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267 新婚旅行(前)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 次の日、久しぶりに神殿に行った。

 治療の魔道具6個と交換のための魔石を気持ち多めに、神殿内の警護局の職員や隊士同席のもと、新しい神官長に渡す。


 神官の中には知らないうちに反転治癒を受けてしまっている人が多いよう。

「みんなで使わせていただきます」と言われた。 


「魔石の補充は空の魔石を持って警護局の方に……、警護局の方が管理して頂ければわかりやすいかな?」

 警護局員が頷いてくれる。


 私達は神殿を後にして、外に出た。


「とりあえず、これで一段落だな!!」

 ウォロが言うなり、私を抱き上げて、ダンスの様にくるくる回った。


 神殿から出てくるなりそんなことをしていたからか「結婚したのかい! おめでとう!」と勘違いされて声をかけられた。


 ウォロが満面の笑みで「はい! ありがとうございます!」と言うものだから、私も慌てて「ありがとうございます!」とお辞儀した。


「「お幸せに!!」」

「「おめでとう!!」

 その場にいた人達に声をかけられてうれしくなった。


 なんだか本当に結婚したんだ! という実感がわいてきた。


「さあ、新婚旅行に行くぞ!」

 ウォロが笑って言った。


 荷物を詰めるが、結局一度ミーアに戻ってくるわけで、2週間分の荷物ということ。


 いつものカバンにすぐ使う物を入れ、大きめのカバンに衣類と調査の時に履くようなしっかりめの靴を入れた。

 着るのはシンプルなサマードレスにして、ミーアのサンダルを履いた。


 オードリーも私と似たような服装にして、2泊分の着替えを持ったとのこと。


 オードリーとダイゴは2泊で帰るのか……。


 ウォロとダイゴも、ミーアのシンプルだけどちょっと良さげな服を着て、腰に飾り紐をつけている。


「あ、そっちの飾り紐を使ってくれるの?」

 私はウォロの飾り紐を見て思わず声をかけた。


 大事にしまっていた私の髪入りの飾り紐だったから……。


「いつも普段につけていたのは、ひもが切れかけてて。

 今回は新婚旅行だし、こっちにした」


 皇宮のミニ神殿の所から出発。

 初めての場所なので、先にウォロと私とノアが転移して、安全が確認出来たら、オードリーとダイゴを迎えにウォロが戻らないといけないから。

 転移の座標があるところじゃないとね。


 カノンとダンテと陛下が見送ってくれた。


「2週間後、戻ります! 

 いってきます!」


 ウォロの転移魔法が発動する。

 カノン達が手を振ってくれた。


 景色が溶けたようになり浮いた感じがして、キラキラの光が飛んでいく、地に足が着いた感じがして周囲の景色が見えるようになる。


 あれ?

 ここ、見たことある。


 えーと、あのお屋敷?

 柵の上がとんがってる感じ……。


 ここって?


 ホウエン?

 ハイレディンの屋敷?!


「日にち、ちょっと遅れたからなぁ」

 ウォロが言いながら屋敷の方へ行こうとする。

「ちょっと、ここ、ハイレディンの?!」

「そうだよ、ホウエンだ」


 私達の声を聞きつけたのか、ハイレディンとハイルがテラスから出て来た。


「やあ、いらっしゃい! 待ってたよ」とハイレディン。


「ごめん遅れて!」

 ウォロの言葉にハイルが言った。

「いや、一応、今週中の約束だったし、のんびり待っていたよ」


 ハイレディンが笑った。

「こんなこと言っているが、毎日、この時間になるとずっと気にしていたんだよ」

「ハイレディン!! そんなことばらすなよ!

 ネモ、久しぶり、結婚おめでとう」


「ありがとう、ハイル、ハイレディン」

 私が言うとウォロが頷いた。


「大丈夫だな。

 ダイゴ達を連れてくる、ちょっと待ってて。

 ハイレディン、ハイル。

 ネモとノアを頼む」


「任された」とハイレディン。


 ウォロが荷物をハイルに託し、ひとりでまた転移して行った。


「どうしてここに……。

 あ、ミーアでハイレディンにおつかい頼んだって、座標になる魔石を運んだの?!」

「そう、ウォロに頼まれて、それで8月最初の1週間のどこかで、ミーアだと昼、ホウエンだと朝になるけど、転移してくることになってたんだ。

 だからハイルもこっちに来てたわけ」

「えー、全然教えてくれないんだもん!

 びっくりしたよ!!」


「ウォロの考えたプランもかなりぶっ飛んでるよ。

 ネモ、楽しみにしてな。

 ハイレディン商会で全面協力するから!」


 それは、どちらの方向にぶっ飛んでいるのでしょう?!


