表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/384

24 花祭りまでの攻防(前)

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

今回は転生物で、長く書き続けることを目指してます。ゆっくり書き進めているのでお付き合いいただけるとうれしいです。

現在地点は13歳、魔法学校の1年生です。

どうぞよろしくお願いします。

 次の休みにみんなでダンスの練習をしないか? という話が出たが、私のメイドのジュンとウォロの従者のミクラが先週結婚して、休みの日に新居に引っ越すことになり、その手伝いに行くと話したら、ウォロ以外のみんなに、動きが止まるくらい驚かれた。


 一瞬どこじゃないくらいみんな固まってたので「なんでそんなにびっくりするの?」と聞いたら、ティエルノに言われた。


「ごめん、すぐに理解できなかったわ。

 従者とメイドが結婚?

 新居に引っ越し?

 聞いたことないぞ!

 ふたりの従者とメイドはどうすんだよ?」


 私とウォロは顔を見合わせて笑って答えた。

「2週間ぐらい生活してみて、日常ならメイドいなくても大丈夫だなと思って。

 今してもらってるの部屋の掃除とか、洗濯も洗濯場に依頼しに行くだけだし、自分でできるもん。

 だから、王都にいてくれれば、本当に手が必要な時に前もって来てくれるようお願いできるからいいかなと」

「自分も同じ。

 朝、だいぶ自分で仕度できるようになったし、外出する時ぐらいしか従者は仕事ないから……」

「ね。部屋の掃除は一緒にやることにしたし、大丈夫じゃないかな?」


「ミーア帝国のメイド、シーラひとりになっちゃう……」

 オードリーが呆然と言った。

「ごめんオードリー。

 次の休みシーラも一緒に行こうよ。

 ダナンの家に似てるの。とてもいい家だよ!」


「わかった。ダンスの練習は俺達だけでするよ」

 エドワードが不機嫌そうに言った。

 

「早めに帰って来るから、練習に合流するよ!」

「いいよ、どうせまたいちゃついて帰って来るんだろ。今度は首に痕つけないように気をつけろよ」


 ……葬り去った話なのに、やっぱりみんなにばれてんじゃん。


「あれは……」

「あれはネモは悪くない。自分が馬車の中で勝手にやったから。あの時はどうかしてた。

 もうしないから、ネモにそんなこと言わないでくれ」

 ウォロがエドワードに向かって言った。

「そんなの……、好きにすればいいじゃないか。

 婚約してんだし」

 エドワードが動揺したように言って自分の部屋に入ってしまった。


「ネモ、練習は午後にするから、早く帰って来れたら気にせず合流してくれよな」

 ティエルノが言ってくれた。


 オードリーにも再度確認したら、シーラを連れて一緒に行きたいということだったので、午前中、王都に出て、お昼頃には帰ってくることにした。




   ◇ ◇ ◇




 休みの日、私達はミクラとジュンの新居に来ていた。

 家具などは揃っていたり造りつけの物が多く、ふたりの荷物もすぐに片付き、午後はゆっくり買い物に行くという。

 シーラは寂しがって泣いたが、また遊びに来ることを約束して学校に戻ることにした。

 途中、オードリーがお気に入りのお菓子店に寄って寮のみんなへのお土産を買った。


 馬車の中でオードリーに花祭りのドレスのことを聞かれたので付き添いをするために白しか着られないので手配済みだと話した。


「じゃあ、今年は花の飾りもつけられないんですね……。

 なんて嫌がらせ! 本当に!!」

「1年担任からも言われたくらいだから、私が学校になじみやすくするためとかなんか理由つけてるのかもね。

 でも、今年は初めてだし、別にダンスに参加できないわけじゃないし、来年、一緒にドレスの計画しようね!」

「寮のみんなにも伝えておいた方がいいのでは?」

「でも、エドワードはアリスから何か聞いてるかもよ?」

「あ、ドレスとか付き添いのことは聞いていないと思います。

 先日、セレナとエドワードからネモのドレスの色を聞かれたんで」

「ふたりから? なんだろう?

 色が被らないようにとか?

 ありがとう。今日話してみる」


 学校について食堂の前を通った時に寮の方からみんなが来るのが見え、声をかけた。

「ただいま! これから昼食?」

「おかえり、早かったな! 3人もまだか? 一緒にどうだ!」

「ティエルノ、ありがとう! 合流させてもらうよ」

 ウォロが答えてくれている間にシーラに確認する。

「シーラ、従者棟で昼食出るのかな?」

「はい! 大丈夫です」

「今日はどうもありがとう!」

 オードリーと一緒にシーラを見送ってから、みんなの後をついて食堂に入った。


 テラス席が空いていて、みんなでそこに座った。


「食べながらでいいんだけど聞いてくれる。

 花祭りの日、私、花の女神の付き添い役をやることになったの。

 いつもだと1年生には依頼しないらしいんだけど、今年の花の女神が異母姉のアリスなの。

 それで頼まれて……」

「じゃあ、白のドレスに葉の冠ですか!」

「セレナ、よく知ってるね! 花祭りってけっこう有名なイベントなの? 

 白と聞いたのでドレスと葉の冠はもうお店にお願いしてある。

 来週取りに行く予定。

 セレナとオードリーは何色にするの?」

「あ、私は内緒です……」

 セレナが赤くなりながら言った。

「私は手持ちだと、緑かな? まだ決めかねてますが」

 オードリーが教えてくれた。


「付き添いだとダンスには参加しないの?」

 ライトが心配そうに言った。


「大丈夫! 

