19 入学式
悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。
今回は転生物。子どもの時、虐待されてた時は前世の記憶が守ってくれて良かったけれど、恋をすると前世との年齢差を感じてしまい苦しんだりといろいろありましたが、すっかり吹っ切れ、学校では転生してからの人生+前世の記憶を活用して頑張るネモです。
ゆっくり書き進めますのでお付き合いいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
ウォルフライト魔法学校。
王立の魔法学校で、魔法の属性の複数持ちで、かつ魔力量が多くないと入学が許可されない。
生まれつき魔法属性や魔力を持っている者はウォルフライト王国民の1割程度と言われている。
王国で生まれた時に登録された情報から選ばれ、さらに入学テストで選抜された30人の12~13歳の少年少女が毎年入学できる。
数年前から他国の生徒も受け入れ始めたので、国内からだとさらに狭き門となっている。
私とウォロとオードリーは大きな門を見上げてから入学式の行われる講堂へと歩き出す。
周りには同じ新入生らしい子達と、新入生を見に来たのか上級生の姿も見られる。
「それにしても、ネモ、その制服、かっこよすぎじゃないですか?」
オードリーが私を見て、ちょっと困った顔をする。
「そうか? 動きやすさで選んだんだんだけど」
「はい、なんだかこれじゃあ、私がかっこいい男子をふたりも従えてるみたいになりません?」
「あー、かもな。ネモ、背が高いからな」とウォロ。
「でも、髪は長いよ。上に結んでるけど。
ウォロはずいぶん短くしたよね」
会えなかった10ヶ月で私はずいぶん背が伸びた。
でも、ウォロの背はまた伸びたようで、差は全然縮まらない。
ウォロはたぶん学年で一番背が高いんじゃないかな?
髪も短くして、前よりぐっと男らしくなっている。
その隣に同年代の女子にしては長身の私。
しかも制服は上着の下にシャツとスラックスなので一見すると少年に見える。
でも、髪はポニーテールにしているため、すれ違う人に二度見される事態になっている。
「ネモがその制服で髪を短くしたら、美少年だと思われちゃいますよ!」
上品なワンピース型の制服に身を包んだオードリーがかわいらしく笑った。
「ま、オードリーが我らが姫! と言うことで!」
私がウインクしながら言うと、ウォロが「ネモは自分だけの姫だから」と言う。
「姫を守る姫? ま、どっちも姫だしね」
オードリーも先日ダイゴと婚約した。
ミーア帝国皇宮では『お姫様』仲間だ。
「寮もみんな同じで良かったです」
オードリーの言葉に私もウォロも頷く。
私達の寮は1ー1寮で7人だそう。後の4人はまだわからない。
その時、私の横を急いで走り抜けようとした女の子が転びそうになり、とっさに支えて倒れる前に抱き起す。
「大丈夫?」
「すみません、ありがとうございますっ!」
そのメガネの女の子は真っ赤になってお礼を言うと、私を見て固まる。
「えっ? あれ? ……女性?」
「あ、私、一応女です」
ウォロが吹き出す。
「なんつー会話してんだっ!」
「1年生ですか? 私達も1年生です」
オードリーの言葉に驚くメガネっ子。
「え、大きいから上級生かと思いました!!
私、1年のセレナ・バーンスタインです。どうぞよろしく」
「私はエミリア・ネモフィラ・アリステラです」
「アリステラって!! アリス様の……妹?」
「はい、そうです。姉とはここのところほとんど会っていませんが。
セレナさん、急いでたんじゃない?」
「はっ! そうでした!!」
その時、講堂の方から金髪の少年が駆けてきた。
「セレナ、どうした?」
「あ、エドワード様! 遅れてすみません!」
「みんなもう来てるぞ! うん、上級生か?」
「いえ、こちらアリス様の妹の……」
エドワードと呼ばれた少年は私を二度見し後ずさりながら「悪役令嬢?!」と呟いた。
オードリーにはずっと仲の悪い姉が4年生にいて、たぶん私の悪口を王都中に言ってるから(本人は言ってないけど噂にしてるのは本人だと思うこと)と説明してあるので、そんなやり取りもニコニコして聞いていてくれる。
でも、ちょっと怒っているのが気配でわかる。
「行こう」とウォロが私の腕を取った。
「セレナさん、またね!」
私はそう声をかけてウォロとオードリーと歩き出した。
「本当に噂になってるんですね」
オードリーがひそひそ言った。
「うん、私といると嫌な思いをするかもだけど、ごめんね」
「そんなこと!!
