなくても大丈夫。
安心して下さい……と。
その手紙を忘れないうちにと、オードリーに託した。
「明日、オードリーとダイゴは帰っちゃうんだよね?」
「先にミーアに戻って、ウォロとネモが新婚旅行から帰ってくるのを待っているわ。
どこに行くのかしら?
ホウエンの観光地?」
「何もウォロから聞いてないの……」
「……それは……、楽しみね」
ウォロ達は昼過ぎになると連絡があったそうで、ハイルが昼食に王城のそばにあるレストランに連れて行ってくれた。
ノアはさすがにお留守番……。
ハイルが王になってからのホウエンの様子を聞いたり、ミーアとウォルフライトは教育と医療の連携に力を入れ始めたことなど話した。
「ホウエンももっと近ければ……」
ハイルが悔しがる。
「でも、ホウエンには聖魔法が使える人が、ミーア、ウォルフライトより、たぶん多いよね。
特に王都なんて聖石がすぐそばにあり、聖域で暮らしているようなものだもんね。
ウォロの妹のカノンが聖魔法の草魔法持ちなの。
3国で連携して聖魔法のこと、もっとわかっていくといいね」
「草魔法か、俺と一緒だな」
「でも、カノンの草魔法は、植物のそばにいると植物の生長が早く豊かな実りになるとか、魔法薬だと植物の成長促進の薬が作れたり。
後はよくわからないんだけど、子どもを授かる薬とか作れるらしい。
植物だけじゃなく、実りとかそういうことに関係してるのか?
ハイルのは拘束したり、ドアを開かなくしたり、攻撃系しか知らないけど、だいぶ違う」
「確かに、俺の草魔法とはかなり違うな……」
「だよね。
ハイルもカノンもまだまだできること、たくさんあるのかも?!
そうそう、あの聖女の本、すごいでたらめだからちゃんと直した方がいいよ」
「ああ、見直してるよ。
何しろ規格外の聖女様に出会っちゃって、何もかもひっくり返されたからな。
神殿の伝統とか伝承だけでなく、大学の研究の成果なども考えて見直ししているよ……」
「それなら良かった!」
「私は伝承の物語とかの方も気になるわ。
そういうホウエンの昔話とか語り継がれている物語の本ってない?」
オードリーが興味津々で聞いてくる。
読んで下さりありがとうございます。
今日は午後投稿お休みします。
これからもどうぞよろしくお願いします。




