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264 みんなは帰るけど(前)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 夕方、やっと皇宮に帰れた。

 魔道具の申請はずるいんだけど緊急案件ということで、申請書提出と一緒に、例外的なんだけど直接説明する機会も頂け、2日ほどで結果が出るということだ。


 皇宮に帰り、部屋に戻るとノアがもうソファの上に寝ころんでた。

 まもなく、ダイゴやエドワード達が帰ってきて、急に賑やかになった。


 すごく楽しかったそう。

 山登りや釣りもしたそう。

 温泉もすごく気持ちよかったとのことだ。

 いいなあ。

 でも、話を聞いているとプールとかみたいな感じ?

 まあ、確かに温泉旅館がミーアにあるわけないか?!


 夜、皇帝陛下の執務室に呼ばれる。

 行くと、ダイゴとダンテも来ていた。


 魔道具のことを聞かれて今日のことを説明する。


「先に私に相談してくれれば良かったのに……」

 陛下に言われて、慌てて謝る。


「すみません。

 私が思いついて、慌ててウォロに相談して、試作品ができたらすぐに動き出してしまったので……」

 

 そうなんだよな。

 ダイゴがいたら、ダイゴに声かけていたと思うんだけど、陛下に声をかけるなんて思いつきもしなかった……。


「まあ、いい。

 登録も無事にできたようだし、魔道具の申請の方も順調だそうだ。

 次から急ぐ時には、私にも頼れることを忘れないでくれ」

 陛下が言ってくれた。


 ウォロは何も言わない。

 まあ、直接頼らなくても、今回助けてくれた皇子という肩書は、結局、皇帝陛下の息子だからということ、ね。

 そういうことはわかっているんだと思う。


「すごいな、この魔道具。

 浄化だけじゃなく、薬でできることはすべて置き替えることができるんじゃないか?

 しかも、何度もくり返して使えるし……」

 ダイゴが登録のための書類の写し(陛下の所まで連絡が来てたんだな)を見ながら、唸った。


「薬も便利だが、持ち運ぶのに大変だからな。

 騎士や隊士達にしても助かるし、何かあった時にその場で治療することができるというのは安心感があるな」

 ダンテも微笑んでくれた。


「話はおしまい?

 部屋に戻っていい?」

 ウォロが不機嫌そう。

 

 褒められてるのに……、あ、そうか、皇太子にふさわしいと思わたくないんだよな。

 いや、今回は私が巻き込んじゃったしな。


「ネモのアイデアだから。

 自分はそれを形にしただけ」

 ウォロはそう言って立ち上がり、私にも立ち上がるように促す。


 私が立ったら「明日のことだが……」と陛下が話し始めた。


「朝食後にメイリンのお参りに行こう。

 ウォロが提案してくれたんだろ。

 マイベルとカノンにも伝えてある。

 ありがとう」


 ウォロは「それもネモが言い出したことだから」と返事して、私の手を取ると執務室から出てしまう。


「ウォロ、いいの?

 話の途中だけど」

「いいんだ。居心地悪い」


 そのまま、手を握ったまま歩き出すんだけど、部屋とは違う方に行き階段を上がろうとしたので、私は立ち止まろうとした。


「来て」


 仕方なく付いて行く。


 陛下の執務室より上は屋上みたいな感じなんだな。

 けっこう広い。

 部屋よりも眺めがいい。


「わー!!」

 私は見回して「すごいね! いい景色!」とウォロを見上げた。


 夜風も気持ちいい。


 ウォロが急に抱きしめてくるので、戸惑いながらも抱きしめ返す。

「いい?」

 何が?

 私はウォロを見上げるが、暗いのもあって、そこまで表情がはっきり見えない。

「なに……」

 言いかけた時にキスされて、びっくりする。

 えっ、いい? とはそういうこと?!


 まあ誰もいないから、キスぐらいならと思っていたら、屋上からさらに上に伸びている塔の壁の方に連れて行かれて押しつけられた。


 あれ、これまさか?