絶対、そうじゃないこと証明してやるんだから」
講堂に入り受付で名乗るとやはりぎょっとされる。
すごいアウェイ感だな。
ウォロとオードリーが受付していると「第3皇子、お会いできてうれしいです!」と声をかけてきたふたりの男子生徒がいた。
2年生のミーア帝国からの留学生達だった。
間もなく入学式なので、昼休みに食堂で待ち合わせることにして別れる。
ホールに入り1年生の席に行くと、アリスと第1王子がいた。
あの黒髪は第1王子で合ってたと後からわかった。
「エミリア! その制服、何?」
アリスが私の格好を見てかなり驚いている。
「アリス姉様、お久しぶりです。どう、似合うでしょう?
こちらが私の婚約者のモーリオン・ウォロ・ミーア第3皇子です。
ウォロ、こちらが私の姉のアリス・ユーチャリス・アリステラ」
ウォロを紹介する。
「はじめまして」
ウォロが低い声で言う。
背も高いし、低い声出すと1年生に見えないよね、ほんと。
アリスと第1王子もちょっとびっくりしている。
「私がアンドレアス・ウォルフライト、この国の第1王子になる。よろしく」
あ、ウォロにはちゃんと自己紹介するんだ。
その時、後ろからメガネっ子のセレナ達が来た。
「兄様、こいつらが何か?」
さっきの金髪エドワードがアンドレアス王子に声をかけてる。
ということはこいつがエドワード第2王子か!!
スタッフ係の上級生が「1年生席について!」と言うので、私達3人は近くの椅子に座った。
エドワード達は一番前の席に行った。
入学式でアンドレアス第1王子がなにやら挨拶して、ぜひ生徒会にと言っていて、私にでは絶対ないだろうと思いつつニコニコしながら聞いておいた。
学校長が面白そうなおじいちゃんで、魔法の先生に私と同じように贈名を持っている人がいた。
アリスの25年前に生まれた人かな?
話を聞くのが楽しみだ。
寮のグループがそのまま実技の班になるのだという。
座学も班で学年を分けたりすることがあるそう。
とりあえず、寮のグループに分かれて集まるように言われる。
1と紙を持った先生の所に行くと、私達とセレナ達4人で7人だった。
「このグループはすごいぞ、ウォルフライトの王子と、ミーア帝国の皇子がいるグループだからな!」
寮の担任のオーサム先生、男性40歳くらいが言った。
とりあえず促されて名前だけの自己紹介をしあう。
「エドワードだ、よろしく」金髪第2王子。
「セレナです」メガネっ子。
「ティエルノだ」体格が良い力持ち。
「ライトといいます」髪がきれいな白色。
「エミリア・ネモフィラです。ネモと呼んで下さい」
私の言葉に4人が緊張する。そんなに怖いかな?
「モーリオン・ウォロ。ウォロと呼んでくれ」
「オードリーです」
「これで7人。5年間仲良くな!」
オーサム先生、この雰囲気大丈夫か?
これから教室に移動。その後昼休み。また教室に戻り、解散。
午後5時までに寮に入ることと言われる。
とりあえず教室に7人で移動する。
セレナが「エミリアさん?」と声をかけてくるので「ネモでいいよ」と返事する。
「では、私もセレナと」
「わかった、セレナよろしく」
「ネモって、その制服自分で選んだの?」
「うん、剣の授業取るから動きやすほうがいいし、スカートだと困ることがあったから、基本ズボンの方が動きやすい」
「困ったことって?」
「あ、前にスカートだったから横座りに馬に乗る羽目になって……」
「あの時は抱きついてたから大丈夫だったろ?」
ウォロが口を挟んでくる。
「あの時はウォロに必死に抱きついてなきゃだったから、景色全然見られなかったし。
後でハロルドと兄様にすごく怒られたんだから!
だから、もう学校ではいつでも剣の稽古や馬に乗れるようにしとこうと思って」
「おふたりは仲がいいんですね」
「うん、10歳の時に知り合って、11歳で婚約したもんね。
オードリーはウォロの兄の第2皇子と婚約したばかりだよ」
オードリーを話に巻き込む。
オードリーとセレナ、ふたりとも女の子らしくてかわいい感じだから仲良くなれそうじゃない?
