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170 力の使い方

悪役令嬢や聖女が登場している話をたくさん読んで楽しくなり、自分でも書いてみたくなって挑戦しています。

ゆっくり書き進めていますのでお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。


 日曜日は孤児院ボランティアの日だった。

 私、ライト、セレナが中心になり、エリザベス、ルーシー、オードリー、サーシャも来てくれ、他に女子が数人来てくれた。


 男子は剣術の練習で、王城に行ったんだよね。

 なんとエドワードはノアも連れてってくれた!!


 アポロやアンドレアスが練習を見てくれ、ランスも様子を見に来たとウォロが教えてくれた。

 ノアも王城で豪華なご馳走を出してもらって喜んでいたそう。

 あんまり贅沢を教えないでやって欲しい……。


 私達は寮での夕食後、魔法陣を使ってラボに行き、ご飯やトイレの片づけや掃除をして、水とカリカリを補充する。


 今夜はミーアに行く。

 私が「オードリーは……」と呟くとウォロが言った。

「ミーアへは初めてだから、まず実験。次に誘おう」

「そうだね」

 私は頷いた。


 私が薬の木箱を抱えて、ウォロの服にしがみつく。

 ウォロが魔法陣を展開。行き先に『M』を書き入れ、私を木箱ごと抱きしめた。


 魔法陣が飛ぶように消え、周囲の景色が溶けて、ふわっと足元の床がなくなり、浮遊している感じになる。

 固定の転移魔法陣とは違い、溶けてる景色の中にキラキラがすごいスピードで流れていくのが見えてきれい!! と足が地についた感覚がして、周囲がはっきりしてくる。


 ここ知ってる。

 ウォロが造ったミニ神殿。キスしようとしてカノンに見つかった所。

 皇宮の庭の中!


「ウォロ! ネモ!」

 声がしてダイゴとダンテがいた。


「大成功!」とウォロがにっこりして、私から木箱を受け取るとダンテに「はい、薬」と手渡した。


「ありがとう。それにしてもすごい魔法だな……」

 ダンテが目を丸くして驚いた様子を隠さずに言った。


「本当にすごいよ、ウォロとネモは。

 王国の学校でも教えていない、独自の術式を完成させるなんて!!」

 ダイゴも半分呆れたような表情で言う。


 いや、私はメモ取ったくらいで、ほとんどウォロの考えと魔法だから!


「まだ内緒なんだよな?!」とダンテ。

「ああ、卒業するまでは、公表はしないつもりだ。研究は続けるけど」

 ウォロの言葉にダイゴが頷く。

「ああ、どの国もこの術式を知りたがるし手に入れたがるだろう。

 下手をすると争いが起きるかもしれない」

「まあそうなったら、ネモと身を隠すけど」

「なんだか、そうなって欲しそうな……感じだな」

 ダイゴが笑った。


「次は6月末の日曜日の夜に来る。

 オードリーも連れて来られたら連れてくる。

 あまり期待しないで待っていて」

「ああ、気をつけて!」とダイゴがうれしそうに言った。


「ネモ、いつも薬をありがとう。騎士団はとても助かってる」

 ダンテが言ってくれて、私はうれしくなる。


「魔獣の活動、落ち着くように祈ってます。みんなも気をつけて!」


「ネモ帰るよ」「はい」

 私はウォロに抱きつくようにしがみつく。


 魔法陣の展開、またキラキラの空中浮遊。

 ウォロがまたキスしようとしてきて笑ってしまう。


 寮の裏に無事に到着してから、私からキスをした。




   ◇ ◇ ◇




 6月に入り、剣術の学年選抜の時期になった。

 今回はエドワード、ウォロ、ティエルノ、ミカはシード扱いにするという。

 ここでくじ運でつぶし合いになると大損失(?)だからだそう。

 これで挑戦する側にしてみれば、この4人の実力者に運よく当たらず勝ち抜きというのはほとんどなくなった。

 最後は実力ある者を負かさないと選ばれないということ。


 私もダリルも1回戦は勝ち上がったが、2回戦で私はエドワード、ダリルはティエルノと当たってしまった。

 

 エドワードとの対戦直前。

「手を抜かなかったら、何約束してくれる?」

 エドワードに言われる。

「そういうのウォロともやめようって話しているんだよね。

 どーせ、手抜きなんてしないでしょ?」

「いや、手、抜いちゃうかも……」

 エドワードらしからぬセリフに苦笑いする。


「そうだな、手を抜かないでちゃんと戦ってくれたら、尊敬する」

「なんだよ。尊敬してないの?」

「しているのを続けて欲しかったら、手を抜かない!」

「……ふーん、わかった」


 本当は二刀流の方が勝機はあるかもだけれど、私はエドワードと長剣で戦ってみたくてそれで対戦することにした。


 試合と同時に怒涛の攻撃を仕掛ける。


 体力、筋力、持久力でどうしても劣るので、先手必勝なわけよ。


 二刀流の動きを入れて、変則的な動きと相手からの木剣の受け流しの力を使って、こちらはできるだけ体力を使わず距離を取るようにする。


 意表を突く作戦として剣の柄を利用して攻撃も仕掛ける。


「あっぶねー」という慌てた声とともに結局避けられた。残念!!