 最上級生から聞いた話だとパレードがあって、パーティーが始まる前に一度解散するみたい。

 それでパーティーの最後に女神が退場する時にまた集まると聞いたから。

 ダンスの時間は普通に参加できると思う。

 アリスから何か言われない限りはその予定で動くつもりだけど……」

「言われない限り?」

 ティエルノが不思議そうに聞き返す。

「うん、1年生には普通依頼しないハズレ役なんだって、付き添いって。

 私に依頼してきたのが、異母姉の嫌がらせかもとちょっと考えちゃって……。

 でも、引き受けたからにはちゃんとやろうと思ってる!

 今のところはダンスに参加できるから、ライトもティエルノもエドワードも踊ってね!」


 エドワードとセレナが顔を見合わせ、不思議そうな表情でエドワードが口を開いた。

「嫌がらせって……、アリスが?

 アリスの方が異母妹のエミリア……、ネモに苦労しているんじゃないの?」


 私はエドワードを見た。

 どう思われようとちゃんと話しておいた方がいいかな。


「エドワードやセレナはアリスから話を聞いてるんだよね。

 ティエルノやライトも私や私の母の噂は聞いたことがあるんじゃない?」

 私の言葉に困ったような顔をしながら頷くみんな。


「うーん、何から話したらいいか……。

 確かに私の母のエレオノーラは父の愛人という立場だったけれど、私を大切に愛して育ててくれたよ。

 あ、これから話すのは私の側からの話。

 こっちを信じてくれとは言わない。

 両方の話を知って判断してくれればいいから、話す。

 辺境伯爵領のダナンの小さな家で母と幸せに暮らしていたんだけど、母が事故で怪我をして亡くなって……。

 義母と異母姉のいる王都の屋敷に引き取られたの。

 約1年間のことだけど、あの時期が一番人生で辛かったよ。

 だから、王都には来たくなかった。

 でも、授かった聖魔法について学べるのはこの学校だけだったから、来たんだ」


「その1年間って何歳の頃?」とセレナが言った。


「8歳から9歳の時。

 母を亡くして落ち込んでいたし、知らない場所で逃げ場もないし、本当に辛かった……。

 行きたくないのに無理やりお茶会に連れていかれたり、お客様の前で失敗を強要されたり……」

「失敗の強要って?」

 ティエルノが不思議そうに言った。

「よくやられてたのは、お客様に出すお茶の食器に細工されてたこと。

 持って行って挨拶するように言われるんだけど、取っ手が取れたり、ひびが入っていたりしてさ。

 結局、私が悪かったってことになるんだけど。

 あ、お茶会で水たまりに突き倒されてぼんやりしているから転んだと言われたこともあったな。

 まあ、もう過ぎてしまったことだから思い出したくもないけど。

 周囲の人も母や私の噂を信じていたみたいで、誰も話かけてすら来なかったし。

 それでいて見に来て、聞こえるようにいろいろ言うんだよね~」

 ちょっと思い出して涙が出そうになった。


 左隣にいたウォロが左手を握ってくれて、はっとした時、涙が一筋頬を伝ったのがわかった。

「わ、ごめん!」

 あわてて右手で涙を払う。


「だから、アリスのことを信じているセレナとエドワードには悪いけど、私はアリスを信じられない。 

 今回の付き添いのことも、何かあるんじゃないかと思ってしまう。

 でも、負けたくないから、ちゃんと努めようと思ってる。

 私も少しは成長して自分の身を守ることを学んだからね。

 こちらからはやらないけど、やられたらはね返せるようにとは考えてる」


 あらら、シーンとしてしまった。

 右隣に座っていたオードリーが私の右手を握って言った。

「そんなことがあったんですね!

 そこまでとは知らなかったです!

 ネモは自分の噂で私までも嫌がらせを受けるかもって心配してくれてたじゃない。

 2年の留学生にもネモの噂を否定して孤立しないようにって言ってたし。

 そんな目に合ってたら……」

「オードリー……。

 ウォロとオードリーを巻き込むことになるのはわかってたんだけど……。

 ひとりで生きていこうとしてた私に、人に頼っていいんだと教えてくれたのが、ジョシュア兄様やウォロなんだ。

 だから、オードリーにもとても頼ってる。いつもありがとう」

 オードリーが抱きついて来ようとした時、左からウォロにかなり強く抱き寄せられた。

 オードリーが身体のバランスを崩し、私が座っていたはずの椅子につかまって何とか踏みとどまる。

「オードリー、大丈夫!」

 あわてる私はウォロの膝の上に座って抱っこされてる状態だ。


「……ウォロ! あんたね、いつか言おうと思っていたけど、ネモを独占束縛しすぎ!!

 大切で心配なのはわかるけど、その所有欲、ほんとやりすぎだから!」

 オードリーが怒ってる。

 でも、学校ではウォロ、かなり我慢してくれてる方だと思うんだけどな……。


 ティエルノとライトが爆笑した。

「所有欲ってなんだよ~!! 

 でもわかる!

 ウォロ、本当に変だよな」

「なんだよ、これ。

 面白過ぎるんだけどっ!!」

 ふたりともなんか言いながらめちゃくちゃ笑ってるぞ。


「オードリー!

 ウォロ、これでもかなり我慢してくれてるよ」

 私が言うと、ふたりはさらに顔を真っ赤にし、椅子から立ち上がりお腹を抱えて笑い出した。

「ひー、しぬー、くるしいー」

「ねももへんだったー」

 それを見てオードリーとセレナも笑い出したけれど、エドワードは何か考え込んでいて、それを見てセレナも笑うのをやめた。

 

読んで下さりありがとうございます。

今日の午後も投稿する予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