20 1ー1寮の仲間
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
今回は転生物に挑戦して、魔法学校に入学したばかりです。
読んでいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
学校生活についての説明と寮の説明があり、今日はそれで解散になった。
寮は午後5時までに帰寮できない時は寮担任に届け出を出しておくこと。
夕食は作られた料理が配達されるので各寮で温めて食べること。
朝食と昼食は食堂でも、食材を注文して自分で調理してもいいそうだ。
1年生の前期は月に2回、夕食自炊デーがある。
今日が1回目。
材料は寮に用意されているので、夕食を自炊をしろとお達しがあった。
とりあえず、7人で寮に向かう。
1ー1寮は図書館棟のそばだった。
隣に従者やメイドの棟が併設されている。
ジュンとミクラ、オードリーのメイドのシーラももう来ているはず。
ティエルノが寮長と決まっているので(学校から指名)、寮のキッチンリビングみたいな共用部で集まり再度自己紹介をすることになる。
エドワードが王子、ティエルノは公爵令息。セレナは伯爵令嬢。ライトは子爵令息だった。
私達もそれぞれ辺境伯爵令嬢、ミーア帝国皇子と公爵令嬢と名乗った。
全員、メイドか従者を連れてきている。
さすが1寮。
それから自分の部屋を確認に行く。
リビングから右と左に廊下があり、右が女性、左が男性となっているそう。
女性が1部屋余っていることになる。
セレナとオードリーと一緒に行くと、もう部屋が決まっていてネームプレートがドアに貼られている。1号室セレナ、2号室私、3号室オードリーだった。
空いている4号室の隣にトイレ。その隣に小さめの風呂があった。
寮というけどシェアハウスに近い感じじゃない?
これ、メイドや従者いるのか?
たぶん、自分で自分のことをできるようにという学校の狙いを感じる。
部屋に入ると荷物ももう入っていて、ある程度整えられている。ジュンがしてくれたんだな。
書類袋を作りつけの机の上に置く。
自炊するんだよな。
部屋着に着替えてエプロンを持って部屋を出る。
キッチンの調理台の上に置いてある材料と一緒に丁寧にレシピまでおいてあり、見るとシチューだった。
小さな冷蔵装置まで造りつけられてた。
それに肉と牛乳とバターが入っていた。
主食のパンも用意されてる。
これなら切って炒めて煮込むだけだ。
大鍋がある。
これひとつで行けるか?
材料を見た感じでは大丈夫そうだけど、男の子が多いからな。
特にティエルノとウォロはたくさん食べそうだし。
ガチャガチャ鍋や食器を確認していると、ウォロが出てきた。
「ネモ何号室?」
「私2号室」
「自分は6号室」
「了解!
夕食シチューなんだけど、私、作っちゃっていいのかな?」
「一緒にやるよ」
「ありがとう。ティエルノにも確認しよう」
ウォロに聞いたら7号室がティエルノというのでふたりで聞きに行く。
「おーい、ティエルノ!
シチュー作り始めて良い? 煮込むならもう始めないと」
「わかった、今行く!」
ティエルノが出てきたので一緒に材料を確認してもらって、ジャガイモの皮を剥き始める。
ウォロにはニンジンを一口大に切ってもらった。
「皮は剥かないで大丈夫だから、洗ってそのまま切っちゃって」
玉ねぎの皮を剝きながらレシピを確認すると、固形の調味料みたいなのがある。
これなんだ?
前世ではコンソメとかあったけど、この世界では今まで見たことない。
リビングにみんな集まって来くるが、なかなかやるとか手伝おうとか言い出さない。
オードリーも周囲の様子に一緒にやっていいのか戸惑っているみたい。
自炊だよね?
メイドや従者がするのも自炊だと思うのか、貴族って?
私はよくわからない調味料をみんなに見せて「これ見たことある人いる?」と聞いた。
エドワードが「野営の時に使う調味料だと思う」と教えてくれた。
……そういうことか!
「これ、料理の実習なんだ!
野営の時のための!