 ウォロがダイゴとオードリーを連れて転移してきた。


「ネモ!!

 えーと、ミーアでお会いしたホウエンの船の人よね?」

 オードリーがハイレディンを見て驚きの声を上げる。


 ホウエンにダイゴが来たがる……?


「あ! ダイゴ! 聖石の柱、見たいのか?!」

 私は叫んだ。


 ダイゴが微笑んだ。

「わかっちゃった?

 一度どうしても本物を見てみたくてさ。

 ネモは見たんだろう?

 ウォロも見てないって言うし。

 えーと、こちらが神聖ホウエン王国の国王陛下だね。

 ミーア帝国第2皇子ダイゴです。

 こちらは婚約者のオードリー。

 今回はお世話になります」


 ハイルが微笑んだ。

「いらっしゃい、歓迎するよ!

 私のことはハイルと呼んでくれ!

 私も、ダイゴとオードリーと呼んでいいかな?」

「どうぞ!」

「では、荷物を!

 こちらにどうぞ!」

 ハイレディンが手を叩くと、メイドや使用人がテラスに出てきて、荷物を預かってくれた。


「こっちは今、ちょうど朝だ。

 ネモ達は昼食、私達は朝食だな」

 ハイレディンが笑って言った。


「朝食後、王都の王城に移動して、神殿に行こう。

 今夜は王城に泊ればいい」

 ハイルが食事をしながら言ってくれる。


 私はノアがご飯を食べ終え、テラスから庭へ出て行ったのを見て「ちょっとノアを見てくるね」と席を立った。


 テラスまで出て庭を眺めると、ノアの後姿が庭の小道を奥へと進んで行くのがちらりと見え、見失わないように慌てて追いかける。


 庭の小道をそのまま進んで行く。

 あれ、見失ったか?


「ナーオ」と鳴き声が聞こえ、そちらを見ると小道から外れたさらに奥に石碑のような物が立っているのが見えた。


 私は小道から外れてそちらに向かう。


「ノア、こんな奥まで!

 初めての場所だから気をつけないと……」


 ふと石碑に目をやり驚く。


 石の表面に刻まれていた文字は『サーザと銀の小鳥 ここに眠る』だった。


 ジュニア?

 これジュニアのお墓?

 やっぱり亡くなってたんだ……。


 銀の小鳥?

 もしかして、メイリンの小鳥かな?


 私が墓石に触れようとすると「……ネモ」と声をかけられ、びくっとして振り返った。


 ハイレディンだった。


「……サーザって、生物学の?」

「そう、依頼でミーアからホウエンまで連れて来た。

 そのまま匿って……、依頼では名を変えてホウエンで生活するということだったんだけど、病気……で亡くなった。

 死ぬ直前、本が……彼の名が入った本が出版され、それを読んで感謝していたよ。

 共著としてくれた博士に……。

 だから、墓にはその名を刻んだ」


「銀の小鳥って?」

「彼は良く夢で光る小鳥を見たと話していた。

 亡くなる直前に、その銀色の小鳥が窓から飛び込んできて、彼に聴かせるようにきれいな声で歌って……。

 彼が息を引き取った時、彼の胸の上で一緒に死んでいた。

 だから、一緒に……」


 私はため息をついた。

「ここにいたなら、探しても見つからないはずだ。

 メイリンも探すの大変だったろうに……。

 最後に会えて良かったね……」


 涙が自然にこぼれた。

 私は墓石に触れた。


 うん、何も感じない。

 ふたりとも、もうここにはいない。


「そういえば、ネモのこと知っているようだったよ」

 ハイレディンの言葉に笑ってしまう。


「そう……、彼だけだよ。

 今までで、私に『殺してやる』と言わせたのは……」


「あー、確かに。

 ネモを攫ってきて大変な目に合ったと話したら、納得してたもんな……」


 私はノアを抱きあげて囁いた。

「私をここに連れて来たのは、わざと?」

「ニア」


 うーん、ノアの鳴き声は、そう、とも取れるし、いいえ、にも取れるし……、よくわからないや。


 光魔法を流そうとしてやめた。

 どっちでもいいもんね。


 ジュニアの……、サーザの生死がはっきりしただけでも、最後にメイリンが気持ちを伝えられたであろうことがわかっただけで、いい。


 私はノアが私の腕から逃れるように地面に降りるままにして墓の前で祈った。


 ふたりが神の前で許されていることを……。


 祈り終わり、振り返るとノアはさっさと屋敷の方に戻っていくところだった。

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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