 後は体力の続くまでやりきるだけ!!

 

 試合時間までもたなかった。

 残りあと1分ぐらいなところで、エドワードの木剣との押し合い状態になり、剣を交えながら地面に倒されてしまった。

 

「負けました!」

 私はエドワードの全力で押さえつけてくる剣を押し返せず、なんとか剣で防ぎながら叫んだけど、エドワードが攻撃の手を止めてくれない。

 あれ?

 手は抜かないと言ったけど、こちらはもう降参しているんだけど?

 倒れてるし、ほぼ馬乗りになられて動けないし。

「負けなら、力抜け!」

 えっ?


 私は力を抜いた。

 私の木剣が私の頭や胸の防具にゴツンとぶつかり顔をしかめる。


「負けました!」

 私はもう一度大きな声で言って、剣から手を離し、降参というように小さく両手を上げて見せ、ため息をついた。


 するとエドワードも大きなため息をついて、私を見下ろしてから、離れた。


 何がしたかったん?


 1年の時のエドワードの言葉を思い出した。

『好きな女の子に勝つっていうの良くないか?

 自分ができるってところが見せられるし、俺はうれしいけどな』


 いやいや、さすがにもう3年生。

 対戦相手をしかも女子を圧倒してうれしいとか……、あるのか?!


 私は無様な負けを披露してしまった照れ隠しもあって、勢いをつけてジャンプして一気に起き上がった。

 あー、手には限界来てたけど、足はもう少し動いてくれそうだったのにな……。


 ダリルはやはりティエルノと真正面からの打ち合いでは勝てず……。


 3年の選抜はエドワード、ウォロ、ティエルノ、ミカと2年の時と同じになった。


 エドワードもミカもこの1年でだいぶ背が伸びて、体格も良くなった。

 

 成長を喜ばないといけないのになんか寂しい。

 やっぱりこれはお母さんの気持ちなんだろうか……。

 それともなんか置いて行かれるという寂しさか……。

 

 私が考え込んでいるとウォロとミカが来た。

「エドワードとの試合、惜しかったらしいな」とウォロ。

「いや、全然惜しくない。負けたのはくやしいけど、完敗。

 負けましたって2回も言わされたし」

「2回も? エドワードらしくない……」

 ミカが呟いた。


「というわけで完膚なきまで叩きのめされました。

 私の努力不足。もっと筋肉ムキムキにならなきゃ!」

「それは……、えー、無理しないでいいよ」

 ウォロが困ったように言った。


 こんな日にも自主練するとか……。

 本当に体力あるんだな。


 私は今日は体力作りで走るだけにして、エリザベスとサーシャの剣の練習はティエルノとダリルに任せて見ていた。

 私の膝の上にノアが乗ってきた。

「うん? 負けちゃったの慰めてくれるの?」

 私はノアの頭にキスして撫でてやった。

 

 そうだ、光魔法の練習してみよう。

 私はノアの身体を撫でながら光魔法をかける。

 ノアの身体からも光魔法が帰ってくる。

 白い小さな光だった。でも元気に跳ねている。

 跳ねるところは私のに似てる、かな。


 その時、ノアが振り向いて私と目を合わせた。


『なあ、ノア、ネモに言ってくれよ。

 何で俺じゃだめなんだろうな。こんなに好きなのに』

 

 エドワードの声が頭に響いた。


『ノア、ウォロがいるとわかっているのに……。

 この気持ちは、いったいどうしたらいいんだろうな。

 片思いはやめてと言われたけど……』


 また声が響いて……。


 私はエドワードの姿を思わず探してしまった。

 そしてノアと再び目を合わす。


「ニア」

 ノアが目を細め、ぐるぐる喉を鳴らして膝の上で丸くなる。


 ノアはエドワードに懐いているというか……、エドワードが弱っていることを心配して寄り添っていたのかも。


「そっか、ありがとう、ノア。

 寄り添ってくれているんだね。

 ノアに話していることで整理しているのかな?

 うーん、私にはどうしようもできないし、どうしようかねぇ……」

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。

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