だからみんなで作らないとだめだ!」
ティエルノはすぐわかってくれた。
あわててこちらに来てレシピを再確認する。
じゃがいもとにんじんは切ってしまったので、玉ねぎをライトとティエルノが切ってくれるという。
「目にしみるから気を付けて!」
そう言うとふたりはもたもたしながら切って「目が、目が!!」と大騒ぎしている。
ムスカかよ! 思わず心の中で突っ込んだ。
肉はもう切れてた。
「セレナとオードリーで水と牛乳計ってくれる?
小麦粉の量も確認して!」
ふたりともレシピを見ながら水を計ってくれた。
牛乳と小麦粉は必要な分しかなかったそう。
バターもちょうどの分になっている。
ニンニクをみじん切りにしてこれで終わり。
「はい、後はエドワードがやって」
「えっ!」
「大丈夫、炒めていくだけだから!」
ガスに火をつけ(ダナンの家にあるものと同じマッチで火をつけるタイプ、今回はウォロが魔法で火をつけてくれた)、大鍋をかけてバターを溶かし、にんにくのみじん切りを入れる。
「ほら! ちゃっちゃっと炒めないと焦げる!! 肉入れるよ!」
エドワードが必死にへらでかき回す。玉ねぎ、にんじん、ジャガイモと入れる。
「まだかき混ぜるのか!」とエドワード。
「はい、底が焦げるから下からかき混ぜて!
まだまだ!
疲れたらライト代わってあげて!」
ライトにバトンタッチ、レシピ通りに小麦粉を振り入れてからしばらく炒め、水と牛乳と、固形調味料が溶けやすいように削って崩して入れた。
「これでかき混ぜながらしばらく煮込めばいいみたいだ」
エドワードがまたレシピを見ながら言った。
「みんなで作れたね! やったね!」
私がニコニコ言うと、ティエルノとエドワードが勢いで巻きこまれたことに気がつき、苦笑する。
ライトとウォロが交代で底が焦げないようにかき混ぜているととろみが出てきて、いい匂いがしてくる。
味を見て、コショウと塩で味を調える。
「どうだろう?」
オードリーとセレナにも味見してもらう。
「いいと思います!」「うん、おいしい!」
「よかったー」
みんなほっとして笑顔になる。
リビングのテーブルを拭いて食器を用意する。
パンをみんなで分けて、シチューを食べ始めると、ドアがノックされオーサム先生と学校長が入ってきた。
「おお。この寮はちゃんとみんなで作れたようですね」
学校長が私達を見回した。
「味見させてくるかね?」とオーサム先生。
私が小さい深めの皿にシチューをよそった。
セレナがトレイにスプーンとそのシチューの皿を乗せ、運んでくれた。
その間にティエルノが椅子をひとつ自分の部屋から運んでくる。
余っている椅子がひとつあるから、これでふたりの先生方に座ってもらえる。
一口食べて学校長が頷き、オーサム先生も「うまくできたな」とほめてくれた。
「この寮はこの調理の意味が実習であるとわかったようですね。
その場の対応力もすばらしい!」
学校長に褒められて、みんなうれしそうだ。
食べ終えて片付けている時、ティエルノが汚れた皿を持ってきながら「ありがとな」と言ってきた。
「ティエルノがすぐに私の言うことをわかってくれたからだよ。
話聞いてくれてありがとう」
私は皿を洗い終えた。
次にからっぽになった鍋を流しに運ぼうとするとエドワードが鍋に手を掛けて「俺が洗うよ」と言った。
「ありがとう!」
私がお礼を言うと「みんなでやることだから……」とごにょごにょ言って鍋を洗い出す。
セレナとオードリーが食器を拭いて棚に戻している。
ライトとウォロが話をしながらポットとカップをテーブルに並べ、みんなにお茶を入れようと用意してくれている。
なんだ、みんな良い子じゃん!
読んで下さりありがとうございます。
今回はちょっと短い話でしたが、寮の生活が楽しくなりそうだと感じてもらえたらいいなと思います!