23 ダンスの練習
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
月火でけっこう書き進められまして、花祭りの終わりまで書き進めています。
なので、今日も午後投稿することにしました!
読んでいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
週明けの1日目。また自炊デーだった。
メニューは前回と同じシチュー。
今度はみんな前回やっていなかったことをやりたがり、私は野菜ごとの切り方を教えたりして、鍋をかき混ぜる係になった。
いつもと違う髪の結び方に怪訝な顔をされていたけれど(剣の授業の時本当にやりにくかった……)、3日後に痕が消えポニーテールに戻すことができた。
ジュンに早く消えるようにお風呂で温めるように言われていたので心掛けたのが良かったのかな。
結局、オードリーにはばれてしまい、隠すのに協力してもらったけど、次にティエルノにもばれる事態になった。
朝、ほぼ一緒に朝食を食べに行くようになったので、その時に髪型のことを言われ、オードリーが変に焦っていろいろ言ってしまい、私もフォローしようとして……ばれた。
ティエルノはウォロに注意してくれたが、結局私も一緒に怒られた感じだ。
ポニーテールに戻した朝、寮のみんなの目が生温かい感じだったのが気になった。
もしや、みんな知っていたんじゃ……。
気になるが今更聞けやしない……。
この話はもう葬ろう……。
花祭りまで半月となり、準備や係決めなどで学校がにぎやかだ。
女子生徒はどんな服やドレスを着るか楽しそうにおしゃべりしているし、また、ダンスの話もよく聞いた。
誰と踊るか、誰が申し込んでくれるか、上級生はそんな話題で盛り上がっているよう。
1年生はとりあえず初めて参加して様子見なんだろうけど、女子はけっこう楽しみにしている人が多そうだった。
授業でダンスの練習をすることになり、寮ごとに運動実習室に呼ばれた。
1寮は全員貴族だし、貴族の教養としてダンスを習っていたのでみんなとりあえずは踊れたのだが、大きな問題があった。
初心者同士、しかも同年代の男女で踊るのにまったく慣れてない。
ダンスの先生とか、兄弟姉妹とは踊ったことがあるが……という感じで、寮の仲間とはいえ手を握って組み合うのに、特に男子がとても緊張していた。
最初は踊りやすいように先生が身長など見てペアを決めたが(私とウォロは高身長ペア、セレナとエドワード、オードリーとライト、ティエルノと女の先生が組んだ)、すぐにローテーションでパートナーを入れ替え、色々な人と踊る体験をしてみましょうと言われた。
ウォロの後はエドワードだった。
エドワードはホールドの体勢になるために右手を握り合うところからすごく緊張していた。
セレナと組んでる時はそうは見えなかったので、そういうものなのか?
ウォロもそう? と思って見たら、ウォロは1回休みの人だった。
「踊りにくいんだよ」と言われて気が付く。
確かにエドワードと背が同じくらいなので、顔が近いかも。
仕方がないじゃん。
そういうのに慣れろっていう練習なんだからさ。
リードの仕方もちょっと強引な所があるなと思った。
お父様、ハロルドやジョシュア兄様、ウォロ以外と初めて踊るから、こんなものなのかな?
でも、次のライトもティエルノもそこまで緊張したりイラつくようにリードしたりということがなかったのでエドワードの問題だな。
2周目にセレナと踊る様子を見てたけど、セレナは私より小柄で仲が良いはずなのに、やはり強引にリードしているところが見られた。
癖なのか?
エドワードと組んだ時にまた緊張しているので「怖い顔してないで笑いなよ」と言ったら「あん?」と睨みつけられた。
「ダンスするのにそんなに緊張した怖い顔してたら、女の子に嫌がられるよ!」
「……別に、好かれようと思ってない」
「楽しく踊ろうよ。
エドワードはかっこいいから踊りたいっていう子たくさんいると思うよ。
後、もう少し相手の様子を見てリードしてくれるとうれしい」
「どういう意味?」
「リードがちょっと強引な時があって。
あ、ほら、女子はスカートあるじゃん。だからあんまり気づかないかもだけど……」
言いかけてた時にグイっと足がぶつかるぐらい踏み込まれて強引にターンされた。
「今、わかる?
エドワードの足、私の足にぶつける様にリードしてること」
エドワードが顔を赤くする。
指摘されるの慣れてないのかな?
「私ズボンだから足がぶつかるのわかるでしょう?
