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24 花祭りまでの攻防(後)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

今回は転生物に挑戦中。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。



 その後、食事を済ませ、ティエルノが使用許可を取ってくれていた運動実習室でダンスの練習をした。

 エドワードとセレナもいつもの感じに戻り、みんなで練習しているとアリス達4年生が来た。


「今年の1年生は熱心ね!」

「エドワード、どうだ? 見てやろう!」

 アリスと第1王子がエドワード達に声をかけてきた。


「次の時間ですか! 片付けます!」

 ティエルノがあわてて言ってみんなを見たので、私達は荷物をまとめて実習場から出ようとした。


「エミリア! ダンスを見てあげましょう!」

 アリスが私を見ると声をかけてきた。

「いえ、どうぞ練習を始めて下さい。お待たせしてごめんなさい」

 私はにっこり微笑みながら返事をした。

 第1王子がアリスの後ろから大きな声で言った。

「私達はもう何年も練習してるからね。

 君達のダンスを見てあげよう。アドバイスできると思うよ」


 ウォロが私の後ろに立って、背中に手をやさしく添えてくれた。心強い。

「君がミーア帝国第3皇子。

 アリスの異母妹のエミリアと婚約している……。

 こちらに来て婚約者の噂を聞いて驚いたんじゃないか?」

 は? 

 あ、そういえば入学テストの後、アリスが第3皇子に聞けって言ってたよ。


「はい、驚きました」

 ウォロがそう返事をして、1年のみんなはぎょっとする。


「あの噂は本当じゃないから、気にしないでね」

 アリスがうれしそうに笑いかけながら言った。

「はい、本当の姿とはかけ離れてるひどい噂ですよね。

 あまりにひどい噂を平気で長年流し続けるこの国に本当に驚きました」

 

 アリスと第1王子の表情が強張る。


「自分はネモと知り合って、ネモの本当の姿しか知らずに好きになって婚約を申し込みました。

 自分はネモを守ります」

「エミリアを押し付けられたのではないと?」

 第1王子がそう聞くとアリスがあわてて話題を変えようとした。

「もう、そんな雰囲気怖いわ! アンドレアス、1年生のダンスを見てあげるんでしょう!」

「あ、ああ。エドワード、見てやろう」


 エドワードが嫌そうにこちらに来る。

「さあ、ペアは……、セレナかな?」

 セレナは4年生達に見られていると思うと緊張してしまったよう。

 少し震えている。

 大丈夫かな?


 エドワードはセレナを見て「無理するな」と声をかけてから「ネモ、相手を頼む!」と言った。

 へっ?

「私、背が高いから踊りにくいって……」

 エドワードがこちらに歩いてくると、右手を握ってダンスホールドの体勢になり、耳元で言った。

「セレナを助けてやってくれ」

 そしてウォロに「ネモを借りる」と一言言った。

 

 ウォロは「絶対返せよ」と言って私の背中をとんと押し出してくれた。

 

 えっと、この雰囲気の中、このペアだけで踊るのですか???

 こわっ!


「練習の時のように俺だけ見ろ」

 エドワード、なんかかっこいいこと言ってますけど。

 そういうセリフはセレナに言ってくれ。


「わかった!

 ついていくからリードしてね!」

 私も覚悟を決めて、実習室の真ん中にふたりで歩いて行き、再びダンスホールドの体勢になる。


 音楽が流れ始め、エドワードのアイコンタクトを逃さないように見つめながら踊りだす。


 だんだんエドワードの表情も笑顔になってきて、楽しくなってきた。

 リードの仕方も優しいし、こちらを大切に扱ってくれているのが伝わってくる。

 すごい進歩だ!


 余裕が出てきたのか「どう? 楽しい?」と囁かれた。

「うん、楽しいよ!」

 私の返事にうれしそうなエドワード。

 いつもこういう顔してりゃ、かわいいのにな。セレナだって気を使わないで済むし。


 最後まで楽しく踊りきることができ、右手を繋いだまま、見ている人達にふたりで腰を落としてお辞儀をした。


 ティエルノや第1王子が拍手してくれると、他の人も次々と拍手してくれた。

 何とかやり切れたのか?  

 なんか言われるのか?


