22 ミクラとジュン(後)
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
ゆっくりと話が進んでいますが、呆れずにお付き合いいただければうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
その後、話し合って、ミクラとジュンはこのまま今日婚姻届けを教会に出し、ミーア帝国大使館に報告することに!
来週の休みにふたりは学校の従者棟を出て、この家に住む。
私達は馬車で教会に行き、婚姻届けを出すのを見届け、すぐにミーア帝国大使館に報告に行き、結婚を祝福してもらい、ミクラはミーア帝国大使館や王都周辺の領事館の仕事をすることが決まった。
もちろん、学校が休みの日には優先的にウォロの従者の仕事をするということで!
家の賃料はミーア帝国とお父様で半分ずつ出すことになった。
ジュンは私のメイドだもんね。
お父様、ありがとう。
「ミクラにならジュンを安心してお嫁にやれるよ!」とミクラに言ったら笑われた。
変かな?
でも、本当にそう思うんだもん。
お父様がふたりの結婚祝い&私達の誕生日のお祝いを兼ねてご馳走してれた。
とても美味しい料理のお店だったので、寮のみんなにその店の焼き菓子をお土産にすることにした。
その後、家に戻り、ミクラとジュンに帰りにまた寄るから、それまでゆっくりしてて! とした。
家をふたりでゆっくり見たいよね。
話したいことや、これから揃える物の確認とかもあるだろうし!
私とウォロはお父様のお勧めの洋品店に連れて行ってもらい、白いドレスと葉の冠とやらの相談をした。
花祭りは学校以外にもイベント的にやるところがあるそうで、扱ったことがあると言う。
以前手掛けたもののデザイン画があるそうで見せてもらう。
ウォルフライト王国風にしてしまうとただの白いドレスになってしまうなーと見ていくと、すごく気になるデザイン画があった。
ウォロも「いいね」と言った。
転生の間でユーチャリスやデルフィニウム様が着ていた服に似ている……。
前世の記憶で言うとギリシャ風みたいな感じが近い?
飾りも葉の冠だし、いいかも!
このデザインで袖をつけてもらうことをお願いしたら、ササッとデザイン画を描いてくれた。
袖というより肩からのベールを長めにして手首か指で軽く固定できるようにすれば腕が軽く覆われて、服のデザインを損ねずいいのでは? とのことだった。
なるほど。それでお願いしよう。
サイズを計ったり、どの白が一番私の肌に合うかをみてもらった。
葉の飾りもこのドレスに合わせて作成してもらえるそう。
4月末に受け取りに来ることにした。
これで花祭りの準備もできた!
「ウォロ、今日はたくさん用事につきあってくれてありがとう。
そんなに時間なくなっちゃったけど、ウォロが行きたいところは?」
私が聞くと「ふたりきりで話をしたい……」と言うので、お父様がちょっと困ったような顔をして考えてから言った。
「それでは、私はここで失礼しよう。
来週、また迎えの馬車を学校にやるからな。
ミクラとジュンの荷物もその馬車で運べるだろう。
この馬車の御者には適当に王都の中を走り、時間になったらさっきの家からミクラとジュンを拾って学校に送り届けるように頼んでおく。
馬車の中でゆっくり話をすればいい。
では、また来週に会おう」
「お父様、ありがとう!」
お父様が馬車を降り、私がウォロの隣に移動した。少しすると馬車が動き出した。
「馬車の中でおしゃべり……、で本当にいいの?」
「うん、やっとネモとふたりきりだ!」
ウォロがやけにうれしそうに言うので笑ってしまった。
ミクラとジュンの婚姻届けを出しに教会に行った時、孤児院が併設されていることに気が付いたので慰問に行けたらいいなという話をしたら、ウォロが賛成してくれた。
「オードリーも誘って行こう。ミクラの家に寄ってもいいし」
「そうだね。ジュンとまたクッキーたくさん焼こうかな!」
「13歳の誕生日はお互いにプレゼントなしにしたけど……。
やっぱり何かしたかったな」
ウォロがぽつりと言った。
そうなのだ、これから5年も一緒だし、12歳の時にけっこうなプレゼントを頂いているので(ドレス一式)、13歳はお互いにお祝いの言葉だけにしようと私が提案してそうしていたんだ。
「ミクラ、指輪いつから用意してたんだろう?」
それが気になったんだ!
「うん、結婚の約束をしてからいつでも渡せるようにしてたんじゃない?
もしかしたらその前からかもね。
ジュン、喜んでたね!
ミクラもうれしそうだったし、本当に良かった」
……。なんだ、この沈黙は?
「ウォロ? どうしたの?」
私は沈黙に耐えられずにウォロの顔を覗き込む。
肩を掴まれ抱き寄せられてウォロの胸のあたりに私のおでこが激突した。
「「いてっ」」
ふたりで言って離れるとお互い胸とおでこをさすりながら苦笑いした。
「ちゃんとどうしたいか言ってくれればいいのに」
「……じゃあ、その……、どうしたいかなんて、わからないっ!」
ウォロが真っ赤になってる。
庭の時と同じか。
考えすぎ?
「じゃあ、私から抱きついてもいい?」
びっくり顔でこくりと頷くウォロ。
えーと、言ってはみたものの何も考えてなかった。
椅子に座っているので抱きつくにはどうするんだ?
椅子に膝立ちしてウォロの方に身体を向けると私の方が気持ち高いかなくらいの同じ頭の高さになったので、そのまま抱きついた。
お互いの肩に頭を預けられるような感じでぎゅっとできてすごく楽だ。
「あったかい。大好きだよ」
私が呟いたら、ウォロが肩から首のあたりを顔ですりすりしてきた。
「くすぐったいよ!」と離れようとしたら一瞬ヒヤッとしてから痛熱いような感覚がした。
「何?」
「何でもない」
目を合わさそうとしない。
うん?
馬車が家の前に着く直前に向かい合わせの位置の席に戻った。
ミクラとジュンが家から出てくると馬車に乗り込む。
ウォロの隣に座ったミクラが変な顔で私を見てから、ウォロの頭をいきなり叩いた。
そして、ジュンに何やら耳打ち。
ジュンが私の左の首のあたりを確認してため息をつき、私の髪をほどくと左側に髪を寄せゆるくひとつ結びにする。
「これで見えません」
「……何が?」
「後で、鏡で確認してください。
ウォロ様、困るのはお嬢様なのでこのようなことはもうやめて下さい」
ジュンがウォロを睨んだ。
何?
私はウォロを見た。ウォロがニヤッと笑った。
ん?
寮についてジュンと別れる時に「いいですか、明日の朝は私が髪をやりますから待ってて下さいね!」と言われた。
みんなに「ただいま! お菓子買ってきた。夕食後に食べよう」と伝えて部屋に入ろうとしたら、オードリーに「髪型変えたのどうして?」と聞かれた。
「ジュンがこっちの方がいいって、直してくれたの」
「そうなんだ」
「変?」
「うーん、似合うけど、見慣れないからかな?」
私は自分の部屋に入り、あわてて鏡の前に行った。
首筋にしっかり沿うように結ばれている髪をそっと持ち上げたら、赤くなっているところがあった。
湿疹か虫刺され?
でも、盛り上がってないし……。
はっ!
気が付いて真っ赤になる。
これって、前世で聞いたことのあるキスマークという奴では!!
ウォロ、何してくれとんじゃ!
しばらくポニーテールにはできないな……。
読んで下さりありがとうございます。
次も頑張ります!