 そう思ったら、恐怖感が湧いてきた。


 抵抗しようとして押し返した手を掴まれ壁にさらに押しつけられる。

「やだ、やめて」

 またキスされそうになり、顎を引いて拒否する。


 腕を上に挙げられてるから頭突きもできない。

 蹴ることも一瞬頭をよぎったけど、躊躇する。

 ウォロに魔法で攻撃することもできない、いや、できるけど、ウォロに攻撃は……。


「ネモ……?」


 ウォロが手を離してくれ、頬を触られる。

「……ごめん。

 泣いてたんだな。震えてるし……」


 私はほっとして、身体に力を入れていたのは抜いたけど、そうしたら手が、身体が震えていることに気がついた。


「ごめん……。

 怖がらせて……」

 ウォロが謝ってくれるけど、涙も止まらないし、身体の震えも治まんない……。


「ごめん。

 部屋に戻ろう」


 ウォロが抱き上げてくれて、灯りのある階段のところまで連れてきてくれた。

「ウォロ、もう歩けるから、下ろして」


 ウォロは心配そうに私を立たせてくれた。


 私は大きく深呼吸を2回すると、手のひらで涙をぐっと拭った。


 そしてさらにもう1回深呼吸。

 もう1回。


 身体の震えもだいぶ治まった。


 ウォロが恐る恐るといった感じで私の手を取った。

「ごめん……」


 私は微笑んだ。

 微笑んだつもりなんだけど、うまく笑えているかな?

「こっちこそ、ごめん。

 私はウォロは好きだけど……、ああいうことは受け入れられない」


 部屋に戻るとウォロがお茶を入れてくれた。

 飲んで、少し落ち着いた。

 ノアは居間にはいなかった。

 寝室の方かな?


「……さっきは」

「……ごめん、自分が悪い」


 一緒に話し出してしまい、ふたりで戸惑う。


「……ネモ、先にどうぞ」

 ウォロの言葉に私は話し出す。


「さっきは……、その、あの場所でその……」

 私が口ごもるとウォロがため息をついた。


「ごめん。

 ちょっとどうかしてた。

 イライラするのをネモにぶつけてるつもりはなかったんだけど、結果的にそういうことだよな。

 本当にごめん」


「ううん、私、ウォロのことを怖いと思ったことがなかったんだけど……。

 さっきは本当に怖いと思った。

 ウォロのこと好きだから……、攻撃するのも躊躇して、あきらめちゃったし。

 暗くて誰も人がいなくて、しかも外、だし……」

「ごめん。

 イライラしてたから、それがネモに伝わったんだろうな。

 でも、人がいないところじゃないとネモはだめだろ?」


「人がいなければなんでもいいわけじゃないよ!

 本気であそこで私を、その……抱くつもりだったの?」

「ごめん、その、気持ちいいかと……」


 それはどっちが?

 もう聞く気にもならない……。


 うー、気持ち的にはわからんでもない。

 私も自分が無力だと思い知らされた時に、ウォロの温もりを自分から求めたことがある。

 でも、ちゃんと言ったよ。

 お願いしたよ。

 部屋でね!


「うん、ウォロが陛下達に褒められて、居心地悪いというか、そういう不機嫌な感じになってるのは感じてた。

 ちゃんと話して欲しい。

 それに、私は外で……、誰かが来るかもしれないような場所で裸にされたくない」


「それは、ごめん。

 もうしない」


 いや、もうしないといいながら、人前でキスしてくるの何回くり返してるかわかってんのか?

 ちょっと信用できないけど……。


「今日は魔道具作りでウォロのこと、振りまわしてごめん。

 ウォロに嫌な思いをさせちゃってたとは、思いもしなかった……」

「いや、嫌ではない、むしろ、久しぶりにネモと一緒に魔道具作ったり、クラウス先生と王国での時みたいに魔道具の書類書きとかできて面白かったよ。

 その後だな……。

 すごいと身内に褒められるの、前はうれしい気持ちもあったんだけど、最近はちょっと面倒だな、これで何か仕事を押し付けられたらどうしようとか、なんだかそんなことを考えることがあって……」


 うん、ウォロが皇太子になりたくないのはわかる。

 能力は十分あると思うんだけど。

 でも、自由は制限されるし、仕事は大変だし、面倒だと思うのはわかる。

 

「……うん。

 でも皇太子選びは、陛下が決めることだから、こっちでヤキモキしてもイライラしてもしょうがないでしょ?

 明日は王国に帰るんだから、ちゃんと話するんだよ」


「帰らないよ。

 魔道具作りかけだし。

 それに旅行に行くって話してたよね」

読んで下さりありがとうございます。

午後投稿する予定です。

どうぞよろしくお願いします。

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