教室について、前の方の左側にまとまって座るように言われる。
セレナ、エドワードが1列目に座り、ライト、ティエルノが2列目に座った。
別に2席しかないわけでなく、列に4席あるので、全員前に行けばいいのにと思ったが。
3列目に3人で座る。
書類入れがひとりずつ配られ、時間割りや選択制の授業の申し込み書類などが入っているという。
授業の内容を簡単に説明してもらい、今日、寮で確認して記入し、明日提出するようにと説明を受けた。
私とウォロだけ名前を呼ばれて紙を追加で渡される。
「聖魔法のクラスの時間割だ。
この授業は放課後に行われるから気を付けるように」と言われた。
クラスのみんながざわついた。
「悪役令嬢と魔王が聖魔法持ちかよ」
後ろの方からぼそっと声が聞こえた。
魔王ってウォロのこと?!
本当にそういう噂になっているんだ。
私とオードリーは顔を見合わせて笑ってしまった。
昼休み、私達は急いで食堂に向かった。
ミーア帝国からの留学生ふたりが席を取っておいてくれたので、食事を選んで受け取ってみんなで席に着いた。
私とウォロはサンドイッチ。オードリーはオムライス。ふたりは日替わりランチを選んでいた。
マイネとギエン。
マイネはミーア帝国子爵令息で、ギエンは太守令息だった。
太守は地方の皇帝直轄地の行政最高責任者みたいな職種だ。私も勉強したんだぞ!
やはり留学生ということで最初は周囲に打ち解けるのが大変だったが、今では寮の仲間とすっかり仲良くなり学校生活を楽しんでいるという。良かった。
魔法学のギーマ先生が癖が強いとか、そんな先生や授業の話を聞いたりして楽しく過ごせた。
「実はこちらに来てネモ様の噂を聞いてびっくりしました。
でも、去年ネモ様が皇宮に滞在した時の話を姉からの手紙で知って……。
エルメスは私の一番上の姉なんです」とマイネ。
「えっ、じゃあ、マイベルとカノンの叔父さんになるんだね!
マイベルとカノン、かわいかったぁ!
あ、ネモと呼んで下さい!」
「とてもいい方だと姉の手紙にあり、噂とのギャップに驚きました」
「ごめんなさい。私、姉と仲が悪くて。異母姉妹なんです。
なので、噂が独り歩きしているかも。
マイネとギエンが見た私を信じてくれればいいです。
でも他の人に訂正したりしなくていいからね!
それはやめておいて。姉もまだ2年間在学だから……」
小さい声でふたりにそう伝える。
食べ終えると、庭を案内してくれるというので一緒に歩き出す。
図書館棟や実習棟などたくさんの建物があるが、ひとつひとつが特徴あるので、覚えやすいかも。
学校の地図を取り出して確認しながら歩いた。
寮は学校の施設を囲むように配置されている。
5年生×4棟だから、20棟の寮がぐるっと学校を取り囲んでいる感じになる。
私達の寮は1-1寮と表記されるそうだ。そのまま2年生になれば2-1寮と名前だけ変わっていく。
特に1の寮は王族や従者がいる高位貴族の人が入ることが多いそう。
へー、王子はわかるけれど、残りの3人も高位貴族なんだな、きっと。
昼休みが終る頃、教室まで送ってくれたマイネとギエンにお礼を言って別れた。
教室に入ると、一瞬ざわざわが止む。
なんだろね。この感じ……。
さっきと同じ席に座ると、ティエルノが振り返って話しかけてきた。
「お前、剣の授業取るのか? やめておけよ」
「お前じゃなくてネモだけど。ティエルノも取るの?」
「ああ、だからやめておけって。怪我するぞ」
「心配してくれてるんだ。ありがとう。
でも、ちゃんと訓練して来ているから大丈夫。よろしくね」
「……オレは忠告したからな」
また前を向いちゃった。
でも、悪い感じはしなかった。
ちゃんと話しかけてくれるだけましだ。
読んで下さりありがとうございます。
ここからは1日1投稿にしていく予定です。(登場人物が増えて名前とか魔法属性とかややこしくなってるので確認を何度もしています)
次も頑張ります!