もし気づいてないならちょっと見てみなよ。
スカートよりわかりやすいと思うから」
エドワードが私の手を放し、実習場から出て行こうとする。
「ちょっとエドワード! 待って!」
私はあわててエドワードを追いかけた。
実習場を出て、玄関も出てしまい、庭の方へどんどん歩いて行くエドワードにやっと追いつきそうな時にエドワードが立ち止まった。
「何でついてくるんだよ!」
「気を悪くさせたならごめん!
でも、仲間ならもっと上手になって欲しいから気が付いたこと言うよね!」
「仲間?」
「あー、エドワードはそう思ってないかもだけど、私は寮の仲間で友達だと思ってるから!」
「仲間ね……。
お前はいいよな。すぐに人と仲良くなれるの」
「それは、仲良くなりたいと思ってるからだよ。
みんなそう思ってる。
それからお前じゃない、ネモ! 私の名前はネモ!」
エドワードはため息をついて言った。
「わかったネモ。俺にかまうな。
ダンスなんてどうでもいいんだよ」
「よくない!
エドワードと踊るのを楽しみにしている女子がたくさんいるんだよ!」
「それは王子としてだろ。
エドワードとしてじゃない」
「ひねくれてんなー」
「ネモは俺と踊るのは嫌なんだろう?
その、婚約者もいるし……」
「別にどっちでもないよ。
でも、今のままのダンスしてたら気になるかも。だから言ってんの!」
「……じゃあ、お……、ネモの言うこと聞いて直したらパーティーで俺とダンス踊ってくれるか?」
「うん、話を聞いてくれるなら、練習だってパーティーだって付き合うよ!」
「付き合うって……」
「えっ? 練習に付き合うよ? 変?」
「いや、変じゃない、けど……」
エドワードが近寄ってくると右手を取ってダンスのホールドの体勢になる。
「で、どこをどうするって?」
「あ、ここの部分はいい。特にターンとか向きを変えるところ。
なんだろう、こっちに行くよみたいな感じがあってから足を踏み込んだ方がいいんじゃない。
エドワードのリードはそこがよくわからなくて、どっちに行くんだ? となって、足ぐいってなって、わっ、こっちかーってなるんだよ」
エドワードが笑い出す。
「なんだその説明!」
「しょうがないだろ!
感覚的なものなんだから!!
笑うな! ……いや、エドワードは笑ってる方がいいな!」
私がそう言うとエドワードが真顔になる。
「……そんなに私のことが嫌いなわけ。
ごめんね、しつこくて!
でも、私が引っ掛かっているところを気が付いてもらえれば、セレナとももっと踊りやすくなると思うよ」
「……わかった。一度踊ってみる」
ふたりでカウントを数えながら踊りだす。
「今のとこ!」
「俺、こっちにターンと視線送ってるけど」
「わかりにくい。
えっと、他の人はなんでわかるんだ?
アイコンタクトかな?
ターン前に目を合わせて!
こっちだよ~と思いながらターンの方を見るとか? できそう?」
「やってみる」
もう一度カウントを数えながら……。
私は視線を見逃さまいとエドワードだけを見ていた。
目を合わせて右に視線が動いたので右にターン。
「できた!」
エドワードが真っ赤になって目を逸らす。
「見すぎ……。
そんなに見られたら、恥ずかしいんだよ!!」
「いや、みんなこれくらい見るって。
特にエドワードと踊りたい子は……、あれ、片思いとかしてる子だとこんなに目を合わせられないか?」
「片思いってなんだよ!」
「エドワードファンはたくさんいるんだから、まあ、どんな子にも丁寧にリードしてあげなされ!
さ、戻ろう!」
「あのさ、もう一度練習してもいいか?」
「あ、うん」
ダンスホールドから目を合わせて、カウントを数えて……。
エドワードがいい感じに微笑んでいて、目の動きで次はどちらに行こうとしているかわかりやすくなった。
「いい感じ! そうやって微笑んでくれている方が目の動きがわかりやすい!」
その時、ウォロとセレナが迎えに来た。
あわてて実習場に戻り、最後の練習。
エドワードはセレナと踊った。
すごく良くなってて、先生に褒められてた。
「本当にネモはおせっかいだよな」
ウォロが真顔で私を見た。
「気を付けてよ。ネモは自分の婚約者なんだから」
「うん?」
「ネモが何度もエドワードと踊ってるの、見せられてイラついた」
「へ? 練習だよ。
何回も?
いつから見てたの?」
「いや……、例え練習でもさ……。まあ、いいや。セレナのためにしたことでもあるんだろうから」
読んで下さりありがとうございます。
今回はエドワード回でしたね。
エドワード、金髪なんですけど、書いているとスパイファミリーの次男が頭に浮かぶ……。