「良かったぞ! エドワード、上手だった!」

「ありがとう、兄様」

 エドワードも笑顔でお礼を伝えて雰囲気も良くなった。

 これで実習室から出て行けますね。

「エミリア、少し動きが硬かったんじゃない。

 ごめんなさいね、エドワード。この子本当に不器用だから」

 アリスが突然ぶっこんできた。

「いえ、とっても踊りやすいです。

 ネモは不器用じゃないですよ」

 エドワードが私をかばうようなことを言ってくれている。


「パーティーでは踊らないほ……」

「パーティーでぜひ踊ってくれ。楽しみにしてる!」

 アリスの言葉に被せてエドワードが私に言った。

「うん、喜んで!」


 私達1寮(アリス達も4-1寮なんだよね)のみんなで実習室を出て、出たとたんみんなで大きなため息をついた。

 

「ウォロ、第1王子に喧嘩売ってんのかと思ったわ!」

 ティエルノがウォロを肘でぐいぐい押して言った。

「向こうが最初に売ってきたんだろ!」

 ぼそっと答えてる。

 私は歩きながらウォロの手を握ると「守ってくれてありがとうね!」と小さな声で言った。

「うん」と言いながら強く握り返してくるウォロ。


「でも、さっきのエドワードとネモのダンス、良かったよな!」

 ライトがオードリーに話しかけた。

「ええ、とてもいい感じでした!

 エドワード、ネモに言われてからリードが格段に良くなりましたよね! ね、セレナ!」

「あ、そうね! エドワード様、上手だったけれど、さらに上手になって……」

 セレナが一番前を歩くエドワードの後姿を見ながら小さいため息をついた。




   ◇ ◇ ◇ 




 その後、特に何もなく過ぎていったが、聖魔法の授業でアリスとまた一緒になった。

 聖魔法の授業だと第1王子はいないけれど、用心棒的なレイモンドがいるからなあ。

 

 一生懸命ウォロとふたりで本を読んで、わからないところは付箋をつけて質問できるようにしてきたので、授業後に先生方に質問に行った。

 アリスが話がありそうな素振りを見せていたけれど、疑問点の方が大事だ!

 カトレア先生の所に直行して、いろいろ質問していると、後ろでアリスがウロウロしてる。レイモンドも一緒。

 私もウォロもたくさん質問しているので、しびれを切らしているみたい。

 マリアがアリスに話しかけているのがちらっと見えたが、どうしようもない。


 質問が終わったころ、教室にはマリアしか残っていなかった。


「アリスからの伝言。白いドレスはこちらで用意するから。

 私が説明しておいたわ。

 先日、白いドレスと葉の冠は自分で用意することは伝えてあるから、きっと用意してるわよ! と」

「ありがとうございます!

 はい、もう手配済みです!

 今度の休みに受け取りに行くので大丈夫です。

 教えて下さって本当に助かりました!」


「4年生が1年のダンスを見てあげたって聞いたけど……。1寮のこと?」

「はい、休みの日に私達自主練をしていたんです。

 その後の時間帯が4年の1寮で、見てやるって」

「アンドレアスが褒めてたわよ。

 アリスはネモのことをいろいろ言ってたみたいね。

 姉妹だとそんなに粗を探したくなるものなのか? とアンドレアスが言ってたわ」


 マリアと第1王子は仲が良いんだな。

 もしかして、アリスが現れなければ、第1王子の婚約者は、マリアだったのかもしれない。


 4月最後の休みの日。

 私はお父様に迎えに来てもらい、ドレスの受け取りに行った。もちろんウォロも一緒。

 お父様からの連絡を受けてジュンとミクラも来てくれていた。


 洋品店で試着させてもらうと、素敵に出来上がっていた。

 袖部分のベールは中指をはめられる糸の輪が付いていて腕が全部露出しないように工夫されてた。


 試しにウォロとダンスのホールドをしてみて、ちょっと動いてみたけれど、大丈夫だった。

 ダンスもできる!


「素敵ですね。花祭りの日、お仕度を手伝いに伺います!」とジュン。

「俺もその日は従者として学校にいますから!」とミクラ。


 ふたりとも元気に楽しく過ごせているとのこと。


 さあ、これで用意はできた!

 当日はパレード以外はできるだけウォロとオードリー、そして1寮のみんなと過ごす予定。

 何もありませんように!

読んで下さりありがとうございます。

次は花祭り当日の話になります。

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