表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

308/384

260 ノアと一緒

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 工房に行き、浄化薬を6本ほどもらってくる。

 それから部屋で出かける仕度をしているとノアが足元に擦り寄ってきた。


「ノア、今日は病院と研究所に行くんだけど……。

 お留守番している?」

 声をかけると「ニア」と鳴いてから、私のそばを離れなくなった。

 一緒に行くということか……。

 まあ、ノアも光魔法使えるから、いざとなったら治療に参加できる猫なので……。


 私とウォロとノアが出かけようとエントランスに行くと皇帝陛下がいた。

 もしや待ってた?!


「おはよう。

 今日は皇都病院に行ってくれるそうだな。

 よろしく頼む」

「ああ、ネモが無理しないくらいには……」

 ウォロが答えてくれた。

 

「では、行ってまいります!」

 私はノアを抱っこして、皇帝陛下に礼をした。


「気をつけて」

 陛下が見送ってくれた。


「何で、陛下にまだ不機嫌な感じで接するの?

 もう拗ねるのやめなよ」

「拗ねるって……」

「皇太子のことは置いといてさ。

 1年に1回ぐらいしか会えないお父様なんだし」

「帰ってくれば、毎日一緒だろ?!」


 うーん、反抗期? 思春期?


 まあ、時が解決するとは思いますが、外交の勉強するには陛下と仲良くしてた方がいいと思うんだけどな。


 皇都病院に到着して、一年振りに院長先生にもご挨拶する。


「結婚、おめでとうございます」

 最初に言われて驚く。

「ありがとうございます」

 ちょっと照れながらお礼を言う。

 それから、エディとエメリーの近況を報告した。


「ほう、国立学校へ! 

 エディも頑張っているんですね。

 安心しました。

 本当に良かったです」

「あの、本当の両親はあの後……」

「あー、一度だけ病院の方へいらして、ふたりの入った施設を教えろと騒がれたことがありましたが……。

 その後は何も、ないですよ」

 やっぱり、そういうことしてたか?!


「しっかりと法的に新しい養父母が決まれば、もう大丈夫でしょう」

 院長先生が微笑んでくれる。


 とりあえず、気づいた子だけでも助けることができたということだね。

 うん、そうしていくしかないね。


「今日は長期入院している子ども達の治療をお願いしていいでしょうか?

 難しいケースもあると思うので、治療の方が来てくれることはご家族に知らせていません。

 治せる治せないは気にせず、子ども達を診てやって下さい」

「はい、できるだけのことはしたいと思います」


 そして私の上着の中にいるノアに気がつく。

「この猫は?」

「聖魔法使いの猫です。

 私を治療してくれることもあるので、何か子ども達の助けになるのではと思い連れてきました」

「ほう、お名前は?」

「ノアール。

 ノアと呼んでいます」

「ノア様ですね。どうぞよろしく」

 院長がノアの手を軽く持って挨拶してくれる。

「ニア」

 返事してる……。


 長期入院している子は3人いるそう。

 1人目は生まれつきの心臓疾患で発作が起こりやすく、その度に病院での処置が必要なため退院ができないんだそう。

 7歳の男の子だった。

「こんにちは」

 声をかけて近づくとノアに気づいて「ネコさんだ!」と言う。

 年齢の割に幼いのは、やはり病院の中で生活をし続けているからか……。


「猫さん、好き?」

「うん、かわいいよね。撫でても平気?」

「やさしくしてくれれば大丈夫だよ」

 そっと手を伸ばして、ノアの頭に触る。

「わぁ、もふもふしてる。温かい………」

 ノアが頭をゆすると「わっ?!」とびっくりしている。


「ニア」

 ノアが鳴いた。


「魔法で病気を診察してるの、私に診せてくれるかな?」

「魔法で? 痛くない?」

「うん、痛くないよ。手を繋ぐだけ。どうかな?」

「……それなら」

 手をこちらに差し出してくれた。


 私は手を握り、光を流す。

 もう片方の手はノアの頭を触って微笑んでいる男の子。

 

 ふふ、治してあげたいな。

 

 心臓、うん、心臓の動きが少し悪い。

 弁の形かな?

 これはどうなるのが正解?!


 私は自分の身体にも光を流して確認する。

 なるほど、違いが分かった。


 生まれつきだから、古傷みたいなものかな。

 ちょっと時間がかかるかもしれないけれど、私の心臓の動きを観ながら同じような機能になるように働きかけてみよう!

 ノアも光魔法を流してくれているのがわかった。

 私より成長させる力が強いのかも?!

 成長……、もしかしてカノンも浄化とかより成長させるのが得意なのかもしれないな。


 ノアが手伝ってくれたおかげで、思ったより早く弁の形と動きを整えることができた。


 うん、大丈夫そう。

 血の巡りが良くなり、血中の酸素の量も上がっている、はず。

 顔色が良くなった。


「どう? 身体が温かくなって、楽になったかな?」

「うん、気持ちいい。

 これが魔法?」

「そうだね。これで、だいぶ元気になったと思うよ。

 後はお医者さんに引き継ぐね」

「ありがとう、お姉ちゃんとネコさん!」


 私は院長先生に心臓の弁のことを伝えて、成長が不完全だったものをできるだけ成長させて形状と動きを整えたことを伝える。


 2人目は肝臓の病気でということでちょっと気になった。

 5歳の女の子。

 やはりノアに釘付けになって、すぐに手を握らせてくれた。

 変な影はなくほっとする。


 あ、これマイベルと同じ感じだな。

 肝臓に詰まりがある感じ。

 

 マイベルの時は何日もかけて治したけど、私の技術や力が上がってきているからか、ノアが一緒だからかスムーズに肝臓の詰まりがなくなった。

 すぐには効果が出ないと思うけど。

 顔色もだんだん良くなるはず。

 院長先生に同じようなケースの子を診たことがあり、同じ処置をしたのでこのまま様子を見てもらうように伝える。


 ウォロが「ノア、すごいな。自分より病気治療うまいかも」と言った。

 

 うん、確かに。

 怪我の治療はウォロとても上手なんだけどね。


 3人目は10歳の男の子で、肺炎から肺の機能が低下し、寝たきりになってしまったとのことだ。

 肺の状態も悪く、すぐ熱も出るし、体調が悪いと酸素吸入器が必要になるため長期入院中。


 うん、肺だ。

 元は元気だったのだから、肺を治せば……、私とノアは光を流して、肺が元通りになるように働きかけた。

 肺の炎症が治まり、息がしやすくなったようだ。

 心地良くなったのか寝てしまった。

 

 うん、大丈夫。

 院長先生に伝えながら気になったことを聞いた。


「本当に3人だけなのですか?」

 少なくない?


 院長は困った顔をした。

「実は、他にもう少し症状が軽い子達が数人いたのですが、去年の神殿の治療に保護者が連れて行き……。

 治ったと退院していきました。

 この3人は、症状が重すぎて、列に並ぶのに耐えられないだろうと保護者が判断して、残った子達です」


 なんてことだ……。

 重症ゆえに助かったということか……。


「その退院していった子ども達は?」

「……その数か月後、悪化した、症状が変わったと駆け込んできた子もいましたが……。

 病院では成すすべもなく……」

「亡くなったんですね……」

「はい……」


「院長先生も魔獣について出版された生物学の本読みましたか?」

「はい、あれが事実だとすると、神殿での魔石の治療を受けた者は……」


「一度反転治療を受けてしまうと、聖魔法でも完全になかったことにはできません。

 実際にやってみて………、無理でした。

 でも、浄化魔法が進行をかなり遅らせることがわかりました」

「なるほど!

 浄化魔法薬なら、魔獣対策で在庫があります!」

「完治はできないのですが……」

 私は小さく呟いた。


 まだ余力があったので、火傷や怪我の子達の治療もした。


 食堂で昼食を勧められたけど、ノアも一緒なので、中庭で売店のサンドイッチや飲み物を選ばせてもらって食べることにした。

 ノアだけお弁当持ち。


 ウォロが明るく言った。

「火傷の子、少なくなってて良かったな」

「うん、そうだね。法整備ができたからだね」


 そうなのだ。

 火を扱う道具は行政の検査や、その後の点検が法で義務付けられ、篝火かがりびでの事故はかなり少なくなったそう。

 それから、子どもの火傷や大怪我も病院と警護局が合同で調査を行うようになり、それを周知したので、大人が子どもの火傷と怪我には敏感になり、家庭での火の扱いに気をつけるようになったのだという。


 でも、そうでもしないと気をつけないというのは……。


 それから、取り調べを恐れて子どもを病院に連れて来ない親や雇い主もいるかもしれないと、警護局で子ども安全対策部署が増設され、いわゆる子どもの虐待についての対策や対応をし始めているそう。

 

「皇帝陛下、頑張ってくれてるよね」

 私はウォロの顔を覗きこんだ。


「まあな」

「いいことは認めてあげなよ」

「認めてるよ」

「それ、直接言ってあげなよ」

「なんとなく……、嫌だ」

 私はため息をついた。


「じゃあ、私が、ウォロが言ってました~って言ってもいい?」

「……それなら、いい」


 そこにキャサリン先生が来た。

「お疲れ様。

 遅い昼食になってしまったみたいね。

 私、今日は早番でもう上がりなの。

 一緒に家に帰れたらと思って……」

読んで下さりありがとうございます。

午後投稿する予定です。

これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